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中央・城北地区 株式会社ヴェス

株式会社ヴェス 第三者目線の検証サービスでソフトウェア製品の品質と安全性を守る

株式会社ヴェス

第三者目線の検証サービスでソフトウェア製品の品質と安全性を守る

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中央・城北地区

株式会社ヴェス

第三者目線の検証サービスでソフトウェア製品の品質と安全性を守る

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女性社長活躍ストーリー
第三者目線の検証サービスでソフトウェア製品の品質と安全性を守る

 株式会社ヴェスは、パソコンや携帯、カーナビや家電といった製品に組み込まれたソフトウェアの検証を専門に手がけている。利用者目線による検証サービスを強みとし、独自の教育プログラムで検証エンジニアを育成するほか、女性の活用にも積極的に取り組んでいる。同社を牽引する久田真紀子社長、意外なきっかけから検証業界へと身を投じたというが、いまや年商10億円企業へと大躍進を果たした。

ユニークな経歴の持ち主。久田真紀子社長

 話し相手の顔をぐっと見つめる眼差しに魅惑的な輝きを讃える久田社長。語り口もエレガントなら、話すときの身振り手振りにも貫録を感じさせ、40歳という実年齢とのギャップに驚く人は少なくないだろう。
 その理由は、久田社長の生い立ちや経歴と切っても切り離せないだろう。家庭の事情で中学生から家を出て自活するという、苦労人でもある。20代前半は、現在のIT業とは無縁のサービス業に就いていたという。
 「私にとっては、そこで経営の初歩を学ばせてもらった」(久田社長)
サービス業を経験したからこそ、生きていく中で大切にしなければならないものが見えてきたとも、久田社長は話す。
 「あっちに行ったら恐いぞっていわれたら普通の人は行かないんでしょうけど、私の場合、本当に恐いのかと好奇心を滾らすタイプで、行ってしまうんですよね(笑)。よく言えば、頭で考えるより実践で学ぶタイプなんです」
 しかし、好奇心から踏み込んだ世界にいつまでもいる気はなかった。周囲から蝶よ花よと崇められえていた20代半ばにして、大真面目に我が身のいく末を案じていたという。そんな久田社長をある知人が検証事業の世界へといざなってくれた。久田社長はその人物を師匠と仰ぐ。
 「あらゆるハードウェア製品においてソフトウェアの比重が高まっていく中、その検証の重要性とビジネスとしての可能性をとうとうと語ってくれました。そして、うちの会社に営業として来ないかと誘ってくれたんです」
 コンピュータに関わるのは特別な人たちとイメージが強かった時代のことだったが、コンピュータの進化は著しく、その品質と安全性を守る検証という事業の将来性は門外漢の久田社長にもよくわかったという。 
 今できることをやらないでどうすると思った久田社長は、「半年で受注がとれなければクビ」という期限つきの申し出に応じることにした。とはいえ、まったくはじめての世界だけに、とまどうことだらけ。周囲の目も冷ややかであったが、弱音を吐くこともなければ、投げやりになることもなく、信じた道を邁進。そしてついに久田社長は、550万円の基幹システムの復旧の仕事を取り付ける。期限まであとわずかというときの快挙である。しかも、営業が皆、受注がとれずに苦戦する中、その金額は他を圧倒していた。土壇場で何とかする――師匠が見抜いたのは、久田社長のその資質だったのかもしれない。

body1-1.jpg「世の中で検証サービスの必要性はますます高まっている」と語る久田社長

師匠から独立を言い渡され、ヴェスを立ち上げる

 それから1年あまり経った2003年、突然、師匠から独立を促された。ここで船を降りる久田社長ではなかった。検証市場に勝算ありとヴェスを立ち上げた。
 「市場の見込みはありましたが、検証を行うエンジニア不足していましたからその育成が急務でした。そこで女性ならではの戦略がひらめいたんです」
と振り返る久田社長。利用者目線での検証が求められる家電製品などは女性テスターがうってつけと、検証に興味のある主婦層をスタッフに迎い入れ、検証エンジニアに育てるべく、検定試験などの育成プログラムなどを立ち上げた。
 無論、好奇心とひらめきだけで経営はやっていけない。経理や契約などといった法的な知識も身につけなければならない。
 「なにしろ、『定款が必要といわれても、定款って何?』って状態からのスタートでしたからね(笑)。始めのうちは師匠の会社からまわしてもらった仕事がありましたから、なんとかしのげましたが、リーマンショックのときは、まわしてもらっていた仕事をあてにできなくなりましたから厳しかったですよね。それでも、それがあったからこそ、仕事は自分たちでとらないといけないと腹をくくれたんです」
 久田社長は不眠不休を覚悟で営業に駆けずりまわった。営業スタッフも積極的に採用し、新規受注獲得を仕掛けていった。
 「不景気な時代でしたから、募集をかけるといい人材がたくさん集まってくれました。ここで攻めていけたからこそ、自社で100%仕事を受注できる会社へと切り替えられたんです」
 その後、受注も売り上げも好転。いまやヴェスは、従業員数140人、年商10億円を超える会社へと成長した。

body2-1.jpgオフィスでの打ち合わせ風景

女性エンジニアも活躍。働きやすい環境づくりに積極的

 「繊細さや生活者目線といった女性の資質をきちんと評価してくれると思い、入社を決めました。実際、女性にとってはより魅力的な職場で、自然とモチベーションも上がりますね」
 と語るのは検証サービス本部検証サービス部の工藤あゆみさん(33歳・入社7年目)。これまでテレビの内臓ソフトやWEBの課金システム、タブレット用の教材などの検証を手がけてきた。
 「メーカーでも検証はしていますが、開発者目線ではどうしても検証が甘くなってしまうんですよね。私たちが検証する意味合いは、第三者の視点から検証できるというのが一番の特徴でもありますから、利用者目線から不備や不便を見つけられるよう心がけています」 
 ユーザーは、必ずしもマニュアル通りの使い方をするとは限らない。中には思いもよらぬ使い方をする人もたくさんいる。そこで検証では、製品に添付される仕様書通りに動作するかだけでなく、仕様書に記載のないような使い方をすることも想定してもチェックするという。
 工藤さんは、第二子を出産したばかりで育休中。子どもを預けられる保育園が見つかり次第、復帰しようと考えている。
「子育てだけとなってしまうと、世界が狭くなってしましますし、自分の成長もありません。子育てと仕事の両立は大変な部分もありますが、生活にもメリハリができるといういい面もあります。自分が成長するためにも仕事は続けたいですし、これまで触れたことのないソフトウェアなどの検証にも挑戦し、スキルアップしていきたい」
 と工藤さんは今後の人生について語る。同社では子育てと仕事を両立するため、時短勤務にするなど、女性のための取組が多数整っているという。
 「一人目の子どものときも、会社は勤務時間について親身に相談に乗ってくれましたし、仕事をうまくまわせるようにスタッフィングを工夫してくれたりしましたから、ありがたいですね。社長も女性ということもあり、女性の気持ちに理解があるというか、社内には出産・育児にまつわる事情も話やすい雰囲気があります」
 同社には、工藤さんのような女性エンジニアが十数名在籍する。工藤さんの働き方は、他の女性エンジニアたちにとっていいサンプルとなりそうだ。

body3-1.jpg育休中の工藤さん。復帰後は、時短で働く予定

ニーズ高まる検証サービス。年商100億円企業をめざす

 検証を担当するエンジニアは、主に客先につめて作業を行うことになる。ともすると孤独にもなれば、悩みを一人で抱えることにもなりかねない。同社では、そうした事態に陥らないような体制作りにも力を注いでいる。
 「エンジニアと営業役のマネージャーがチームとなっており、客先につめているエンジニアが何か問題を抱えるようなことがあれば、本社にいるマネージャーがフォローする体制になっています」
と説明するのは、検証サービス本部ゼネラルマネージャー水野健さん(44歳・入社4年目)。たしかに、顧客先で日常業務を行うエンジニアの周りはすべてお客様。気軽に相談したりできるような環境ではない。放置しておけば、ストレスは募る一方という事態にも陥りかねない。
 「大げさな話でなくとも日々、困ったことは発生するものです。たとえば、子どもの病気などで早引きしたくとも、お客様には直接は言いにくいですよね。そんなときに本社のマネージャーが話をしてくれるとやはり、ありがたいですよね。早引きに限らず、いろんな面で助けられています」(工藤さん)
 また、別々の客先につめているエンジニアが交流を図れる機会として、月1回の研究会、3か月に1回の全体会議が行われている。研究会は、検証における技術的な成果や課題の共有の場として活動しており、現在、7つの研究会が組織されているという。
水野さんは、検証のやりがいや意義を次のように語る。
 「仕事の性格上、まだ市場に出ていない商品にタッチすることになりますから、いち早く最先端のものに触れられるというのが、一番のやりがいですね。また、ソフトウェア開発というと、開発ばかりに目がいきがちですが、作ったものがきちんと動くかのどうかの検証は、いまや開発にかける総時間の3~4割にも及ぶといわれています。これだけのウエイトを占めるのですから、検証という役割がいかに重要かわかっていただけるでしょう」
 2013年には、岩手県にソフトウェア検証センターを設立するなど、久田社長はエンジニアの育成、雇用創出に積極的に取り組んでいる。
 「たとえば、自動車や医療機器などに組み込まれたソフトウェアに不備があれば、製品の安全性や人命にも影響することも考えられます。ですから、検証という事業は、人々の安全を守るために、いまの社会になくてはならないものですし、ますます必要とされていくに違いありません。私が尊敬する経営者は、松下幸之助さん。経営者としてはまだまだよちよち歩きですが、今後、ヴェスを100億を売り上げる会社に成長させていきたい」
 久田社長はもっともっと大きなものにチャレンジしていく腹づもりのようだ。その姿、言葉は実に頼もしい。

body4-1.jpg「医療分野や電力分野の受注が増えています」と語る水野さん
  • 社名:株式会社ヴェス
  • 設立年・創業年:設立年 2003年
  • 資本金:1,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 久田真紀子
  • 従業員数:従業員数140名(内、女性従業員数50名)
  • 所在地:160-0004 東京都新宿区四谷2-11-6 FORECAST四谷7F
  • TEL:03-6457-7750
  • URL:http://www.ves.co.jp/