<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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株式会社 マツダ自転車工場

株式会社 マツダ自転車工場 競輪のトップ選手も愛用。ミシュランも認めるオーダーメード自転車<br>乗り手の体格に合った自転車を0.1ミリ単位で設計してオーダーメード。国内外で数多くの賞を受賞した匠の技術

株式会社 マツダ自転車工場

競輪のトップ選手も愛用。ミシュランも認めるオーダーメード自転車
乗り手の体格に合った自転車を0.1ミリ単位で設計してオーダーメード。国内外で数多くの賞を受賞した匠の技術

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輝く技術 光る企業

株式会社 マツダ自転車工場

競輪のトップ選手も愛用。ミシュランも認めるオーダーメード自転車 乗り手の体格に合った自転車を0.1ミリ単位で設計してオーダーメード。国内外で数多くの賞を受賞した匠の技術

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  • 社名:株式会社 マツダ自転車工場
  • 設立年月:1951年
  • 資本金:1000万円
  • 従業員数:3名
  • 代表者:代表取締役社長 松田 裕道
  • 休日:水曜定休の他月2回。有給休暇、夏季・冬季休暇
  • 本社所在地:東京都荒川区東尾久1-2-4
  • 電話番号:03-5692-6531
  • 公式HP:http://www.level-cycle.com/
  • ・プロや愛好家向けを中心に、オーダーメードで自転車を製作
  • ・プロが重視するのは強度・精度・性能。強度を出すため、溶接にこだわり
  • ・失敗は隠さず正直に。経営も分かる職人を育てたい
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業種

オーダーメイド自転車の製造・販売(オリジナルサイクルの企画・開発・製作、競技用自転車の設計・製作)

事業紹介

(株)マツダ自転車工場は、東京・荒川区にあるオーダーメイド専門の自転車製作工房です。
弊社は1951年に「実用自転車メーカー」として創業。その後1975年からは競技用フレームの製作を開始。1980年にはNJS日本自転車振興会登録を取得し、『LEVEL』のブランドで、プロ競輪選手のためのオーダーメイドフレームの製造に着手しました。

【得意分野・車種】
勝つことを目的にしたプロフェッショナル用の競輪レーサーや、軽快な走りを望まれるアマチュアの方向けのロードレーサーの設計・製作が得意です。

【スポーツ以外のモデル】
乗り味とスポーツ性を両立させた走行が楽しめる『CITY LINER』、膝を曲げると痛みのある方や、膝関節があまり曲がらない方でも、乗ることが可能な変形性膝関節症の方のための『優U』(ゆうゆう)といった、街乗り用自転車の製作も行なっています。

【セールスポイント】
競輪選手や自転車愛好家、高齢の方といった、あらゆるお客様に満足していただける自転車づくりを心がけています。

何を作ってる?

オリンピック競技にもなっている競輪。約2700人の選手がいる中で、毎年の年末にはトップ選手9人が日本一を競う「KEIRINグランプリ」というレースが開催される。同大会に参加する9人のトップ選手、彼らが自分の手足となる自転車の製作を託す自転車メーカーは、ほぼ毎年わずか3社に絞り込まれる。そのうちの1社がマツダ自転車工場だ。 同社は自転車をオーダーメードで設計・製造する。乗る人の体格に合わせて、0.1ミリ単位で設計したフレームを作り出す。そしてタイヤ、サドルなどを組み合わせて1台ずつ自転車を完成させていくのだ。 同社製自転車1台当たりの価格は10万円以上。競輪選手用の自転車フレームを作ることもあれば、愛好家向けの速く走るための自転車や、お腹まわりが気になり始めた中年男性などにも乗りやすい自転車、高齢者用や障害者用の自転車なども手掛けている。 2013年3月には、世界的なタイヤメーカー・ミシュランが自社ブランド「VELO MICHELIN」の自転車「パリ・ブレスト」を売り出した。そのフレーム設計を担当したのもマツダ自転車工場だ。

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会社の強み

オーダーメードで1台ずつ設計する仕事になるため、マツダ自転車工場は30年ほど前、業界で初めて自転車作りにCADを導入した。自転車フレームを形作るパイプのサイズを速く正確に算出して、パイプを切断。溶接の跡がまったく残らないほどきれいな継ぎ目で溶接し、設計図どおりに仕上げていく。 「設計図ができたら、乗る人の体格に合わせてパイプを切る作業、切ったパイプを溶接してつなげる作業、塗装して自転車として仕上げる作業という順で自転車を作り上げます。競輪で使う自転車の場合、大事なのは強度・精度・性能です。その中でも強度が一番大事ですから、強度を左右する溶接は、必ず私が担当するようにしています」(松田志行代表取締役社長(取材当時)) 松田社長(取材当時)の溶接経験は40年近く。東京都からは「東京マイスター」、荒川区からは「荒川マイスター」として認定されたほどの腕前だ。松田社長(取材当時)の作る自転車は国内外から高く評価され、日本自転車普及協会主催の「ハンドメイド・バイシクルフェア」では最優秀賞を何度も受賞。2013年には北米で開催されたNAHBS(北米ハンドメイド自転車ショー)に出展し、President’s Choice AwardとBest track bikeの2つの賞を勝ち取っている。

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職場としての魅力

松田社長(取材当時)が心掛けているのは、正直であること。顧客とのトラブルに発展しそうな懸念事項があるのなら、できるだけ正直に伝えるようにしている。 「顧客とのトラブルが起こってしまうと、仕事が手に付かなくなります。それなら、トラブルになりそうなことをすべて先に正直に話しておけば、怒られることはあるかもしれませんが大問題にはなりません。 そうしてごまかさずに真面目に作っているので『顧客が求める以上に過剰に高品質になっているのでは』と心配になるほどです。品質だけでなく完成までにかかる時間も大切ですから、こだわるばかりでなく、経営のことも分かるバランス感覚に優れた職人を育てていきたいと考えています」(松田社長(取材当時))

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社長メッセージ
売るものは「自転車」ではなく「満足」。買う方と売る方、双方の「満足」を大切に

代表取締役社長
松田 志行さん(取材当時)
――自転車メーカーとして、大切にしているのはどんなことでしょうか。 私たちは、「自転車“屋”と同じ感覚で商売をしてはいけない」ということです。町の自転車屋が売っているのは高くても5万円くらいの自転車ですが、私たちが売っているのは10万円以上する自転車です。高いものでは30~40万円もします。それだけ高価になると「自転車を売る」という感覚では適切ではなく、「満足を売る」という考え方が求められます。売る方だけ、買う方だけが一方的に満足する関係では長続きしません。お互いに満足し合える関係を築けるような、仕事をしていきたいと考えています。 いい関係を築けている例としては、競輪選手との関係でしょうか。競輪選手は1人1人が骨格も筋肉の付き方も違いますから、その選手にとって1番速く走れる自転車が手に入るかどうかが勝敗に直結します。ですから競輪選手の方々には、オーダーメードで1人1人に合った自転車を作り出せる当社のことを重宝していただいています。 ただ、身長・体重を聞いて自転車を作ったとしても、1台目からすぐに最高の自転車を作り出せるわけではありません。1台目を使用してもらい、選手から「もっと加速をよくしたい」「最高速の伸びが不十分」といった感想を聞き、2台目、3台目と選手がもっと勝てる自転車のフレームを考えていくのです。 自転車は昔から、日常生活の用を足すために使う乗り物であって、それ以上のものではないと軽んじられていたように思います。そんな評価が少しずつ変わってきて、スポーツのため、趣味のため、健康のため、自転車にお金を使おうという人が増えてきました。特に若者の間では、かっこいい自転車に憧れる人も増えてきていますから、今後、こだわりの自転車を扱う店が増えてくるのではないかと予想しています。 当社には「給料は要らないので、ここで働かせてください」という人が来ることもあります。でも、そんな人は採用できません。お金が手に入らないと、その人の生活自体が成り立たず、仕事を続けられません。熱心さだけでなく、もっと大局を見ることができる人でないと、当社の仕事は務まらないと思います。 私自身は、お客様に満足してもらうのと同じように、家族や社員に満足してもらわなくてはいけないと考えています。そのためには、しっかりと自転車を売ってもっと利益を出すこと。まずは標準的な会社と同じくらい、利益を出せる体質の企業にしたいのです。そのために経営改革に取り組み、一定の成果が出てきましたが、もっと利益を出せる会社になれるよう、努力を続けていきたいと考えています。

08.jpg 代表取締役社長 松田 志行さん(取材当時のもの)

先輩メッセージ
お客様の「期待した以上の乗り味」という喜びの声が働く励みに


松田 裕道さん ―入社に至った経緯を教えてください。
以前は自転車とまったく関係のない業界で、営業職として10年ほど働いていました。それがある日、父である社長から「マツダ自転車工場を手伝ってもらえないか」と相談があったのです。父から頼みごとをされた記憶なんて、それまでありませんでしたから、考え抜いた末に「分かりました」と引き受けました。 はい、今は社内業務的に、接客や販売面といった生産工程外の社内営業を担当しています。お客様との接客、オーダーされたフレームの設計や、自転車組み立てに必要な部品の発注業務を任されています。 設計を行なったり、職人に製造を指示したりする仕事になるわけですから、私自身が自転車に関する知識を持っていないといけません。ですから入社以来、営業だけではなく、他にもさまざまな業務の経験を積んできました。最初はまず自転車の基本を覚えることから始まりました。まずは当社の店舗での一般車の修理作業に携わることで自転車の仕組みを覚え、その後はオーダーフレーム製作の素材となるパイプの切削工程に関わり、フレームの仕上げといった業務を学んできました。 もともと人と話をすることが好きだったので営業の仕事をしていました。前職で喜びを感じられたのは、自社商品を提案して、何度も断られた末に、1件でも契約が取れたときです。ただそれは自分中心の喜びでした。その後自転車の仕事に携わるようになり、修理に来られたお客様から「ありがとう」と声をかけられた際に、「自分は誰かの役に立っている」という実感を得られたことが仕事の励みになりました。 また、「LEVELのオーダーメードの自転車が欲しい」と来店されたお客様から、オーダーをいただき、その自転車を納車した際に、乗り味や出来栄えに満足してもらえたときにも充実感が得られます。社長はいつも「この仕事はお客様に自転車を売るのではない。満足を売る仕事なのだ」と言っていますが、競輪選手や高齢者の方など、目の前にいるお客様が満足されて「期待した以上の乗り味です」と喜んでいただけたとき、転職してよかったと思いますね。 働く環境としては、勤務時間が長く、楽な仕事ではありません。けれど、「自転車が好きだ」という社員が集まっています。仮に水曜日が休みであっても、その日に自転車関係のセミナーが開催されるのなら、休日を使ってでもセミナーに参加して勉強しようと考える社員ばかりです。そうやって仕事に役立つ知識を身に付けようと意欲的な社員に囲まれて一緒に働けることが、1番の魅力だと思います。 当社が製作・販売している自転車は、既製品とは違い1台1台手作りで手間がかかるため、一般的に見ても価格は安くはありませんが、一度乗ってもらえば、乗り心地や軽快さが、これまで乗っていた自転車とは違うということを納得していただけると思います。また、「高級な自転車はこんなにも違うのか」ということを理解してもらうことで、「『LEVEL』の自転車はすごい!」と感じてもらえる人がより増えると思います。今以上に「LEVEL」のブランドを広めるために、そういったお客様を増やしていくことが今後の目標です。 同じ働くことでも、アルバイトと社会に出て働くのでは意味合いが違います。社会に出て仕事をするようになると、自分の思い描いていたこととは違う面が必ず出てきます。 それでも、がっかりしたり、あきらめたりしないでください。思い描いていたのとは違うところがあっても、我慢して働き続けることで、満足できる仕事ができるようになるはずですから。

09.jpg 松田 裕道さん
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先輩メッセージ
好きなことを仕事にしているからこそ、今の仕事を長く続けられている


遊佐さん ――こちらの会社で働くようになったきっかけは?
身近な人がモノづくりの仕事をしていまして、自分もモノづくりを仕事にしたいと考えるようになりました。その中から自転車を選んだのは、自転車が「かっこいい」と思っていたからです。 当社に初めて訪れた際に、実はお客として来店しました。オーダーメードの自転車を作ってもらったのです。以前からマツダ自転車で働きたいと思っていたので、その場で思わず「この会社で働きたい」と頼んでみたのですが、そのときは断られてしまいました。 それから1年間、ある自転車屋で働いてみて、自分なりに自転車のことを勉強しました。その後もう1度「働かせてもらえないか」と社長に頼んでみたところ、今度は無事に採用していただけまして、この会社で働くことになりました。 自転車フレームに使うパイプを切断する作業、フレームとして溶接されてからきれいに仕上げていく作業、フレームの完成に必要な最後の下処理といった作業を担当しています。他にも、来店されるお客様の自転車修理なども手掛けています。 基本的にはどの仕事も、自転車に関われて楽しいと感じます。ただ、フレームを仕上げる作業は、同じ姿勢で長時間作業することになり、時には肩が凝ることもあります。でも結果的にはそういった地道な作業を大切にすることで、より品質の高い自転車が出来あがります。 仕事がつらいと感じるときはもちろんありますが、いろいろな人に支えられながら、必要なときには教えを請いながら技術を習得していけるからこそ、くじけずにこの仕事を続けてこられたのだと思います。 ですので、その自転車を作っているマツダ自転車で働けることに感謝しています。 自転車を1人で作れるようになることですね。自分が将来、どんな自転車を作りたいのか、自転車によってどんな人を喜ばせたいのか、自分自身はどんな人間になりたいのか、と常に自問自答しながら働いていくつもりです。 仕事を続けていく上で、やはり大切なのは「好き」という気持ちだと思います。私の両親は「好きなことを仕事にすると、息抜きできなくなる」と私のことを心配してくれるのですが、私自身は「好きなことを仕事にしているからこそ、今の仕事を長く続けられている」と感じています。 好きなことを仕事にするべきか、どんな仕事を選べばいいか、いろいろな意見を耳にすることになると思います。どちらも一長一短あるのでしょうが、私は自分自身の経験から「好きなことをあきらめずに続けていくこと」をお勧めしたいです。 注)掲載している情報は、取材日(2013年11月)時点のものです。

11.jpg 遊佐さん
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