1973年、乳がん手術後の補正具・専用下着メーカーとして設立されたユコー。同社が目指すのは、乳がんの治療中・手術後のトータルケアだ。戎谷（えびすや） 社長は次のように話す。
　「最初はパッドを中心に作っていましたが、パッドだけでは傷跡を十分に隠せなかったことから下着も製造するようになりました。『乳がんの手術をした人が、もとの生活と変わらない生活ができるように』との思いで商品を開発・販売しています」
　同社はその後も「お客様が喜んでくれるものを作ろう」との考えの基、新商品の開発の際は、社員や病院の医師・看護師の意見も積極的に取り入れながら商品の幅を広げてきた。海外からも商品情報をこまめに収集しており、時には商品を輸入することもある。また、特注サイズ品の製造・販売や、サイズ直しにも対応。コーディネーターとして働く山本さんは、次のように話す。
　「お客様に合わせて商品を微調整することもあります。手直しをすることで『付け心地が良くなった』と言っていただけると嬉しいですね」

幅広い商品を取り扱う同社。社内には専用フィッティングルームも設けている

　同社の接客の特徴は、親身できめ細かい対応にある。下着のサイズは体型によって異なるため、販売を担うコーディネーターたちは様々な工夫を凝らし、最善のものを提案する。「他のお店では合うものがないと断られたけれど、ユコーには合うものがあった」と喜ばれる機会も多い。コーディネーターとして働く入社３年目の山本さんは、「術後の状態は人それぞれ。ご提案を喜んでいただけた時は嬉しいです」と話す。
　また、病気のことを他人に知られたくない人も多いため、個人情報の保護にも最大限の配慮をしている。以前はカーテンだった試着室の入り口をドアにするなど、お客様の不安を取り除くための工夫も欠かさない。
　同じくコーディネーターの塩川さんも、「お客様に信頼していただき、安心して任せていただけることにやりがいを感じます。気持ちが落ち込んでいたお客様が、『これで安心して仕事に行ける』『これからは笑顔で過ごせる』と言ってくださった時は、この仕事をしていて良かったと思いました」と話す。

「何かあれば社長や企画部長に直接話をすることができる風通しの良さも当社の魅力の一つです」と話す塩川さん

　同社のコーディネーターは全国各地の病院やお客様の元を日々訪問しており、「会いに行く」ことに重点を置いている。コーディネーターにはそれぞれ担当エリアがあり、地方の病院などを訪問してお客様の相談に乗り、採寸を行う。体型が変わるとサイズも変わるため、お客様から問合せがあれば自宅を訪問することもある。「一度売ったら終わり」ではないのが大きな特徴だ。
　「いろいろなところに行きたい方、動き回ることが好きな方には合う会社だと思います。年配のお客様と接する機会も多いので、お客様から学ぶことも多いです」（山本さん）
　さらに戎谷（えびすや） 社長は、「お客様に安心してもらえるよう、社員にはいろいろな知識を身に付けてもらいたい」と話す。実際、同社の研修や教育は手厚く、入社時には基本的なビジネスマナーを学ぶ研修を受講するほか、配属先に合わせて商品知識などを学ぶ機会が設けられる。
　一方で、女性社員が多い同社では、子育てや介護をしながら働く社員も多数いる。休みの予定があらかじめ分かっている時は前もってスケジュールを組むことで対応。産前産後休業・育児休業からの復帰後は短時間勤務も可能だ。
　「急な休みの時も、お互い様の精神で助け合える体制を整えています」と戎谷（えびすや） 社長。お客様から社員まで、女性の人生のサポートに真摯に取り組み続けている。

製品の設計も行う戎谷取締役企画部長（左）と、戎谷社長（右）