<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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多摩地区 山王テクノアーツ株式会社

山王テクノアーツ株式会社 はがれない、色落ちしない、長持ちする、お客様のニーズに応えるラベルメーカー

山王テクノアーツ株式会社

はがれない、色落ちしない、長持ちする、お客様のニーズに応えるラベルメーカー

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東京カイシャハッケン伝!企業
多摩地区

山王テクノアーツ株式会社

はがれない、色落ちしない、長持ちする、お客様のニーズに応えるラベルメーカー

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2代目社長経営ストーリー
はがれない、色落ちしない、長持ちする、お客様のニーズに応えるラベルメーカー

 1967年創業の山王テクノアーツは、業務用ラベルの特殊印刷・加工を専門とするメーカー。同社を牽引するのは、先代社長の娘婿である田中祐社長だ。前職はSE・ITコンサルタントという、印刷業とは縁もゆかりもなかったことが功を奏して、大胆な発想で同社を躍進へと導いている。

過酷な環境に強いシールラベルで実績

 同社の事業を端的に表すキャッチコピーとしてよく使われるのが、「業務用ラベルの専門メーカー」というフレーズだ。「ラベルといわれてもピンとこない」という人は飛行機、あるいは電車の車両を包むように絵文字が書かれた、いわゆる、ラッピング広告を思い浮かべていただければ、その一端はご理解いただけよう。もっと身近な例をあげると、JR山手線電車のボディ外側のカラー帯や、電車の優先席近くに貼られている「優先席マーク」といったシールなども同社の製品ラインナップ。それにしても、あの大きなものに印刷するのは並大抵のことではない。ましてや航空機の機体や電車の車体に貼るラベルとなれば、風雨、直射日光といった環境にさらされるだけに、その過酷さに耐える強度と耐久性が求められる。そこには専門メーカーたる優れたノウハウがあり、その実績は高く評価され、幅広い業種の企業を取引先に持つ。
 2006年、創業社長の跡を継いだのが田中祐現社長である。
「社長になったとはいえ、それまでがITのコンサルタントですから、まったくの畑違い。印刷のことなんてさっぱりわからない。そんな人間が突然、指揮者として職場にやってきて、スタッフに、ああしろ! こうしろ!なんて言ったって誰が聞くものですか。ですから、まずは「僕という人間を知ってもらおう」「僕という人間に会ってよかったなと思ってもらおう」と心がけて従業員と接するように努めました。もちろん、会社にはこれまで培ってきたお客様との信頼という財産がありましたから、それをさらに強いものにして事業を発展させていきたいという野心も抱いていました」

body1-1.jpg「社内はアットホームな雰囲気で意見が言いやすい」と社員の皆さんは口々に言う。

2代目社長、リーマンショックから起死回生

 未知の世界に飛び込み、不安を抱えながらも自分なりに理解を深め、業界の輪郭が見え始めた田中社長にさらなる試練が覆いかぶさる。リーマンショックである。売上はガクンと落ち込み、いつまでたっても出口が見えない。八方塞がりの田中社長の悩みは深かった。
「決算書を見ても、このまま従業員を維持するにはギリギリのところにきていました。しかも景気回復のきざしもないんですから絶望的ですよね。かといって、ただ指をくわえて見ているわけにいきませんから、できることからやっていこうとして決断したのが本社の移転でした」
 中野にあった本社を撤退し、八王子工場に本社機能を移したのだ。この時代、都心の本社機能を郊外に移転させた企業は少なくない。
「都心にアクセスの良い中野本社を根城に活動を展開していた営業部隊にとっては大痛手。他部署からも反対意見が相次ぎました」
非難を浴びせられながらも、根気よく説得した。他の道を探れば、人員削減、つまりリストラしかなかったのである。それだけはなんとしても避けたかったと田中社長は振り返る。
 しかし、その苦渋の決断が思わぬ効能をもたらすこととなった。営業部門と印刷部門が同じオフィス内にいることで、コミュニケーションが劇的に変化。客先からの要望を即、印刷部門に確認し、返答できるというスピーディーな対応が可能となったのだ。
「クイックレスポンスでありがたいとお客様からも好反応でした。本社を撤退するなんて、さらに売り上げに影響するのではないかという危惧がありましたが、その後、売り上げも徐々に回復し、窮地を脱することができました」
この一件は、2代目社長の存在感を社内に知らしめることにもなり、社員の信頼を得ることになった。
 その後、田中社長はITコンサルタントの経験を生かして、社内の業務効率化、経営改革に乗り出す。「コンピューターにできることは、コンピューターにやらせよう」という方針で社内をネットワーク化。それまで部署ごとに独自のやり方をしていた事務処理を社内一気通貫で利用できるシステムにしたことで無駄な業務が軽減、残業の縮減にも大きく貢献した。
 さらには、展示会への出展など、マーケティングにも乗り出し、積極的に自社の商品や技術力をアピール。その結果、エアコンの室外機のラベルや公園の遊具に貼るキャラクターシールなど、今までなかった引き合いも増加。エアコンにしろ公園の遊具にしろ、雨風にさらされるものだけに、確かに同社の技術力の見せどころといえる。そうした手つかずの市場は、まだまだあると田中社長は睨む。

body2-1.jpg前職を生かして、同社を牽引する田中祐社長

入社8年目 営業部主任齋藤さんのやりがいストーリー

 「電車の中に貼ってある案内表示や警告表示などをたくさん手がけていますから、自分の手がけた商品がたくさんの人の目に触れる、そして、知人・友人に説明するときにも理解してもらいやすい仕事内容だというところに魅力を感じました」
と語る営業部主任の齋藤文大さんは、2008年に入社した転職組。営業マンとして取引先を飛び回る毎日というが、その表情に疲労の色はなく、溌剌と自らの仕事を語る。
「ラベルの素材だけでも何万種類とありますし、それにどんな粘着剤を組み合わせるかとなると、星の数ほどということになります。さらに、シールを貼る相手が、プラスチックなのか、金属なのか、温度変化が激しいところなのか、水にぬれる場所なのかどうかによって相性やもちの加減は変わってきます。そのあたりをすべて考え合わせて、お客様の要望にあった提案をするのが営業の醍醐味ですね」
 顧客の悩みを解消するのも営業マンの仕事の一つ。「他で頼んだものはすぐにはがれちゃって、困っちゃってるんだよね」という悩みをぶつけられるのは日常茶飯事。それだけ、シールは貼る場所によって相性があるということだが、ベテランの営業マンでも、その理由がはっきりしないことも多いという。ここからが営業マンの腕の見せどころ。信頼を勝ち取る絶好の機会となるのだ。 「現場を見せていただくと、直射日光が当たる場所だったり、水がかかる場所だったり、強風にさらされる場所だったりと、さまざまで、剥がれてしまう原因が一目瞭然になるんですよね。そこで、その場の環境に合わせた素材を提案することもできますし、また、いろいろな原因が考えられる場合には、サンプルを数種類持って行って現場に貼って、耐久実験を行うこともあります」
 と、お客様の要望に応えることが一番という姿勢で営業に臨む斎藤さん。「今回のラベル、すごく丈夫で助かってるよ。最初から山王さんにお願いしておけばよかった」。そんな言葉をもらうのが、何よりの営業冥利という。

body3-1.jpg新人教育にも携わる営業部主任の齋藤文大さん。「後輩には、バランス感覚を大事にするように指導しています」

入社3年目 印刷オペレーター小山さんの成長ストーリー

 製造部製造1課の小山莉奈さんは、入社3年目。シルクスクリーン印刷と呼ばれる特殊印刷の機械を操作するオペレーターだ。学生時代は、日本美術を専攻。ものづくりに興味があり、就職活動は製造業を中心に周ったという。
「当社の説明会で工場見学をしたときに、みなさん明るい雰囲気で仕事をしている姿が印象的でした。印刷工場は、ボタンを一つ押すとほとんどオートメーションで製品が仕上がるものと想像していたのですが、実際はいろいろな人たちの手を介して製品が仕上がってくプロセスを見て、ものづくりに携わりたいという気持ちが一層強くなりました」
 1年目は、先輩にアドバイスを受けながら印刷機を操作して、印刷のイロハをマスター。2年目は、さまざまな素材への印刷を経験し、インクの調合などを学んでいったという。
「ベストな仕上がりにするためには、インクは緩すぎてもいけないし、固すぎてもいけません。さまざまな材料を扱いますから、どんな素材にどのぐらいの粘度のインクが最適なのかといった知識をずいぶん蓄積しました」
 自信たっぷりに語る小山さんだが、もちろん、うまくいかないこともある。それでも、試行錯誤の末に解決できたときの達成感はなにものにも代えがたいという。
 3年目の今は、「仕事の全体像が見えてきて、どういう順番で仕事を回せば効率的かも考えて仕事に取り組め
るようになったと思う」と笑顔をのぞかせる。
「先輩たちは、ほんとに親切で、聞くとなんでも親切にアドバイスしてくれます。ものづくりや職人の世界というと、毎日先輩たちに怒鳴られているイメージがあるかもしれませんが、今までも一度も怒られたことはありません」
 同社の温かい社風の中で、小山さんの印刷オペレーターとしての自信とプライドは確実に成長していると感じた。

body4-1.jpg「マグネットへの印刷など、経験したことがない印刷にもチャレンジしたい」と目を輝かせる小山さん

編集部からのメッセージ

何万種類の材料の中から最適な商品を提案するノウハウ

 シールラベルと一口にいっても、紙、布、プラスチック、金属など、多彩な素材がある。シールラベルというからには、裏には粘着シールがつく。粘着剤の種類もコストや強度別に多彩なバリエーションがあり、素材と粘着剤の組み合わせとなると数10万種類を超えるともいわれる。さらに、色落ちしにくいインクや耐久性を保つための印刷方法なども考え合わせた上で、お客様の要望にあわせた最適なマッチングを提案できるのが同社の強み。

社員教育の充実で若手社員の成長をサポート

 同社では、年間のべ30日間の社外研修プログラムへの参加を奨励している。「そうした外部の研修で新しい考え方や視点を学ぶことで、それまで正しいと思っていた仕事のやり方を自主的に工夫するようになります。社員の成長スピードがぐっと速くなると実感していますから、教育投資は惜しみません」(田中社長)


  • 社名:山王テクノアーツ株式会社
  • 設立年・創業年:設立年 1967年
  • 資本金:4,500万円
  • 代表者名:代表取締役社長 田中祐
  • 従業員数:72名(内、女性従業員数36名)
  • 所在地:192-0032 東京都八王子市石川町737
  • TEL:042-646-1971
  • URL:http://www.sanno-ta.jp/