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城南地区 テクダイヤ株式会社

テクダイヤ株式会社 常識に捉われない発想と旺盛なチャレンジ精神がイノベーションを起こす

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常識に捉われない発想と旺盛なチャレンジ精神がイノベーションを起こす

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常識に捉われない発想と旺盛なチャレンジ精神がイノベーションを起こす

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社員の成長ストーリー
常識に捉われない発想と旺盛なチャレンジ精神がイノベーションを起こす

 新しい加工技術を開発して、スマホから青色LEDや再生医療、宇宙開発などの幅広い分野で貢献しているテクダイヤ。数々のイノベーションを起こしている背景には、若手社員に仕事をどんどん任せる企業文化がある。そんな同社の働き方や仕事に対する姿勢を探った。

チャレンジすることで未来を切り開く術を知った新人時代

 「製品を売るのではなく、技術を売る」そんな営業スタイルを貫くテクダイヤ営業部第2・第3営業グループリーダーの鈴木博英さん。同社はメーカーではあるが、家電や自動車などの完成品を作っているわけではない。鈴木さんをはじめ営業部員が販売するのは技術。例えば、信号機や照明器具で使われるLEDの研磨プロセスで欠かせない技術も同社が開発した技術だ。そこで求められるのは、これまでにない技術の創出。営業はそこにたどり着くために、顧客と目標を共有するなど強固なパートナーシップを築き、話し合いを繰り返し、そのニーズに応える新しい技術開発の道筋を作るのが役割。そのチャレンジ精神こそがイノベーションの源流となっているのである。
 取引先のニーズを把握した上で技術開発を提案する鈴木さんだが、実は理系出身ではない。文学部出身という典型的な文系人間。ところが入社直後に任された仕事は、金属加工部門の技術開発だった。エンジニアとして1年半、基礎知識を身につけ、試行錯誤の末に開発したのが、穴あけ加工プロセスでの技術。
「チャレンジしたのは、これまで熟練の技術者に頼るところが大きかった穴あけ加工のプログラミング化です。専門知識に精通していないというのが功を奏したのでしょう。常識に捉われないアイデアをひねり出せました」
と笑いながら当時を振り返る鈴木さんだが、技術開発に成功してほっとする間もなく、社長から新たなミッションが言い渡された。自らが開発した技術を使った自社製造ラインの立ち上げだった。技術開発も初めてなら製造ライン立ち上げも未知の仕事。しかし、右も左もわからないところから技術開発に成功した鈴木さんに怖いものはなかった。フィリピンのセブ島にある生産工場に単身乗り込み、ラインの立ち上げに没頭。製品の出荷・納品までのプロセス構築も手がけ1年を費やした。
 入社からの2年半があっという間に過ぎ、次なるミッションが与えられた。同製品の販売営業だった。
「新しい製品ですから市場を開拓しなければならないわけです。つまり、技術開発から量産化するための製造プロセス体制の確立、そしてその製品を販売というすべての工程を経験することになったわけです。入社当初からハードルは高かったのですが、その分、大きな財産になりました。基本的には好き勝手にやらせていただいている感じですね。当社では、知識やキャリアに関係なく、どんなことにもチャレンジするのが当たり前。それが成長の大きな原動力となっているというのが実感ですかね」
 そう語る鈴木さん、入社9年目の今は金属加工部門に加えて半導体製造装置部門のリーダーとして活躍している。その表情には入社当初からハードルの高い仕事をやり遂げてきた自信がみなぎっていた。

body1-1.jpg新しい技術の開発は社員や取引先との連携があるから可能になる

「こうしましょう。」がイノベーションをつくる

 同社での鈴木さんのようなキャリアは決して珍しくないという。文系や理系などの専攻分野やキャリアに捉われることなく、個性を見極めたミッションが下される。その多くが難題だからこそ主体的に仕事に取り組まざるを得なくなり、やがてモチベーションとなるのだ。ここで醸成される主体性こそ、同社の企業スローガン「こうしましょう。」という仕事姿勢に帰結しているのである。
「当社はさまざまな加工技術を開発して取引先に提案しています。その技術を利用してお客様は多様な製品をつくっているわけですが、下請業という認識は一切ありません。提案業であると自負しています。これまでも、お客様とパートナーシップを築いて協力しながら世の中にない技術を開発してきましたし、今後もその姿勢がぶれることはありません。それを可能にしているのは、社員一人ひとりがお客様や社内の意見に耳を傾けながら、能動的に『こうしましょう。』という姿勢を貫いているからです」
そう語る小山真吾代表取締役。同社の「こうしましょう。」とは、上司や顧客の要望に合わせた90点狙いの提案ではある程度の評価は得られても、そこ止まり。それではイノベーションは生まれない。上司や顧客の常識を覆す130点狙いがオンリーワンやナンバーワンの技術になるというのだ。ただし、時には60点という結果もある。リスクを承知しながら130点を目指すのが「こうしましょう。」であり、テクダイヤ流なのだ。
 「世の中にないものを創る」という同社の組織体もユニークだ。一般的な企業は、会長・社長を頂点に、専務、常務、部長、課長、係長、課員というヒエラルキーで組織されている。ところが、テクダイヤは会長・社長が頂点ではあるが、その下は、マネージャー、リーダー、一般社員の3階層と至ってシンプルでフラットな構成。
「ある社員が優れた技術を開発したとしましょう。それが私のところに来るまでに、何人もの管理職を通過すれば、決定のスピードも遅ければ、開発者の顔も見えにくいですから、イメージが乏しくなり、ややもするといい企画にも関わらず、稟議が通らないということだって起こり得るわけです。フラットな組織体であれば、そんな事態は招きませんよね。もっといえば当社は逆ピラミッドに近い。つまり一般社員をリーダーやマネジャーが支えるという組織です」
 そう説明する小山社長の持論は、「若者が考えている本気が社会にイノベーションを起こす」、「イノベーションはいつもマイノリティからしか起こらない」というイノベーション論。そんな姿勢で技術開発に臨まなければグローバルな世界で勝ち抜いていけないと主張する。

body2-1.jpg「若者の本気がイノベーションを生む」という小山社長

「手柄は部下に、責任は自分」というマネジメント

 小山社長の声は確実に現場に浸透している。現在、2分野のリーダーとして活躍する鈴木さんも10年も満たないキャリアにも関わらず、いくつかのイノベーションを起こしてきた。実は、前段で例にあげたLEDも鈴木さんが手がけたプロジェクト。世紀の大発明として日本人研究者が3人もノーベル賞を受賞した青色LEDは今でこそ至るところで利用されているが、LED製造の大手メーカーである日亜化学工業の実用化に向けていくつものクリアしなければならない問題を抱えていた。その一つに数えられる研磨プロセスに鈴木さんが提案した技術が使われている。さらに、人工肝臓を成形するディスペンサーノズルの開発にも携わり、再生医療にも貢献した。
 いうまでもなく、これらの仕事を鈴木さん一人ですべてやってきたわけではない。社内のエンジニア、パートナーシップで協働する取引先、そして鈴木さんを支える部下たちと一緒にものづくりに打ち込んできた結果なのである。
 部下の羽田野里恵さんもその一人。リーダーの鈴木さんと共に、日々新しい技術開発や顧客開発に取り組んでいる。
「鈴木さんと一緒に仕事をしていて感じるのは、視野が広いことや的確な判断力などです。何より嬉しいのは私の意見も尊重してくれることです。男女や年齢に関係なく意見をいえる環境を作っていただいているのは本当にありがたいですね。自分らしくいられるので自然と仕事に対するモチベーションが上がります」
 若手の声は、チームワークの良さを物語り、それがテクダイヤのイノベーションを生み出す源泉なのかもしれない。同社で多く見かけるのが、羽田野さんをはじめとした女性社員と外国人社員。さまざまな価値観や考え方をもつ社員が在籍することで、ダイバーシティ(多様性)が生まれ、新しい発想の技術が生まれているのは間違いない。
 「私は会社から好き勝手をやらしてもらいましたから、チームのメンバーにも同じように自由にやってもらっています。その方が面白い結果になりやすいと考えていますから」
 そう語る鈴木さんが、一つだけ決めていることがある。それは「手柄は部下に、責任は自分」という仕事に対する姿勢だ。
 鈴木さんのこの仕事哲学、実は小山社長も一にするところ。「会社を経営する際に決めたこと、それが手柄は部下に、結果責任は自分が取るということ。そして社員には会社を大いに活用して人生を謳歌してもらいたい。それが私の目指す会社像です」。
数々の新技術で業界にイノベーションを起こし、社会を便利に快適にしてきたテクダイヤ。その底辺にはぶれない仕事に対するマインドが貫かれていることが、2人の言動からよく理解できる。

body3-1.jpg鈴木さんと新技術開発に取り組む羽田野さん

編集部からのメッセージ

「人」が技術や事業をつくり、それを大きく育てる会社


 元々はレコード針の卸業としてスタートしたテクダイヤ。世の中がレコードからCDへと移行するのを機に、レコード針事業からの脱却を図り、レコード針の素材であったダイヤモンド加工を手掛け成長を遂げてきた。
「今ではダイヤモンド加工から7分野まで事業を拡大しましたが、そのプロセスは技術が新たな技術を生んだというよりは、新たに入社した社員が保有する技術によって誕生した事業分野なのです。そういう意味で当社の成長は人によってもたらされたといえるでしょう」
という小山社長が語るように、人が事業拡大を図ってきたテクダイヤ。
 こうした歴史がキャリアや年齢に関係なく、社員は自由に意見やアイデアを提案して、新しい技術開発に挑むという企業文化を作り上げたのであろう。同社の新しい技術は、NASAの宇宙開発からスマホ開発など、幅広い分野で貢献している。実は、自由で風通しがいい社風は、オフィス風景にも現れている。小山社長の前職場が広告代理店だったこともあり、ポップでエッジの立ったデザインのイラストなどがオフィスのあちこちにディスプレイされている。こんなところにも同社の自由で遊び心あふれる社風が見てとれる。

edit-1.jpg定期的にファミリーデーを開催。子どもたちも集まって日ごろのパパの仕事を疑似体験するedit-2.jpgプライベートではサーフィンや空手に打ち込む鈴木さん。サーフィンは全国大会に出場するなどプロ並みの腕前