<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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日本分光 株式会社

日本分光 株式会社 血液の成分、日焼け止め化粧品の効果、警察の押収した薬物の中身なども計測<br>最先端の製品・素材を研究開発する現場を支えるため、「世界に1台しかない」分光光度計の特注を50年以上も継続

日本分光 株式会社

血液の成分、日焼け止め化粧品の効果、警察の押収した薬物の中身なども計測
最先端の製品・素材を研究開発する現場を支えるため、「世界に1台しかない」分光光度計の特注を50年以上も継続

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輝く技術 光る企業

日本分光 株式会社

血液の成分、日焼け止め化粧品の効果、警察の押収した薬物の中身なども計測 最先端の製品・素材を研究開発する現場を支えるため、「世界に1台しかない」分光光度計の特注を50年以上も継続

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  • 社名:日本分光 株式会社
  • 設立年月:1958年4月
  • 資本金:9000万円
  • 従業員数:293名
  • 代表者:代表取締役 中村敏樹 (※)取材時より社長交代しています。
  • 社員平均年齢:39.4歳
  • 初任給:平成28年4月実績
    【総合職】
    修士了 月給22万7000円
    大学卒 月給20万5000円
    高専卒 月給18万2100円
  • 主な勤務地:本社及び各サービスセンター
  • 休日:完全週休2日制(土、日曜)、祝日、5月連休、夏期休暇、年末年始休暇、有給休暇、永年勤続特別休暇、リフレッシュ休暇休暇、慶弔休暇 他
    ※年間休日123日(平成28年度実績)
  • 本社所在地:東京都八王子市石川町2967-5
  • 電話番号:042-646-4111
  • 公式HP:http://www.jasco.co.jp/jpn/home/
  • ・「何色の光をよく通すか」で物質の成分等を突き止める分光光度計メーカー
  • ・新素材や医薬品、太陽電池など、研究開発の現場ごとに分光光度計を特注
  • ・失敗しても良いから、一歩を踏み出す勇気を昔から何よりも賞賛
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業種

分光学の応用に関する機器、科学計測器、分析機器、計装機器及び医用機器に関する研究開発、製造、販売ならびに輸出入

事業紹介

日本分光は分析機器の専門メーカーです。分析機器の企画・開発から製造・販売までを行っており、 国内・海外で事業を展開しています。生命を育み、生活を豊にしてきた光。私たちはそんな光を見つめ、 「超一流の分析屋」としての使命を果たすことで、人類のみならず地球の未来に貢献します。

何を作ってる?

新素材や医薬品、太陽光電池などの光にかかわる製品を研究開発する現場では、「光を波長ごとに分解して解析する装置」(=分光光度計)が使われている。そんな分光光度計を軸に50年以上にわたって事業を展開してきたのが日本分光だ。 例えば、海は青い。可視光線は俗に赤、だいだい、黄、緑、青、藍、紫の7色に分けられるが、海水は赤い光を吸収し、残った光が海水中で散乱する。その光が目に入るから「青い」と感じるのだと言われている。 水が青色の光をよく通すように、どの色の透過率が高いかは物質ごとに異なっている。そうした物質ごとに違う光の透過率を調べることで、物質の成分を突き止めるのが分光光度計の仕組みだ。 分光光度計はさまざまな場面で使用され、幅広い導入例がある。血液の成分、日焼け止め化粧品の効果、警察の押収した薬物の中身、火災現場で発生したガスの有毒性など、さまざまなことが計測可能。非常に汎用性の高い装置なのだ。

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会社の強み

最先端の製品・素材を研究開発する現場では、「どんな成分の素材を作れば製品に使えるのか」を探っている段階のため、汎用性の高い分光光度計が重宝されている。 とはいえ、研究開発の現場ごとに測りたい素材、測りたい項目は異なっている。いくら分光光度計の汎用性が高くても、現場ごとの要望にも応えていく必要があるため、特注の分光光度計を開発することも多い。 日本分光は「今の技術で研究者・開発者からの要望にどこまで応えられるか」と検討を重ね、納品後も研究者・開発者からの要望に耳を傾けることで分光光度計を改善。「世界に1台しかない」計測機器を世に多数送り出してきた。 そうして技術を磨いてきたことで、数十~数百ナノメートルほどの極微小な物質の成分を計測できる「走査型近接場光学顕微分光システム」を世界で初めて完成させている。ほかにも、世界中の最先端技術・新製品の中から毎年100点を選び抜いて表彰する、「技術革新のアカデミー賞」とも言われる「R&D 100賞」を過去3度も受賞。世界的にもその技術力を高く評価されている。

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職場としての魅力

分光光度計の開発に必要なものは、「高度な基礎技術」だけではなく「高度な部品を組み合わせる技術」だと代表取締役社長の武田順司氏は言う。長年にわたって作り続けてきた特注品の事例から技術を学び、OJT(職場内訓練)を通じて先輩社員からノウハウを教わっていく。そして開発した装置を顧客に買ってもらい、使われる現場を見続けて改善を重ねていくことこそが、技術者としての一番の成長につながると考えている。 「当社には『誰もやったことのない仕事』があります。その仕事を進める時、誰からも教わることはできません。ですから、当社の中では『成功』の反対は『失敗』ではありません。失敗しても良いから、一歩を踏み出す勇気を昔から何よりも賞賛しています。創業した時から続くその文化が、今もまだ残っている会社なのです」(武田氏)

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社長メッセージ
失敗を「失敗」とは言いたくない。失敗を「プラス」だと考えられる制度を作りたい

代表取締役社長
武田 順司さん
――貴社事業の現状について、どのように分析されていますか? われわれの作っている分光光度計は、目盛りがない代わりに何でも計測できる物差しのようなものです。新しい素材、新しい素材を使った製品を開発しようとする時には、その数だけ何にでも使える物差しが必要になります。「どの物差しを使って、どうやって測ろうか」と試行錯誤している段階がわれわれにとって一番幸せな瞬間。測り方が決まってしまうと、競合会社から専用の物差しが登場してきますから。 競合会社は合併を繰り返して規模を大きくする中で、商売になりにくい技術を捨てています。分光光度計の市場は決して大きくはない“アリ”の市場ですが、“アリ”がいつか“ゾウ”を倒すことだってあるかもしれませんよ。 先が見えない中でも、とにかく一歩前に踏み出してくれることです。 ただ、一歩前に踏み出し続けても、成功できるとは限りません。スポーツが上手くなる瞬間にも言えることですが、成功するためには努力を続けながら、いつかやってくる好機を待たないと目の前の壁を乗り越えられないものです。 その意味でも、失敗を「失敗」とは言いたくありません。失敗を「プラス」だと考えられるようにするため、失敗した数を表彰する社内制度を作りたいくらいです。 ですから、どうやって一歩前に踏み出そうというやる気を起こさせようかと真剣に考えています。若手社員が全員成長できるようにするためにはどのような評価制度が望ましいのか。どうすれば社員一人一人のやる気を会社が成長する力に変えることができるのかと会社制度の在り方について見直していきたいのです。今はどうすればそれが上手くできるのか、本当に悩んでいるところですね。

07.jpg 代表取締役社長 武田 順司さん

先輩メッセージ
大企業の中で埋もれるよりも、機会の多い中小企業で働く方が、自分のためになる

製造部 生産課
野坂さん
――就職活動をしていたころから、「大手企業よりも中小企業で働きたい」と望んでいたそうですね。 元々、研究室の先輩が日本分光で働いていたのがきっかけでした。先輩とお話しする機会があり、入社してまだ2~3年目なのに非常に大きな仕事に携わり、実績も出されているということを知りました。「若いうちからそれだけの活躍ができるのか」と驚きましたね。 会社が若手にも関わらず先輩のことを必要としていることも伝わってきました。たくさん社員がいる大企業の中で埋もれてしまうよりも、若いうちから活躍できる機会の多い中小企業で働く方が、自分のためになるのではないかとその時に思ったのです。 入社して今年で5年目になりますが、ミラーやセンサなど、一貫して光学関連の部品を製造してきました。 入社3年目の時に新しい装置に使う部品を開発する仕事をしました。普段は製造の仕事が中心ですが、運良く開発の仕事を任せてもらえました。 当社の主力製品の次世代機として、まだ世界にない製品を開発しました。自分なりにいろいろと調査や試作を重ね、散々苦労もしましたが、ようやく自分の個性が出せた製品に仕上げることができました。思い入れが強い製品ですから、今でも一番強く印象に残っていますね。 この仕事を達成することができたのは、自分一人だけの力ではありません。何十年もの時間を掛けて社内に蓄えられてきた固有の技術の積み重ねが根底にあったことと、困難にぶつかるたびに上司や先輩が面倒を見てくれて、家族のように支えてくれたからこそ、達成できたのだと思っています。 当社には技術的な面はもちろん、人間的にも素晴らしい先輩がたくさんいます。尊敬できる先輩たちに指導していただきながら仕事に取り組めるところが、私の中で「この会社に入って良かった」と一番思える点ですね。 「まだ世界にない製品」を開発する機会には恵まれましたが、今の仕事は「先輩方の築いてきたものを引き継いだだけだ」という思いが強いのです。今後は、自分にしかできない技術を身に付け、自分にしかできない仕事を任されるようになっていきたいですね。 そのためにはもっと勉強して、技術、知識、経験を積み重ねていかなければならないと思っています。めぐってきた好機を見逃さないように、一つ一つの仕事としっかり向き合っていきます。 「大手企業に入社して、安定した生活を送りたい」という思いは誰にでもあると思います。ですが長い目で見ると、中小企業であっても技術的にしっかりしている企業で働く方が、人間的にも成長できますし、若いうちから活躍できる機会も多いと思います。大企業ばかりを目指すのではなく、中小企業にも目を向けて、自分の可能性を広げてほしいですね。 実際、私は日本分光に入社して5年目になりますが、結婚して子供もできて、新築の一戸建ても買いました。大手企業で働く人に匹敵する生活ができていると思いますし、将来への不安を感じたこともありません。中小企業であっても、安心して働ける職場があることを知っておいてほしいですね。

08.jpg 製造部 生産課 野坂さん

先輩メッセージ
「今ある技術を土台に、将来は何をしたいのか」と考え、さまざまな分野に飛び込んで

UVCD技術部
中司さん
――日本分光のどんなところに惹かれて入社したのでしょうか? 私は大学で光に関する研究、超短パルスレーザーを研究していました。日本分光を選んだきっかけは、「日本分光」という社名に「光」が入っていることから「光に関する仕事ができるだろう」と期待していたからです。ほかにも、「先端の研究に携われる会社で働きたい」という希望もありました。 偏光を使った分析装置の開発を担当しています。装置以外にも付属品の開発や、装置を導入いただいているお客様からのご要望に対して、「どう改善すれば、その要望を満たせるか」と考えて提案する役割も担っております。 例えば、「計測できるサンプルの種類をもっと増やしたい」という要望を受けて、付属品を改良したことがあります。まずはお客様の要望を伺ってどんな製品を作りたいかと考え、設計技術部へ相談に行きました。そこで私と設計技術部とで話し合いながら試作品を作り、実際に使ってみて評価をし、不具合を見つけては改善を重ねていきました。ある程度の目処が立ったところで、今度は品質保証部に試作品を持ち込み、出荷に耐え得る装置になっているかと検査してもらいました。そこでの検査に合格して製造部に製造してもらえるようになり、そこでようやく私の役割が終了です。この時の仕事は付属品の改良でしたが、新製品を開発する流れも同じです。商品開発の一連の流れを初めて経験できたので、とても勉強になりました。 その一連の流れを経験する中で、「こんな装置を作れば課題を解決できる」と考えてお客様に提案するところから、装置の仕組みや装置に求められる精度を考え、データを分析するソフトウェアを開発するなど、かなり幅広い分野の仕事を経験できました。そのように幅広い経験・知識を積むことができるところが中小企業で働く魅力だと思います。 人を育てる土壌があるところです。自分自身、入社した時点で光に関する知識は少なからず持っていたつもりですが、電気や機械、ソフトウェアなどについては、分からないことばかりでした。 先輩に助言を求めたり、指導していただいたりすることで、どうにか責任ある仕事も任せていただけるところまで成長してきました。「若手を育てよう」という意識が社内に浸透していたからこそ、自分もここまで成長できたのだと感謝しています。 これから就職活動を迎えるに当たり、自分が今持っている技術を土台にすることです。ただ、「自分は今、何ができるか」ということを大事にしすぎてはいけません。「今ある技術を土台にして、将来は何をしたいのか」と考え、さまざまな分野に飛び込んでいきながら就職活動をしていただきたいです。

09.jpg UVCD技術部 中司さん