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深中メッキ工業株式会社

深中メッキ工業株式会社 世界シェア100%を実現した1マイクロメートル単位の超薄型めっき技術<br>失敗を重ねながらも次につなげて世界最高峰の技術を開発した文系社長。重視するのは社員同士の気持ちの通じ合い

深中メッキ工業株式会社

世界シェア100%を実現した1マイクロメートル単位の超薄型めっき技術
失敗を重ねながらも次につなげて世界最高峰の技術を開発した文系社長。重視するのは社員同士の気持ちの通じ合い

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輝く技術 光る企業

深中メッキ工業株式会社

世界シェア100%を実現した1マイクロメートル単位の超薄型めっき技術 失敗を重ねながらも次につなげて世界最高峰の技術を開発した文系社長。重視するのは社員同士の気持ちの通じ合い

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  • 社名:深中メッキ工業株式会社
  • 設立年月:1953年5月
  • 資本金:2400万円
  • 従業員数:-
  • 代表者:代表取締役 深田 稔
  • 社員平均年齢:-
  • 初任給:-
  • 主な勤務地:-
  • 休日:-
  • 本社所在地:東京都墨田区立花5-11-7
  • 電話番号:03-3613-1551
  • 公式HP:http://www.fukanaka.co.jp/
  • 世界的に見ても「この会社にしかできない」技術を持つことができれば、世界シェア100%だって夢ではない。深中メッキ工業株式会社は、まさにそれを体現した企業だ。1マイクロメートル単位で厚さを変えることができる超薄型のめっき技術を持ち、リチウム電池が普及するのにも大きく貢献した。けれど、同社の社長は文系出身。そのハンデを乗り越えるために努力を積み重ね、苦労の末、ようやく世界に誇れる技術を生み出したのだ。
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事業紹介

我々は生をこの世にうける先人先輩の創られた輝かしい文明文化の恩恵に浴しており、そのお陰でより高度の生活ができる訳であります。
弊社はめっき事業を通じてこの恩恵に報いるため、事業を経営しております。即ち事業は人を幸福にするための手段方法であって、目的ではありません。事業の目的は、人間の幸福に貢献する事であります。従って社員一人一人が立派な品性の持ち主になり、この大理想に向かって努力する事であり、立派な品性の人間が経営する会社は必ず立派な会社であります。
そして、その目的は、利益の追求ではなく、社会性の追求にあります。
弊社はこの信念の下に日々努力を致しております。

1マイクロメートル単位で加工する超薄型めっき技術

「外見を良くするために使うめっきもありますが、当社のめっきは機能を向上させるためのものです。性能を上げることが目的ですから、装飾目的に使うめっきのようにきれいな仕上がりにはなりません。ですが、当社のめっきを掛けた部品は、世界中のどこの自動車メーカーでも使われています」と自社の事業について語るのは、深中メッキ工業株式会社の代表取締役を務める深田稔氏。1953年に設立された同社は、金属の電導性などの機能性を向上させる機能めっき、その中でも特に超薄型のめっき加工をする技術で、世界にその名が知られている。 例えば、携帯電話などに欠かせないリチウム電池。リチウム電池が登場した当初に課題となったのは、安全基準を満たすため、膜厚3マイクロメートルという薄さで、ニッケルめっきを均一に被せなくてはいけないこと。大手企業ですらさじを投げたが、それに初めて成功したのが深中メッキ工業だ。以来、超薄型のめっき加工技術に磨きを掛け、今では1マイクロメートルの単位でめっきの厚さを変えられるほどの技術を有している。 同社にしかできない超薄型のめっき処理技術を頼りにするメーカーも数多い。世界シェアで見ても、テレビ関連のある部品では70%以上、コピー機で使われる部品の中には何とシェア100%のものさえあるほどだ。

03.jpg 代表取締役 深田 稔 さん

文系出身で失敗もたくさんしたが、着実に技術を磨いて世界に誇れる技術をついに生み出す

そんな世界的に見ても最高峰にあるめっき技術の開発を牽引した深田氏とは、一体どんな人物なのだろうか。実のところ、深田氏は理系ではなく文系出身。深中メッキ工業で働くようになってから、必死になって技術を身に付けたのだ。 「私は元々、大手菓子メーカーに勤めていました。兄が深中メッキ工業を継いでいたのですが、事情があってどうしても私が会社を継がなくてはならなくなったのです。 運が悪いことは重なるもので、その後すぐに、父が他界してしまいました。めっき技術を伝授されることもなく、会社経営の責任を負うことになりました。 大学では経済を専攻していましたが、モノづくりの知識は、中学校の理科程度。水の化学式が『H2O』だとは分かっていても、水と硫酸の混ぜ方なんて分かりません。溶液を沸騰させてしまうなど、失敗もたくさんしました。本当にドラマのような日々でしたね」(深田氏) しかし、失敗しても必ず検証して次につなげるように心掛け、着実にめっき技術を習得していく。世界に誇る超薄型めっき技術が生まれたのも、その姿勢があったからこそ。研究開発の期間は6カ月にも及び、数え切れないほどの困難な壁にぶつかった。だが、最後まであきらめず一つ一つ壁を乗り越えていくことで、ようやく完成にまで漕ぎ着けたのだ。 「めっきは靴磨きと共通する部分があります。自分から物を作るのではなく、誰かに依頼されてやる仕事です。ですから、『モノづくりをやりたい』と思って飛び込んできた人にとっては、不満を感じる仕事なのかもしれません。 けれど、超薄型めっきを開発できたことで、『世界に誇れる技術が開発できた』という自負を持てるようになりました。当社の社員は開発に成功して以降、それまでよりもさらにやる気を持って仕事に取り組んでくれるようになりました。やる気を持ってもらうことの大切さを肌で感じましたね」(深田氏)

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町工場で働く意味や面白さは、社員同士の気持ちが通じ合うところにある

東京商工会議所の選ぶ「勇気ある経営大賞」にも選ばれた深田氏だが、偉ぶるところなく、これからも社員と一丸になって新技術の開発に取り組んでいきたいと語っている。 「大手企業と町工場の違いは、突き詰めていくと『人』になると思うのです。 当社では土・日・祝日に休日出勤してくれた社員には、お昼のお弁当を普段よりも1品増やして豪華にするようにしています。リーマンショックの直後は、売上が急減しましたが、それでも社員の給与を1円も下げませんでした。 社員のことを本気で考えること。そうすることで、町工場でも世界に通用する力を生み出せるのだと考えています。リーマンショック後も、社員の力を借りることで、最終的には何の犠牲もださずに利益を出せる水準にまで、売上を回復させることができました。 町工場で働く意味や面白さは、そうした社員同士の気持ちが通じ合うところにあると思うのです」(深田氏)

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先輩メッセージ
めっきは高度な技術がいる仕事。失敗と研究の連続です

製造部
小林さん
――深中メッキ工業を知ったきっかけは?
インターネットで調べていた時に、偶然ホームページを見つけました。「自宅の近くにこんな会社があるのか」と思いましたね。めっきを事業としている会社があるのだと。 小さいころからモノづくりが好きだったのです。図工は得意でした。身体や手先を動かす仕事の方が向いているのではないかと思い、入社を希望したのです。
――仕事内容について教えてください。
ニッケルめっきを担当しています。まずは表面処理をして、きれいにしてからめっきを掛けます。上手くめっきが付くときれいな金色になるのですが、失敗した時は輝くような金色にならず、成功したかどうかが如実に分かります。 ニッケルめっきは強度が弱くもろいので、被膜を上手く密着させるのが難しいのです。めっき掛けの成否には、温度や湿度も微妙にかかわってきます。温度や湿度を確認しながらめっきを掛けるようにしていますが、やってみないと分からないところもあり、作業のたびに挑戦するような気持ちになります。 めっきの技術は入社してから教えてもらいましたが、入社してから初めて「高度な技術がいる仕事だ」と感じました。 どんなめっきでも、基本的な工程は変わりません。ですが、どの工程の作業をするにしても、一発勝負のところがあります。慎重に慎重を重ねて取り組んでいますが、それでもめっきが上手く付かないこともあります。失敗することもあるので、その時は落ち込んでしまいますね。 微妙な加減でめっきが掛かったり掛からなかったりしますので、原因がはっきり分からないこともあり、そのことがめっきの掛け方を難しくしています。失敗と研究の連続ですね。
――お仕事をされる中で、印象に残っていることは?
当社の社長が2010年9月に、東京都商工会議所の「勇気ある経営大賞」優秀賞に選ばれたことです。 社長への取材が頻繁に入りまして、都内や近県、全国からも会社見学に来られる方がたくさんいらっしゃいました。受賞後はいろいろな新聞や雑誌に取り上げられたので、事務所に行くと取材記事のコピーがよく置いてありました。 先日もテレビ番組で当社が取り上げられていました。取材を受けている時はどんな映像になるか見当も付きませんでしたが、実際の放映を見てみたら感動しましたね。

07.jpg 小林さん

溶液につけるとめっきが付くことに不思議さを感じる

製造部
岩永さん

――入社されたきっかけについて教えてください。
地元のハローワークで仕事を探していた時に、当社の求人を見つけました。それまでは4年半ほどファミリーレストランのキッチンで調理などを担当していました。 かなりの仕事を任せていただいておりましたが、どうしても正社員になりたかったので就職活動をすることにしたのです。当社の求人票を見た時に、会社の事業内容がすごく詳しく書いてあってどんな仕事か分かりやすかったですし、モノづくりにも興味を持っていましたから、面接を受けることにしました。
――入社して1週間とのことですが、お仕事の手応えはいかがですか?
まだ入ったばかりなので、その場その場で一生懸命です。でも、みんな優しく接してくれます。 ちょうど今、当社にはたくさんの仕事依頼が舞い込んできているので、すごく忙しいです。入社したばかりですが、少しでも力になれるように、雑用であっても進んで引き受けるようにしています。入社間もない私でも力になれる仕事はあるので、いろいろな作業現場から声を掛けてもらい、手伝っています。 まだ重要な仕事を任せてもらえるほど仕事を覚えられていませんので、実際に作業をしているところを見学することで、仕事内容を理解していけるように心掛けています。 めっきの仕事を見ていまして、溶液につける工程にとても興味を持つようになりました。どうして溶液につけるとめっきがあれほどきれいに付いてくるのか、不思議な感じがして惹かれています。
――今後の抱負についてお聞かせください。
めっき作業の流れを、まだ薄ぼんやりとしか理解できていません。早く仕事を任せてもらえるようになりたいです。 ファミリーレストランの現場を回す経験を積んでいますから、その経験を活かして、当社でも活躍できるようにがんばります。

08.jpg 岩永さん