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京王電化工業株式会社

京王電化工業株式会社 伝統のめっき業界で世界初の技術を開発<br>環境にやさしく大量生産も可能なバレル式三価クロムめっきを実現し、大手メーカーからの受注増

京王電化工業株式会社

伝統のめっき業界で世界初の技術を開発
環境にやさしく大量生産も可能なバレル式三価クロムめっきを実現し、大手メーカーからの受注増

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輝く技術 光る企業

京王電化工業株式会社

伝統のめっき業界で世界初の技術を開発 環境にやさしく大量生産も可能なバレル式三価クロムめっきを実現し、大手メーカーからの受注増

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  • 社名:京王電化工業株式会社
  • 設立年月:1968年11月
  • 資本金:3200万円
  • 従業員数:50名
  • 代表者:代表取締役 姫野正樹
  • 本社所在地:東京都調布市調布ヶ丘3丁目6番1号
  • 電話番号:0424-83-1900
  • 公式HP:http://www.keio-denka.co.jp/
  • 発祥は奈良時代にまでさかのぼるというめっき技術。伝統の業界にも押し寄せる変化の波にうまく対応し、時代に求められる新技術を開発したことで、大手メーカーなどからの受注を増やしているのが京王電化工業株式会社だ。同社が世界で初めて生み出したバレル式三価クロムめっきとはどのような技術なのか。同技術の利点についても話を聞いた。
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事業紹介

京王電化工業株式会社は一貫して優れた機能めっきを目標に、ユーザーのニーズに合った表面処理を励行してきました。
また、弊社はいち早く環境保全に取り組み、完全無公害工場はもちろん、三価クロムの導入、鉛フリーハンダ対応錫めっき、ハンダぬれ性に優れた新ニッケルめっきなど、環境にやさしいめっきを実現しています。

奈良の大仏のころから日本のモノづくりを支えてきためっき技術

日本のモノづくりを土台から支え続けている技術と言えば、めっき技術が挙げられる。めっきとは、金属などの表面に、別の金属の薄膜を被覆してやること。古くは奈良の大仏をつくる時にも使われ、現在は金属のさび止め、導電性を高めるための被覆処理など、さまざまな用途で使われている。 京王電化工業株式会社はそんなめっき技術を有する企業。1968年に設立され、現在の主な取引先はコネクタメーカーなど。パソコンやプロジェクタ等、機器同士あるいは機器と回線をつなぐ接続端子等のめっき処理がメインとなっている。 古くから続くめっき業界。ただ、同社代表取締役の姫野正樹氏によると、そんなめっき業界にも、実は絶え間なく変化の波が押し寄せているという。 「環境に対する規制は厳しくなっています。昔のままのやり方を続けられなくなっているのです。 具体的には、鉛や六価クロムなど、環境規制のある物質が禁止されてきました。規制された物質は毒性が強い反面、諸刃の剣で、金属としては非常に優れた特性を持っていました。 そういった物質をめっきに使えなくなったわけですから、別の金属でそん色ないめっき処理を実現しなくてはいけない。規制への対応力というのも、めっき業の技術として求められているわけです」

keiodenka_p03.jpg 代表取締役 姫野 正樹さん
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keiodenka_p06.jpg 部品を溶液に漬けてめっき加工を施す

世界で初のバレル式三価クロムめっきに成功

めっきの技術力は、顧客の求める色調に合わせられるか、複雑な形状のものに対してどれだけ偏らせずにめっきできるか、あるいは軟素材のようなめっきすることが難しい素材でも均質に表面処理できるか、といったところで差が付くのだという。 そういった要素に加えて、大きな差を生み出すようになったのが、環境規制への対応力。実際、京王電化工業は規制対応力でめっき業界初の偉業を成し遂げて注目を集めた。それにより、大手カメラメーカー、大手携帯電話メーカーなどからの受注が増えてきているというのだ。 「弊社は世界で初めて回転バレル式の三価クロムめっきを開発しました。クロムはお風呂の蛇口などで使われている金属で、非常にピカピカとした光沢が生じるところに特徴があります。 ですがクロムは、亜鉛やニッケルといっためっき用の金属と比べて、電導性が非常に悪い。めっき処理する時には、被膜を成長させるために電流を流すのですが、ほかの金属が100の電流のうち97とか98くらいが皮膜成長に使われるのに対して、クロムは15〜20くらいしか使われないのです。 私どもは特殊なバレル装置を開発しまして、大幅なコストダウンと大量生産を可能にしました。従来はネジなどの対象物を一つ一つつまんで大量に電気を流していたところを、回転バレルで一斉にめっきできるようにしたのです。 しかも、三価クロムは環境に優しい金属。環境対応とコストダウンを両立させたところが、弊社のバレル式三価クロムめっきの特徴なのです」(姫野氏)

「ものづくりの現場で働くことに幸せを感じる」社員を増やしていきたい

このように京王電化工業の現状について説明してくれた姫野氏だが、実は以前、大手メーカーに勤めていた経験がある。大手企業と中小企業のどこが違うのか。姫野氏は自身の経験から次のように話してくれている。 「中小企業では、社員一人一人の代わりがいません。『働く上でやりがいを感じる』と捉えるか、『大変だな』と後ろ向きに捉えるか、その人次第ではあります。 一方、大手では野球で例えると、全ポジションに選手がそろっている。役割が分担されているわけです。 ところが中小の場合、1人の選手がショートもやればサードもやる。カバーする範囲がすごく広いのです。『システム的に問題がある』と考える人もいるでしょうが、いろんな経験を積めるというメリットもあります。 時には一連の流れを任されて、設計・製造のところから、お客様の声をダイレクトに聞くところまで経験できる。仕事をする上で、納得感・満足感を得やすい環境なのではないかと感じています」 そんな職場に魅力を感じる人には、ぜひ中小企業に飛び込んできてほしい。スーパーマンでなくていいから、日々の仕事をコツコツと続けられる人に来てほしい。働く人にとって幸せな環境を整えることこそ、経営者にとっての幸せなのだと語る姫野氏。会社を大きくして利益を上げることも重要だが、それ以上に「ものづくりの現場で働くことに幸せを感じる」社員を1人でも多く増やしていきたいと自身の夢を語っている。

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工夫したやり方で生産性向上に成功したら、やりがいを感じる


製造部 部長
山本さん

――担当されている業務内容を教えてください。
担当業務の一つは製造現場の管理です。問題発生時の対応、または生産性向上のためのアドバイスといった業務になります。 また新人への教育というのも私の担当です。めっきを知らない社員が入ってきたときに、図式化してなるべく分かりやすく伝えるよう心掛けています。あと、忙しいときには一緒に現場に入ってやることもあります。
――働いていて、どんなときにやりがいを感じますか?
弊社では1メートルくらいの大きなものから、水に浮かぶくらい小さなものまで、いろいろな対象物をめっき処理しています。対象物によって、生産性の高い処理方法は異なります。工夫して、どうすれば1度にたくさん処理できるかといつも考えています。工夫して問題なく生産ラインに入っていけて、製品として無事に戻ってきたら非常に良かったと感じますね。会社からも喜んでもらえますし、やったかいがあったなと。
――「工夫」はどうやって思いつくのですか?
いろいろありますね。今までやってきた中で、類似したものがあればそれを応用してやることもあります。通常の処理方法では通用しない時もありますが、そんな時はひらめき次第ですね。 先輩技術者に言われたのは、「おもちゃ屋に行け」ということです。おもちゃはいろんな動き方をする。そこからアイデアが生まれたりするから、仕事中だけじゃなくて、私生活の中からもアイデアを見つけよう、ということですね。私の場合、家で大工仕事をしていた時のアイデアが仕事につながったことがあったりしますね。
――今後の抱負について教えてください。
今よりもさらに生産性を上げたいですし、品質も今よりもっと良くしたいですね。 若手よりも僕の方が経験を持っていると思うので、若手の考えを実現できるようにアドバイスして、自分の考えを達成できた場合に得られる満足感を若手に経験してほしいと思っています。 何かを決めるときにも、若手自身に決めさせる機会を多くしてやりたいです。私たちが決めて「これをやろう」と言っても、人に決められたことは守りにくいものです。「自分でこのやり方でやっていきます」と決めたときは、力の入り方が違う。決めごとも上から押し付けるのではなくて、若手の意見も組み込みながら進めていって、活気ある職場を維持していきたいなと願っています。

keiodenka_p09.jpg 山本さん

工夫したやり方で生産性向上に成功したら、やりがいを感じる


品質保証部
大濱さん

――京王電化工業とは、どうやって出会ったのですか?
私は元々、めっき業界とは関係ないところで勉強していました。美術系の短期大学に進学していまして、そこでたまたま出会った鋳金を専攻し、次第に金属への着色に興味を持つようになりました。 仕事に対して、明確なビジョンがあったわけではありません。アルバイトでやっていた接客業にも興味があったのですが、1年を通して、情報誌、知人の紹介など、いろいろな職場を訪ねてお話を伺った中で京王電化工業とめぐり会いました。 結局、就職活動をして感じたのは「一緒に働く環境が大事なんだな」ということ。京王電化工業は職場の雰囲気がすごく良かったんです。アットホームで、働いている方の雰囲気がすごく良かった。すぐに「この人たちとなら一緒にがんばって働けるな」と感じられました。
――現在のお仕事は?
今は品質保証部で、分析などのお仕事をさせていただいております。品質保証部としての仕事の幅はとても広く、検査員の方と一緒に検査をする機会もあれば、納期調整であったり、品質の不具合・クレームへの対応に当たったりしております。
――貴社で取り組まれているカイゼンの取り組みで、大濱様が活躍されていると伺いました。
専門的に学んでこなかった分、この業界に対して無知なんです。それがマイナスになることがある反面、自分にとってプラスになるよう向き合ってみようと思いまして、ささいなことでも疑問に思ったら提案するようにしてみました。そういう意識を持ったことで自然と改善提案を思い浮かべるようになったんだと思います。
――今後の目標を教えてください。
せっかくめっきの会社で働いているので、「一度は自分でめっきを付けてみたい」という願望を持っています。 あとは品質保証部では、私よりもキャリアのあるパートの方に、私が指示を出す立場で働いています。ちょっとした気配りをして、もっと視野を広げられるよう、いろんなラインについて理解することで、仕事をもっとしやすい環境を作っていきたいです。そんなところを自分の仕事の一番のベースに持っていきたいなと思っています。

keiodenka_p10.jpg 大濱さん