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株式会社ウインローダー 物流×環境 「エコランド」が物流の世界を革新する

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物流×環境 「エコランド」が物流の世界を革新する

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物流×環境 「エコランド」が物流の世界を革新する

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物流業界革新ストーリー
物流×環境 「エコランド」が物流の世界を革新する

 バブル崩壊後、新たな市場開拓を迫られた物流業界。そこに「環境」というキーワードを取り入れて成功を収めた、エコランドの過去・現在・未来に迫った。

新たなマーケットを求めた20世紀の物流業界

 戦後、目覚ましい経済発展とともに、ものづくり大国としての地位を築き上げた日本。そこではメーカーや技術者の活躍ばかりが語られがちだが、物流業界の活躍も忘れてはならない。どれだけいいモノを作る技術があっても、生産に必要な物資や作られた製品を全国各地へ届ける人がいなければ、モノが世の中に出回ることはないからだ。
 電子上のやり取りが増えた現代社会でも、形あるものを運ぶ仕事がなければ生活は成り立たない。それだけ重要な仕事にも関わらず、バブル崩壊後の不況以来、物流はコストダウンを求められ、業界は縮小。先行きの暗い時代が続いた。
 ウインローダーは1950年創業の運送会社。まさに物流業界の栄光と凋落を体験してきたわけだ。現在、社長を務める髙嶋民仁さんは、父親である前社長の時代に、物流業界に危機感を覚えていた。
 「少ないパイを取り合い競争が激化する中で、物流業界も新たなマーケットを開拓しなければならない局面に立たされていました。私が入社した2000年頃は、世間の環境への関心が高まり始めた時期で、物流と「エコ」を合わせることで、新たなマーケットが作れるのではないかと思ったのがエコランドの原型です。今まで価値がなかったものに価値を見出し、全国の仲間で分け合えるようになれば、これから自分が物流業界で働くにあたって、もっとわくわくできるような気がしました」(髙嶋社長)
 こうして、1990年代に「エコランド」の構想を思いついた。

body1-1.jpg物流業界の未来を語る髙嶋民仁社長

挫折から学んだ20代。エコランドまでの道のり

 エコランドとは、依頼人の不用品を集荷し、リサイクルショップやオークションなどを介して、必要としている人にリユースするという、ウインローダーが行う事業の一つ。もともと同社は、家具家電の配送サービスを行っており、納品するついでに古くなったモノの集荷もしていた。それまでは産業廃棄物として処分していたが、まだ使えるモノは、必要としている人のもとへ届けようという発想の下エコランドはスタートした。
 まだ環境意識が希薄だった当時、働き手の意識の中に「ゴミ」と「荷物」の間には明確な区別があり、「ゴミはゴミの回収業者が運ぶもので、運送業者が運ぶものではない」と考える人も社内に少なくなかった。ビジネスをスタートさせる前に、まず社員の意識改革から始めなければならなかった。
 とはいえ当時の髙嶋社長は、突然入社してきた20代後半の若者で、相手は40代50代のベテランドライバー。いきなり「変えて」と言っても聞いてくれるわけがない。若き日の社長は、こうした当たり前のことに気づくことができず、計画は一旦頓挫することになってしまう。
 それから心を入れ替え、家具の配送など既存の物流業界のことを一から学ぶため下積みを始めた。人間というのは、自分の仕事を手伝ってもらえれば、相手の仕事も手伝ってあげたいと思うもの。髙嶋社長が物流の仕事に携わることで、エコランドの構想の理解を示してくれる人も増えていった。
 「『なんで手伝ってくれないんだ』と思っているうちは、うまくいかないものです。こちらの姿勢が変わることで、いろいろな歯車が変わってくることを学びました。それがちょうど30歳になるころです。失敗だらけの暗黒の20代でしたが、挑戦して一つひとつ失敗から学んだことが40代になった今にも生かされていますね」(髙嶋社長)
 そして2004年、ついにエコランドは再スタートを切ることになる。

body2-1.jpg歴代社長の私物などが展示された社内の歴史館

エコランドの目指す先。「いらない世界を変える」

 「どんなものでも、いずれはいらなくなって捨てる時が来ます。しかし、自分ではいらないと思っていたものでも、国や地域を変えれば誰かの欲しいものになることがある。そんなメッセージを発信していくことで、お客様は買う時点でリユースまで想定するようになると思います。お客様の購買意識に影響を与えるようなサービスにするのが目標です」
 エコランドの目標を説明するのは、事業責任者の趙勇樹さん。例えば、勉強机のような大きなものは日本では買い手がつかないが、カンボジアの子どもたちには必要とされていたりする。「いらないなんてない」と消費者が気づくことで、捨てることに歯止めがかかることになるというわけだ。これを同社では「いらない世界を変える」と表現している。
 一般的に環境に配慮した製品というのは、材料や生産方法など上流工程で考えられることが多い。そこで物流業界という下流工程から、環境意識を変えるという新しい試みというわけだ。
 「月間で1000件、1万点の品物が集まり、7割くらいは国内・海外でリユースされています。現在、海外へは現地のパートナー企業にコンテナを渡すだけの状態ですが、これだとお客様にとっては自分がエコランドに出したアイテムが本当にリユースされたのかどうか分かりません。消費行動を変えるには、どこの誰がどんな風に使っているかを出品者にフィードバックしなければなりません。そのために現地での店舗展開を考えています」(趙さん)
 そして同社初となる海外の直営リサイクルショップの店長に抜擢されたのが、入社7年目の本田尋美さんだ。

body3-1.jpg事業責任者の趙勇樹さん。時折、冗談を交えつつ説明してくれた

社員のやりたいことと、会社でやるべきことをつなげる育成

 本田さんは学生時代にボランティアで訪れたカンボジアやフィリピンで目にしたゴミ山に衝撃を受けた。そこからゴミ問題や環境問題に関心を持ち、物流の視点から循環型社会を作ることに取り組む同社に興味を持って入社した。
 当初から海外で働く希望を口にしており、入社から6年間、エコランドの現場で経験を積んできた。トラックでの集荷やコールセンターを経験し、現在は日本のリサイクルショップで店長を務めている。そこで多くのことを学んだと語る。
 「モノの価値についてよく考えるようになりました。モノが捨てられるか、必要なモノになるかは、それに価値を見いだせるかどうかにかかっています。最も下流にいる私たちが、価値を見いだし、捨てられそうになっているものを必要としている人に届けられれば、ゴミにならずに済むわけです。その責任を感じるようになりました」
 今後はタイなどの東南アジアで現地調査をして、来年にはリサイクルショップをオープンできるよう動き出すという。日本でさまざまな経験を積んだことが自分のやりたかったことにつながっていく実感があるのだろう。希望に満ちた明るい表情をしていた。
 環境問題は、地球規模あるいは100年単位で考えなければならないもの。反面、今やることは目の前にあるゴミ一つを減らすといった地味なことが多い。そうなると、自分の「やっていること」が「やりたいこと」につながっているか実感が持ちにくいものなのだ。この2つをきちんとつなげてあげることが、若手のモチベーションアップのポイントだと髙嶋社長と趙さんは口をそろえる。本田さんはその実例だろう。
 物流業界が不用品を扱うのが当たり前になり、髙嶋社長の当初の狙い通り、物流のマーケットは確実に広がっている。海外展開を含めれば、さらに物流業界は盛り上がっていくだろう。モチベーションの高い若手社員が率いるエコランドが物流業界に明るい未来を運んでくれそうだ。

body4-1.jpg品物の価値を見極める本田尋美さん

編集部メモ

髙嶋社長の3つの野望

 髙嶋社長は20代の時に3つの目標を立てた。当時は漠然としたものでしかなかったが、さまざまな経験を重ねる中で、段々と具体化してきたという。
 一つ目は『エコランドを通してゴミ0社会を目指す』。これは海外展開を含めて成果が出始めている。
 二つ目は『物流業界を革新する』。トラックドライバーのイメージアップを図り「かっこいい」と思われる仕事にしたいのだという。
「現場で汗水流して働く人がいたから日本は発展してきました。だから、現場やトラックドライバーが輝ける社会にしていきたいですね」
 三つ目は『世界に挑戦する』。
「他の2つに比べるとまだ漠然としていますが、それは可能性があるということでもあります。日本の物流なら世界に挑戦できるだけの底力があると思っています」

edit-1.jpgウインローダーのロゴと、エコランドのロゴ