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多摩地区 株式会社内野製作所

株式会社内野製作所 働きやすい明るく清潔な工場で、独自技術による高品質な自動車部品をつくる

株式会社内野製作所

働きやすい明るく清潔な工場で、独自技術による高品質な自動車部品をつくる

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多摩地区

株式会社内野製作所

働きやすい明るく清潔な工場で、独自技術による高品質な自動車部品をつくる

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会社の発展ストーリー
働きやすい明るく清潔な工場で、独自技術による高品質な自動車部品をつくる

 内野製作所の技術を駆使した部品は、我が国の自動車産業を支えているといっても過言ではない。それを裏付けるのが、同社と自動車各メーカーとの戦後間もない頃からの付き合いという歴史である。2011年に竣工された工場は、清潔で働きやすいと社員からの評判も高い。充実した環境と独自技術について話を聞いた。

高い信頼を勝ち取った加工技術と歴史、社長が語る思い

 内野製作所は、自動車のエンジンやミッションなどに使われる歯車(ギア)を製造するメーカー。国内の自動車、二輪車メーカーのほとんどと取引があるというから、その技術力の高さは推して知るべし。既成の部品作りも手がけるが、同社の真骨頂は、シビアな精度が求められる試作開発部品。試作開発といえば、研究開発品。すなわち、設計図はあってもその形はイメージでしかない。それを鉄や銅などの材料を削って作り出す。1ミクロンの誤差も許されない。同社はそこで絶大な信頼を得てきた。
 「昭和初期の創業当時は繊維織機の量産歯車加工を手がけていました。その技術が自動車の部品加工にも通用すると、先代の父が自動車メーカーとの取引を始めました。それで平成10年に私が社長に就任してから、F-1の車にも使用されている、弊社にしかできない加工技術を武器に取引先を増やし、企業規模を5倍に伸ばしました」と語る内野徳昭社長。海外の最新加工用マシンの導入にも積極的で、それを扱える技術職の育成にも余念がないという。
 実は、内野社長自慢のマシンを同業他社も導入している。しかし、同じ精度で部品がつくれるわけがない。扱う技術者の腕に差があり、同社ほどの精度は実現できないのだと内野社長は自信をのぞかせる。同社には、海外の新しいマシンを導入したときには、本国からエンジニアを招き、扱い方を徹底して社員に教え込む制度が整っているのだ。

body1-1.jpg企業の成長は社員あってこそと語る内野社長

現場の先輩社員と外部の講習会で若手を育成

 高い技術力を維持するためには、若手の育成は欠かせない。製造部の田中琳菜さんは入社2年目のホープ。鉄や銅などの材料を削り出す旋盤加工を担当している。ものづくりの仕事がしたいと、高校の実習でつくった真鍮製の豆ジャッキを手に同社を訪ね、面接に臨んだという。「工場見学をしたとき、自然光を取り入れた場内が清潔で明るく感じ、作業をしている人たちにも活気があって、ここで働きたいと思いました」と語る田中さん。入社すると部品製作から梱包、製品の品質検査などの工程を先輩社員に教わりながら、作業の全体像の理解に努めた。その後、希望通り、高校で学んできた旋盤加工に就いたが、先輩の熟練技に驚かされるばかりの毎日。はじめは先輩に事細かに教わり、ワザを磨くが、ある程度の所までの技術を身につけたら、あとは自分で考えて仕上げなければならない。月に5,6千点ほどの部品をつくる同社では、そのほとんどが新製品試作用の部品。つまり、毎度異なる形状の部品を削り出すことになる。前例のないものをつくるためには、その都度教わっていたのではとても務まらない。もちろん、要所要所でアドバイスをもらうこともあるが、基本的には自分で創意工夫して新しい部品を削り出す。旋盤加工は、研磨や熱処理など全ての作業の始まりとなるもので、ここでの作業が滞ると全体の工程にも影響が出てしまう責任重大な部門。材料を削る刃の選択や、機械の数値の設定など、今は資料を見たり先輩に尋ねるなどして対応しているが、ゆくゆくは自分で見極められるようになり、会社の看板技術者になりたいと田中さんは意気込む。
 そんな若手を支えるのは、先輩の技術者だけに留まらない。外部の研修にも積極的に参加できる環境を整え、技術修得をサポートする。
技術を前面に押し出す会社では技術研修ばかりに力を注ぎがちだが、同社ではビジネスマナーなどの研修にも積極的に取り組む。社会人としてのマナーを身につけ、人間力を鍛えることで、取引先の人と会ったときも、会社を代表して意見を発せられる素養を身につけるためと、その狙いは大きな所に据えている。

body2-1.jpg「おばあちゃんになっても、ものづくりの世界で活躍したいですね」(田中さん)

研修や社員旅行などを通して、風通しのいい職場を実現

「年齢や部署間の垣根を越えて、気軽に意見を言えますね。社長にも直接相談できるほどで、書類もスムーズに処理できます」と風通しのよさを語るのは、事務・経理を担当する村井さん。村井さんがかつて担当していた製造事務は、現場に設計図を渡したり、クライアントからの問い合わせ窓口にもなり、技術的なことを理解していなければ務まらない。文系出身の村井さん、技術的な知識を身につけようにも一朝一夕にいくわけもない。そこで、外部研修のマナー、コミュニケーション講座を受講して、問い合わせに即答できなくても、角のたたない保留の仕方などを学んだ。その場は一旦しのげるが、問い合わせに答えなければならないという使命は残っている。技術に精通していない村井さんは教えを乞う立場。現場の技術者から話を聞き出すには、普段からのコミュニケーションが不可欠。しかし、セクションも年齢も違う先輩社員たちとの接点はなかなか見つからない。そんな村井さんの助けとなったのが研修制度だった。「他部門と合同のチームワークに関する泊まり込みの研修で多くの知り合いができました。以降、現場の方と廊下ですれ違うときにプライベートなことも気軽に話せるような関係になりました」と別の角度でも研修を評価する。また、村井さんは旅費会社負担の社員旅行の企画係も務め、これまでグアムやマカオ観光に出かけた。効果は抜群で、普段、会社では見せない顔を見せる人が続出で、大いに親睦が図れ、職場での会話をスムーズにしているという。

社員のことを第一に考え、働きやすい環境と制度に心を砕く

 社員の技術力の向上、意見を述べやすい環境づくりと同様、内野社長が重視するのが、働きやすい環境と制度の充実化である。同社は八王子市の緑豊かな郊外にあり、駅からは距離がある。そこで、朝・晩に送迎バスを用意し、通勤を助ける。また、社内にはトレーニングルームが整えられ、ロッカールーム、シャワーまで備わっている。車移動で運動不足になりがちな社員が、昼休みや就業後に汗を流し、さらに、全国展開するスポーツクラブにも入会。社員は思い思いの施設を利用しているという。
その居心地の良さを象徴するのが70歳を過ぎた今も尚、後進育成の名目で在籍する社員の存在である。いうまでもなく、居心地が良いだけで在職するわけではない。高い技術があってのことでもあれば、会社がそれを必要とするからである。これこそ社員に愛される企業であることの証といえよう。
 社員全体の一体感を出すためには、年長者や中途採用の技術者にも、コミュニケーション研修を課すことがある。古くから技術の世界で生きてきた社員の場合、ともすると自分の仕事だけに集中すればよいと、周りを省みることが少なくなる。研修受講で、劇的に改善することはなくとも、若手の育成やチームでの動きなどを意識するきっかけになればという狙いがそこにはある。
 また、毎年3~8人ほどの新卒を採用しており、将来を担う人材の育成にも余念はない。
 「技術は日進月歩ですから、新製品の開発サイクルは今後ますます短くなっていくでしょう。そこで、弊社のように技術力があって小回りがきく企業はより重宝されるでしょう。若い人には独自の技術を身につけてもらって、材料を削り出して1から加工し、自分にしかできない仕事を成す達成感をぜひ味わってもらいたいですね」と内野社長は今後の展望と、若手への期待を語った。

body4-1.jpg夏恒例のBBQを囲む社員たちの顔はどれも笑顔

編集部からのメッセージ

働きやすい環境を整備することに心を砕く


 緑豊かな八王子市郊外に位置する内野製作所の工場。事務所も食堂も壁の一面が採光に優れたガラス張り。そこから燦々と自然光が降りそそぎ、それだけでリフレッシュ感に満たされる。社内のトレーニングジムをはじめ、工場周辺ではバドミントンなど、社員たちが思い思いに過ごすゆったりしたスペースが横たわり、心穏やかな気分を醸す。毎年8月には、食堂の前にしつらえられたデッキでBBQ。これもまた社員の親睦を図る絶好の機会となっている。
 内野社長、縁あって入社した社員とは長く仕事をしていきたいという思いを大事にする。ものづくりの醍醐味を実感する前に辞めてしまうなんてことがないように、できる限り現場の声を拾って、作業環境を充実させたいと未来構想を語る目には、優しさが宿って見えた。

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