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多摩地区 スタック電子株式会社

スタック電子株式会社 衛星通信・放送中継など幅広い社会インフラを独自の先端技術で支える

スタック電子株式会社

衛星通信・放送中継など幅広い社会インフラを独自の先端技術で支える

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多摩地区

スタック電子株式会社

衛星通信・放送中継など幅広い社会インフラを独自の先端技術で支える

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技術開発ストーリー
衛星通信・放送中継など幅広い社会インフラを独自の先端技術で支える

 研究開発型ビジネスにこだわり、独自の技術を磨き続けてきたスタック電子。その技術は、放送中継システムや衛星通信などの社会インフラを支えている。

3つの技術を組み合わせて幅広い分野に製品を提供

 1971年に大手企業を脱サラした若き技術者4名が結束し、アパート2間から事業をスタートさせたスタック電子。同軸コネクタの開発を皮切りに、大企業では手がけないニッチな分野に狙いを定めて、独創的アイデアで事業を推進してきた。市場が求めるものを送り出し続けてきた同社にとって、「オシロスコープ」(電圧・周波数の計測器)用の「プローブ」(検査用端子)開発は、草創期にあってその名を業界に知らしめるに十分であった。このプローブの性能は瞬く間に市場を席巻。創業10年目にして国内のシェア100%となり、世界シェアにおいても70%を誇ることになった。
 「オシロスコープ用のプローブによって当社の名前は業界では知られることになり、事業も軌道に乗りました。これを機会に『アナログ』『高周波』『光』という3つのコア技術を武器に高周波機器の専門メーカーとして歩んできました。現在その用途はいっそうの広がりをみせ、放送中継システムや地下街再送信システム、通信衛星システム、列車無線システムなどに利用されるなど、まさに社会インフラの一端を支えているといっても過言ではない状況です」
 自社技術の独自性をそう説明するのは、スタック電子の渡辺勝博代表取締役社長(取材当時)。「アナログ」「高周波」「光」の技術を柔軟に組み合わせることで様々な機器開発を成功させてきた。
 そしてもう一つ、同社の事業には大きな特徴がある。それは「下請けにはならない」という創業の理念である。スタック電子の製品の多くは、大手企業をはじめ大学、国の研究機関と共同開発して生み出されている。大手企業ができない分野に絞って、共同研究開発を行い、幅広い企業に製品を供給している。
 例えば、放送局にも同社の製品が直接納入され、正月の風物詩である元日の全国実業団駅伝の中継システムにも利用されている。全国の家庭のテレビで、手に汗握る熱戦を見ることができるのも同社の製品があるからだ。

body1-1.jpg独創的な技術開発で「下請けにはならない」という経営を貫く渡辺勝博社長(取材当時)

会社は社員のものという 経営が優れた技術を生む

 スタック電子では3つの技術領域と同じように、3つの事業キーワードを形成している。それが「Basics」(ベーシックス)「Solutions」(ソリューションズ)「Innovation」(イノベーション)である。
 Basics事業は、同社が得意としてきた分野で高周波と光の伝送系に不可欠な関連機器や部品などを開発。Solutions事業は顧客の課題を解決する事業として放送・マルチメディア伝送・無線通信などの分野で高いパフォーマンスを発揮できるシステムの提供。そしてInnovation事業は大学や企業とパートナーシップを組んで最先端技術の開発に取り組む事業領域となる。つまり、Basics とSolutions 事業で収益を上げて安定経営を行うとともに、未来の事業の種となるInnovationにも積極的に取り組んでいるというわけだ。
 こうした同社の優れた技術開発を支えているのが、社員たちの高いモチベーションである。主体的に自らがテーマを探し、他社には真似ができない製品の開発にチャレンジしている。そんなスタック電子の社員の働き方は創業以来の伝統だという。
 「社員の70%はスタック電子の株主です。これは創業者の考え方を反映したもので、会社は同族のものでもなければ経営陣のものでもない。社員全員が『自分の会社』という意識を持って働いてもらいたいという思いから打ち出した施策なのです。ですから社員のモチベーションは高く、主体的に働く文化が根づいています」
 そう笑顔で語る渡辺社長(取材当時)。こうした創業者が残した企業文化は社外でも大きな評価を受けている。その代表的な事例が平成27年度の東京商工会議所主催の第13回「勇気ある経営大賞」の大賞受賞だろう。優れた技術力と会社は社員のものという創業者の考えを受け継いで経営してきた実績が評価されたのだ。

body2-1.jpg頻繁に研究開発のための活発な打ち合わせが行われている本社オフィス

妥協を許さない姿勢が技術者の成長につながる

 技術開発課の上原政義さんは、入社11年目の中堅社員。放送中継システムの高周波信号を光信号に切り替える「ROFリンク」や高周波信号を増幅する「増幅器」、所定の周波数帯の信号は通して不要な電波を通さない「高周波フィルタ」などの幅広い機器の開発に携わってきた。
 「2011年に完全移行された地デジ放送の中継システムの増幅器開発にも携わりました。山の上に立つ電波塔の中に組み込まれる機器ですが、東京スカイツリーから送信された高周波信号を受け、それを増幅させて周辺地域に送信するための装置です。当社の増幅機器は高い評価を受けていて、地デジへの移行時期にはかなりの数を開発・生産しました」
 と胸を張る上原さんのモットーは、どんな開発でも工夫を凝らし改善していくこと。発注先が既存製品で構わないと言うケースでも必ず改善を加える。もっとも、時には高い目標を設定したが故に失敗することもあるという。
 「でもその失敗が技術者としての引き出しの多さにつながり、違う機器開発の際に役立つのです。ですから常に妥協することなく挑戦する姿勢は貫きたいですね」
 そう語る上原さんの今後の課題は、ソフトウエアの知見を深めること。これまではハードウエアを中心に開発したが、これからは制御動作を担うソフトなど、新たな分野に挑戦するという。「それが次代を担う若い技術者である私の使命」と上原さん、スタック電子のモットーである「独創的技術開発」を自らが体現して、後輩たちの水先案内を務める姿勢を示す。

body3-1.jpg今後はソフトウエアの知識を身につけて機器開発に挑むという上原政義さん

社員間の距離が近いから幅広い知識を学べる

 学生時代にスタック電子を会社見学したことが入社のきっかけと話す岸本侑大さんは、2015年に入社した若手技術者。会社見学で目の当たりにした高い技術力と社員の温かい人柄に惹かれて入社を決意したという。
 岸本さんの所属は技術開発部。上原さんと同じ衛星通信や放送中継の高周波信号の増幅器やROFリンクなどの開発に携わりながら、Basics分野の同軸切替機のリニューアルも担当する。入社2年目で取引先からのヒアリング、設計、試作品づくり、検証などすべての開発工程を一人で仕切った。
「初めての経験ですから難題の連続でしたが、約半年でなんとか完成させることができました。わからないことは上司や先輩に聞きながらトライアンドエラーを繰り返して完成にこぎつけたという感じです。もちろん、完成した時の達成感は何事にも代え難いものでしたね」
 初めてのゼロからの製品開発で大きな自信をつけた岸本さん。そんな彼が感じるスタック電子の魅力は社員間の距離が近いことだという。そもそも社員数が少ない分、親密さは醸成しやすいというのがある。それに加え、他分野の開発に携わる社員とデスクが近いというオフィス環境が故に、幅広い技術や知識が自然に耳に届き、それが技術者としての成長を促すことにもつながっているというのである。
 「確かにたくさんの情報が飛び交うありがたい環境です。2年目なので課題はたくさんあります。とくにスキル不足と感じているのが伝達力ですね。自分の考えやアイデアを論理立てて伝えるスキルを備えたいと考えています。そうすることでお客様を始めとした周りの人にもっと頼られる技術者になれるはずですから」
 そう目を輝かせながら話す岸本さん。技術者としてのキャリアはスタートしたばかりだが、恵まれた環境の中で明確な目標を定めて一歩ずつ前進する。

body4-1.jpg入社2年目で機器開発を任された岸本侑大さんは若手のホープ的な存在

編集部メモ

外部との連携が独創的開発につながる


 「Basics」「Solutions」「Innovation」という3つの事業キーワードに分類して、これらをバランス良く保ちながら事業展開を図るスタック電子。その中でも未来の事業につながるのがInnovation事業である。同事業分野では積極的に大手企業、大学、国の研究機関と連携しながら様々な製品を開発してきた。その中にはJAXAも含まれており、2015年8月に打ち上げられた宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機の打ち上げにはスタック電子の機器も使用されている。
 「国の公的研究機関と連携することで、補助金受給など研究開発の資金的なメリットや、中小企業ではなかなか入手できない将来の技術予測や技術動向などの情報も得る機会にもなります。こうした会社としてのメリットもありますし、社員も外部の技術者と共同開発することで刺激を受けますし、物事の考え方を学ぶ機会にもなるので今後も継続して継続していくつもりです」(渡辺社長 取材当時)


  • 社名:スタック電子株式会社
  • 設立年・創業年:設立年 1971年
  • 資本金:7,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 新川 雅之
  • 従業員数:73名(内、女性従業員数30名)
  • 所在地:196-0021 東京都昭島市武蔵野3-9-18
  • TEL:042-544-6211
  • URL:http://stack-elec.co.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください