城東地区 株式会社都市環境エンジニアリング
株式会社都市環境エンジニアリング
目先の利益にとらわれず理念を貫く。農業に進出する廃棄物処理業者
株式会社都市環境エンジニアリング
目先の利益にとらわれず理念を貫く。農業に進出する廃棄物処理業者
新事業ストーリー
目先の利益にとらわれず理念を貫く。農業に進出する廃棄物処理業者
都市環境エンジニアリングはオフィス、ホテル、商業施設などから出るゴミの収集、運搬、処理、さらにリサイクルまで手掛ける廃棄物処理のスペシャリスト。新たに農業を通じて環境問題に挑む姿に迫った。
大切なのは信頼関係を築くこと
家庭から出るゴミは区市町村が定めたルールに従ってゴミ捨て場に置いておけば、ゴミ収集車が回収してくれる。一方で会社や商店、工場やホテルなどのいわゆる事業者から排出される廃棄物は、廃棄物処理法によって「自らの責任において適正に処理しなければならない」と定められている。つまり、各々の事業者がどうにかして自社の廃棄物を処理施設に持っていかなければならないということになっているのだが、一般企業が大量に出る廃棄物を管理し、処理施設に運搬するなどというのは、物理的にも無理ならコスト的にもとても対応できない。そこで出番となるのが都市環境エンジニアリングのような廃棄物処理業者だ。
「事業者から出た廃棄物を処理施設に運搬し、処理・リサイクルするというのが弊社の主な業務です。顧客は大小様々ですし、扱う量も廃棄物の内容もそれぞれで異なります。また、大型のオフィスビルや複合施設の中には、廃棄物を集積する専用保管エリアが設けられていますから、そこに現場事務所を設け、常駐スタッフが廃棄物の整理や計量をする管理業務も行っています」
と説明するのは業務部業務課に所属する岩木淳さん。顧客からの問い合わせ対応や各種書類の整理業務を担当している。この仕事の難しさは、同業他社との差別化が図りにくいことといい、そこではサービスの品質の確保や確固たる信頼関係が不可欠という。
「信頼関係が醸成されると業務が円滑になるのはもちろん、新規のお客様を紹介していただくこともあったりと、報われることが多いのも魅力ですね」
と岩木さん。恵まれているのはクライアントだけでなく、なんでも相談できる先輩も多く、人間関係で悩んだこともないとやりがいいっぱいの様子。今後は複合施設などの大型案件に一から携わりたいと意欲を燃やす。
環境問題に取り組む
同社はその名前にも冠しているように環境分野にも進出している。その一つが京浜島工場で2013年から行っている「雑がみリサイクルサービス」だ。伊藤憲男社長(取材当時)が立ち上げのきっかけを話す。
「お客様との信頼関係を築くには現場がきちんとしていなければなりません。ですから、毎月、弊社のスタッフが常駐している現場事務所を見て廻っているうちに、リサイクルに回される古紙とは別の普通のゴミの中に、メモ用紙やコピー用紙、お菓子の空き箱など、リサイクルできそうな紙がずいぶん含まれていることを発見したんです。これを何とか再利用したいと5、6年は思案していましたね」
思案の末に辿り着いたのが光学式選別機だった。これを利用すれば、リサイクルに不向きな濡れた紙やビニールが付着している紙など、雑多に集められた紙の中からリサイクルできるものだけを選別できるのだという。
「自治体から事業許可が中々おりませんでしたし、コスト面で反対されたこともありました。それでも昨今声高に叫ばれている資源、エネルギー問題の解決の一助となればと推進してきました」
この光学式選別機であれば、顧客は分別方法を変えずとも廃棄物の排出量の削減が可能。学校などの紙の使用量が多い施設をターゲットにしていきたいと伊藤社長(取材当時)は話す。
環境問題に取り組む事業はこれに留まらない。今年、4月にできたアグリ事業部もその一つだ。
アグリ事業部を先導している加藤直樹さんは業務内容をこう話す。
「朝霞で借りた2500㎡ほどの農地で野菜を作っています。やることは畑を耕して畝を立てて種をまいてといった農作業そのもの。それも昔ながらのスタイルを方針にしていますから基本的に機械を使いません。今日も鍬で畝を作ってきましたよ」
今はトマトとナスの収穫時期でそろそろオクラが採れると嬉しそうに語る加藤さんの前の肩書は総務部長。採用や就業規則の整備といったデスクワークをこなしていた身からアグリ事業部に転身。今は朝霞農場支店の支店長という肩書で日々鍬を振るっているというから驚かされる。
「体力的には毎日へとへとですが、土をいじって芽が出てきてそれが大きくなっていくのを見る喜びはかけがえのないものがあります。それにできたものを収穫体験に来た親子が楽しそうに収穫してくれる。アグリ事業部を任されて良かったと思える瞬間です」
加藤さんは今年68歳になる。普通なら定年退職してもおかしくない年齡だが、「ここにきてわくわくする仕事ができています」と真っ黒に日焼けした顔で話す。同社の環境事業は社員のやりがいも醸成しているのだ。
若い力を後押しする10の社内行動規範
同社には10の社内行動規範がある。良く本を読め、何事も自分で考えろ、情熱を持て、といった中に、誰にもへつらうな、何事も正直であれというものがある。
「上司の顔色ばかり伺って仕事をしても楽しくありません。若い社員に『仕事、おもろいか?』とたまに聞くんです。どうせやるなら面白いほうがいい。そのためには、へつらわず、自分が考えてこれだと思ったものは曲げずに推し進めていく。その方が断然面白いですよね」(伊藤社長 取材当時)
トップが「へつらうな、正直であれ」と若い力を後押ししてくれる同社は、これからも斬新なプロジェクトを生み出していくに違いない。
編集部メモ
都心で行う養蜂事業
アグリ事業部が手掛けるビジネスの一つに養蜂事業がある。いわゆる天然由来の蜂を扱う事業だが、場所はなんと八重洲ブックセンターの屋上。そこに養蜂箱を5群設置し、貯蜜された巣枠を遠心分離機にかけて採蜜する。ハイシーズンには一週間で10kgほどの蜂蜜になるといい、採れた蜂蜜は八重洲ハニーという商品名で販売している。ミツバチの生態を学ぶミツバチ教室といったイベントも開き、人と人との交流も生まれているという。
同社のユニークな事業は養蜂に限らない。長野県の太陽光発電所の下草刈り事業というのもある。これは太陽光を阻害する下草処理を業務委託で受注しているというもので、下草を刈るのは人ではなくなんと羊。羊が草を食べることで下草処理になるというからまさに自然環境保全に寄与したプロジェクトである。
一連のアグリ事業の中の真骨頂は野菜などの農作物の生産。農作物の生産といえば個人農家が主流で、その個人が法人化するというケースはあっても、他分野の会社が一事業として農業に取り組むというのは先進的。事業発足の理由を伊藤社長(取材当時)はこう話す。
「今から約50年前のカロリーベースでの食料自給率は70%ほどありました。それが今や39%。この問題にも微力ながら取り組みたいと考え、目先の利益にとらわれずアグリ事業部を発足したんです」(伊藤社長 取材当時)
- 社名:株式会社都市環境エンジニアリング
- 設立年・創業年:設立年 1992年
- 資本金:5,000万円
- 代表者名:代表取締役社長 新川 研
- 従業員数:270名(内、女性従業員数9名)
- 所在地:135-0042 東京都江東区木場5-6-35
- TEL:03-5639-0740
- URL:http://www.tkeng.co.jp
- 採用情報:マイナビを参照してください