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中央・城北地区 ヨシモトポール株式会社

ヨシモトポール株式会社 「製・販・技」一体。部署を越えて助け合うことで全く新しい技術が生まれる

ヨシモトポール株式会社

「製・販・技」一体。部署を越えて助け合うことで全く新しい技術が生まれる

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中央・城北地区

ヨシモトポール株式会社

「製・販・技」一体。部署を越えて助け合うことで全く新しい技術が生まれる

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新技術開発プロジェクトストーリー
「製・販・技」一体。部署を越えて助け合うことで全く新しい技術が生まれる

 交通標識や街灯などを支えるポール。ヨシモトポールでは強度と安全性を担保した「トツレス」を開発。その業界の注目株トツレス誕生秘話に迫った。

全く新しい「トツレス」開口部

 交通標識や防犯カメラ、街灯や防災無線などを支える、街中にあふれる多種多様な「ポール」。多くのメーカーは、他の建築材料と合わせてポールの製造・販売を行っているが、ヨシモトポールはポールに特化して開発から製造、販売を行っている珍しい存在という。なるほど、ポールを平たくいうと電柱の類い。その構造は一見シンプル。しかし、ただ建てばそれでいいというわけではない。街灯やカメラといった設備を支えるポールには、それらを整備・点検するための開口部が必要になる。この穴が実に厄介。ポールに穴を開けるとその部分の強度が著しく下がり、折れてしまう危険性がある。そこで補強策として開口部に別途箱状のパーツを取り付け、蓋と補強の役割を担わせるという方法が編み出され、問題解決を図ってきた。しかし、この方法には大きな欠点があった。
 「角や出っ張りがあると、マフラーやスカートなどの衣服にひっかかったり、子どもがぶつかって怪我をしたりといった危険が生じます。そこで、出っ張りがない開口部を提案したんです」
 そう説明するのは開発担当で製品の糸口を見出した北村仁司さん。開けた穴のふちを内側に細かく折り込むことで断面積を増やし、強いポールを作れないかと考えたのだ。箱を溶接する必要がないため、溶接熱による影響もなくなり、耐久度も上げられる。これこそが出っ張り=凸のない、「トツレス」誕生のプロローグである。

body1-1.jpg同社開発の「トツレス」開口部。出っ張りのない美しいデザインだ

挑戦し続けることで、製造技術の確立に成功

 試作を担ったのは当時入社2年目の宮川拓弥さんだった。
 「ちょうど自分の主担当を持つ時期でもあったので、思い切って挑戦してみることにしたんです。いざ始まってみると失敗の連続。1年近く色々な方法を試しても失敗続きだったので、本当にこの方法で製品ができるのか、そもそも不可能なのではないかと不安になりました」
 トツレスを作るには、まず、実際の開口部よりも小さな穴をポールに開け、プレス機を使ってそのふちを内側に折り曲げていく。単純に折り曲げればいいというわけではなく、強度を保つために複雑な波状に曲げる必要があった。これがうまくいかない。何度やっても破れが生じる。試作をしてはプレス機にかけ、その破れ方を記録するという地道な作業の毎日。それは分厚いファイルで何冊にも及んだ。
 「1回成功しても、それが偶然の産物では意味がありません。確実に成功させるにはどうすればいいか、何故破れてしまうのか、北村も交えて何度も検証を重ねました。ようやく安定して製造できるようになるまで1年半を要しました」と宮川さん。実現できたのは、挑戦を厭わない社風というが、北村さん、宮川さんの飽くなき追求心があったことも想像に難くないだろう
 「トツレスのニーズは必ずある、この開発は世の中からきっと心待ちにされているという確信がありましたし、宮川をはじめ、ここまで頑張ってくれた仲間がいる。もう後には退けないぞという思いでした。まだこの世にないものを生み出すという、開発の醍醐味を改めて感じられた仕事でしたね」と北村さんは当時を振り返る。

body2-1.jpg宮川拓弥さん。手にしているのが「トツレス」だ

「製・販・技」一体でより良いものを生み出す

 完成したトツレスを手に営業に奔走したのが、営業担当の井口隆太朗さんだ。
 「市場のニーズを一番知っているのは我々営業。だからこそ、トツレスの開発を心待ちにしていました。1年半の思いが詰まった製品ですから、それに応えるだけ売り上げようと、およそ30kgのサンプルを抱えて走り回りました」
 従来のポールをトツレスに変えれば、安全性はもとより、景観美にもつながる。井口さんは絶対の自信を持って、官公庁や、ポールの設置工事を行う業者に足しげく通った。その結果、首都圏での大量発注につながった。トツレス全体としても、初年度の受注が200本にも達した。ポールそのものは滅多に変えるものではない上に、売り出したばかりの知名度のない製品でこの数字は快挙だったという。
 「トツレスの売り出しが2012年だったのですが、それ以降も右肩上がりで、2015年には初年度の10倍の受注がありました。まだまだシェアのない地域もありますから、今後は全国を飛び回って、もっとトツレスを広めていきたいです」と井口さん。一方で、「営業がこれだけ頑張ってくれると、作る側も気合が入る」と北村さんと宮川さんは口をそろえる。
 「営業の頑張りに応えるためにも、もっと作業工程を分析したり、作業者のアイデアを試したりして、製造を効率化しようと取り組んでいます」(宮川さん)
 営業がニーズを吸い上げ、それを元に新製品の提案や技術開発をし、そして製造を行う。営業が製品を売り、それを受けて量産体制の強化や製品の改良をする。正に、「製・販・技」が一体となって会社全体を盛り上げているというわけだ。
 「これからも開発や改良の意見はどんどん出していきたいですし、若手も意見を言えるように育てていきたいですね。自分の持っていない知識や技術を持つ仲間がいるので、一人ではできないことも成し遂げられる、これが当社の大きな強みですから」(北村さん)

body3-1.jpg井口隆太朗さんは、「実物を見ていただくのが一番」と、重いサンプルを手に営業先を回った

編集部メモ

「NETIS」登録、「発明奨励賞」受賞


 様々な苦労を経て、製造・販売にこぎつけたトツレスだが、その技術は多くの受注という形以外でも高い評価を受けている。その一つが、国土交通省「NETIS」への登録だ。これは、新技術に関わる情報の共有や提供を目的とした新技術情報システムで、「新しく、優れた技術」だという証左になる。
 また、2016年度関東地方発明表彰においては発明奨励賞を受賞している。同賞は、公益社団法人発明協会が1921(大正10)年から開催している歴史あるもので、ヨシモトポールの高い技術が認められた結果といえる。
 「賞などはあくまで付随してくるものですが、やはり技術や製品を認められるのは嬉しいもの。現状に甘んじず、トツレスに次ぐポールが生み出せるように頑張りたいです」と北村さん。さらなる技術改良、そして新技術開発への意気込みを熱く語ってくれた。

edit-1.jpg石原晴久社長(写真中央)を中心に、全社一体となって日本のインフラを陰ながら支えていく
  • 社名:ヨシモトポール株式会社
  • 設立年・創業年:設立年1961年
  • 資本金:3億円
  • 代表者名:代表取締役社長 石原 晴久
  • 従業員数:270名(内、女性従業員数45名)
  • 所在地:100-0006 東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル7階
  • TEL:03-3214-1551
  • URL:http://ypole.co.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください