<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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城東地区
株式会社西川精機製作所

株式会社西川精機製作所 金属加工に精通した町工場の技術力と、カタチにこだわる芸術家の想像力。異なる分野の融合が新発想を生む

株式会社西川精機製作所

金属加工に精通した町工場の技術力と、カタチにこだわる芸術家の想像力。異なる分野の融合が新発想を生む

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株式会社西川精機製作所

金属加工に精通した町工場の技術力と、カタチにこだわる芸術家の想像力。異なる分野の融合が新発想を生む

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技術×想像=創造力アートストーリー
金属加工に精通した町工場の技術力と、カタチにこだわる芸術家の想像力。異なる分野の融合が新発想を生む

 「ものづくり×アート」。ものづくりする上でアプローチの全く違う職人とアーティストのコラボレーションは、どんなものを生み出すのか――。

顧客の要求でレベルアップ。「広く浅く」から「広く深く」へ

 まだ世の中に存在しない新しい形や機能を想像する力を持ったアーティスト。イメージを正確に形に仕上げる技術力を持った職人。想像力と技術力が掛け合わさった時、世の中にないものを生み出す創造力になる。
 西川精機製作所は、旋盤やフライス盤、レーザー加工機など多種多様の加工機械を導入し、切削加工から組み立てに至るまでをこなす金属加工のプロフェッショナル企業だ。いわゆる町工場といわれる企業は、切削なら切削だけという風に一つの技能を突き詰めていく傾向が強いようだが、同社は幅広い技術を磨く。その理由は会社の沿革にあった。
 「もともとうちはジグ屋といって、工業用の機械を作る会社なんです。お客様に合わせて、一台一台仕様の違うものを一から作るので、すべての金属加工技術が必要なんです」
と西川喜久社長は語る。創業は1960年というからまさに高度成長期の申し子とでもいえるような同社に、後継者不足に悩む会社から合併話が立て続けに2件持ち上がった。一つは西川社長の義父が経営する町工場、もう一つはクライアントの町工場で、いずれも一芸特化型の金属加工業だった。引き継げるだけの人材や設備はあったため、西川社長はこれを承諾した。
 会社を継承するということは、抱えていた顧客を引き継ぐということでもある。経営者が代わろうとも納める製品のレベルを落とすわけにはいかない。つまり、引き継いだ2社の技術力も継承しなければならないということになる。これが口でいうほど簡単なことではないことを西川社長は痛感させられた。それを克服できたのは、「納品した時の顧客の顔を想像する」という社長のポリシーに基づき、技術力を磨き続けたからだった。その結果、顧客の満足だけでなく、同社の技術レベルは底上げされた。「広く浅く」金属加工を扱ってきた同社は「広く深く」へと進化した。そして、これが後にアーティストとのコラボレーションを実現させる下地になったのだ。

body1-1.jpg「お客様の顔を想像することが腕を磨く一番の近道です」とポリシーを語る西川喜久社長

技術力を自社ブランドに。職人と芸術家がイノベーションを起こす

 「ものづくり×アート」への取り組みが本格的に動き出したのは2010年のこと。東京都が推進する「産学連携デザインイノベーション事業」への参加がきっかけだった。この事業は自社製品のあるメーカーと、大学のデザイナーやアーティストが協働で新しいものを作り出すというプロジェクトだ。
 この話を聞いた西川社長は、身震いしたという。町工場は、一部の営業社員をのぞいて、ほとんど外の人間と関わることなく仕事を完結させる。西川社長自身、そんな世界で生きてきたからこそ、外の人間とどんな反応を起こすのか、予想がつかなかったのだ。
 しかし、同社は顧客向け機械を作っているため、コンシューマ向けの自社製品というものがなかった。これではプロジェクトに参加できない。そこで西川社長はひらめいた。
 「うちには何があるかと考えたら、金属全般に渡る知識と技術に尽きるんです。それを自社ブランドとみなし、アーティストに提供することで、彼らのイメージを具現化する手助けになるのではないかと思いました。これを新たなビジネスモデルとして逆提案したんです。」
 このアイデアが評価され、特例としてプロジェクトへの参加が認められた。だが、企業と大学の先生などが集まる最初の会議での評判では賛否両論。「これに時間は割けない」と突っぱねる人もいれば、「おもしろい、いっしょにやろう」と言ってくれる人もいた。その一人が、東京芸術大学のある教授だった。
 その教授は早速、自身の研究室に、同社との共同製作を告知するポスターを貼り出し、学生に周知してくれた。それを卒業制作を控えた学生が目にした。

body2-1.jpg複雑な形を正確に切り出せるのが西川精機の技

工業と芸術。違う世界、違う視点が交わって、新しいものが生まれる

 連絡をしてきたその学生を、西川社長とともに出迎えた企画開発セクションでチーフを務める宮本卓さん。大学で金属工学を学んだ後、大手金属メーカーで研究開発に携わり、実家が営む金属加工の町工場を経て、同社に入社した。学問から実践まで幅広く金属加工に触れてきた、普通に考えればオールマイティーの職人。それでもアーティストとの打ち合わせに参加し、考え方の違いに刺激を受けたという。
 「例えば曲線一つとっても、この曲線にはどういう意味がありますか、と意味にすごくこだわるんです。アーティストの作る洗練されたデザインの秘密はそこにあるとわかりましたね。それからは自分でものを作る時も『なぜ』という問いかけをするようにしています」
 生産性や実用性を重視する工業と、表現活動の一環である芸術とでは、見えているものや大切にする部分が異なる。職人にとって非効率に思える工程であっても、アーティストにとっては譲れない工程ということも少なくないのだ。だから、アーティストから助言を求められた時、「簡単だ」「難しい」と単純に答えるだけではなく、「なぜそうしたいんですか?」という部分まで掘り下げないと、真に意味のある助言はできない。異なる世界の人間とコミュニケーションをとる難しさを宮本さんはこう語り、「彼らのアイデアに驚くと同時に、ある種の敗北感を味わいました」と笑う。
 技術者とアーティストが顔を付き合わせ試行錯誤した末に、コラボ作品第一弾が完成。技術力を持った町工場がアーティストをバックアップすることで、新しいカタチを生み出せることを証明した。
これを機に「ものづくり×アート」の動きは勢いを増し、2016年に一つの集大成を迎える。10人のアーティストが同社とコラボした金属作品を出展する「日常になかった金属のカタチ」展を開催したのだ。
 「一通りの機材がそろい、作業スペースが借りられるうえ、金属加工に精通した職人さんにアドバイスがもらえるという、これ以上ないほどありがたい環境でした。作品作りの可能性が広がると思いました」
 と初めて同社を訪れた時のことを語るのは、出展者の一人、三木瑛子さん。東京芸術大学で金属加工や造形を学び、現在は空間デザイナー・鍛金作家として活躍している。
 卒業後はフリーランスとして活動するつもりでいたが、そうなれば金属加工用の機材を自前で用意しなければならない。いきなりそれだけの設備を整えるのは難しく、将来への不安が大きい時期に、折しも卒業制作展の会場で、先輩から同プロジェクトへの参加を打診された。まさに渡りに船というわけだ。
 早速、製作がスタート。三木さんが作ろうとしているヘアアクセサリーの形や特性から、どんな金属を、どのように加工するのが適切か、お互いにアイデアを出し合っていった。同社が厚み違いで材料を何種類も切り出し、三木さんが手で触ってみて、感触や質感などのイメージとすり合わせていく。作っては話し合い、また作るの繰り返しだ。
 「金属は硬い素材である一方、柔らかく加工しやすい材料でもあり、様々な表情を見せてくれます。叩きかたや熱の加え方によって、毎回違う表情になりますから、私のイメージに完全に合わせるのではなく、偶然生まれた金属の表情を作品に生かしたいと考えています。だから、実際に何度も作ってみることが大切なんです」(三木さん)
 三木さんだけでなく、10人のアーティスト全員が、それぞれにポリシーを持っている。それを一つひとつ同社が汲み取り、作業は進む。そして展示会は、無事開催を迎えた。

body3-1.jpg新規プロジェクトの立ち上げ・進行を務める一方、溶接などの現場仕事もこなす宮本卓さん

使う人の反応が職人の腕を磨く

 こうして「ものづくり×アート」という新しい取組は軌道に乗り始めた。アーティストと互いに刺激しあう状況が生まれたことで、社内の様子も変わり始めていると言う。
 「ものを作る時、必ずお客様の顔を思い浮かべることを大切しています。良いものを納品すれば喜んでいただけますし、もし、逆のことをすれば、嫌な顔をされます。そうした表情一つひとつに感受性を持って仕事に取り組むことが、職人の腕を磨いていくのだと思います」(西川社長)
 最終的にだれが、どんな風に使うのか想像することで仕事に対する責任感が増し、技術力が向上するということだ。そのために、同社では機会があれば技術職の人間でも顧客のところに顔を出させ、どんな反応をしているのか直に感じてもらうようにしているのだという。
 今回の「ものづくり×アート」も実はその一環。顧客の要望に応える新しい発想が生まれると同時に、顧客と一緒にものづくりに励み、自分の腕前を間近で見られることで、職人の成長にもつながるというわけだ。
 常に顧客のニーズに応えることを考え、新しい取組に果敢にチャレンジする姿勢を見せる同社。その創造力が今までにない発想の製品を世に送り出し続けてくれるに違いない。

body4-1.jpg今も西川精機で作品作りに励むアーティストの三木瑛子さん。力強い槌さばきが印象的

編集部メモ

それぞれの今後


 「ボールを転がす台を作って、障害者施設のボウリング大会にお邪魔したことから大きなインスピレーションを得ました。その施設に入っている方は、ほとんど身体を動かせない状態で、職員さんに聞くと一日中無表情のことも多いそうなんです。しかし、ボウリング大会の時はその表情がくしゃっとほころんだんですね。ものづくりを通して、笑顔になれる時間を提供できたことに誇らしさを感じました」(西川社長)
 これを継続していくために、事業化を目指しているという。社長の意志を受けて宮本さんはこれからの課題をこう語る。
「入社してからの2年半は当社を外に発信していくことに注力していましたが、これからは作ったものをいかにビジネスにしていくか、に重きを置くことになると思います。これからが本番ですね」
 今回の職人との共同製作が、顧客のニーズを掴むという視点を磨くことにもなったというアーティストの三木さんは、
「作ることが好きなので、日々を大切に、ハンマーを振り続けたいです。自分にとって新しいものであることはもちろん、それが誰かに何かしらの刺激を与えられるものであれば嬉しいことです。ゆくゆくは海外にも自分の作品を出していけるようになればいいですね」と今後の夢を話してくれた。

edit-1.jpg一人ひとりが金属に精通した腕利きの職人
  • 社名:株式会社西川精機製作所
  • 設立年・創業年:設立 1964年
  • 資本金:1000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 西川 喜久
  • 従業員数:7名(内、女性従業員数0名)
  • 所在地:132-0031 東京都江戸川区中央1-16-23
  • TEL:03-3674-3232
  • URL:http://www.nishikawa-seiki.co.jp