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多摩地区 東成エレクトロビーム株式会社

東成エレクトロビーム株式会社 あくなき挑戦を続け、電子ビーム・レーザー加工技術でトップを走る

東成エレクトロビーム株式会社

あくなき挑戦を続け、電子ビーム・レーザー加工技術でトップを走る

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多摩地区

東成エレクトロビーム株式会社

あくなき挑戦を続け、電子ビーム・レーザー加工技術でトップを走る

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業界のパイオニアストーリー
あくなき挑戦を続け、電子ビーム・レーザー加工技術でトップを走る

 電子ビーム、レーザー加工の分野で非凡な活躍を見せる東成エレクトロビーム株式会社。「はやぶさ2」にも使われている溶接技術は類なき精密さで、業界のトップを走る。そういった優れた技術を支える社員のやる気を引き出し、熱意に応える同社の魅力を探った。

他では実現できない高精度な加工を可能にする技術

 東成エレクトロビームは、電子ビームやレーザーによって溶接や切断をするなどの加工技術で業界内外で一目置かれる存在。とりわけ、他の手段では不可能な、材質の異なる金属同士の溶接や、正確無比な穴あけなど、高精度な仕上がりが求められる技術は高く評価され、「はやぶさ2」の製造プロジェクトにも参加。小惑星のサンプル採取用の装置部品の溶接を手がけ、注目の的となった。
 「小惑星のサンプルを採取するときに、金属板を射出して地表にクレーターを形成する仕組みになっていて、その装置の溶接を依頼されました。通常であれば、材料同士をくっつけて離れなくするのですが、このときは更に強度面で全域にわたり均一かつ高い気密性が宇宙空間において長期間維持される溶接という難問が課されました」
そこで求められたのは、0.01mm単位の位置決め制御が品質を左右するという超高度な技術。他では絶対に真似できないと上野邦香社長は胸を張る。
 同社の技術信頼度は非常に高く、電子顕微鏡に欠かせない電子銃という部品の溶接も手がける。寸分のズレも許さない加工を実現し、43ピコ(1ピコは1兆分の1メートル)という倍率までの拡大に成功した。これは世界最高の性能で、蟻の目もつぶさに観察できるほどの高精度という。
 大手メーカーの中には、同社と同じマシンを導入し電子ビーム溶接を試みるところもあるが、扱う技術者の腕が求められるだけに、同じ精度ではなかなか仕上げられないでいるという。そこには、同社が誇る熟練の技術者の加工技術が必要なのである。

body1-1.jpg若手への期待と会社の将来を語る上野社長

加工技術を継承する職人の意地とハードルの高い仕事

JOB事業部電子ビーム課の指田達也課長は、同社の要である電子ビームを扱う技術者。「加工する部品はプロジェクトごとに形状・材質が異なりますから、作業方法は毎回変わります。装置の選定や加工パラメーターの設定など、マニュアルがない中で設計図通りに仕上げるには、自分で考える力が必要です」と電子ビーム加工の難しさを説明する。電子ビーム課に配属された新入社員は、5年間くらいは先輩社員の指示を受けながらノウハウを学ぶというが、それでもその段階では基礎が身についた程度。その後も必要に応じて資料を紐解き、先輩にアドバイスをもらうなどしながら、外部の加工学会にも参加して技術を磨いていく。それでも、装置メーカーからリリースされる制御ソフトの改修や、より大きな部品を加工する技術は日進月歩。文字通り、飽くなき探求になるが、常に新しいことにチャレンジして、自分の腕を磨きたい人にとっては最高の環境だと指田課長は後進に期待を寄せる。
同社には、他の企業では実現できなかった部品を何とか完成させたいと駆け込んでくるクライアントも少なくない。
「うちでできなければ、もうどうしようもないという、いわば最後の砦ですよね。できるかどうかは分からなくとも、やってみるしかないといった挑戦しがいのある仕事は多いですね」
技術者はとかくできないとは言えない性分と指田課長は意地を見せる。無論、一人だけではとても太刀打ちできない難度の仕事も舞い込む。それでも、社内一丸となることでクリアした例は枚挙にいとまがなく、日々違う仕事に挑み続ける、刺激的な職場だと胸を張る。
「今後は、作業の効率化を進めてコストを下げ、より多くの仕事を受注したいですね」
と目標を語る指田課長の目は、やりがいに輝いていた。

body2-1.jpg「毎日が挑戦の連続です」(指田課長)

加工技術を継承する職人の意地とハードルの高い仕事

 経営企画部経営企画課の山口李恵さんは入社10年目の中堅社員の一人。
「入社してから2年ほどは、新しい技術を提案する研究開発課で、先輩の仕事を見て覚えるという毎日でした。気軽に質問ができる風通しのよさがあるので、基本を身につけるにはうってつけの環境といえるのではないでしょうか。その後は、部品の洗浄や加工、生産管理の部門で知識と技術を身につけ、今は、新しい生産管理システムを導入するプロジェクトを進めています」
 ソフトウェアに特別詳しいわけでもなかったという山口さんだが、プロジェクトリーダーを自ら買って出る積極性を発揮。その立候補に上野社長も、山口さんならばと逆指名したという。
「展示会に足繁く通っているというのを聞いてましたし、ベンダーとの打ち合わせにも熱心で、この熱意があればとリーダーに指名しました」
晴れてプロジェクトリーダーとなった山口さん、まず手がけたのが新システムの導入だった。
「現状の生産管理システムは、必要なときに一部の人しかチェックしないような体制ですが、新しいシステムを導入することで、全社的に情報を共有できるようになり、確認の手間が省けることで作業効率も上がります」
と、その意図を説明する。難しい仕事でも意欲を見せれば応えてくれる、技術者のやる気と好奇心を満たす環境が社員のモチベーションアップにつながっているのだ。

body3-1.jpg自分のスキルを磨いて、後輩にも伝えていきたいです

若手への期待と、電子ビーム・レーザー加工の今後

「電子ビーム・レーザー加工の技術的なことはマニュアル化できないので、後輩指導がとても難しいんですよね。やって見せて、やらせてみての繰り返しで、まずは面白みを教え、自発的に動くように誘導することが大事になります。学ぶ側も言われたことだけをやっていたのでは、新しい仕事には対応できません」
と上野社長。外部セミナーなどの機会も設けており、必要と思われる社員に参加を勧めることはあるが、参加を強制することはない。資格取得に関しても同様で、同社では資格試験の受験費用を事前に負担することはない。資格試験に受かった社員が自己申告して、受験費用を後で受け取れる制度になっているのだ。これは資格取得を強制するのではなく、あくまでも社員の自主性に任せるという姿勢の表れ以外のなにものでもない。
「当社では、金属表面の樹脂や錆などをレーザーで除去する装置など、さまざまな製品を開発しています。今後は、医療分野の製品も手がけ、さらに幅広い分野で電子ビーム・レーザー加工を広めていきたいですね」
と上野社長は展望を語る。また、同業他社とも、争うのではなく協力して、電子ビーム・レーザー加工という技術をいっそう広めていきたいと抱負を語る。自社の利益だけにこだわらない姿勢は、業界のリーディングカンパニーならでは。頼もしいリーダーの存在する業界は、今後も発展を続けるに違いない。

body4-1.jpg技術的な課題を気軽に話し合える現場

編集部からのメッセージ

社員が自主的に動くための取り組み

 公式の社員交流は、新入社員歓迎会と忘年会のみというが、社員たちが自発的に集ってバス釣りや話題のカフェに行くなどの同好会が活発だという。参加を強制することのない集まりはざっくばらんそのもので、それが職場の風通しを良くしているといえる。

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クライアントとの距離が近い環境

 中小企業の魅力として、打ち合わせなどの段階からクライアントと近い距離で話せ、要望や熱意を感じとれるというのがある。同社は特にそれが顕著で、作業者が部品の加工をしている後ろで、クライアントが作業を真剣に見つめていることもしばしばだという。プレッシャーがかかる反面、成功したときの達成感は、他のなにものにも代え難いと多くの社員が口にする。その達成感の根っこには自主性が横たわっている、そんな気にさせる活力が同社には漂っている。

  • 社名:東成エレクトロビーム株式会社
  • 設立年・創業年:設立年1977年
  • 資本金:8,500万円
  • 代表者名:代表取締役社長 上野邦香
  • 従業員数:61名(内、女性従業員数13名)
  • 所在地:190-1203 東京都西多摩郡瑞穂町高根651-6
  • TEL:042-556-0611
  • URL:http://www.tosei.co.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください