<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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多摩地区 株式会社NISSYO

株式会社NISSYO 各種社内制度を利用して社員全員が経営者の視点からカイゼンや環境整備を行う

株式会社NISSYO

各種社内制度を利用して社員全員が経営者の視点からカイゼンや環境整備を行う

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東京カイシャハッケン伝!企業
多摩地区

株式会社NISSYO

各種社内制度を利用して社員全員が経営者の視点からカイゼンや環境整備を行う

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充実した社内制度ストーリー
各種社内制度を利用して社員全員が経営者の視点からカイゼンや環境整備を行う

 「人の成長なくして、会社の成長はない」という経営方針のもと、社員の成長を促す教育制度やユニークな仕組みを次々と導入してきた日昭工業。その効果はてき面で、社員自らが新しい視点をもち、自発的に考え、そして積極的に行動するという企業文化へと昇華しつつある。

経営哲学を反映した清潔で明るい雰囲気の職場

 青梅市に本社を置く日昭工業は変圧器のメーカー。2階建ての社屋はけっして新しくはないが、床が光沢を放つほど磨き込まれ、また、ゲストを迎え入れる社員の声も明るく、心を和ませる雰囲気に包まれている。
 清潔で整理整頓された職場と明るい挨拶は、日昭工業の代表取締役社長である久保寛一氏の経営哲学が反映された社員教育の賜物だという。
「約10年勤務していた大手電機メーカーを退職し、父が創業した当社に入社し、4年後の1993年に父から社長を引き継ぎました。入社当時は寡黙な職人が多く、典型的な町工場然としていて、今のような活気はありませんでした。それでもお客様からの信頼を損なうことなく、仕事が受注できていればよいという経営に終始していました」
そう語る久保社長が経営者として目覚めたのは知人の一言だったという。
「社長が成長しないと会社も成長できないよ」
ハッとさせられた。忠告してくれた知人はリスペクトする経営者だったのだ。
その日を境に経営者とは何かを模索すべく、経営関連の書籍を読み漁った。とりわけ、世に名をはせる経営者の言葉は重く、時には会見を申し込み、直接、教えを乞うたこともあった。まさにがむしゃらな向学心で経営哲学や組織改革のための手法を学んでいったのだった。

body1-1.jpg「社員には会社を活用して人生を謳歌してもらいたい」と話す久保寛一社長

ぼう大な予算をかけて社外研修など社員教育に注力

 久保社長は学んだことをすぐさま実践した。同社の敢行する整理、整頓、清掃、清潔、しつけを徹底する5S活動もその一つで、従業員の意識改革が狙いだ。
例えば、トイレをきれいにすることで、「やり遂げることの大切さ」や「きれいになる喜び」を実感できるなどの効果があるという。こうしたトイレ清掃などは社外研修などでも導入され、社員教育に役立っている。
「私が感銘を受けた経営者が主催する社外研修をはじめ、様々な社員教育に積極的な参加を促しています。対象は内定者から若手社員、幹部社員といったようにキャリアに応じた研修を行っています」
 当然研修費用もかさむ。例えば、昨年は全社で1,880万円の予算をかけたというから、社員一人当たり約50万円という額に上る。
こうした社員教育だけでなく、社員がイキイキと働けるように様々な制度の導入や取組にも余念がない。同社では、「経営計画書」と呼ばれる手帳を従業員全員に配布して、経営の見える化を図ると同時に能動的に仕事に取り組める環境づくりに役立てている。
手帳には「人の成長なくして、会社の成長はない」という同社の経営方針を記しているのはもちろん、事業計画や決算報告書も明記されているため、全従業員が共通の目標を持って仕事に臨めるというわけだ。
また、同社には「50回帳」という制度がある。これは親睦会、忘年会、各種スポーツ大会など社内コミュニケーションを活性化させるための各種イベントに参加したり、該当する活動を行うと50回帳にスタンプが押され、査定が上がるというもので、その対象項目の一覧も経営計画書に記載されている。
「当社が目指すべき方向に従業員全員が向かって進めるように、経営の透明化や社内コミュニケーションの活性化を図ってきました。同様に組織横断的な各種委員会を設置して、従業員が自分たちの会社という意識をもって社内改善を図っています」
久保社長が説明する各種委員会とは、環境整備委員会、教育委員会、カイゼン委員会、イベント委員会など6つの委員会で、すべての従業員はいずれかの委員会に所属して活動している。

body2-1.jpgカイゼン賞に輝いたアイデアは社内の壁に貼り出される

組織横断的な委員会活動が社内の活性化に結びつく

 委員会の一つ、カイゼン委員会では、業務改善などの提案を1か月に1回募り、その中から優れたものを「カイゼン賞」として表彰している。この改善活動は「現玉大作戦」と呼ばれ、改善策を自ら全社員の前でプレゼンし、その後の投票で、1位から5位までに報奨金が与えられる。そして1年間でもっとも多くカイゼン賞を獲得した従業員には、会社から海外旅行がプレゼントされる。
 海外旅行を獲得した営業技術部の泉仁人さんの業務は、顧客の窓口としてヒアリングを行い、顧客ニーズを踏まえて変圧器などを設計。その設計業務の改善などを提案し、栄誉に輝いた。
「1週間かけてドイツやフランスを回りましたが、初めての海外旅行だったこともあって一生忘れられない思い出になりました。そんな経験ができるのも社内制度のおかげです。当社の各種制度は、積極的に取り組めばいろいろなプレゼントがあるのが嬉しいですし、やる気につながりますね」
 そう語る泉さんには、もう一つ忘れられない思い出がある。それが内定後の研修である。冒頭で触れたトイレ清掃で公園のトイレ掃除をした時のことだ。始めは誰が使っているかもわからない公衆便所のトイレ掃除には強い抵抗感を覚えたが、徹底的に掃除をすることでどんどんきれいになると、予期せぬ充実感が湧いてきたという。
それが泉さんの仕事の原点ともなっている。つまり、「嫌だ」「大変だ」と思うことでも一生懸命取り組み、やり切ることが何よりも大切だということ。普段の仕事はもちろん、カイゼン活動や環境整備など全力で取り組む。それが成長の原動力となっているようだ。

body3-1.jpg新卒で入社した泉さん。今では中堅社員として活躍中だ

社外研修や委員会活動で新しい視点から考えるように

 「当社で働くようになって、当たり前のことに感謝の気持ちを忘れないようになりました。例えば、仕事があることや健康でいられることなど、ごく普通のことが大切に感じるようになったんですね」
と語るのは2013年に新卒入社した青木嵩汰さんだ。泉さんと同じように社外研修の体験が大きいという。もっとも印象に残っているのが鹿児島県の知覧特攻平和会館。特攻隊員の手紙や遺書を見て、当たり前の生活の大切さを痛感したと振り返る。
 また、青木さんは環境整備委員会に所属し、5S活動を精力的に行っている。月に1回環境整備点検を行ったり、本社周辺の地域の清掃を行う托鉢活動などを担当している。
「環境整備点検は職場で不要なものは捨てて、働く環境を美しく保つための活動です。自分が所属する職場の古くなった機械や物品はなかなか捨てられないもの。そこで環境整備委員会が活用していないものを廃棄するよう提案し、その部門の同意を得て捨てるというものです。この活動で各部門の方とのコミュニケーションが活性化しますし、会社全体の環境を意識するなど、視野が広くなったと感じています」
 この取組で、社員は各委員会の活動を通して会社全体の視点から物事を考えるようになるのだ。青木さんは工場で変圧器の組み立てをしながら人事部門の採用担当としても活躍している。こうした部門横断的な活動で培った全社的な視点から学生に自社の魅力を伝えている。
 最後にもうひとつ取り上げたいユニークな社内制度がある。それが「ジャンケン工場長制」である。同社で長く勤めていた工場長が退任した時に生まれた制度だが、ある程度のキャリアを経た幹部社員がジャンケンをして、負けた社員が3週間、工場長になるというものだ。
「工場長は大きな責任を負う役職ですが、経験した者にしか、その責任の重さはわからないものです。そこで複数の幹部社員に工場長を経験してもらうことで、彼ら全員がより広い視点から物事を考えるようになるし、一度大変さを経験した者は協力的になります。つまり社員の成長を促すための制度なのです」
 そう説明する久保社長。これらの各種制度は、一見すると形態や目的は違うが、最終的なゴールは社員が当事者意識をもち全員経営を実現するために不可欠な仕組みばかりなのだ。

body4-1.jpg入社していろいろな発見を経て人としても成長できたという青木さん

編集部からのメッセージ

社長の目標は、次代を担う経営者を育てること

 日昭工業は電圧を異なる電圧に変換する変圧器(トランス)を開発・製造するメーカー。素人目には変圧器ならどれも同じではと考えてしまうが、半導体装置メーカーや電車関係、データサーバーに使う変圧器など、用途によって様々な要望が発生するのだという。それら一つ一つに事細かに応じていくことで希少価値の高いオーダーメードの製品ができあがるのである。無論、これまでにないものを作り上げるのは容易ではない。要望に答える力、それが同社の信頼と言ってもいいだろう。
久保社長はこうした独自の経営戦略で、日昭工業を継承して30年間、業績を伸ばしてきた。社長になった当時の売り上げは約2億円だったが、現在は13億円まで増加し、5年後には30億円の目標を掲げている。そんな久保社長の将来の目標は、次の社長は社員に就任してもらうことだ。
「日昭工業のDNAを継承して、次代の荒波を乗り越えてくれる次期社長はできれば社員から抜擢したいですね。当社のような中小企業が大企業と戦うには、弱者の戦略と呼ばれる『ランチェスター戦略』でいかに生き抜くかが問われます。だからこそ、社員一人ひとりがもっと成長して、さらに強い少数精鋭集団になることが不可欠なのです」
 社員の成長を促す各種制度や取組、そこには将来を見越した久保社長の遠大な戦略があるのだ。

  • 社名:株式会社NISSYO
  • 設立年・創業年:設立年 1967年
  • 資本金:2,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 久保寛一
  • 従業員数:135名(内、女性従業員数60名)
  • 所在地:205-0023 東京都羽村市神明台4-5-17
  • TEL:042-578-8222
  • URL:https://www.nissyo.tokyo/
  • 採用情報:こちらからご確認ください。