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多摩地区 ニシハラ理工株式会社

ニシハラ理工株式会社 技術を磨き続け、誠意をもって仕事に臨み、顧客の高い信頼を得る

ニシハラ理工株式会社

技術を磨き続け、誠意をもって仕事に臨み、顧客の高い信頼を得る

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多摩地区

ニシハラ理工株式会社

技術を磨き続け、誠意をもって仕事に臨み、顧客の高い信頼を得る

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人材育成ストーリー
技術を磨き続け、誠意をもって仕事に臨み、顧客の高い信頼を得る

 半導体や電子部品のめっき加工を手がけるニシハラ理工。顧客からの絶大な信頼を勝ち取ってきた背景には、最先端の技術を磨く経営があった。

創業時から半導体のめっき加工を手がける

 トランジスタ、IC、LSI、超LSIといった半導体は、時代とともに小型化、メモリ容量の増大などといった技術革新を遂げてきた。車も家電もパソコンやスマートフォンも、半導体の進化があったからこそ性能が飛躍的に向上したといってもいい。半導体が「産業の米」とも言われているのは何よりの証であろう。
 ニシハラ理工が創業した1951年は、技術大国日本の先駆けとも言えるトランジスタ技術を世に押し出した、まさに半導体の黎明期。これが我が国の経済成長の原動力となったのは誰もが認めるところ。
 「創業間もない頃から、大手電機メーカーの指導を受けながらトランジスタのめっき技術を開発してきました。その後も半導体や電子部品のめっきに特化して、日本経済の成長とともに当社も成長してきました」
 そう自社の歴史を語るのは代表取締役社長の西原敬一氏。同社が手がけるのは半導体のリードフレームなどの電気を通す部位やチップを装着する部分のめっきで、その部品は車、スマートフォン、家電などに使用され、人々の社会生活を支えている。例えば、車では、タイヤの圧力センサー、パワーウィンドウスイッチ、コンデンサなど、多くの電子部品にニシハラ理工のめっき加工技術が利用されている。
 まさに、現代社会に欠かせない半導体。それを支えるのが、±0.1ミリ単位の精度が求められるニシハラ理工の精密加工技術。これなくして半導体は語れず、なかなか真似できる技術でもない。
 「さらに、コストを軽減するためには薄く均一にめっきするという技術も求められますし、材料も鉄系から、より軽くて材料費が安い銅やアルミニウムへと移行している。さらに生産性を高めるため幅広い素材へのめっき加工技術が求められるようになっています」と西原社長が語るように、半導体・電子部品業界では常に革新技術に対応できる力が求められている。当然、その世界で信頼を勝ち取るのは高い技術力だという。

body1-1.jpg誠実な性格で社員からも慕われる西原敬一社長

「仕事の品質」を高められる人材を育てる

 どんな会社も一朝一夕に人材育成ができるわけではない。弛まない企業努力があって初めて人は育つもの。ニシハラ理工では、40年も前から人材育成に注力、今では当たり前になっている階層別研修、新しい技術を学ぶ部門別研修を取り入れて、社員のマネジメント力や技術力を磨いてきたという。
 「新しい技術を創るのは人、高い品質の製品やサービスを提供するのも人。この考え方は創業以来変わらない、当社の仕事に対する基本姿勢です。ですから社員のスキルを磨く研修に力を入れるのは経営者の責務だと思います。もちろん、教育したからといってすぐに結果が出るものでもありません。5年後、10年後という長期的な視点から継続して育てることが大切だと考えています」(西原社長)
 戦国時代の大名・武田信玄は「人は城、人は石垣」と言ったそうだが、まさに「人は企業」という伝統がニシハラ理工には根づいているようだ。

body2-1.jpg最新の技術を駆使してめっき加工をするニシハラ理工の工場

新しい部署を新設し、将来の事業創出に挑む

 そして将来を見越した取組にも着手した。それが今年の3月に開設した営業開発課である。現在、ニシハラ理工は半導体や電子部品のめっき加工を手がけているが、将来に渡って同分野の仕事が続くとは限らない。その他の新しい分野を新規開拓して将来の事業の柱にしようと既存の営業部とは別部隊の開発営業課を立ち上げた。
 同営業課の責任者に抜擢されたのが、技術と営業の双方に精通したベテランの高山正幸課長である。現在、高山さんは市場調査を行いながらニーズを探り出し、自社の強みが活かせる分野の開拓に当たっている。
 「主に展示会へ出品して興味をいただいた企業への個別訪問などを行う中で、医療機器や建築資材分野に大きな可能性を感じています。とくに医療分野は高齢社会を迎えて市場拡大が期待できる分野ですし、センサー関連部品や医療ロボット分野で当社のめっき加工技術が応用できるという手ごたえがあります」
 この新規開拓の営業活動で追い風となっているのが、これまでの顧客の信頼だという。確かな技術力もさることながら仕事に真摯に向き合うニシハラ理工の姿勢が高評価を得ており、そんな既存の顧客から新しい会社を紹介してもらえることも少なくない。高山さんは、会社の先輩たちが培ってきた顧客との信頼関係を財産にしながら、新たな信頼関係を築き上げることが自分たちの使命だという。
 「私たちの活動が、5年後、10年後の事業の柱になるようにしたいと考えています。当社が狙うのは、やはりニッチトップ。大手企業が参入しづらい小さな市場でトップシェアを獲得できるように、今後も活動したいと考えています」

body3-1.jpg将来のニシハラ理工を支える新分野開拓に挑む高山正幸さん

新しいめっき液を開発する喜びのある仕事

 高山さんが営業のキーパーソンなら、ニシハラ理工の先端技術を支えているのが、技術開発センター技術開発課の橋本美智子さんである。大学では有機合成の研究を行い、化学の専門知識が活かせる同社の事業に興味を持ち入社。以来、めっき液の開発に携わってきた。主にニッケルや錫めっき液の通電、部品装着、強度補強のためのめっき液の開発に取り組む。
 「まだ世の中にないめっき液を開発しているというやりがいのある仕事です。しかも当社の技術開発の仕事は、開発しためっき液を、量産する製造ラインでの使用に落とし込むまで担当するのが役割。試作品と量産ラインでは、被膜する条件が異なるので、めっき液の改良が求められるなどハードルは高いのですが、それが逆にやりがいにつながっています」
 そんな橋本さんには忘れられない経験がある。それはあるめっき液の開発でのこと。試作段階までは順調に進んでいたのだが、量産化の段階になって初めて思いもよらぬ不具合が出てしまった。当然、製品の納期も近づいている。限られた時間の中で原因を探り出し、めっき液を改良しなければならない。数日間、寝食を忘れて原因究明と改善に取り組んだ結果、量産化する生産ラインにフィットするめっき液の改良に成功することができた。
 「トライアンドエラーの繰り返しが、技術者の経験値を高めることになることを痛感した」と橋本さんは振り返る。常に未知への挑戦を続けながらより良いめっき液を開発する橋本さんの表情には、苦難を乗り越えた人のみが持つ自信がみなぎっていた。

body4-1.jpg将来的には量産化のためのライン設計にも携わりたいという橋本美智子さん

編集部メモ

技術開発から生産まで対応する柔軟な社内体制

 高い技術力を誇るニシハラ理工の強みは柔軟な開発・生産体制。同社では、新しいめっき加工技術の開発から量産まで顧客のニーズに合わせて対応している。
 「お客様によってニーズは異なります。新しいめっき加工技術のみを手に入れたい場合もあれば、新技術を使った製品を供給してほしい、あるいは新しい技術と製品を量産できる製造装置を開発してほしいといったように要望は様々です。こうしたお客様のニーズに合わせて対応できるのが当社の強みです」
 西原社長がそう語るように、技術開発から試作品づくりや生産受注に加えて、製造装置の開発もできる設備や体制を整えている。つまり、最先端のめっき加工技術を開発するだけでなく、どんなニーズにも対応できるワンストップソリューションを実現して顧客の信頼を獲得してきた。
 そんな伝統を持つニシハラ理工が現在、3年計画で目指しているのが「仕事品質No.1」という目標。メーカーにとって大切なのは、技術的な品質だけでなく、営業、総務など社内の各部門が仕事の品質を上げることで、顧客の満足度向上を図ることだと西原社長は言う。
 「お客様が見ているのは技術だけではありません。納期の厳守からお客様の要望に対する真摯な姿勢や迅速な対応、さらには清潔で環境にも配慮した工場にすることでお客様に安心していただくなど、すべての仕事の質の向上に努めています」
 この誠実な姿勢こそが顧客の絶大なる信頼を勝ち得てきた所以に違いない。