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中央・城北地区 東明興業株式会社

東明興業株式会社 美しい環境づくりをめざし、徹底した「見える化」で廃棄物のリサイクル率97%を実現

東明興業株式会社

美しい環境づくりをめざし、徹底した「見える化」で廃棄物のリサイクル率97%を実現

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美しい環境づくりをめざし、徹底した「見える化」で廃棄物のリサイクル率97%を実現

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「環境」創出ストーリー
美しい環境づくりをめざし、徹底した「見える化」で廃棄物のリサイクル率97%を実現

 長年にわたって産業廃棄物のリサイクル化に取り組んできた東明興業。同業界のイメージを変えるという高い志と、徹底した業務改善の軌跡を追う。

徹底した「見える化」でリサイクル率97%を実現

 快適な住宅環境が整い、幹線道路に高速道路といったインフラも充実。街中には、魅力的な商品が並ぶ商業施設などが当たり前となった現代社会。私たちの生活は豊かになるばかりだが、その一方で建物の建て替えや道路補修などによって、がれきや木くずなどの産業廃棄物が大量に排出され、環境は悪化の一途をたどり社会問題となっているのは周知の通り。そんな環境問題の解決を図る上で、産業廃棄物リサイクル業者の使命は計り知れないほどに重要になっている。そんな中で、産業廃棄物の約97%という驚くほどのリサイクルに成功しているのが東明興業である。
 同社が設立されたのは1976年。高度経済成長時代の建設ラッシュという時代背景の中で事業は拡大するが、大きな転機を迎えたのは1989年のことだ。劣悪な作業環境や環境への負荷を改善するために、埼玉県所沢市に中間処理施設を建設。混合廃棄物を分別できる、当時としては最新の設備を投入した。これで作業環境は大きく改善された。
 「そこから産業廃棄物のリサイクルへの取組が始まりました。さらに建設リサイクル法の制定などを経て、設備の改良と共に建設現場から端材を分別する仕組みや廃棄物の運搬方法など、すべての工程を見直して改善を図りました。また不法投棄などの問題もクローズアップされ、業界は正直良いイメージを持たれていなかった。それでは業界のステイタスも上がりませんし、働き手もいなくなってしまいます。そんなイメージを払しょくするには業界全体が変わらないと、という危機感から組合活動を通して働きかけました」
 と語るのは同社の伊勢文雄社長。東明興業が業界に先駆けて取り組んだのは、徹底した「見える化」と「情報開示」だったという。がれき類、紙くず、木くず、ガラス陶磁器といった品目ごとに、どれだけリサイクルされているのかを把握できる仕組みを構築。そして毎月、実績表としてまとめてホームページ上などに情報開示している。
 そんな環境に対する取組が評価され、今ではスーパーゼネコンや大手ハウスメーカーなどの産業廃棄物を引き受けるだけでなく、工事現場での廃材の分別支援活動を行うことでリサイクルしやすい仕組みづくりを提案している。

body1-1.jpg自らも所沢工場の工場長として業務改善に取り組んだ伊勢文雄社長

新工場建設と業務改善で社員の誇りが生まれる

 産業廃棄物業界の常識を変えて、環境負荷の軽減に貢献してきた東明興業。所沢中間処理工場の建設、その後の工場内の業務改善をしてリサイクル率は大きく向上したが、実はもうひとつ大きく改善できたことがある。それは社員が仕事に誇りを持って取り組めるようになったことである。
 「中間処理工場が完成したのを記念に社員の誕生会を開きました。その後、きれいになった工場に家族を呼んでお祭りをして、さらに地域住民の方や取り引き先を招いてのイベント開催に発展していったんですね。産業廃棄物工場で働くのは、3Kの世界と考えられていましたが、多くの方を招待できる環境になって社員も誇りが芽生えてきました。それが何よりも嬉しい変化でした」
 と当時を振り返りながら笑顔で話す伊勢社長。その後、2000年には業界に先駆けて、所沢中間処理工場は環境マネジメントシステムのISO14001及び品質マネジメントシステムISO9001も取得した。今では年4回工場内の廃棄物残量をゼロにする取組を行っている。こうした取組によって、安全性が向上したのはもちろん、コストも下がるという相乗効果も生んだ。
 東明興業の社員が働く環境への取組は所沢工場に留まらない。現在は、本社屋にはタイ式マッサージ店をつくり、社員は格安の料金で利用できる。さらに屋上にはゴルフの練習所があり、仕事で疲れた身体をリフレッシュしている。まさに社会や社員の働く環境づくりに力を注いできた東明興業の結晶ともいえる。

body2-1.jpg常に社員が働く環境に目を配って改善を図る経営陣

知識ゼロから業務改善と社内環境の改善に奮闘

 伊勢社長を補佐する菅田多栄美専務は営業事務からスタートした。取引先への請求書の管理などの事務方として経験を積みながら、持ち前の向上心で社内のあらゆる業務に精通するようになった。
 そんな菅田専務の大きな転機となったのが、OHS18001の取得に際し、責任者として指揮したことだった。この資格は労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格で、同社がすでに取得しているISO9001とISO140001を統合したもので、安全な職場の構築、コストの削減、モラルの向上、ステークホルダーからの信頼に寄与できるとされている。しかし、その取得は大変な労力を要したと菅田専務は述懐する。
 「ISOの基礎がないところからのスタートでしたので、要求事項が何を指しているのかもわからない状態でした。社員にくまなくヒアリングして業務内容を把握すると同時に、申請方法などを勉強して、やっと取得に漕ぎ着けました。その時の達成感は今も忘れることはできませんし、猛勉強したことで当社の各部門の業務に精通できたと感じています」
 ちなみに東明興業がOHS18001を取得したのは2003年のことだった。以来、菅田専務は業務課長、社内監査役と歴任して2015年に専務に昇格。いまも社内環境の整備に積極的に取り組み、所沢工場では粉塵防止のためのミストシャワーを導入し、また分煙のための喫煙ルームの設置など、社員が働く環境をも改善してきた。さらに女性社員の良き相談役として社内を活気づける。

body3-1.jpg責任者としてOHS18001取得という大役を果たした菅田多栄美専務

若手にも仕事を任せる社風が成長の源になる

 入社7年目という若手ながら業務課長を務める小島健司さん。12名の部下が在籍する業務課をまとめるリーダーとして日々、仕事に打ち込む。小島さんは父親が土木関係の仕事をしていた関係もあって工業高校の土木科に進学。その後、土木に密接な関わりのある環境に興味を持ち、大学では環境システムを学んだ。在学中に東明興業のインターンシップに参加して、1週間ほど工場内の現場で働いた。
 「社員の方に仕事を丁寧に教えていただくなど、楽しい雰囲気の職場でした。そんな社風に魅力を感じて入社を決意。入社後、約8カ月は現場で働いて業務課に配属になりました。現在は、各工場の管理をはじめ、ISOで制定したマニュアルが的確に実践されているかなどの社内監査を主に行っています」
 そう語る小島さんが仕事で配慮するのは、人の意見をよく聞くこと。業務課には小島さんよりもキャリアの長い女性職員も多く、時にはアドバイスを受けながら業務を遂行する。そんな小島さんが感じる東明興業の魅力は、若手にも権限委譲をして責任ある仕事を任せてくれるという点。さらに経営陣と社員、あるいは社員同士の距離が近いのも東明興業の強みだと付け加える。
 「経営陣は、廃棄物を運送するドライバーや工場内で働く社員たちと直接コミュニケーションを取りながら改善すべき点は迅速に対応しています。そんな細やかな配慮とスピーディな対応は見ていて勉強になります」
 目標とする経営陣の背中を見ながら、マネジメント業務に携わる小島さんの表情は明るい。

body4-1.jpg若手社員ながら業務課長として社員をけん引する小島健司さん

編集部メモ

徹底した管理で廃棄物のリサイクル化を実現

 先進的な取組でリサイクルを実践してきた東明興業。それを成し得たのは業務改善の見直しを重ねてきた結果。言うまでもなく、その労力は並大抵ではなかったという。それを象徴するのが、工事現場に設置される何十種類もの回収容器である。これで端材などを細かく分別でき、現場の作業効率の向上が図れるというわけだ。また廃棄物を運搬する自社車両も完全管理する。GPSによるリアルタイムの位置情報を一元管理し、ドライブレコーダーによって運転状況もすべて記録。こうした徹底した管理システムで廃棄物が「どこに」「いつ」「どれだけ」運ばれたのかを把握。これも効率化の一環で、突き詰めるとゼネコン支援につながっていくのである。

edit-1.jpg所沢工場のみなさん

業界の職場環境改善や採用活動にも貢献

 東明興業では産業廃棄物業界のイメージ向上に役立てばと、これまでの業務改善で蓄積されたノウハウを同業他社にも積極的に提供している。その一環で行われているのが、業界組合の各委員会で開催する職場環境改善や従業員の安全啓発セミナーへの情報提供である。さらに個別相談にも応じるなどして、業界の環境や安全の向上に寄与し、これが業界内外から高く評価されている。また、他社と協働しながら若者の雇用対策として組合専用のホームページや合同説明会などを企画している。まさに業界の水先案内の役割を果たすフロンティア企業といえよう。