中央・城北地区 多賀建設株式会社

多賀建設株式会社
一人ひとりが人生の物語を作ってほしい。女性チーム「多賀建設・ガールズ・ストーリー(TGS)」誕生

多賀建設株式会社
一人ひとりが人生の物語を作ってほしい。女性チーム「多賀建設・ガールズ・ストーリー(TGS)」誕生

業界の常識に挑戦 建設現場で女性活躍ストーリー
一人ひとりが人生の物語を作ってほしい。女性チーム「多賀建設・ガールズ・ストーリー(TGS)」誕生
桜色を基調とした女性専用ユニホームをはじめ、保安帽、名刺など、女性が建設現場で活躍できる環境作りに積極的に取り組んでいる多賀建設。オトコの職場というイメージが強い業界にあって、同社の女性社員たちは、確実にその存在価値を発揮している。
女性の積極的な雇用・活躍を促進
東京都及び東京23区の自治体から、道路・上水道・下水道・河川などの工事施工とその管理を請け負う多賀建設は、創業61年の老舗建設業者。ここまでの道のりは決して平坦ではなかったが、持てる技術力と積み上げてきた信頼でその歴史を刻んできた。ところが、慢性的な人手不足に加えて、近年では少子高齢化という大問題が押し寄せ、人材確保が大命題となっていた。その解消に向け、同社が積極的に展開したのが女性の起用である。これに伴い、それまで男性社員が圧倒的割合を占めていた職場環境は徹底的に見直された。
目を引くのが桜色を基調とした女性専用ユニホームと保安帽。これに合わせて名刺も桜色という念の入れよう。もちろん、見た目だけの改革ではない。都内に点在する五つの現場事務所では、部屋の間取りを吟味し、更衣室や休憩室を確保。トイレの入り口の向きなどにも配慮しているという。たばこの煙が苦手という意見にも耳を傾け、分煙を勧めるとともに、空気清浄機、脱臭剤や芳香剤なども備えた。
さらに、女性が働きやすい環境整備の一つとしてキャンピングカーが導入された。近隣の建設現場などで見かけたことがあるという人もいるだろうが、現場には仮設トイレが設置されることが多い。これがまず、不衛生だという女性の意見が多く挙がった。しかも、設置場所が人通りの多いところだったりすると入りづらいなどの不満の声もあった。中にはわざわざ現場事務所まで戻ってトイレを利用しているという声も挙がった。キャンピングカーはまさに女性社員のトイレ問題を解消する秘策としての導入だったのである。もちろん、トイレとして機能するだけではない。休憩もできれば、ちょっとした事務作業もできる。車の屋根にソーラーを設置し、蓄電池(バッテリー)を備えたことで、町なかでエンジンを停止しても電気や水が使用できる仕様になっている。

女性が働きやすい職場作りを徹底
改善してほしいと申し出があった場合には、3日以内に環境を整えるよう各事務所内で徹底するなど、一人ひとりの声に耳を傾け、スピーディーに改善する態勢も整えている。
女性同士の情報交換の場として、ホテル・レストランなどで定期的に女子会も開催している。費用は全額会社負担。その場で出た意見や要望は働きやすい職場改善に役立てるべく、参加メンバーが役員に報告する仕組みを取っている。特にハラスメント(セクハラ・パワハラ)に関しては、重要事項として対応している。また、男性社員の意識を高めるべく、専門家を招き、ハラスメントに関連する勉強会も開催している。

入社前の不安は一掃。安心して仕事に取り組める
「建設業界というと男性社会というイメージがあったので、正直、入社前はうまくコミュニケーションがとれるだろうか、仕事になじめるだろうかという不安もありました」と話すのは、現在、総務部に所属する入社5年目の相馬萌(めぐみ)さん。しかし、入社してみるとすぐさまその不安は一掃されたという。
「女性がどうやったら働きやすくなるかということを会社が考えてくれるので、安心して仕事に取り組めます」と語る。桜色に統一されたユニホームと保安帽も気に入っているという。
「まず、工事現場に女性がいること自体が珍しいですし、それも全身ピンクのユニホームで行くのですから、関連する業者の方にもすぐに覚えてもらえます。しかも、工事現場は様々な危険が伴いますから、目立つユニホームは安全確保にも役立っています」
事務職として入社した相馬さんだが、業務の幅を広げられるように、これまで様々な資格取得に取り組んできた。玉掛け、小型移動式クレーン、高所作業車、小型車両系建設機械、ローラーの運転や酸素欠乏危険作業等の資格を取得。
「実際にこれらの重機を操作するわけではありませんが、資格の勉強をすることで、工事の内容やどんな危険があるのかなど、現場を把握できるようになります」
現在、相馬さんは総務部で契約書類の作成や各現場とのやり取り、経理業務を担当している。さらなるスキルアップのために、簿記などの資格取得を目指しているという。
また、2年前に会社独自の産休・育休制度が設けられ、より一層女性が安心して働ける環境が整ったと喜ぶ。
「さっそく制度を活用して、産休・育休を取得した先輩がいます。産休・育休取得後は、職場に復帰されて仕事を続けています。そんな先輩のように、自分も将来、結婚して子供を産んだとしても、長く働き続けられる環境があるのはとても恵まれていると思います」

スキルアップを全面的に応援。女性の活躍の場は広がっている
「現在は、渋谷の下水道工事の現場事務所で現場事務を担当しています」と語るのは、入社2年目の前田杏里さんだ。現場事務は、事務所内の電話対応や書類作成、工事現場の写真撮影や工事日程を周辺地域に周知するPR活動など、工事に伴う補佐的な業務が主な仕事。事務所を出て、工事の現場に長くいることもある。そんなときにキャンピングカーが活躍すると話す。
「仮設トイレを使うのはちょっと抵抗がありますし、公園の公衆トイレやコンビニでトイレを借りるのも面倒。キャンピングカーのトイレはきれいですし、更衣室にもなりますし、休憩室としても利用でき、とても重宝しています」
現場で交わされている会話の中には専門用語も多く、まだまだ分からないことも多いという前田さん。下水道工事の作業工程や安全管理についての知識を身に付けるために、下水道管理技術の資格取得を目指している。
「講習会にも行かせてもらえますし、勉強時間も与えてくれます。それほど忙しくない時期には『明日は休んで勉強して良いよ』と声掛けしてくれるなど、ステップアップするために会社がサポートしてくれるのは心強いですね」
同社には、現場経験を重ね、難関資格を取得して現場代理人となった女性社員もいる。
「現場代理人というのは、分かりやすく言えば、契約の交渉から工事の管理・運営までの全てを統括する現場監督。みんなから頼られる存在ですから、憧れですし尊敬しています。女性であっても頑張ればそんなふうになることもできるのですから、わたしもそれを目指したいです」
建設現場に立つ女性はまだまだ少数派だが、それが当たり前の光景になる日も近いかもしれない。

編集部メモ
平成28年度東京ライフ・ワーク・バランス認定企業に選ばれる
男性が圧倒的多数を占めるとされる建設業界にあって、同社は女性雇用を積極的に進めている。その企業方針が「職場における女性の活躍促進部門」において認められ、平成28年度東京ライフ・ワーク・バランス認定企業に選ばれた。工事現場への理解を深めるために、講習会などへの参加や資格取得を積極的に促すとともに、産休・育休制度を整備。女性社員が増えることで、これまで男性社員が行っていた現場作業の分担が可能となり、業務の円滑化も図られている。