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中央・城北地区 大和合金株式会社

大和合金株式会社 銅合金一筋75年。立ち止まらないチャレンジ精神が社員一丸の原動力

大和合金株式会社

銅合金一筋75年。立ち止まらないチャレンジ精神が社員一丸の原動力

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銅合金一筋75年。立ち止まらないチャレンジ精神が社員一丸の原動力

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技術力向上ストーリー
銅合金一筋75年。立ち止まらないチャレンジ精神が社員一丸の原動力

 自動車、船舶、航空機、半導体、ロケットなど、銅合金は現代文明を支える“縁の下の力持ち”的存在といえるだろう。大和合金は銅合金を作り続けて75年。長い歴史を持ちながら、常に技術力を磨き、チャレンジし続ける同社には、まるで若い会社のようなエネルギーがみなぎっていた。

小回りの利く自社一貫生産の強み

 銅合金が人類文明に取り入れられるようになったのは紀元前3600年ころ、エジプト・メソポタミア地域でのことといわれている。銅と錫をかけあわせた青銅が容器や刀剣、貨幣の素材として幅広く生活に取り入れられるようになって以来、さまざまな金属と掛け合わせや配合が研究され続けてきた。そして現代に至っても、社会を支える縁の下の力持ちとして、位置づけられている。
そんな人類の歴史とも関わりの深い銅合金一筋75年の大和合金株式会社。クロム銅、アルミニウム青銅、ベリリウム銅、高力黄銅をはじめ、100種類以上の銅合金を扱い、自動車・船舶・航空機・ロケット・半導体・光ファイバー海底ケーブルといった社会基盤を支えるさまざまな分野に大和合金製の銅合金が使われている。これだけの重責を担う大和合金の強みを三代目の萩野源次郎社長が語る。
 「お客様が困っている悩みになんでも応える。世の中で作られていないようなものでもチャレンジする。そういった積極的な姿勢が評価されているのだと思います。溶解・鋳造・鍛造・熱処理・機械加工・素材検査、販売まですべての工程を自社で行う一貫生産ならではの小回りの良さが同社の強みです」
銅は熱伝導率、電気伝導率、耐摩耗性、耐食性に優れ、比較的硬度が高い。つまり丈夫で使い勝手のいい素材だ。しかし、入手しづらく値が張るため、使いどころが限られる。「値が張っても構わないから、耐久性や持久性を追求したい」という時に、銅合金が頼りにされるのだ。
一口に銅合金といっても、用途によって求められる特性はさまざまで、配合する金属の種類や比率、手順なども違うため、いわば用途ごとに一点ものを作っているようなもの。場合によっては、いままで誰も作ったことのない材料特性を出さなければならないこともあるので、ごく限られたパーツのために、一から製品開発をして、生産しなければならないということになる。
 一般的な経営論でいえば、少量のパーツのためにそこまで手間をかけるのは難しい。しかし、自社で一貫生産ができる同社なら、実験的な製品開発にもチャレンジでき、短期納品・少量多品種生産にも対応できるというわけだ。
 もちろん、その前提として、高品質な製品を生み出す高い技術力がなければならない。しかも、世界レベルのメーカーが”ここぞ”という場面で使う素材だけに、その高いレベルにかなう製品を作り続けるのはそうたやすいことではない。その品質を担保している品質保証課の五十嵐修さんに話を聞いた。

body1-1.jpg萩野源次郎社長。口調や佇まいからも人柄の良さを感じさせる

品質保証の付加価値とは

 銅合金の製作は、金属をドロドロに溶かして混ぜあわせる「溶解」から始まり、「鍛造」「熱処理」「切断」を経て製品出荷となる。各工程での検査も行われるが、溶解の後と製品出荷前の2回は品質保証課の入念なチェックが入る。
 「成分検査や超音波を使って内部欠陥を探る超音波探傷検査、強度を調べる引っ張り検査を行い、良品だけが次の工程に流れる仕組みを徹底しています」と五十嵐さん。結果だけを見てただ良い・悪いを報告すればいいというものでもないと続ける。
 「検査には、『ここからここまでは合格』という範囲があるのですが、たとえばいつもは中央付近にある数値が上限の方に寄っていたら、不良になる可能性があるということです。不良になってからでは損害が大きいので、その前に現場に確認し、ミスを未然に防ぐということも求められます。これには傾向を読む力と、現場とのコミュニケーション力が問われます」
 一つひとつの工程に関わる現場の職人は、作業中に起こったちょっとした違和感も敏感に感じ取っている。自分が読み取った傾向と、現場でヒヤリングした情報を合わせて、どうすれば不良が出ないのかを考えて、現場にフィードバックする。それが品質保証の仕事に求められる付加価値なのだという。品質保証課の「OK」が、会社の品質に対する信頼に直結するだけに、付加価値を出せるかどうかの差は大きい。
 そして、職人の感覚任せになっている情報をまとめて、標準化することも重要な仕事の一つになる。感覚は言語化し、共有することで技術・ノウハウとして蓄積されていくからだ。
 「現在、超音波探傷試験や浸透探傷試験といった非破壊検査の資格取得にチャレンジ中です。私が一番難しい資格を取得することで、課の後輩たちの勢いづけになったらいいですね」
 同社がこれから力を入れようとしている航空機関連は特に品質保証に厳しい分野。つまり、品質保証関連の資格取得は会社としての課題でもあるのだ。五十嵐さんの資格取得が、会社の躍進に拍車をかけることに期待したい。

body2-1.jpg超音波を使って内部欠陥を探る「超音波探傷試験中」の五十嵐修さん

勉強会文化が技術力と人間力を磨く

 技術を抱える企業にとって、技術の研鑽と後進の育成は欠かせない重要課題となる。「人の成長がなければ、会社の成長はあり得ない」との社長の言葉からもわかるように、同社のカラーが最もよく表れているのが社員教育なのだ。それを象徴するのが、初代社長の頃から根付く勉強会文化。
大学の教授や日本鋳造工学会の元会長など、高名な先生を招いた社内勉強会は30年以上、累計100回を超える。海外や大手に負けないための技術力の研鑽と、それを忍耐強く続けるための精神力を養うのだという。社外研修に行ったり、大学院に通ったりする社員もいるといい、上からの押し付けではなく、自身の意思で積極的にスキルアップを目指すモチベーションの高さを感じさせる。
 さらに、技術力アップのための勉強会にとどまらず、昨年9月から、禅や論語といった人間的な成長を促す勉強会も始めた。
「人間的な成長には文化・教養といったものも必要です。そういう意味で、読書会や音楽会なども定期的に開催しています。家族連れで参加する人もいて、家族ぐるみでの社員交流の場になっています。これらが売上に直結するというわけではありませんが、漢方薬のようにじんわり効いてきて、社員一人ひとりの、そして会社全体の成長につながると確信しています」(萩野社長)
 「他人の子の成長は早く感じられますね」と語る社長はまるで、社員全員の父親のような存在。会社の結束力の固さを感じた。

body3-1.jpg勉強会にも積極的に参加し、日々勉強の小坂佑輔さん

若手の活躍と社長のポリシー

 社員の人間的成長もサポートする大和合金ではどんな社員が活躍しているのだろうか。機械加工係で切削加工に勤しむのは盛博之さん。同係に配属されて2年目になる。切削加工とは、入力した数値通りに自動加工できるNC工作機を使って、銅合金の塊を定められた寸法に削る作業のこと。いわば、素材を製品にする仕事だ。
 「切削加工は機械がやりますが、計測は人間の手と目の世界。100分の1ミリ、1000分の1ミリ単位のズレを見抜く先輩の腕に刺激を受けながら、毎日が勉強です」
 機械が自動で削るとはいえ、NC工作機も熟練度によって生産性が大きく左右される。最近新しく導入したNC工作機を任されたという盛さんは「早く操作に慣れて、このNC機のことは僕が一番わかっているという状態にしたいですね。そして生産性アップ、売上アップと結果を出していきたいです」と抱負を語る。
 営業で活躍するのは入社2年目の小坂佑輔さん。既存の顧客を回る、いわゆるルート営業を担当している。営業は誰よりも製品について詳しくなければ務まらないが、ルート営業の場合、顧客側も製品や銅合金について専門的な知識を持っているのが難しいところなのだ。
 「製品知識を増やすことは常に課題として意識しています。上司は知識量がすごくて、何を聞いてもスパっと答えてしまう。憧れますね。お客様からの意見や要望対応など、日々の業務から学ぶことが多いですが、会社の勉強会にも積極的に参加しています」と語る小坂さん。先ごろ、1年前に自分がつけた週報を見返して、自身の成長を実感したという。
 「当時はどうにもできなかったようなことが、『今だったらこうする』という対処法がわかるようになっていました。1年の間に学んだことが、ちゃんと身についていることが実感できたのが嬉しかったですね」
こうした若手を束ねる萩野社長の人材育成方針は、「失敗したらやり直せばいい。できない理由をだらだらと考えるより、積極的にチャレンジする事が大切」という経営哲学に基づくもの。だからこそ、75年もの歴史を持ちながら、常に新しい事に挑み続ける若い会社のようなエネルギッシュさ感じさせるのだろう。
 目下の目標は海外展開だという。特に航空機関連、核融合関連はまだ伸びしろの大きい分野として期待も大きい。目標達成には、作ったことのないものを作る技術・生産管理チーム、そして販路開拓をする営業チームが力を合わせることが不可欠。大和合金の結束力ならそれも可能だろう。

body4-1.jpgNC工作機を扱う盛博之さん

編集部からのメッセージ

家族で働く社員も


 アットホームな社風ゆえか、家族や友人の紹介で働き出す社員も多いのも特徴の一つ。現在は7親子、2夫婦、7兄弟が在社しているという。音楽会やバーベキューで家族同士で顔を合わせることも少なくない。社内で顔を合わせれば、必ずなにか声をかけ、場合によっては家族のことまで気にかける社長の人柄もあってのことだろう。100周年までに親子3代で働く社員が出てくるのが夢なのだという。



同じ考えのメンバーが集まった


 「『積極的にチャレンジする』という姿勢は社員一同も共通して持ってくれています。普段は社員に発破をかける側ですが、こっちが弱気になっている時は、逆に社員の姿に刺激を受けることもありますね。はっと我に返って、『頑張らなきゃ、チャレンジしなきゃ』という気持ちにさせてくれるみんなには感謝しています。」(萩野社長)

  • 社名:大和合金株式会社
  • 設立年・創業年:設立年 1941年
  • 資本金:4,500万円
  • 代表者名:代表取締役社長 萩野源次郎
  • 従業員数:132名※グループ合計(内、女性従業員数13名)
  • 所在地:174-0063 東京都板橋区前野町2-46-2
  • TEL:049-273-6006
  • URL:http://www.yamatogokin.co.jp