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株式会社EME

株式会社EME 高機能素材作りという上流から最先端のモノづくりを支える専用ミキサー<br>少人数でも存在感のある企業であるよう、社員を多機能技術者として育てて“ファミリー”として大切に扱う研究開発企業

株式会社EME

高機能素材作りという上流から最先端のモノづくりを支える専用ミキサー
少人数でも存在感のある企業であるよう、社員を多機能技術者として育てて“ファミリー”として大切に扱う研究開発企業

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輝く技術 光る企業

株式会社EME

高機能素材作りという上流から最先端のモノづくりを支える専用ミキサー 少人数でも存在感のある企業であるよう、社員を多機能技術者として育てて“ファミリー”として大切に扱う研究開発企業

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  • 社名:株式会社EME
  • 設立年月:1996年4月
  • 資本金:1500万円
  • 代表者:代表取締役 今城 康隆
  • 本社所在地:東京都品川区東五反田1-2-25
  • 電話番号:03-3445-0277
  • 公式HP:http://www.eme.co.jp/
  • 社員数はわずか十数名だが、世界にある液晶メーカーや素材メーカーの8〜9割で導入されるなど、さまざまなモノづくりの分野を上流から支える装置を研究開発する企業がある。大手総合電機メーカー出身の社長が心掛けているのは、社員に複数の業務を経験させて多機能技術者として育てていくこと。その背景には、社員を小さな分野に縛り付けるのではなく、大きく育ってほしいと願う“親心”があった。
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液晶テレビはじめ、最先端のモノづくりに欠かせない専用ミキサー

IT製品などの最新製品が備える機能は、ますます高度なものになってきている。しかし、無から有が生じるわけではない。高機能な製品を作るためには、高度な機能を備えた素材がないと話は始まらない。そして高機能素材を生み出すためには、たいていの場合、素材同士を混ぜ合わせる工程が必要。そのために使う専用ミキサーの性能が、最終製品にまで大きな影響を与えるようになってきている。 「ミキサーで混ぜた素材は、ごく少量を点で打ったり、線を引いたり、あるいはフィルム状にして使います。どの場合でも共通して言えることは、泡が入ってしまうと不良品になってしまうこと。また均一に分散されていないとむらが生じ均等の品質が得られない。当社のミキサーは、ニュートンの第二法則やボイル・シャルルの法則といった基本的な力学を使い、真空状態にして素材を混ぜ合わせることで、均等分散かつ泡を取り除く仕組みになっています」と説明してくれたのは株式会社EMEの代表取締役である今城康隆氏。大手総合電機メーカーに勤めていた今城氏は、バブル崩壊後の1996年に「何か新しいことを始めよう」と思い立って同社を創業。真空撹拌脱泡ミキサーを世界に先駆けて実用化し、それ以来、ミキサーの開発・製造を軸に事業を展開してきた。 EMEのミキサーは、IT製品から素材まで、導入されている分野は実にさまざま。製品量産用の材料を製造する目的で導入する企業もあれば、研究者が新素材の研究開発目的で買い求めることもある。その中でも特に、テレビ、スマートフォン、カーナビなどのIT製品のメーカーにとってはまさに必需品。同社のミキサーが約8〜9割もの企業に導入されている。 「ミキサーの基本的なメカニズムは、業界が変わっても変わりません。ですが、お客様ごとに撹拌する素材が違いますから、容器や治具類はその都度開発します。 例えば、撹拌時には摩擦発熱で温度が上がりますが、一定の温度以上になると変質して使えなくなってしまう材料がありました。その時には、壁を二重にして中に冷却材を入れた容器を開発し、温度上昇を防ぐように対応しました。 容器や治具類の開発にも当社独自のノウハウがあります。海外メーカーが何度もまねしようとしたらしいのですが、できていないのです。やはりこういうモノづくりの技術が、日本の強さなのではないでしょうか」(今城氏)

03.jpg 代表取締役 今城 康隆 さん

社員も外注先パートナーも “ファミリー”

モノづくりを上流から支える同社だが、社員数はわずか十数名。会社としての強みを発揮できるよう、今城氏は大手企業とは一線を画した組織づくりを心掛けている。 「当社には営業、設計、技術、フィールドエンジニアリング、外注管理といった業務がありまして、それぞれ担当の部長がいます。その下にはアシスタントが付いているのですが、アシスタントの仕事は数年でローテーションさせたり複数の部門を兼務させています。 中小企業の場合、大企業のように一つの分野を深くやろうとしても、資金はありませんし、巨大な研究設備があるわけでもないのです。その代わりにいろいろな経験を積ませてあげて、社員を多機能技術者として育てることが必要だと考えています。それが社員にとってもメリットになるはずです。一つの部署、小さな分野で『ここだけやっておけ』というのが仕事では、かわいそうだと思うのです。 製造部門を自社で持たないようにしているのも、考えあってのこと。先の冷却二重容器は、板を何枚も重ねて形作っているのですが、当社の技術だけではできません。一緒に作ってくれるパートナーの力が必要です。私は社員も外注先のパートナーも“ファミリー”だと思って会社を経営しています」(今城氏)。

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今後の日本のモノづくりを担うには、国際感覚を身に付けることが重要

かつては総合電機メーカーの技術者として、そして現在はベンチャー企業の社長としてモノづくりに携わる今城氏は、モノづくりの行く末を予測した上で、若手に向けて海外経験を積むよう勧めている。 「これから日本を担う若い人たちにとって、実はあまり選択肢がないと思うのです。一つは、企業がどんどん海外へ出て行くのですから、語学を学び、いろいろなことを経験して海外へ出て行くこと。そしてもう一つ、日本に残って生きる道は、オンリーワンかナンバーワンのものを作ることです。 いずれにしても、1年くらいは海外を遊学してみると良いでしょう。海外ツアーに参加するのでは、受身のままですから意味がありません。チケットの手配から為替の交換、現地での買物まで、全部自分で経験してみることです。いろいろな国の習慣や物の考え方を知って、国際感覚を身に付けることこそが、今の若い人たちにとって必要なことになるはずです」(今城氏)

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先輩メッセージ
社員全員が技術屋であり、「技術をどう使うかが重要」という社長の考えを実践

営業推進部兼セールスエンジニアリング部 部長代理
小林さん

――業務内容についてお聞かせください。
営業推進や販売の業務を担当しています。以前はプロセス制御関連の設計・プログラミングをやっていましたから、お客様の要望に応じてソフト開発をすることもあります。 当社では、どの部署も全員が技術屋です。それぞれが技術を持っていながら、「技術をどう使うかが重要だ」という社長の考えを実践しようと、部署の垣根を越えて自分の技術を活かせるように仕事をしています。 「どの部署に所属しているか」ではなく、「何をやっているのか」ということを重視する社風に、居心地の良さを感じていますね。 最低限のルールはありますが、裁量が大きく、自由に仕事ができる環境です。どの社員も知識が豊富ですし、取引先企業の担当者様にもいろいろな専門性を持つ方がいらっしゃいます。打ち合わせなどを通じて、知らないうちにたくさんのことを吸収できます。
――読者に向けたメッセージなど、お願いいたします。
当社はベンチャー企業ですが、中小企業の良さは「ちょっとしたことでも実現しやすいところ」だと思います。普通なら「業務外で関係ない」「興味ない」で終わってしまうような話でも一緒になって真剣に考えてくれる社員が身近にいることが、ベンチャーで働く一番の魅力なのではないでしょうか。 学生さんには、会社自体のネームバリューで就職先を決めてほしくないですね。「自分にはこんな仕事ができるはず」「この会社なら自分のこんな知識・経験を活かせるだろう」といったことを考えた上で、自分の道筋を決めていってほしいです。

07.jpg 小林さん

設計・製造・販売という一連の流れを早い段階で学べたことが自分の糧に

営業推進部兼セールスエンジニアリング部 主任
小坂さん

――入社されるまでの経緯について教えてください。
大学の研究室の教授が当社の社長と大学時代の同期でして、卒業論文にも協力いただいた縁で、当社に入社しました。CADには慣れていましたから、1年目から設計を任されまして、容器や充填器の開発に携わっています。台湾や韓国などのメーカーに納品する際にも立ち会うなど、早い段階で、設計・製造・販売という一連の流れを見ることができまして、非常に勉強になっています。 設計の仕事だけではなく、評価や検査の業務まですべて自分でやれるところにやりがいを感じます。おかげで引き出しが増えまして、お客様の要望に対して「どうすれば実現できるか」ということを頭の中で素早く組み立てられるようになりました。こだわりゆえに上司と意見がぶつかる場合もありますが、自分の主張が正しい場合もあれば、間違っていることもあります。失敗しそうだと感じたらすぐに戻るようにしていますが、そんなことを繰り返すことで、お客様の求めるものに近づけられるのだと思います。 当社で働いていると、トップメーカーや大学の研究者の方とつながりが生まれます。今後はそうした方々との信頼を深めていって、情報を共有していただけるような関係を築くことで、自らの成長を促していきたいと考えています。
――最後に、これから世に出る学生に向けてアドバイスをいただけないでしょうか。
社会に出たら、好奇心を持って仕事に臨むようにしてください。目の前のものに対して、どれだけ興味を持てるか。興味さえあれば、仕事はどんどん覚えられますから。

08.jpg 小坂さん