<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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城南地区
株式会社山小電機製作所

株式会社山小電機製作所 スキルの習熟度の「見える化」で 成長の方向性が分かり、やりがいアップ

株式会社山小電機製作所

スキルの習熟度の「見える化」で 成長の方向性が分かり、やりがいアップ

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城南地区

株式会社山小電機製作所

スキルの習熟度の「見える化」で 成長の方向性が分かり、やりがいアップ

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幅広い仕事フィールドと充実した人材育成ストーリー
スキルの習熟度の「見える化」で成長の方向性が分かり、やりがいアップ

携帯電話各社の基地局に設置するアンテナの支柱をはじめとした伝送・無線用通信建設部材を設計・製造する山小電機製作所。現地調査から手掛けるきめ細やかな対応と最新技術で通信インフラを支え続けている。

伝送・無線網の構築に貢献 情報通信業界の発展を支え続ける

 1933年、大手通信メーカーの協力企業として金属加工品の設計・製造業からスタートした山小電機製作所。大きく飛躍したのは、戦後の1953年のこと。当時の日本電信電話公社(現NTT)が電話回線、いわゆる有線網の迂回路として無線網の構築に取り組むことになり、無線用アンテナの支柱といった通信建設部材の供給を同社が担うことになったのだ。当時は有線網の迂回路という陰の存在であった無線網だが、ポケットベルや携帯電話、そしてスマートフォンへと続く通信インフラの要となったのはご存じの通りだ。そうした社会の変化に伴い、同社の取引先企業も製品の供給量も格段に増え、業績は順調に伸びていった。
 「現在では、通信建設部材の設計・製作と施工が当社の売上げの7~8割を占めています」と、小湊清光社長は語る。
 同社の発展は時代が後押ししただけではない。その事業内容の幅広さが底力となった。そもそもアンテナの設置場所は鉄塔やビルの屋上、繁華街、鉄道沿いなど実に多様で、山の上か街中かでもその環境は大きく異なる。そのため、通信建設部材も設置場所ごとに形状やサイズ、重量、耐風性などの強度、場合によっては表面塗装の色まで変える必要がある。設計だけ、製造だけを担う企業もあるなか、同社は設置場所の調査から製造、そして納品後の製品試験まで受注してきめ細やかに対応し、信頼を獲得してきた。
 「設置条件に合わせて製品をカスタマイズするために、当社では設計担当者が現地調査を行うのですが、場合によってはアンテナを設置させていただきたいビルのオーナーさんとの折衝からスタートすることも少なくありません。アンテナ設置に関わる仕事をいわば一貫して担っているのが当社の強みです」と、小湊社長は胸を張る。

body1-1.jpg「若手でも責任ある仕事を任せています」と語る小湊清光社長

社員のやりがいにも繋がる一貫受注

 一貫受注のメリットは、現場で作業する社員たちも感じている。
 SE事業部技術部に勤務する青木貴宏さんは、大学でロボットの設計を、大学院でロボット制御を学び、設計に関わる仕事がしたいと2017年4月に入社。約1か月間の研修後、希望通り設計を担当する部署に配属され、現在は大きく分けて二つの業務を担当している。その一つは通信建設部材の設計、そしてもう一つは、同社が2016年、都内企業として初めて導入した3次元レーザー加工機用の設計図製作とプログラミングだ。3次元レーザー加工機は、H形鋼材などの立体物に複雑な加工・切断を施す機械で、青木さんは2次元で書かれた製図を3次元に書き直し、作業順をプログラミングする役目を担う。
 「2次元でも3次元でも同じですが、設計図にはちょっとした部分の寸法や部材に開ける穴のサイズといった事細かな情報を確認し、描き込まなければなりません。設計だけを請け負う会社ではそうしたことを確認するのにひと手間かかり大変だと思うのですが、当社では現地調査担当者や製造担当者が社内にいるので、直接質問しやすい環境です。仕事が早く確実に進み、やりやすいですね」
 また、自身が設計した製品の製造過程や完成品を目の当たりにできることも、大きなやりがいに繋がっているという。
「私が勤務している本社の1階が工場なので、出退勤時に工場に寄っては製造途中の製品や完成品をチェックしています。そのたびにあの製品の設計図を描くのは大変だったなとか、難しい加工を製造部の方がきれいに仕上げてくださったなとか、いろいろな思いが込み上げてきます。パソコンで設計図とにらめっこするだけでは得られない満足感や達成感がありますよ」
 一貫受注だからこそできる連携で、品質の高い製品を作り上げる。それが高い評価へと繋がっていることは間違いない。

body2-1.jpg3次元レーザー加工機のプログラミングの打合せ風景

「多能工マップ」でスキルの習熟度が一目瞭然

 2016年、同社は、大田区から「人に優しい、まちに優しい、技術・技能及び経営に優れた」工場として「優工場」に認定され、総合部門賞に輝いた。また、2017年には東京都中小企業技能人材育成大賞知事賞奨励賞にも選出され、その経営の現場を一目見ようと視察団も数多く訪れているという。こうして多方面から注目され、評価されるその理由を、小湊社長は「見える化」の導入にあると分析する。「見える化」とは、職場の目標やその実施状況、評価といった情報を共有することで、職場の課題改善を目指す取組のこと。2011年の小湊社長就任をきっかけに、取組がスタートしたという。
 「他社の工場見学をするたびに、私たちはもっと変わる必要があると感じていたんです。社長就任でその思いを遂げようと、トップダウンで『見える化』をキーワードとした社内改革に着手しました」(小湊社長)
 「見える化」したものの一つが、社員のスキルの習熟度と目標管理だ。もちろん、以前から教育訓練の結果などは記録に残し、人事評価にも反映させていたが、その記録は総務部門が管理するだけにとどまっていた。そこで、社員の顔写真と氏名とともに、それぞれが身に付けてほしいスキルとその習熟度の4段階評価を「多能工マップ」という一覧表にまとめ、各部署の掲示板に貼り出した。
 「それぞれの目標と実績が一目瞭然で、成果が評価に繋がっていることを実感できるようにしました」(小湊社長)
 その成果は、青木さんも感じている。
 「これから身に付けるべきスキルや、何を期待されているかがよく分かり、励みになります。また、先輩方のスキル習得の進捗状況も分かるので、それと比べて自分はまだまだだなと身を引き締めています。正直、今は図面のルールやCADの使い方を覚えるのに毎日必死なのですが、2~3年かけて必要なスキルを身に付けられるよう取り組んでいきたいです」(青木さん)

body3-1.jpg「大学と大学院で使ったCADは、いわば基礎編。仕事ではその発展編を身に付けていきます」と語る青木貴宏さん

「5S活動」で無駄な時間と人件費を削減

 もう一つ「見える化」したものが、「5S活動」だ。5Sとは、整理・整頓・清潔・清掃・しつけの五つのローマ字の頭文字を取ったもので、職場の改善活動として行われる。同社では約6年前から取り入れている。
 「階段の下など、見落としがちな場所に色々なものが置きっぱなしになっていたのですが、それを一つひとつ確認して選別し、不用なものは捨てることから始めました。するとおのずとスペースが生まれ、そのスペースを有効活用できるようにもなりました」(小湊社長)
 また、工具や文房具、ファイルなどは置き場所を誰にでも分かるように工夫し、使用中の場合は使用者名を貼り出すようにした。こうした工夫の積み重ねで社内全体に整理整頓が行き届くようになり、探し回る時間を削減できた。また、社員の提案で週に1度、全社一斉清掃を実施。これで清掃スタッフ分の人件費を削減できた。
 さらに同社では部署ごとに5S委員を決めて、月2回、社内をパトロールし、改善すべき場所を指摘。その結果も掲示板に貼り出している。こうした取組を6年間も続けているとパトロールなど必要なさそうだが、そんなことはないというのは、広報企画室の川崎桜子さんだ。
 「整理整頓されていることで必要な道具を探しやすいのはもちろん、いつもと違う場所に置いてしまってもすぐに気付いて片付けられます。社内を清潔に保とうという意識も根付いてきていますね」(川崎さん)

body4-1.jpg工具の置き場所にそれぞれの名称と形を表示する「姿置き」

温かな職場の雰囲気が仕事以外の活動も後押し

 入社2年目の川崎さんの担当業務は多岐にわたる。
 「製品の資料作りや来客時の対応、労務管理、展示会での製品説明などを、人事や総務の方と一緒に担当させていただいています」(川崎さん)
 実は川崎さんは、7人制ラグビー(セブンズ)のレフリーという顔も併せ持つ。レフリー活動のため休職する期間もあるというが、仕事をおろそかにすることはない。
 川崎さんは帝京大学ラグビー部で1年間、選手として活動した後、ケガをきっかけにレフリーに転向。以後、日本では数少ない女性レフリーとして活動の場を順調に広げていったのだが、大学卒業目前に壁にぶつかった。就職はしたいが、レフリー活動も続けたい。しかしレフリー活動は世界を飛び回るため、仕事との両立が難しいのだ。当時、進路に悩む川崎さんの話を伝え聞き、手を差し伸べたのが小湊社長だった。自身もかつてレフリー活動をしていたことがあり、仕事との両立の難しさを熟知していた。慎重に検討を重ねた結果、2016年4月、川崎さんは同社に就職した。
 その年に開催されたリオデジャネイロオリンピックでは、川崎さんは日本人で唯一女子セブンズのレフリーに選ばれた上に、女子決勝のインゴール・ジャッジも務め、ラグビーファンの間で大きな話題となった。
 「入社に当たり、社長からはしっかりと目標を立て、熱意を持って仕事に取り組んでほしいと言われました。私も人に良い影響を与えられるような仕事ができるように成長していきたいと思っています」
 そのために磨いていきたいと語るのが、予測する力と対応力だ。
 「レフリー活動では、常に予測しながら動くことが求められるのですが、これは仕事も同じだと思っています。レフリー活動で不在にする際は、その間に起こりうることを想定し、入念に準備して引き継ぐようにしています。仕事でも相手が求めることを先読みして動き、また、不測の事態に対応する力も磨いて、誰からも信頼していただける存在になりたいです」
 目標ややるべきことが「見える化」されていることで、自身の成長を実感しているという川崎さん。さらなる成長を目指し、努力し続ける。

body5-1.jpg「気さくに声を掛け合う雰囲気があるので、仕事で分からないことがあってもすぐに誰かに相談して解決できます」と語る川崎桜子さん

編集部メモ

防災・減災用品にも注力

 小湊社長が「売上げとしてはこれからだが、注目度は高い」と期待を寄せるのが防災・減災用品の開発・製造だ。1968年の十勝沖地震をきっかけに通信企業から要請を受け、キャスター付きワゴンの転倒や自走を防止する「耐震ワゴンキャッチャー」を開発。以後、地震発生時に屋上や防災倉庫の鍵を開ける「自動解錠ボックス」や、棚の落下物を防ぐ「落下センサー」を製品化してきた。「落下センサー」は、2017年度東京都トライアル発注認定制度認定商品に選ばれている。今後も主力製品に育てるべく力を注いでいく。