<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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千蔵工業 株式会社

千蔵工業 株式会社 礼法に則った開閉、音声で案内――。自動ドアの進化を促す<br>ビル、店舗、病院、工場など、社会の至るところで使われる自動ドアの制御装置メーカー。多様な用途に合わせた最適な制御を追い求め、研究開発に注力

千蔵工業 株式会社

礼法に則った開閉、音声で案内――。自動ドアの進化を促す
ビル、店舗、病院、工場など、社会の至るところで使われる自動ドアの制御装置メーカー。多様な用途に合わせた最適な制御を追い求め、研究開発に注力

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輝く技術 光る企業

千蔵工業 株式会社

礼法に則った開閉、音声で案内――。自動ドアの進化を促す ビル、店舗、病院、工場など、社会の至るところで使われる自動ドアの制御装置メーカー。多様な用途に合わせた最適な制御を追い求め、研究開発に注力

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  • 社名:千蔵工業 株式会社
  • 設立年月:1964年10月
  • 資本金:3,840万円
  • 従業員数:84名
  • 代表者:代表取締役社長 吉田 敬
  • 社員平均年齢:51歳
  • 主な勤務地:東京都大田区千鳥
  • 休日:土日祝日、有給休暇、慶弔、夏季・年末年始休暇
  • 本社所在地:東京都大田区千鳥2-38-5
  • 電話番号:03-3758-2871
  • 公式HP:http://www.entrard.co.jp/chikura/
  • ・出入口、防火扉、多目的トイレなどの自動ドア制御装置を開発
  • ・数段階減速でドアを閉める。日本流心配りが転機を生む
  • ・放射線遮蔽、数カ国語で案内。自動ドアを進化させる研究開発
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業種

自動ドア開閉装置の開発・製造

事業紹介

多様化する社会に高度なテクノロジーでお応えする寺岡自動ドアの総合メーカーである千蔵工業。私たちは、新しい自動ドアの在り方を通して『人と空間の理想的な調和』を目指しています。

当社は、創立以来一貫して自動扉装置の開発・設計・製造を行い、総発売元である寺岡オートドア株式会社を通じて日本全国に製品を販売し、現代建築の中で扉の開閉を自動化することによって、開口部における通行の円滑化、衛生化、空調エネルギーの節減に貢献してまいりました。

また、最近は電算機室など機密を要するところの開口部や集合住宅の玄関における扉の入室管理機構、クリーンルームに必要なエアシャワー室のシステム開発等、自動扉としての新しい分野を開発形成してきました。

自動扉はその開閉様式からスライドとスイングの二つに大別されますが、用途面からは店舗・ビルなどの一般建築用と、工場・倉庫などの産業用に分かれます。当社はそのほとんどに手掛けており、保有している機種は豊富で組み合わせも多岐にわたり、産院から老人ホームに至るまで、IC工場から清掃工場に至るまで社会のいたるところで製品が活躍しております。

当社は、全社員が『奉仕の自動ドア』をモットーにこの仕事に誇りと情熱を持ってひたむきに取り組んでおります。

【事業内容】 出入口、防火扉、多目的トイレなどの自動ドア制御装置を開発

普段何気なく使っている自動ドア。そのドアを開閉する制御装置を開発・製造しているのが千蔵工業だ。国内にある自動ドアの約15%を同社の装置が動かしている。 ビルや店舗の出入口だけでなく、火災時に炎上を防ぐ防火扉、工場・病院・給食センターなどの入口でほこりを落とすエアシャワー室などでも自動ドアは必要。そうした用途ごとに求められる機能は違うため、「重いドアを動かす」「速く閉める」「音声で案内してくれる」など、用途ごとに最適な装置を開発してきた。 そのように多様な制御装置を手掛けてきた中でも、看板製品の1つになっているのが、多目的トイレのドア制御装置。駅や空港など、国内で6000台以上を出荷した実績がある。

03.jpg 2008年に完成した本社第二ビル。
明るく気持ちよく働ける環境だ

【プロジェクト】 数段階減速でドアを閉める。日本流心配りが転機を生む

千蔵工業の前身、寺岡研究所が設立されたのは1960年。当時は自動ドアを動かすのに、主に油圧が使われていた。しかし、油圧式では寒い地域・季節になると油の粘度が上がり、自動ドアの動きが鈍くなってしまう。そこで同社は、モーター制御を採用することで、その欠点を克服しようと考えた。 転機になったのは、1963年に発売した「SOV-200K」という自動ドアだ。SOV-200Kでは、モーターの回転数を変えることでドアの開閉速度を自在に制御できる利点に着目。ふすまの閉め方を定めた日本の礼法を参考に、自動ドアを閉めるときに数段階に分けて減速する仕組みにした。 そんな心配りが好評を博し、SOV-200Kは人気製品に。銀行や病院など、多くの建物で導入された。

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【職場自慢】 放射線遮蔽、数カ国語で案内。自動ドアを進化させる研究開発

そのような背景・歴史もあって、千蔵工業は常に自動ドアの研究開発に力を入れている。 現在、研究開発を進めているのは、病院の放射線治療室からの放射線漏れを防ぐドアや、年々増える海外からの観光客向けに数カ国語で操作方法を案内できる多目的ドアに使う制御装置など。社長自らが技術部に毎朝足を運び、社員1人1人から研究開発の進み具合を確認している。 時間をかけてじっくりと研究開発に取り組ませる方針で、完成間近になれば複数の協力会社に参加してもらい、製品を審査するデザインレビューを開催。技術者がやりがいを感じながら働ける職場となっている。

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社長メッセージ
創業から50年。今後も事業を継続し、後進を育てていきたい

代表取締役社長
吉田 敬さん
――さまざまな制御装置を手掛けている中で、特に貴社の強みを生かせた装置としては、どんなものがありますか? 最近になって、駅のプラットホームからの転落防止のため、電車が到着したときだけ開く自動ドアを設置することが増えてきました。日本だけでなく海外でも需要が増えていまして、当社で開発した制御装置をシンガポール・香港・ドバイなどに向けて輸出したことがあります。 そうしたプラットホームに設置する自動ドアの制御装置は、当社がこれまでに蓄えた技術・ノウハウを結集して作り上げたものです。電車が到着したときだけ開くように中央司令室のシステムと連動させて開閉を制御したり、音声で電車到着の案内を流したり、ドアの開閉速度を工夫したりと当社の持つさまざまな技術・ノウハウを盛り込んでいます。 海外に向けて輸出するとなると、いくつか課題が出てきます。海外では電源の電圧が日本と違っていますし、「安全な製品である」と保証するために各国で通用する認証をそれぞれ取得する必要もあります。 それでも、インドネシアやベトナム、韓国、オーストラリアなどからは継続的に注文が入るようになってきました。課題を1つずつ乗り越えながら、今後さらに海外からの注文を増やしていきたいです。 「継続は力なり」です。コツコツと働いていれば、いつかは成功できます。途中で諦めずに続けることが大切です。 後進を育ててより強い会社にしていくには、事業を継続していかなくてはいけません。当社は2014年で創業50年を迎えましたが、今後も今の事業を続け、若い社員を育てられる会社であり続けたいと考えています。 「社員を育てる」という意味では、当社には最近、他社で優れた実績を残した技術者が何人も転職してきてくれています。彼らのおかげで、当社の研究開発は大いに助けられ、周りの技術者にとってもいい刺激になっているようです。 そうした優れた人材こそが、会社にとって一番大事なものではないでしょうか。優秀な人材に「千蔵工業で働きたい」と思ってもらえるような職場づくりに努めています。

06.jpg 代表取締役社長 吉田 敬さん

先輩メッセージ
安全・確実・壊れずに動作する製品開発を目指し、こだわりを持ってじっくり働ける

技術部 研究開発課
大西さん
――どんな経緯があって、この会社で働くようになったのでしょうか。 あらゆる人が利用して、安全・確実・快適に動くインフラを整える仕事をしたいと学生のころから考えていました。 大学時代の専攻は電気関連で、就職活動時は専攻を生かしてPCの周辺機器メーカーに就職。そこから転職することになり、当初の希望を思い出し、インフラ関連のメーカーを探してみたのです。 そんな経緯があって当社と巡り会ったのですが、実は当社のことは子供のころから知っていました。私は北海道出身でして、北海道では当社の自動ドアが至るところに設置されていたのです。会社のことを調べていくうちに、「あっ、このロゴは見たことがあるな。地元の自動ドアを作っている会社だったのか」と気が付きましたね。 自動ドアを制御するコントローラーを設計・開発しています。 「自動ドア」と言えば、ドアが開いて閉じる機能を思い出す人が多いでしょう。ですが実際には、それ以外にもさまざまな機能が必要とされています。 多目的トイレであれば、ドア付近のボタンを押すだけで開閉する仕組みが必要ですし、食品工場に納品するドアには、手洗いなどがしっかりできている人が通るときだけドアが開く機能が求められます。 そういった機能がある中で、私が今取り組んでいるのは、音声案内機能の開発です。多目的トイレなどで利用者が自動ドアのボタンの使い方が分からないときに、音声で説明してくれる装置を作ろうとしています。 自動ドアの動作を試験する装置を開発したことがあります。その装置を使って何度も繰り返しドアを開閉させることで、これまでに気付かなかった問題点がないかと耐久性を検証するのです。 その装置が完成して、自動ドアを試験してみたところ、「この種類の自動ドアは、こんなところから故障しやすい」といったことが分かるようになりました。 そうして得られたデータが、今後の製品開発に役立てられることになります。私の開発した試験装置が会社に貢献できたと実感できて、うれしかったですね。 開発中の多目的トイレで使うボタンの動作確認をする技術部の大西さん 開発中の多目的トイレで使うボタンの 動作を確認 1つの製品開発にかける期間を、長めに取ってくれるところですね。腰を据えて研究開発に取り組むことができます。 前職では3カ月に1つは製品を開発することが求められていましたので、どうしても妥協するところが出てきてしまい、葛藤を覚えることもありました。 一方、当社の製品は多くの人が利用するものですから、とにかく安全・確実・壊れずに動作することが求められます。品質最優先で開発することができますので、技術者としてのこだわりを持ってじっくり仕事に取り組めます。 今担当している音声案内の装置は、自動ドアを制御するコントローラーの付属品として使われるものです。自動ドアの頭脳とも言えるコントローラー本体の設計には多くのノウハウが必要で、過去の製品に関する知識など、覚えることがたくさんあります。 当面は付属品の開発を通して知識・ノウハウを身に付けていき、いつかは本体の設計を任されたいですね。 「どこでもいいから就職すること」を目標にはしないでください。「自分のやりたいこと」を仕事にしないと、仕事をしていて苦痛に感じることが多くなってしまいますから。 まずは自分自身を見つめ、「自分のやりたいこと」を分析するところから始め、それを仕事にできる会社を探してください。そこで働くことを目標にしてほしいですね。

07.jpg 技術部 研究開発課 大西さん
05.jpg 開発中の多目的トイレで使うボタンの
動作を確認

先輩メッセージ
海外輸出を増やすため、大手企業・公的機関と相談。有効な海外展開の手段を探る

事業開発部
李さん
――この会社に入社するまでのことを教えてください。 以前に働いていた会社を退職してからは、しばらくの間、海外ボランティアに参加していました。ボランティアの活動が落ち着き、転職活動を始めたころ、知人から「海外輸出を拡大するため、人材を募集している企業がある」と聞き、語学を生かせると同時に、これまでと異なる業界・職種を経験できると思い、応募させて頂きました。 今事業開発部に所属している私に求められている業務は、まず当社の輸出量をさらに増やすことです。ただ、人材も資金も限られている中小企業が単独で輸出を拡大していくことは負荷が大きいです。そのため、大手企業と協力して当社の自動ドアを売り込んでいけないかと商談を進めたり、中小企業の海外進出を支援してくれる公的機関に相談したりしながら、有力な海外展開の手段を探っているところです。 また、中途入社社員の立場を生かし、社内改善活動にも積極的に関わっています。 具体的な例を挙げると、少人数単位で行なっている社内QCサークル活動(工夫改善活動)のやり方を見直してみてはどうかと提案したことです。 「製品の品質」とは言っても、社員によって捉え方がまちまちです。「製品が頑丈であれば品質がいい」と考える人もいれば、「お客様に満足してもらえる製品こそが優れている」と考える人もいます。「丈夫な製品を造るための改善活動なのか」或いは「顧客満足を高めるための改善活動なのか」、活動目的が統一されていないと目指す方向がばらばらで話がかみ合わず、時間だけが過ぎていってしまう恐れがあると感じました。 そこで私は全員の意識をそろえる必要があると思い、まず同じQCサークルメンバーにアンケートを取り、皆の意識の相違点・共通点を洗い出しました。その後、結果を共有し、それに基づき改善活動を通して私たちが目指すべきことは何かを全員で話し合うことができました。 前職はサービス業で、形のないものを提供していましたが、製造業ですと、どんな部品をどこから仕入れ、誰がどのように加工して、製品として仕上がるのか、といった付加価値形成の一連工程を目にすることができます。この点は製造業ならではの魅力だと思います。 ただ、当社の製品は消費者向けのものではなく、建築関連の企業様が顧客になりますので、 専門知識が豊富なお客様に製品の強み・利点を説明するのはなかなか難しいです。このハードルを工夫して乗り越えていくことこそ、千蔵工業で働く醍醐味ではないかと思います。 今後は、新入社員に少しでも早く仕事を覚えてもらえるように、研修制度を整えていきたいですね。 大手企業なら計画的に新卒社員を大量採用して、一斉に研修を行ないますが、当社のような中小企業では、必要に応じての都度採用が主で、研修もOJTをメインに現場任せで実施しているのが現状です。 当社は今後も事業拡大をしていく予定であり、そのために仕事を担える人材を計画的に採用・育成する必要があります。 OJTのみならず、OFF-JTも組み合わせ、組織力を更に高められるように、研修制度を整備していきたいです。 最近は、多くの企業がインターンシップを開催していますが、インターンは実際に企業で働くことを模擬体験できる貴重な機会です。インターンを通して、自分に向いている仕事、向いていない仕事が感覚的に大なり小なり分かってきます。また、入社後に「思っていたのと違う」と不満を抱くこともありますから、ぜひインターンに積極的に参加し、期待と現実の垣根を出来る限りなくしてみてください。 注)掲載している情報は、取材日(2014年10月)時点のものです。

08.jpg 事業開発部 李さん
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