有限会社イワキエンジニアリング

有限会社イワキエンジニアリング
ごく限られた企業にしか作れない高圧電源を手掛ける
「こうすればこうなる」という定石のない電子顕微鏡用の高圧電源。ネジやはんだといった細部へのこだわりが違いを生む

有限会社イワキエンジニアリング
ごく限られた企業にしか作れない高圧電源を手掛ける 「こうすればこうなる」という定石のない電子顕微鏡用の高圧電源。ネジやはんだといった細部へのこだわりが違いを生む

- 社名:有限会社イワキエンジニアリング
- 設立年月:1994年2月(個人) 法人1995年7月
- 資本金:360万円
- 従業員数:6名
- 代表者:代表取締役 野口 義和
- 社員平均年齢:45歳
- 初任給:-
- 主な勤務地:東京都八王子市
- 休日:土日、祭日
- 本社所在地:東京都八王子市犬目町75-4
- 電話番号:042-621-0503
- 公式HP:http://www.iwaki-eng.co.jp/
- 特定の製品・技術分野に長年取り組んできたモノづくり企業なら、自社の手掛ける製品・技術分野について極めているはず。ところが、その道のプロとして評価されている企業でも、日々手探りで解決策を考えているような製品・技術分野が存在する。電子顕微鏡などで使われる高圧電源だ。 「ほかの企業にはできない」と高圧電源関連の依頼が集まる有限会社イワキエンジニアリング。取り扱いの難しい高圧電源の分野で、同社はどのように技術を磨いてきたのだろうか。

事業紹介
零細企業でも他社に負けない製品を作り続ける。
専門性の追求(顧客要求性能の一歩先を追求する)
専門分野以外の開拓。
電子顕微鏡用(SEM,FIB,X線,描画)高圧電源の制作は10年以上の経験と数百台の販売実績があり顧客からも高い評価を得ています。
一般電源とは違い、ごく限られた企業にしか扱えない高圧電源の世界
家電製品から産業用装置に至るまで、電気で動くものには必ず付いている電源装置。一般的な技術で開発できる部品のように思えるが、電子顕微鏡など、電子ビーム技術を応用して高電圧で動かす装置用の電源ではそうはいかない。国内でも製造できるメーカーが数限られている状況だ。 そんな高圧電源の設計・製造を大手企業から任されているのが有限会社イワキエンジニアリング。創業者が電子顕微鏡の開発に携わっていた縁から、電子顕微鏡用の電源を開発する仕事を請け負うようになった。 「高圧電源を開発できる企業は少ないのか、大手のお客様からも頼りにしていただいております」と話すのは同社代表取締役の野口義和氏。 だがイワキエンジニアリングは、創業当時から高圧電源について詳しかったわけではない。産業界を見渡してみると、高圧電源を手掛ける企業の数はごくわずか。開発に当たって焦点となるのが高電界における放電だが、参考となる資料・文献は発変電・送電や落雷などの巨視的な“放電”に関するものばかりで、同社の手掛ける微細な放電を扱った文献はほとんどない状況だった。技術的に確立されている分野ではなく、手探りでやっていくしかないというのが実情だった。そんな中でも一歩ずつ歩みを進めていくことで、イワキエンジニアリングは「高圧電源を開発できる企業はほかにない」というほどの技術力を築くに至ったのだ。 しかし、それほどの評価を得た現在でも、高圧電源を扱うことは困難な仕事であることに変わりはないと野口氏は語っている。 「高圧電源の製造自体は、仕様書に従ってやっていけばできます。ですが、難しいのはトラブルが起きてしまった時。環境に左右されるところが大きく、お客様の作業環境で不具合が出た際、当社で再現しようと試みても異常が出ないということもあるのです。修理するにしても、『こうすればこうなる』という定石がなく、いつも原因究明に苦労しています」

設計や技術力よりも、細部の積み上げが何より大事
技術的に確立していない状況はいまだ変わっておらず、作業環境による影響も大きい高圧電源。そんな分野で事業を展開する上で、イワキエンジニアリングはどのような点に心を砕いているのだろうか。 高圧電源は、通常の電源よりも扱いづらい製品。装置の設計や内部で使う技術などが大事なのではないかという印象もあるが、「高度な技術を磨くよりも、こまごまとした作業のところで、ごく普通にしっかりとやっていくという心掛けが大事」なのだと野口氏は言う。 例えば、ネジをちゃんと締めるといった基本的なところで、少しでも手を抜くことは許されない。「高圧電源自体がすごくアナログ的なので、ごまかしが効かない。部分部分で手を抜くと、後で大変なことになってしまいます」(野口氏) また、修理・メンテナンスの難しい高圧電源という製品を扱うことで得られた技術力が評価され、同社には業務用の大型パン焼き器のコントローラー等、他分野の製品に関する修理の相談なども寄せられているそうだ。電子顕微鏡の高圧電源を軸に据えながらも、経営を多角化させる視点から、そうした他分野の製品にも積極的に取り組んでいきたいと野口氏は今後について意気込みを語っている。

モノづくりで達成感や楽しさを感じられる人こそ成長する
日々、試行錯誤を重ねながらも、高圧電源というニッチな分野で欠かせない存在になったイワキエンジニアリング。そんな同社で求められるのは、どのような人材なのだろうか。 「私が思うに、モノづくりが好きであることが挙げられます。モノづくりをして、完成した時に達成感を感じられる人が向いているのではないでしょうか。『やらされている』『あんまり好きではないけれども仕方なくやっている』と感じている人は伸びないと思います。 どんな仕事でも当てはまることですが、何か壁にぶつかった時でも、好きなことを仕事にしていたら、辛くても乗り越えることに楽しさを感じるはずです。その楽しさを知っている人は、すぐ次の階段を上っていくことができて、成長も早いのだと思います。 実際、その仕事に就いて働いてみないと分からないところもあるでしょう。そう考えると、学生時代の研究を参考にしてみると良いのかもしれません。研究を終えて達成感を得られた経験がある人には向いているのではないでしょうか」(野口氏)
先輩メッセージ
高圧電源の調整・検査に独自のノウハウ
生産担当 取締役
石井さん
――仕事内容について教えてください。
製造・検査の担当をしております。まず部材を発注し、届いた材料は製造を依頼している別企業に送り、完成したものを当社で調整・検査して納品するという流れです。
高圧電源の調整・検査については、当社独自のノウハウを持っています。そこの業務については当社にしかできないところですので、社内で行っています。
仕事には「お客様に喜ばれるものを作ろう」という気概を持って臨むようにしています。お客様に満足してもらい、「イワキエンジニアリングの製品は良い」と言っていただけることにやりがいを感じていますからね。信頼して仕事を任せてくれるお客様を裏切らないことが一番ですから。
お客様に喜ばれる製品にするためには、装置の構造や絶縁方法などが大きなウエイトを占めてきます。そうしたところが上手くいき、お客様にご満足いただける製品になった時にはうれしいですね。上手くいかないことも多く、勉強することばかりですが。
創業者の前社長から受け継いできた技術力があることがまず挙げられると思います。また、会社の雰囲気は小さいなりに和やかで、和気あいあいとしています。組織としてまとまっている会社だと言えるのではないでしょうか。
まず、いろいろなことに興味を持ってほしいです。いろいろやってみないと、自分が何に興味を持っているのか、分からないと思います。
私もそうでした。学生時代は何がやりたいかと考えても、「これ」というものが見えなかったのです。結局いろいろやってみて、「モノづくりが向いているのではないか」と感じ、ようやく今の仕事にたどり着きました。
何から始めても良いと思います。失敗しても良いからとにかくやってみて、いろいろ試す中でやりたいこと、向いていることが見つかるのではないでしょうか。

一つずつ技術を吸収していって必要な技術を網羅したい
技術担当
岩城さん
――現在は、設計を担当されているそうですね。
回路図やプリント基板の設計を担当しています。設計の仕事だけをしているわけではなく、製造や検査の業務を担当することもあります。
身近でアドバイスをいただける経験のある技術者がごく限られていることや、いくつかの文献から自分で答えを導く作業は「日々戦い」のような仕事で、毎日やりがいを持って取り組めています。
人間関係で恵まれているところが当社の魅力だと思います。
あとは組織が小さいので、いろいろな業務をやらなければならない反面、チャレンジする機会が多いという魅力もあります。
いろいろな業務を経験できる反面、それぞれの業務を「どれだけできているか?」と自問すると、「まだ足りない」と痛感することばかりです。一つずつ技術を吸収していって、業務に必要な技術をすべて網羅できるように努力していくつもりです。
