株式会社 三ツ矢

株式会社 三ツ矢
若い世代に継承されていく、高品質へのこだわり
どんなに難しい技術でも必ずやり遂げてきた事が、技術力の向上につながりました

株式会社 三ツ矢
若い世代に継承されていく、高品質へのこだわり どんなに難しい技術でも必ずやり遂げてきた事が、技術力の向上につながりました

- 社名:株式会社 三ツ矢
- 設立年月:昭和34年2月23日 創業:昭和6年10月10日
- 資本金:1,500万円
- 従業員数:324名(平成23年10月現在)
- 代表者:草間 誠一郎
- 本社所在地:東京都品川区西五反田3-8-11
- その他所在地:五反田工場、八王子工場、甲府工場、米沢工場
- 電話番号:03-3492-7197
- 公式HP:http://www.mitsuyanet.co.jp
- 株式会社 三ツ矢は国内に4つもの工場を持つ大規模なめっき加工企業。めっき加工は頑固な職人の仕事で、熟練した技術の継承は容易ではないように思われるが、三ツ矢では若い社員を積極的に採用し後進の人材育成にも力を入れているという。昔ながらの職人が持つ高度な技術力が新しい世代にどのように受け継がれていっているのか、その秘密に迫った。

業種
電気・電子部品などへのめっき加工
事業紹介
現在のめっきはIT、電子デバイス、ユビキタス、次世代エネルギー、次世代モータリーゼーション、環境技術等の先端技術に必要不可欠な存在になっています。
この中で株式会社 三ツ矢は顧客ニーズに応えるため、厳しい要求に「とりあえずやってみよう」の精神でお応えし、「困ったときは三ツ矢へ持って行け」と評価をいただける仕事を、電子・電気機器製造会社や自動車・運送機器製造会社など多くの企業様とお取引いただいています。
風通しの良い楽しい職場ですが、ルールは徹底しています。
草間 誠一郎さん
株式会社 三ツ矢 代表取締役
小澤 茂男さん
株式会社 三ツ矢 常務取締役
まず、三ツ矢の歴史、沿革について草間社長に説明していただいた。
「私の祖母と祖父が1931年に起業しました。最初は数人でやってた小さい町工場だったんだと思います。戦後に大手電気メーカーからの仕事がどんどん増えていきました。急成長に対応するために先代社長は優秀な技術者を育てようとたくさん採用したようですね。今は社員300人までに成長し、五反田の他にも八王子、甲府、米沢と全国に工場を四箇所設けています。私は入社してから15年米沢工場に勤務していました。」
戦後日本の急速な成長期に同じように成長を遂げた三ツ矢。
今回お話を伺った小澤常務はその時代に入社した技術者の一人。
当時の職人たちから技術を受け継いで、今の三ツ矢の技術の礎を作った人物である。
現在の社内の雰囲気について小澤常務からお話を伺った。
「若い人も多いし、みんな元気よく和気あいあいとやってます。明るい会社ですよ。売り上げ、利益の話もオープンなので従業員が納得して仕事しています。会議でもみんなそれぞれ言いたいことを言ってます。なんでも言える雰囲気で風通しがいいですが、挨拶と会社のルールを守る事は徹底しています。また、入ったら実力主義なので、学歴に関しては全く関係ないですね。中卒で出世してる人もいっぱいいますし。」
たしかに三ツ矢の工場内では若者が元気良く挨拶する姿がよく見られ、自由さと規律のバランスが良くとれていると感じられた。



品質には絶対に手を抜かないこだわりが技術力の向上につながりました。
めっき専門の企業としては三ツ矢はかなり大きい規模である。また、めっき加工技術は世界的にも最高峰のレベルであるという。三ツ矢のめっき加工技術について小澤常務はこう語った。 「いろいろな難しい技術の仕事をこなしていますが、品質には絶対に手を抜かないというのが当社のこだわりですね。たとえ一個数銭の部品であっても、組み立てられた後の装置は数十万円にもなるわけですから、そういうところで損害を出すわけにはいきません。たとえば、1ミクロンという数値があるのに対し、コストのために0.8ミクロンでも大丈夫というような事を言われてもそういう仕事は取らないんです。仕様を下げて仕事を取ってもお客様には分からないかもしれませんが、人をダマすような事はしてはいけないと徹底して言っています。」 「もうひとつ徹底しているのは、一回受けた仕事は絶対に出来ないと言わない事です。技術者としてはそれはものすごく大変な事なんですけど、社員みんなが頑張って乗り越えて技術力を向上させてきました。」 妥協を許さない徹底した品質へのこだわりが、今の三ツ矢の高い技術力を築き上げた。 「先代社長の頃は今よりも厳しくて、急にこれをやれ、とかこれはやめる、といった顧客の都合を第一と考え、優先する指示が多かったんです。公害の問題に関しても私が入社した当時(昭和40年代)はあまり規制がありませんでしたが、先代からいち早く排出処理をやるように指示されました。その時は本当に大変でしたが、その後、公害の規制が厳しくなった時に抵抗なく処理を行えたので、結果的によかったと思います。今は五反田工場の排出処理のラインは自前で作っているんですよ。」 目黒川沿いに数多くあったというめっき工場は今ではほとんど無くなってしまったというが、その中で三ツ矢の工場が今もなお残り続けているのは、排水処理にいち早く取り組めた事が大きな理由のひとつでもある。



できるだけその人の長所を引き伸ばすような教育をしていきたい。
若い社員が多い三ツ矢では、高い技術を支える人材の育成をどのように行っているのだろうか。草間社長に人材育成についてのお話を伺った。 「昔はめっき業といえば職人気質の『師匠の技を見て盗め』っていうスタイルでした。でも今はそういうやり方ではやっていけませんね。私が社長に就任した当時(2006年)は会社を辞める人が多かったんです。特に二〜三年目のこれからという社員が次々に辞めてしまって、すごくもったいないなと思いました。そこで、これからはもっと会社が社員をサポートしなくてはいけないと感じたんです。今まで安全教育と就業規則だけだった新入社員の教育に、2007年からメンタル的なケアも視野に入れた教育、コミュニケーション能力の教育、めっきの重要性を分かってもらうような教育を取り入れました。その結果、退職者は激減してほとんどいなくなりました。」 「ただ出社して退社する毎日じゃつまらないだろうから、やりがいを持ってもらうためにキャリアマトリックス制度もつくりました。たとえば仕事が出来るけど、口下手でリーダーシップが取れないような人でもキャリアアップできるような救済策があるんです。社員一人ひとりからヒアリングして将来の仕事の展望を考えてもらうようにしたいと考えています。できるだけその人の長所を引き伸ばすような教育をしないとこれからの中小企業はやっていけないですね。」 多くの中小企業が抱える人材育成についての問題に対しても、積極的な改革を取り入れて成果を上げている。



世界中に貢献している会社だと思って向上心を持って志望してほしいです。
最後に、お二人から、三ツ矢で求めているのはどんな人材か、めっき加工の魅力を交えて語っていただいた。 「向上心さえあれば、私たちがいくらでも手助けします。そういう意味では凄く恵まれた職場です。めっき加工には未来があって輝かしい世界が待っている。やってもやっても追いつかない難しくて楽しい技術です。大変なこともたくさんありますが、その分やればやるほど楽しい。今は忙しくてビーカー振ってる時間が無いのが私の唯一の不満なんです。若い社員が作業してるところを見るとうらやましいなあと思いますよ。技術の革新には常にめっきが関与してきた。地味で裏方の仕事ですけど、めっきが無くては電子部品は動かない。私たちが世界を動かしてると言っても過言ではない。だから胸張って自分はめっき屋だって言って欲しい。」(小澤常務) 「学生生活では努力してこれだけは負けないっていうものを持ってもらいたいですね。素直さと向上心があれば派手なことは必要ないです。うちでめっきをつけた製品は世界中で使われてるので、世界中に貢献している会社だと思ってうちを志望してもらいたいですね。めっきって本当に面白い技術なんですよ。」(草間社長)



先輩メッセージ
結果をしっかりと捉えるということが、ものづくりには重要だと思います。
新井 裕子さん
品質管理担当
入社6年目
品質管理を担当する新井さん。高い品質を保証する三ツ矢のめっき加工業の最後の砦ともいえる重要な部分の担当である。
--三ツ矢に入社したきっかけは何だったんですか?
「大学の研究室にいた知り合いに紹介されました。大学では電気化学を専攻していたのでめっきは同じジャンルだったんです。知り合いの紹介だった事もあり、安心して入りました。」
--入社当時は不安はありませんでしたか??
「やはり人間関係の不安はありましたけど、そこは先輩たちが優しく接してくれたので大丈夫でした。会社の人たちはみんな優しいですよ。 仕事の面では、最初は慣れていなかったので、やらないといけない仕事がいくつもあるときに、ひとつの仕事で手いっぱいになってしまい、他の仕事を忘れてしまったという失敗はしました。」
--担当されている仕事について教えていただけますか?
「製品の検査が主な仕事内容ですね。めっき加工の製品には、外観、密着性、膜厚という三大検査があるんです。お客様の要求仕様を満たしているか、厳しくチェックしています。」
--後輩に仕事を教える場合、どんなことに注意していますか?
「誰でも一回で覚えるのは難しいので、一度教えて相手が理解したつもりになっていても、あとで作業を見てみると教えたとおりにやれていなかったりする事が多いんです。一度教えたからそれっきりではなくて、教えた後も様子を見てあげることが大事ですね。他には、めっき方法によって検査するときに注意するポイントが違うので、それは必ず教えてあげています。めっきの工程が理解できていないと製品の検査もスムーズに行かないので、背景(めっき加工の工程)を理解する事は凄く大事なんです。」
--ありがとうございました。最後に、ものづくりを志す後輩たちへのメッセージをお願いします。
「学生時代の実験や卒業研究が、今では仕事にすごく役立っています。実験では出た結果を集めてレポートにまとめていきますよね。結果をしっかりと考察して次に活かすということが、ものづくりをする上で重要だと思います。そのとき興味がない分野の勉強も、いつか役に立つ事があるので頑張ってください。」



先輩メッセージ
要求された数と品質を上げきった時の達成感が醍醐味です。
藤澤 俊一さん
製造技術担当
入社4年目
入社4年目、若手社員の藤澤さんは手作業で製品にめっきをつける作業を担当。職人技が要求される難しい作業であるが、日々の実践で少しずつ技術を向上させている。
--三ツ矢に入社したきっかけは何だったんですか?
「大学時代に教授から紹介されて三ツ矢を知りました。学生時代は生化学系でコラーゲンの研究をしていて、めっきの事はよくわからなかったんですが、 工場見学に来て作業風景を見て興味を持って入社しました。」
--担当されている仕事の内容はどのようなものですか?
「自動車関連部品のめっき担当です。具体的にはエアーフローセンサーという、エンジンに空気を入れるための部品にすずめっきや金めっきをつけています。担当しているお客様の部品は世界的なシェアを占めていると聞いているので、絶対に品質には気をつけています。」
--今までに仕事で大変だった事はありますか?
「入社した当時は仕事に慣れていないし、納期も厳しかったので大変でした。品質も納期も厳しいときはありますが、なんとか気合で乗り切ってます。(笑)」
--めっき加工は高い技術を要求されると思いますが、どうやって身につけているんでしょうか?
「基本は先輩から教えてもらって覚えます。あとは実践で体得して自分なりのやり方を見つけるしかないですね。よく見ていると仕上がる製品が同じでも、先輩と自分でちょっとづつ作業が違うところがあったりするんです。今やっている、『部分すずめっき』に関しては数をこなしてる分、自信を持っています。」
--めっき加工の醍醐味はなんでしょうか?
「要求された数と品質を上げきった時は達成感があります。品質の良いものが出来た時は楽しいですね。あとは技術が身についてくると、つくったものに対して自信が持てるようになってくる事です。」
--ありがとうございました。最後に、ものづくりを志す後輩たちへのメッセージをお願いします。
「やる気さえあれば技術は後から身につけられると思います。本人のやる気しだいなので、がんばってものづくりに取り組んでください。」


