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新光電子株式会社 類を見ない高品質の音叉センサをつくり、技術を継承し若い力を伸ばす

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類を見ない高品質の音叉センサをつくり、技術を継承し若い力を伸ばす

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新光電子株式会社

類を見ない高品質の音叉センサをつくり、技術を継承し若い力を伸ばす

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技術力継承ストーリー
類を見ない高品質の音叉センサをつくり、技術を継承し若い力を伸ばす

新光電子株式会社は、高精度が求められる電子天びん・はかりなどに組み込まれる「音叉(おんさ)センサ」の開発メーカー。温度に影響されず、故障しにくい確かな技術には定評があり、世界最大の天体観測望遠鏡『すばる』にも採用されている。その高い技術力を維持し、継承するための人材育成制度を紹介する。

世界に通用する高い技術力、音叉センサにかける情熱

 音叉というと誰もが思い浮かべるのが、弦楽器と共鳴させることで音を調整する丸みを帯びたYの字の器具。新光電子は、その振動数を読みとり重量に変換することで、温度などの周囲の環境に影響されない、正確無比の音叉センサの開発で注目されている。
「音叉センサの開発は、特殊な配合をした金属を正確に削り出す技術が求められます。部位によっては、厚さ0.15ミリで真っ直ぐに切断できる技術が必要です。その作業ができる技術者がいるからこそ、弊社は高い信頼を得ているのです」と胸を張るのは安西正光代表取締役社長。
実は、同社の音叉センサは、電子天びん・はかり以外にも、世界を代表する天体観測望遠鏡『すばる』にも使用されている。この望遠鏡は、直径8.2メートルの反射鏡によって、はるか遠くの銀河系もとらえることで知られ、観測可能な遠い銀河ランキングベスト10のうち9つまでを『すばる』が占めているという。その記録を支えているのが同社のテクノロジーである音叉センサというわけである。直径8.2メートルもの巨大な反射鏡は、望遠鏡の動きにあわせて傾くことでたわみができてしまう。それを解消するのが、反射鏡の裏に配置された261個の音叉センサ。これが傾きを感知し絶妙な力を加え、たわみをなくすという仕掛けだ。実はこの技術、当初は三菱電機が主導して開発を進めていたが、精密な調整ができずにいた。この難局を乗り越えるには同社の協力を仰ぐ以外にないと相談が持ち込まれ、音叉センサプロジェクトに参加することになったという経緯がある。
開発に4年を要した。自分たちの力でなければ完成は難しかっただろうと、安西社長は自信満々に当時を振り返る。事実、音叉センサの核となる技術の特許は期限が切れているにも関わらず、いまだに同社に並び立つ精度のセンサを開発できたところはない。

body1-1.jpg音叉センサの優位性を説明する安西社長

技術を継承し、若手をサポートする制度が整う

同社の創業者、故・西口譲元社長は大手メーカー勤務で培った計測技術を武器に会社を興したいわば技術屋。こうした企業の場合、トップの力に頼る企業風土が醸成されがちだが、同社は類例に流されることなく、共同研究を進める大学の教授を招いて勉強会を開催するほか、他社との技術交流会や外部セミナーなどを積極的に行い、技術の継承を果たし、時代の最先端というポジションを維持している。セミナーは、どれも安西社長が自ら厳選したレベルの高いもの。年次の高い社員から参加し、学んだ内容をレポートにして共有、その後、若手社員も順次参加して理解を深め、技術を継承。さらなる技術革新にチャレンジする知見をここで積み上げる。
高度な技術を支えるのは人材だけではない。環境整備も大いに求められる。人と環境の二身一体が会社の信頼を支えているのである。とりわけ、品質チェックには重きを置いている。検査に影響を与えないよう、僅かな風の流れも起こさないために、天井を二重構造にするなど施設に万全を期し、スタッフは細かなチェックシートで要件を満たしている。そのほか、検査用の機械を用いて、分銅をのせて表示される数値に異常がないか、温度・湿度に左右されないかなどを高い見地で厳しく確かめる。その緊張感が開発現場にも届き、一層技術力の向上に拍車がかかるというわけだ。

body2-1.jpgプログラムの調整をする大澤さん。製品の電子はかりでテストを行う

現場の声。向上心にあふれ、風通しのいい風土

技術部技術一課の大澤慧人さんは、入社5年目の期待の若手。電子天びん・はかりに組み込むプログラムの開発をしている。
「入社して間もなくは、現場研修で製品の電子天びん・はかりができるまでの流れを理解することに努めました。分からないところは、先輩に聞いて回ったり、過去の資料を探して解消しました。その後、プログラミングを行う部署で製品の改良を担当。ここでつくづくありがたみを感じたのが、ソフトウェアの作成方法に関する外部セミナーです。他の会社の技術者も含めて30名ほどが参加して、“いいソフトとは何か”などについて熱く語り合い、大いに刺激になりました」と振り返る。
そんな大澤さんが実感しているのが、会社として50年以上積み重ねてきた膨大なノウハウや、先輩の一丸となったサポートだけでは、技術継承も向上も覚束ないということ。大事なのはあくまでも本人の学ぶ姿勢。音叉センサという類を見ない高性能な技術に関われることを喜びとし飛躍していきたいと抱負を語る。
技術部基礎開発係の矢部洋司さんは2年目の若手ながら、電子天びん・はかりを使うとき、どんなに過酷な環境でも確実な計測をできるようにするための技術開発に携わる。これは会社の5年後、10年後を支える新しい技術につながると信じて日々奮闘。新しいことに興味がある人にとっては最高の環境だと語る。
「大学院の研究テーマと共通するところがあったことと、限界に挑戦するシビアな技術が求められる音叉センサにひかれて入社しました。驚いたのは、入社1年目から設計を任せてもらえたところです。もちろん、先輩からのアドバイスをもらいながらの進行でしたが、自分で考えて納期内に仕事を終わらせるスケジュール感が身につきました。これからも積極的にそれぞれの分野に詳しい先輩に質問をぶつけ、また、興味のある展示会に参加するなどして、ノウハウを学んでいきます」
そう意気込む矢部さんは、飲み会の席でも仕事の目標を語らうなど意欲満々で、独自の技術を開拓していきたいという。目標とするのは創業者の西口元社長。いずれ西口元社長に匹敵するほどの実力を身につけたいと目を輝かせる。

body3-1.jpg「最新の技術情報を活発に交換し合うなど、風通しがよく働きやすいです」(矢部さん)

若手への期待と将来の展望。自主性が世界で活躍する鍵

 音叉センサを搭載した電子天びん・はかりで揺るぎのない信頼を得ている同社のさらなる目標は、世界市場でもトップを獲ること。製品としては文句なしの精度ではあるものの、知名度の問題でヨーロッパやアメリカでは苦戦しているという。
「産業界では広く知られていますが、今後は、学界や官界にもアピールして、ブランドイメージを確立していきたいですね。そのためにも、世界基準の長さや重さの単位について決定する国際度量衡総会に論文を提出し、弊社の研究成果を認めてもらう取り組みに力を入れています」と安西社長は展望を語る。
 世界でさらなる躍進をするには、今後も若い力の育成は欠かせない。若手同士で集まると決まって技術に関する話題が噴出。お互いがいい刺激となって、高め合うといった光景が日常的になっていると、若手の情熱に目を細める安西社長。
「材料の加工から組み立て、検査を経て完成に至るまで、設計したものが製品の形になる全ての工程を見られるのは、技術者冥利に尽きます。自分で問題を探って、その解決方法を考えて実行する好奇心と行動力に満ちた人ならば、ユーザーからのハードルの高い要望を反映して改良していくなど、いくらでも満足できる仕事はあります。ぜひ、独自の技術を磨いて、ものづくりの世界を満喫できるチャンスをつかんでほしいですね」とこれから社会に出る学生たちにエールを送る。

body4-1.jpgものづくりが好きで好奇心がある人にとっては、最高の環境です安西正光社長

編集部からのメッセージ

社員の働きに報いる制度


社員が率先して技術を学んで仕事に打ち込み、次々と新しい技術を吸収していくという好循環が生まれている同社では、社員の仕事に対する満足度は高い。その士気を養うにはオフも大事と、ハワイやオーストラリアといった社員旅行も実施する。毎回9割以上の参加率で、部署間の垣根を越えて親睦を深める。帰国後はよりスムーズなコミュニケーションがとれるようになり、仕事がはかどるといった感想が多い。
 取材を通して聞こえてきたのは、やはり同社の独自技術を誇る声。音叉センサは、伝統の部品であると同時に、業界の最先端をいく技術。それに携わる仕事ができることこそ、社員の何よりの喜びなのだと感じられた。

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  • 社名:新光電子株式会社
  • 設立年・創業年:設立年1963年
  • 資本金:5,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 安西正光
  • 従業員数:117名(内、女性従業員数25名)
  • 所在地:113-0034 東京都文京区湯島3-9-11
  • TEL:03-3835-4577
  • URL:http://www.vibra.co.jp/