<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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中央・城北地区 リアル化学株式会社

リアル化学株式会社 自由な発想を歓迎する雰囲気が 革新的な商品を生み出す

リアル化学株式会社

自由な発想を歓迎する雰囲気が 革新的な商品を生み出す

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東京カイシャハッケン伝!企業
中央・城北地区

リアル化学株式会社

自由な発想を歓迎する雰囲気が 革新的な商品を生み出す

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第一線を走り続ける老舗企業ストーリー
自由な発想を歓迎する雰囲気が革新的な商品を生み出す

美容室用のパーマ剤やヘアスタイリング剤を製造・販売するリアル化学。
戦後の焼け跡から出発した同社は、革新的なものづくりで時代を切り開いていく先駆者として、美容業界で抜群の知名度を誇っている。

世の常識を覆すものづくりで 美容業界をリード

 美容室向けのパーマ剤やヘアカラー剤、ヘアスタイリング剤を製造・販売するリアル化学の創業は1945年12月のこと。それまで薬品会社に勤めていた先代社長がその知識を生かし、北区赤羽でパーマ剤の製造・販売をスタートさせた。終戦間もない当時は原料を手に入れるのも一苦労で、週に1度は仕入先の川崎まで自転車でリヤカーを引き、一日かけて往復。苦労しながらも、「人が健康で前向きに美しく生きることのお手伝いがしたい」という思いのもと、製品の研究開発と製造・販売に励んだという。そのかいあって得意先の美容室は拡大していく。さらに、世の中が落ち着くにつれて美容室でパーマをかけたり髪を染めたりする女性も増え、売上げは順調に伸びていった。
 時代の潮流の変化にも敏感に反応していった。創業当初は加熱したコテで髪を巻く電気パーマが主流だったが、1950年代に入ると、薬剤を髪に浸透させることでウェーブやカールをつけるコールドパーマが全盛となった。同社はそれに合わせて、新たなパーマ剤を開発した。
 「当時のコールドパーマはチオグリコール酸という石油化学合成品を主剤としたパーマ剤を使うのが世界的な常識だったのですが、髪が大変傷むのが欠点でした。先代である父は、何とか髪に優しいパーマ剤が作れないかと考えたそうです」と語るのは、2代目の岩崎彰宏代表。先代が目をつけたのは、髪の成分であるアミノ酸の一種システインという成分。これをベースとしたパーマ剤の開発にその後日夜取り組んだ。
 「システインはすぐに結晶化してしまうなど扱いが難しくパーマの効きも弱い。しかも高価でした。わざわざそんなものを使って開発するなんて、などという声も多く聞かれました。」
 いわば常識外の挑戦だったわけだが、見事開発に成功。1975年、日本初のシステインパーマ剤「シスベール」を世に送り出した。髪に大きな負担をかけずに柔らかい風合いを実現するシステインパーマ剤は、あっという間に業界を席巻。以来、システイン入りパーマ剤は世界の常識となり、現在に至っているというから、その功績は推して知るべしである。
 世の常識を覆す製品作りはこれに留まらなかった。1989年に発売した「CARE TONE」の開発も画期的なものだった。それまでの染毛剤はアルカリ剤を使って髪を脱色して染料を浸透させるアルカリカラーが一般的だった。だが、髪への負担が大きいという欠点があった。そこで同社が生み出したのが、メラニンの脱色力を抑え自然な髪色を作る酸性酸化染毛剤である。これで髪への負担は大きく軽減した。ただし、これにはアレルギーというクリアしなければならない課題が残されていた。より安全なヘアカラーを目指した研究を続け、2001年には植物生まれの原料を使った「BOTANICAL COLOR」を発売。これは日本古来の染色方法「草木染め」を応用した製品で、穏やかな色合いとアレルギーを起こしにくい安全性、さらに世の自然派志向と相まって大きな話題となった。
 「社員には常々、常識にとらわれることなく、独自性の高い仕事をしていこうと話しています。そこに人や社会を思う視点を取り入れることで、そこから付加価値の高い製品が生まれますし、おのずと他社との差別化が図れるのだと思っています」(岩崎代表)
 大手メーカーも含め競争が激しい美容業界で、中小企業である同社が存在感を発揮している秘訣がここにある。

body1-1.jpg「独自性を追求するのはどの職種も同じ」と語る岩崎彰宏代表

女性ならではの感性を生かし 会社のイメージアップに貢献

 「次世代に会社を引き継ぎたい」と言う岩崎社長が「私には思い付かなかったが、いわれてみればごく当たり前のことをきちんと形にしてくれた」と喜ぶヒット商品がある。エンドユーザー向けヘア化粧品シリーズ「NOTIO」が、それだ。ハンドクリームとしても使える汎用性の広さで消費者の心を捉えた。入社10年目の太田陽子さんは、マーケティング部でその商品パッケージのデザインに携わった。
 「企画の段階から次第に形になっていく過程に携わった商品は我が子のようにかわいいですし、世の中に出たときの嬉しさは格別でした。現在もプライベートで購入し、家族と一緒に愛用しています」
 商品パッケージを決めるにあたり、太田さんがこだわったことがある。
 「商品の良さが伝わるようにというのはもちろんですが、思わず手に取りたくなり、しかも手元に置いておきたくなるおしゃれさも追求しました」
 同社は女性をターゲットにした製品を扱っているが、社員は比較的男性が多い。そのため、商品企画やパッケージ、パンフレット、HPに至るまで、男性社員の意見が色濃く反映されがちだったのだ。そこで5年前、同社の青山スタジオでスタジオ管理と事務を担当していた太田さんがマーケティング部に異動し、女性の目線を取り入れたものづくりに着手したのである。以来、太田さんは主に商品パッケージやHPのリニューアル、商品パンフレット制作を担当している。
 「私が担当する前のHPや商品パンフレットは説明文が多く、硬い印象でした。何しろ初めて携わる仕事でしたので、どうしたらいいか分からないことばかりで苦心しましたが、様々なHPや雑誌広告などを研究した結果、印象は写真で決まると確信しました。以来、できるだけ明るい写真を選んで大きく掲載し、説明文は短くシンプルにすることを心掛けています」
 太田さんが手掛けたHPは2017年夏にリニューアルオープンしたばかりだが、すでに海外から新規取引のオファーを受けるなど効果があったという。
 「良い意味でマニュアルがないですし、少人数のため仕事の範囲も広いのですが、それがやりがいに繋がっています。社内も和気あいあいとしていて、ミスも経験のうちと受け止めていただけるので、思う存分、仕事に取り組めています」
 今後はSNSを活用するなど、多様な手法を用いたPRにチャレンジしていきたいと語る太田さん。一女性として、おしゃれなものづくりに携われるのがうれしいしいと目を輝かせる。

body2-1.jpg「担当している仕事の中では、商品パッケージのデザインが一番好きです」と語る太田陽子さん

知識も技術もゼロからスタートし パーマ剤を開発

 太田さん同様、少人数ならではのやりがいを強く感じているのが4年前に入社した開発部の酒井江梨さんだ。大学では主に微生物の遺伝子組み換えの研究に励んでいたが、美容業界で働きたいと商品企画部門を持つ美容室に就職。当初はフロント業務に就いていたものの、知識や技術で美容業界に貢献したいと、同社の開発部に転職した。
 現在はパーマ剤の研究開発と、全商品の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に関わる業務を担当している。いずれの仕事も初めての経験。特にパーマ剤の研究開発は技術も知識もなく、戸惑ったという。
 「メーカーとして良い製品を作らなければならないわけですが、そもそも良い製品とはどんなものかが分かりませんでしたし、パーマ剤が何を組み合わせて作られているのかさえ知りませんでした」
 商品開発を希望して入社したからには、やるしかない。そう覚悟を決め、まずは製品を知ることからスタートしたという。
 「自社製品はもちろん、他社製品も成分を一つひとつ調べるところから始めました。パーマ剤の作り方を理解してからは、成分の配合の割合を少しずつ変え、さらにほかの成分と組み合わせたりしてサンプルを作り、ウィッグにパーマをかけてはかかり具合などを調べて、一つひとつノートに記録していきました。何百回と失敗しましたし、正直、もうこれでいいかと思ったことが何度もありましたね」
 それでも、「急がば回れ」を肝に銘じながら妥協することなく目標とする製品を作り上げられたのは、前職での経験が大きいと語る。
 「美容師さんたちがお客様のために何ができるかを真剣に考えて仕事に取り組む姿を間近で見てきました。そんな美容師さんたちに恥じない製品を送り出したいという思いが私を支えてくれました」
 さらに職場の雰囲気も後押ししてくれた。
 「私の担当は研究開発ですが、薬剤の試作品テストをしたいと伝えると忙しくても他部門の方たちが時間を作ってくれるなど、多くの方に何度も助けていただきました。研究開発は一人ではできないとつくづく実感しています」
 酒井さんが穏やかという職場の雰囲気が、同社の優れた製品作りを支えているのは間違いない。
 さらに酒井さんの力となったのが、会社外部での勉強だ。会社が用意している外部委託の研修制度もあるが、与えられた学びは身に付かないと、同社では社員が各々自分の仕事に必要なセミナーを探して受講したり学んだりといったことを推奨し、内容に応じてその費用を負担している。酒井さんは墨田区にある産業技術研究センターや取引先の原料メーカーのセミナーに出向き、技術を学んだり疑問点を相談したりしている。
 「私が勉強に行きたいと言うと、職場の方たちはどんどん行っておいでと快く送り出してくれます。職場全体に自主的に学ぶ雰囲気が定着していると感じますね」
 美容業界に貢献したいという入社時から変わらぬ思いを胸に、酒井さんはこれからも知識を蓄え、技術を磨き続ける。

body3-1.jpgオフィスに併設された明るいスタジオで、パーマ剤のかかり具合などをチェックする酒井江梨さん

編集部メモ

エンドユーザーへの訴求も目指す

 同社はエンドユーザー向けの製品も美容室や代理店経由で販売している。そのため、広告は業界誌のみに掲載してきた。しかし、エンドユーザーにももっと製品を知ってほしいと、インスタグラムを使ったキャンペーンをトライアルでスタートした。今後はSNSをはじめとした多様な広告媒体を使ったPR方法を模索し、ゆくゆくはエンドユーザーからの指名買いを目指すという。それには女性目線の商品開発やPR展開が不可欠となるため、さらに女性の力を生かしていきたいと考えているのだ。