梶フエルト工業株式会社
梶フエルト工業株式会社
取引先は毎月100社以上。工業部品・OA機器・自動車・文具・インテリア・建材関連などの産業資材全般
設計図は紙でなくタブレット端末で確認。職人の技・経験のデータ化を進め、多品種少量のモノづくりを効率化
梶フエルト工業株式会社
取引先は毎月100社以上。工業部品・OA機器・自動車・文具・インテリア・建材関連などの産業資材全般 設計図は紙でなくタブレット端末で確認。職人の技・経験のデータ化を進め、多品種少量のモノづくりを効率化
- 社名:梶フエルト工業株式会社
- 設立年月:1939年9月(創業:1921年5月)
- 資本金:1,080万円
- 従業員数:30名
- 代表者:代表取締役 梶 朋史
- 社員平均年齢:42歳
- 主な勤務地:東京都墨田区東向島5-41-10
- 休日:土日祝日
- 本社所在地:東京都墨田区東向島5-41-7
- 電話番号:03-3619-0135
- 公式HP:http://www.kajifelt.co.jp/
- ・1~2個の注文にも対応。毎月の取引社数は100社以上
- ・高精度に仕上げるため、切る順番にまで気を配る裁断・型抜き
- ・モノづくりにIT活用。職人の技・経験を可能な限りデータで記録
業種
フェルト製品及び各種化成品関連商品の加工販売
事業紹介
大正10年創業 フェルトおよび各種化成品関連商品の専門企業として、工業部品・OA機器・自動車・文具・インテリア・建材関連などの産業資材全般を取り扱い、さまざまなお客様に製品を納めてまいりました。
各種材料の販売・加工を行っております。「多品種小ロット」生産にも迅速に対応できるよう、材料仕入れ~加工~出荷まで、ほとんど全ての工程を自社工場にて扱うようにしております。
そうした取り組みが実を結び、現在では多品種小ロットで月間数千点もの製品の加工を、お客様からご依頼いただいております。
【事業内容】1~2個の注文にも対応。毎月の取引社数は100社以上
動物の毛を板状に固めたフェルト。油性ペンの芯などの文具、工業部品、OA機器、自動車、インテリア、建材関連など、用途に合わせてさまざまな形にフェルトを裁断・型抜きしているのが梶フエルト工業だ。フェルト以外に、両面テープや不織布なども加工している。 国内メーカーのかゆいところに手が届くようにと、1~2個の少量注文にも対応。10μm(100分の1mm)単位と高精度に仕上げ、短期間で納めてみせる。そうした姿勢が信頼され、月間100社以上、年間200~300社と多くの企業から注文を受けるようになった。 その中でも、特に注文が増えているのは建設関係。2020年の東京オリンピックが決まったことで一段と需要が増え、売上は前年の10倍ほどにも伸びた。
フェルトはその日の湿度によって厚みが変わってしまう。
必要に応じて、表面を削って厚みを調整する必要がある
【加工技術】高精度に仕上げるため、切る順番にまで気を配る裁断・型抜き
フェルトなどを指定の形に整えるため、梶フエルト工業では裁断や型抜きといった加工をする。 板状のフェルトを多角形にするのなら、裁断機で縦・横・斜めに切っていく。高精度の加工になると、多角形の辺を切る順番すら、できあがったときの寸法に影響する。どの辺から切っていけば、形をわずかでも崩さずに仕上げられるのか、長年にわたって蓄えてきたノウハウに頼りながら裁断方法を決めていく。 型抜きとは、プレス機に刃型を取り付け、圧力を掛けて切り抜く加工方法。1度で最終形にしようとすると端が毛羽立ってしまうため、複数回に分けて切り抜いていく。裁断同様、高精度に仕上げるには、切る順番にまで気を配る必要がある。
【職場自慢】モノづくりにIT活用。職人の技・経験を可能な限りデータで記録
毎月100社以上に納める数千点以上の品物を手際よく加工するため、梶フエルト工業はITを積極的に導入している。 顧客企業から頼まれた注文はシステムで管理。設計図のデータは社内システムに取り込み、現場では紙を使わずタブレット端末で図面を確認する。しかも過去に製造した品物なら、加工に使った装置の設定値や手順まですべてデータで記録し、すぐに呼び出せる。実際の加工方法も写真に撮り、情報共有用のアプリに保存。熟練職人の技・経験に依存せずとも、ある程度の技術があれば、簡単にまねできるように工夫している。 こうしたITを取り入れた経営手法に対する評価は高く、2011年には中小企業IT経営力大賞「IT経営実践認定企業」に選出された。
社長メッセージ
優秀な人材であればたった1人の力でも、中小企業なら会社全体を変えられる
代表取締役
梶 朋史さん
――フェルト加工は、どんなところが難しいのでしょうか。
フェルトを形作る羊毛などの毛は、湿気を含むと膨らんでしまいます。厚みが変わらないようにビニールで梱包し、湿気が入らないように管理するのです。製造現場も空調をしっかり効かせて、湿度を一定に保つようにしています。
それでも湿気を吸ってしまうなどして、フェルトの厚みはどうしても変わってしまいます。圧力を掛けて潰したり、表面を削ったりして、寸法どおりに整えています。
私が当社に入った20年ほど前からです。そのころからデータベースを整備してきましたから、検索すれば何年も前に納めた品物でも、すぐに加工方法を確認できます。
毎月100社以上のお客様から注文を受けていると、年間で数百~数千種類の品物を加工することになります。人間が記憶できる加工方法は、多くても300~400種類ほどまででしょう。それ以上覚えることはできませんから、コンピュータに頼らないでいると、忘れた分の加工方法をその都度、一から考え直さないといけなくなってしまうのです。
IT化を推し進めていくことで、いつか職人に頼らないでモノづくりをできるようにしたいですね。そのために、加工方法をできるだけデータ化していきたいです。
今後はさらに、社内の情報共有のためにも、ITを取り入れていくつもりです。今は、電車の扉の上に付いている、映像や画像を表示するデジタルサイネージ(電子看板)を製造現場の壁などに取り付けたいと考えています。不良品が出てしまった原因や、お客様からのご意見・ご要望などの情報を流したいですね。製造現場で働く社員にも、作っている製品の先にいるお客様のことを、もっと意識してほしいのです。
チームワークを大切にできる人を求めています。
例えば、ある人が加工に失敗したとき、次の工程の人が注意散漫で失敗に気付かず、不良品の数を増やしてしまったとします。そんなとき、私は次の工程の人の方を怒るのです。
なぜなら、失敗自体は誰にでもあること。この例の場合、次の工程の人が注意を怠らず早期に失敗に気付き、そのことを指摘できていたら、被害を最小限にとどめられたはずです。
そのように、誰かが失敗をしても失敗した人だけの責任にせず、一緒に働く仲間として助け合える人材を求めています。
会社としては、今の活動を地道に続けていくつもりです。そしていつか挑戦できるように備えていき、然るべき時期が来たら、臨機応変に対応していける会社にしていきたいです。
ただ、一番懸念しているのは、人材の確保ですね。少子化が進む中、人材採用はますます難しくなっていくでしょう。そうなっても、当社で働きたいと思ってくれる人がたくさん来てくれるように、魅力的な会社でありたいと考えています。
中小企業で働く社員は、幅広い範囲の仕事を受け持ちます。最初から最後まで、1人ですべての工程を担当することもあるでしょう。一方、大企業では設計の一部だけ、あるいは部品加工の一工程しか担当できないことが多いです。そう考えると、中小企業で働くほうが、仕事にやりがいを感じやすいと思います。
また、1人の力が影響を及ぼせる範囲も、中小企業の方が大きいです。優秀な人材であればたった1人の力でも、中小企業なら会社全体を変えられますよ。
先輩メッセージ
責任を負って大変になるからこそ、成功したとき、評価されたときに感じる喜びも増す
営業
中嶋さん
――この会社に入社したきっかけを教えてください。
以前は加工業とは別の業界で働いていました。転職先を探そうと、いろいろな求人サイトを閲覧していたら、その中にたまたま当社の求人があったのです。
サイトを見ていて気になったのは、社長が音楽好きでプロのミュージシャンとして活動していたところ。私も音楽好きだったので、どんな社長なのかと興味を持ちました。
営業を担当しております。当社の営業は、社長と私の2名です。新しく取引をしてくれるように企業と交渉してくることもあれば、既に取引があるお客様から注文を受けて、見積もりの作成から納品までを対応することもあります。
私は営業として、お客様との人間関係を何よりも大切にしています。お客様といい関係を築けると、新しく仕事を発注してくれたり、知り合いの会社を紹介してくれたりと受注が増えていきます。実際に当社の場合、新しい企業と取引が始まるときには、既存のお客様から紹介いただいたり、会社のホームページから問い合わせいただいたりすることがきっかけになっています。
お客様との距離を縮めるため、できるだけお客様の力になれるように心掛けています。例えば商社のお客様の場合、取引先に品物を納めるために当社に加工を依頼してくれるのですが、お客様自身はモノづくりのことにそれほど詳しいわけではありません。当社から納める品物について技術的に大事なところを丁寧に説明したり、質問されたら迅速に答えたりすることで、お客様の役に立てるように努めています。そしてそれをきっかけにして、一歩ずつ距離を縮めていくのです。
自由にやらせてくれる職場だと思います。
私は営業として働いていますが、ノルマが課せられているわけではありません。ただ、ノルマがない分、常に自分にプレッシャーを与え続けることで、自分を鼓舞しながら日々過ごしています。
それと、お客様に製品を納品できるのは、現場の強力な後方支援ありきですので、現場への感謝の念も絶対に忘れてはいけません。
短期的な目標としては、取引先を増やし、売り上げを押し上げることで、競合他社の追随を許さない強い会社づくりに向けて取り組んでいくことです。
長期的には、私が営業を牽引していくようになり、次代の営業担当者もしっかり教育して育てていき、社長には経営に専念してもらえるようにしていきたいと考えています。
働き始めると、学生時代よりも多くの責任を負うようになります。
ですが、責任を負うことは、嫌なことばかりではありません。例えば、自分の納めた品物を使ってくれた製品が人気になり、誰かに自慢したくなることもあるでしょう。大きな金額の仕事を受注できたときには、それだけで素直にうれしくなります。
責任を負って大変になる分、成功したとき、評価されたときに感じられる喜びも増すのです。責任を負えるようになることを前向きに受け止めて、社会人になることを楽しみにしていてください。
先輩メッセージ
失敗しても、周りが全力で支えてくれる。本当に心温かい人たちが多い職場
検査・加工
宇田川さん
――入社するまでの経緯を聞かせてください。
私は前職で営業を担当していました。主な仕事は営業だったものの、製造に携わって自分の手を動かす機会もありました。そのようにして両方の仕事を経験するうちに、「営業として売上という数字を残すよりも、製造として働いて形ある物を残す方が、仕事にやりがいを感じられる」と思うようになったのです。
そしてモノづくりの仕事に転職したいと考え、企業を探してみて、出会ったのが当社でした。工場見学に来てみると、とても和気あいあいとした雰囲気で仕事をしていて、モノづくりに必要な技術もしっかりと習得できそうな環境でした。それで「働いてみてもいいかな」と思うようになりましたね。
希望どおり、製品の加工を担当しています。
具体的には、フェルトなどを型抜くため、装置に取り付ける型を用意するところから仕事を始めます。型を装置に取り付けたら、素材を考慮して、加工する際の力の強さを設定していきます。どんな数値で設定すればいいのかは社内システムを使えば簡単に分かりますが、その日の装置の調子によって微調整も必要になります。
だいたいは、社内システムに記録されたデータどおりにやれば正しく加工できますが、たまにうまくいかないときもあります。うまくいかない場合も想定して、気を緩めずに注意深く装置の様子を見ておかないといけません。
中には過去に加工したことがなく、新しく加工方法を考える仕事が来ることもあります。そんなときには、自分が加工していて気付いたことをメモとして残したり、加工手順を写真に撮影したりして、別の誰かが後日加工することになったとしても、効率的に加工を進められるようにできるだけ情報を残そうと努めています。
誰かが何か失敗してしまったとき、全員で支え合おうとする意識が徹底されているところですね。
私自身、まだ転職してきてから日が浅く、失敗をしてしまうこともあります。そんなときには周囲の仲間たちが、無関心を装ったり突き放したりはせずに、「なんでこんなところで失敗したの?」と注意しながらも、私の失敗を帳消しにできるように全力で善後策を講じてくれます。本当に心温かい人たちが多く、愛を感じられる職場ですね。
検査室では音楽を流しながら作業することも認められている
検査室では音楽を流しながら作業することも認められている
1日でも早く1人前になって、会社に貢献することです。
今はまだ、先輩たちに教わることばかりです。いろいろな作業を自分1人でできるようになって、成長した姿を先輩たちに見せたいですね。
モノづくりの仕事に対して、「きつい」「汚い」「危険」な3Kの仕事だという先入観を持って、最初から就職先の選択肢から外さないでください。
変な先入観を持たず、まずは入社して働いてみてください。思っていたよりもずっと楽しい仕事だと感じられ、印象が変わるかもしれません。
とにかく、まずは可能性を狭めずに挑戦してみることです。いろいろなことに興味を持って、本当に自分がやりがいを感じられる仕事を見つけてください。
注)掲載している情報は、取材日(2014年7月)時点のものです。