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中央・城北地区 鉄道機器株式会社

鉄道機器株式会社 100年以上にわたって日本の鉄道を支え続けてきた分岐器専業メーカー

鉄道機器株式会社

100年以上にわたって日本の鉄道を支え続けてきた分岐器専業メーカー

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中央・城北地区

鉄道機器株式会社

100年以上にわたって日本の鉄道を支え続けてきた分岐器専業メーカー

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技術継承ストーリー
100年以上にわたって日本の鉄道を支え続けてきた分岐器専業メーカー

 鉄道用分岐器を設計・製造・販売する鉄道機器は、正確かつ安心・安全と評価の高い日本の鉄道を100年以上にわたって支え続けてきた専業メーカーである。

分岐器を手掛ける鉄道機器の歴史

 鉄道機器が製造する分岐器とは、列車の進行方向を変えるための様々な種類を有するレール型装置。電車に乗っていると駅近くでガタゴトと電車が揺らぐのは、その分岐器を通過する瞬間だ。言うまでもなく、この分岐器は鉄道の安全を担う重要な装置。それを100年以上にもわたって設計・製造・販売してきたという歴史は、同社の信頼度をそのまま表しているといって良いだろう。現在のJRが分割民営化する前は日本国有鉄道と呼ばれていたが、それよりもはるか以前、明治後期から大正時代にかけては鉄道院という中央官庁が国の鉄道事業を担っていた。その時代から分岐器を作り続けてきたという歴史は確かに重い。
 「1901年に国内の重工業を発展させるために八幡製鐵所が操業し、それまで輸入に頼っていた鉄道レールの製造が自国でできるようになりました。それをきっかけに鉄道関連機器も国内で生産するようになり、1914年に当社の前身である月島電機工作所が創業しました」と、同社の道筋を語るのは吉田晃社長。鉄道院の指定工場として創業し、鉄道省、日本国有鉄道、JRと変遷をたどるなかでも、同社は変わらず全ての組織と直接取引をしてきた。現在では全国各都市の交通局と私鉄各社を含めれば50社を超える顧客がいるという。
 「運転保安上、重要な部分を製造しているので高品質な製品が要求されます。長年にわたって取引していただけているのは、鉄道会社様から直接ご指導いただきそのご要望に技術力をもって応え続けてきたからだと自負しています」

body1-1.jpg同社の軌跡を語る吉田晃社長

技術力の秘訣

 「高水準の要望に応えられるのは先輩方が研鑽してきた歴史があるからなんです」と話すのは、設計課の佐藤克彦課長だ。一口に分岐器といっても、一つの軌道を2方向に分ける片開き分岐器や、一つの軌道を2か所のポイントで3方向に分ける複分岐器など、種類は様々。加えて鉄道会社によってレールの大きさや形が異なるケースがある上に、敷設する環境は現場によってまちまちなので、それに合わせた設計をしなくてはならない。特に列車を収容する車庫付近は分岐器が密集しているケースが少なくなく、ときには0.5ミリ単位での精度が求められることもあるという。そうした難易度の高い設計は、高い技術が必要なのはもちろん、数々の経験が大きくものを言う。そこで頼りになるのが、歴代の社員が残してきた設計実務書。
 「設計実務書というのは、いわば設計のための指南書です。例えば『こういうケースはこの計算式で寸法を出しましょう』とか、図面の引き方などが書かれています。それこそ数十年前に書かれたものもありますが、それが思わぬ発見をもたらしてくれることもあるんです」
 加えて、難しいケースを部内で共有するなど日々の勉強が肝心だ。
 「昔は電卓を使って寸法を割り出し、手書きで図面を引いていましたが、現在はCADを使っているので計算しなくても線が引けてしまうこともあります。しかし、それだとなぜ、その寸法になったのか、仕組みを理解できません。ですから、CADで図面を引いた後も確かめ算のように自分で電卓を使って計算し、答えが合っているか確認するようにしています」
 理系出身の佐藤課長にとっては、そうした細かな計算をしていき、やがて分岐器の全貌が見えてくる楽しさがあるという。
 「新商品の開発も積極的に行っています。軌道保守の手間が少ない製品が欲しいという要望が多いので、省メンテナンスの製品を開発。例えば、まくらぎから移動しにくい構造のものや、軌道保守業者の方が点検しやすいように持ち手が付いている製品などを開発してきました」
 こうした新商品の開発によって関係業者の役に立てることも励みになっているのはもとより、さらにもう一つのやりがいがあると話す。
 「自分が設計した分岐器はどこに敷設されているのか分かるので、子どもに『あれはお父さんが設計したんだよ』と教えられます。分岐器は一度敷設したら何年も使われるものなので、形に残る仕事というのが醍醐味です」

body2-1.jpg「鉄道会社の皆さんから頼られるよう、頑張っています」と話す佐藤克彦さん

手厚い研修制度

 同社には現場の最前線で活躍する若手が少なくない。中途入社3年目、営業課の古谷翔一郎さんもその一人。前職は商社で働いていたが、高い専門性をもって自社製品を扱いたいと考え転職を決意。入社後は手厚い研修のおかげで不安なく現場で出られたという。
 「研修の一環で富山工場に行き、分岐器の組立てや検査といった製造の仕事をしました。前職の商社でも鉄鋼関係の商品を扱っていましたが、分岐器は初めてでした。それでも製造工程を知ることで自分が扱う製品への理解が深まりました」
 営業とはいえ、この研修は2か月から半年ほど行うという。ほかにも技術職の場合、知見を広げる目的で顧客である鉄道会社や研究機関に出向することもあるという。富山工場での研修を終えた後も、すぐに一人で営業をするのではなく、先輩社員との同行営業でノウハウを掴んでいったと振り返る。
 「分からないことがあれば気兼ねなく相談できる雰囲気があります。家族的な社風なので仕事がしやすく、日々、充実しています。分岐器は奥深く勉強しがいのあるものなので、これからも理解を深めていきたいと思っています」
 通勤や通学で使う電車の下にも同社の分岐器が使われているかもしれない。普段意識することはないが、安心して電車に乗れるのは一人ひとりのたゆまぬ努力の成果といえるだろう。

body3-1.jpg「研修のおかげで不安なく現場に出られました」と話す古谷翔一郎さん

編集部メモ

チームワークを大事に

 仕事をする上で何よりも大事なのは、チームワークだと吉田社長は語る。
 「たまたま私が社長をしているだけで、営業も設計も配送も全ての部署が大切な役割。私がやるべきことは仕事が円滑に進むよう各部署の連携を高めること。そのために、何か困ったことがあればすぐに相談できるような風通しの良い雰囲気を作るように心掛けています」
 社長自らが生み出すこうした社風が、高い技術力を育て社員の成長を支えているのだろう。

edit-1.jpg設計や営業の垣根なく気軽にコミュニケーションが取れる職場というedit-2.jpg同社では海外展開も視野に入れている。古谷さんも「チャンスがあれば携わりたい」と話す
  • 社名:鉄道機器株式会社
  • 設立年・創業年:創立年 1914年
  • 資本金:7,500万円
  • 代表者名:代表取締役社長 吉田 晃
  • 従業員数:112名(内、女性従業員数15名)
  • 所在地:103-0021 東京都中央区日本橋本石町4-6-7
  • TEL:03-3271-5341
  • URL:http://www.tetsudokiki.co.jp