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城東地区
株式会社横引シャッター

株式会社横引シャッター 「社員は家族」。創業者理念を進化させ、群雄割拠の業界を生き抜く

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「社員は家族」。創業者理念を進化させ、群雄割拠の業界を生き抜く

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株式会社横引シャッター

「社員は家族」。創業者理念を進化させ、群雄割拠の業界を生き抜く

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社員第一主義の創出ストーリー
「社員は家族」。創業者理念を進化させ、群雄割拠の業界を生き抜く

 ワーキングマザーや外国人社員など多様な人材が一堂に会する職場ともなれば、価値観も千差万別。しかし、従業員の間に家族愛が生まれると、その結束力が思わぬ力を発揮する。

社員第一主義に基づいた家族経営を徹底する

 社名の「横引」とは創業者の名かと思いきや、横に開閉するシャッターを専門に扱う会社だからそのままを屋号にしたという。創業の先代社長は、大手シャッターメーカーから修理を請け負う株式会社中央シャッターを立ち上げ、1987年にグループ会社として横引シャッターを設立した。大手メーカーから仕事を得ながら、ある意味ではライバルとなる商品の開発、販売を展開できるのは、確かな技術による信頼と社風。その社風の礎となっているのが先代の「社員第一主義」ともいうべき経営方針によるところが大きいという。
 跡を継いだ市川慎次郎代表は、先代である父の背中を見て育ち、「社員は家族です」と言い切る。また、父の意思を受け継ぐだけでなく、その意思を「見える化」して進化させてきた。
 「先代はよく社員は自分の分身と言っていました。経営者も身はひとつ。同じ時間に2つの得意先は廻れない。それをフォローしてくれている社員はいわば自分の分身。目配り・気配りして応えるのは当たり前。社員は絶対に解雇しないという方針を厳守するよう事あるごとに言っていました」
 そう語る二代目の市川代表は先代からの方針を厳守しながらも、自らの経営哲学も実践する。それが『変えないこと』と『変えていくもの』の明確化である。

body1-1.jpg市川慎次郎代表の話からは社員への愛情の深さをうかがい知ることができる

「定年なし」、「年3回の昇給」。型破りな経営で組織活性化を

 横引シャッターでは従業員の解雇をしないばかりか定年もない。本人が働きたければ何歳まででも仕事を続けられる。事実、現在最高齢の社員は88歳というから驚きだ。月に1回の健診を義務付け、雨の日は自転車通勤の身を案じて休日にするなど細やかな配慮がその背景にはある。近年、定年を迎えた社員を再雇用する企業も増えているが、給与はグンと下がるのが常識。ところが横引シャッターの場合は退職するまで昇給し続ける。
 「ある年齢になったから辞めてもらうというのは会社の一方的な都合です。65歳になってガクンと社員の能力が劣るわけではありませんからね。そういう意味でも、すべて正社員で、本人が望めばずっと雇用し続けるのが当社の人材に対する基本的な考え方ですし、正社員やパートに分類することもあり得ません」
 事実、従業員はベトナムからの研修生2名を除き、すべてが正社員といい、7名の女性社員のうち3名は育児をしながら活躍している。
 「社員第一主義」を貫く市川代表の具体的な取組はそれだけに留まらない。昇給は随時行っており、1年に3回昇給するという社員も少なくない。1回で上がる給与はだいたい1万円というから年間に3万円のベースアップが望めるわけである。またボーナスがない代わりに、昨年、営業担当にはオーダーメイドのスーツ、製造部門の社員には作業着、女性社員には商品券などを支給している。市川代表いわく「現金支給だと本人が使えるケースが少ないので立場に応じた現物支給を考えた」という。今年は防災グッズをはじめ、子育て中の社員にはミルク、独身で自炊をしている社員には米を考えているそうだ。

body2-1.jpg整理整頓された横引シャッターのオフィス内

思いやりのある社風の中、仕事と子育てに奮闘中

 子育てをしながら働く女性社員の一人、萩原有紀子さんは大手住宅メーカーからの転職組み。主に顧客からの要望に合わせてオーダーメイドのシャッター設計を担当する。
 「前職では住宅設計に携わっていたのですが、残業が多くて退社を余儀なくされました。その後、出産・育児を経て子どもが1歳になったのを機に時短で働ける会社を探していたところ横引シャッターに出会いました。当社への入社の決め手となったのは、社風と市川代表の人柄です」
 萩原さんがまず驚いたのが面接日時の連絡をした際に「お子さんを預けるのも大変だろうから、一緒に連れて来れば」という市川代表の言葉。しかも面接時に自ら子どもにおもちゃを渡して遊んでくれたのだという。その光景に他社にはない温かさを感じたという。現在は10時から16時までの時短で働く。
 また、同社では女性社員が集まって月に1回は女子会を開催している。少し贅沢なランチを楽しむのだが、仕事と子育ての両立を図る女性同士の情報交換の場として絶好の機会になっているという。このランチの経費は会社が全額支給している。
 「社員だけでなく、その家族も同じように考えていただける。それが何よりも嬉しいですし、働く意欲にもつながります」
そんな萩原さんが目指しているのが英語力の向上。同社は外国籍の社員も多く、将来的には海外への事業展開も視野に入れている。その時に備えてのチャレンジという。アットホームな環境の中で次の目標を見出した萩原さんの表情は輝く。

body3-1.jpg仕事と子育ての両立で時間の使い方が上手になったという萩原有紀子さん

若手に仕事を任せてくれる。だから成長も早い

 営業を担当する渡辺裕さんは入社3年目の若手。ゼネコンや設計事務所といった、いわばプロの顧客のニーズを的確に聞き取り、シャッターの形状や材質を決めて、社内の設計・製造部門への伝達、さらに取り付けまでをコーディネートするという大役を担う。
 「若手社員でも仕事をどんどん任せてくれるのが横引シャッターの伝統です。その分、成長も早いのではないでしょうか。先輩から引き継いだお客様に通いながら受注を取り付け、お客様とシャッター仕様の打ち合わせから施工まで、すべてに関わるので責任は重いですが、その分やりがいは大きいです。最も達成感を感じる瞬間は、やはりシャッターの据え付けが終わった時ですね」
 渡辺さんが心がけているのは、チームとしての一体感。そのために設計や製造、そして施工を担当する職人さんとのコミュニケーションを密にするなど雰囲気づくりを大事にしているという。その背景には「現場の雰囲気が品質にもつながる」というこれまでの確かな仕事に裏打ちされた自信をのぞかせる。

body4-1.jpg積極的な若手への権限委譲が成長の源という渡辺裕さん

編集部メモ

極力ルールは作らず、お互いを支え合う配慮を重視

 女性社員の活躍を支援するために出産・育児休暇制度、あるいは時短制度などを導入する企業が増えている。しかし、横引シャッターでは複数のワーキングマザーが在籍しているにも関わらず、明文化された制度はあえて導入していない。ルール化することで制度が一人歩きをすることを回避するためだ。それよりも社員一人ひとりの希望に応じられるような配慮や、社員同士が支え合うことを重視する。
 「当社の社員は30数名。このくらいの人数ならば経営者もすべての社員の家族構成や状況を把握できます。そうした社員全員に目が行き届くのが小さな企業の良さだと思います。ですから制度化するよりも個々に対応したほうが、社員自身も働きやすいと考えています」(市川代表)
 同社が手がけるオーダーメイドのシャッター同様に、社員一人ひとりの状況に合わせて制度もオーダーメイドしているのだ。もちろん、社員同士が支え合うという意識も浸透しており、こうした社風が家族のような組織の一体感を生んで活力につながっているのだろう。