株式会社仁木鍍研工業所
株式会社仁木鍍研工業所
金属のつや消しからガラス・木材の表面加工まで可能なサンドブラスト技術
わずか24人で250社以上からのオーダーに応える秘密は、社内に蓄積された知見とアメーバ状組織の柔軟性
株式会社仁木鍍研工業所
金属のつや消しからガラス・木材の表面加工まで可能なサンドブラスト技術 わずか24人で250社以上からのオーダーに応える秘密は、社内に蓄積された知見とアメーバ状組織の柔軟性
- 社名:株式会社仁木鍍研工業所
- 設立年月:1955年
- 資本金:1000万円
- 従業員数:24名
- 代表者:代表取締役 仁木 弘之
- 本社所在地:東京都東京都足立区新田2-7-17
- 電話番号:03-3913-7585
- 公式HP:http://www.nikitoken.com/
- モノづくりの1工程として、日本の製造業を支える金型やめっきなどの技術がある。株式会社仁木鍍研工業所の持つサンドブラスト加工もそんな技術のうちの一つ。同社の社員数は24人だが、250社以上から仕事の依頼を受け、さまざまな業界で欠かせない企業として知られている。サンドブラスト加工とはどのような技術なのか。仁木鍍研工業所の事業内容を紹介していこう。
事業紹介
金属部品やガラス材料などへのブラスト加工は、私共にご用命下さいませ。
R&Dから試作・量産まで、各ステージでの対応をさせていただきます。
年間250社以上から仕事の依頼、サンドブラスト加工の技術
光沢を放つ金属の表面。光沢を持たせたまま使うこともあれば、つやを消して光が反射しないように加工してから使うこともある。例えば自動車の場合、使われている金属が光を反射してしまっては、運転手の目に光が入って運転ミスを招きかねない。 そこで金属の光沢を消すための加工が必要になってくる。株式会社仁木鍍研工業所が手掛けるサンドブラスト加工は、金属のつや消しに使われる加工方法の一つ。金属表面に研磨材(「砂」)を打ちつけて微細な凹凸を生み出し、「梨地」と呼ばれる状態にする技術だ。 仁木鍍研工業所は1年間で、実に250〜300社から仕事の依頼を受ける。各種金属部品に始まり、玩具メーカー発注のモデルガン、航空宇宙関連の最先端で使われる部品、外壁やサッシなどの建材、医療機器、さらには大手テーマパークのパビリオンで使われる材木など、同社のサンドブラスト加工の技術はさまざまな業界で重宝されているのだ。 数多くの企業から仕事を受けるようになったのは、なぜだろうか。同社の仁木弘之代表取締役に伺うと、次のような回答が返ってきた。 「会社としての見栄や体裁は気にしていません。依頼されたものなら何でも、『とりあえずできないか』と考えて、多少の無理で対応できる仕事は、引き受けるようにしています。『この分野しかやっていません』ではなくて、何でもやろうという姿勢です。 素材は圧倒的にアルミやステンレスなどの金属が多いのですが、中にはプラスチックやガラス、セラミックス、木材などの加工依頼もあります。 用途も多様で、見映えを良くしたいという外観の高級化をはじめ、つやを消す、あるいは塗装の前処理等々。別素材との密着性の向上や、滑り止めのための粗面化(表面をざらつかせる)等の依頼もあります。表面を硬化させたい場合にも利用されます」
技術の伝承はあえて口伝で。アメーバ状の組織が会社の強み
250社以上からの依頼は、もちろん内容がそれぞれ異なるが、サンドブラストは多数のパラメータによって加工具合を変えることができる。依頼品に打ちつける研磨材(砂などの粉粒体)の種類・大きさ、打ちつける際の圧力・角度・時間などによって仕上がり状態を調整できるのだ。 逆に、各社からの依頼に対応する上では、最適な設定をそれぞれ探っていかなくてはならない。仁木鍍研工業所では、これまでの仕事から得たノウハウを社内に蓄積。過去の経験を活かしながら加工の設定を決めているという。 「ちょうど伝統工芸の口伝に似て、文書化しにくいところがあるのです。組織としてシステム化すべきだという考え方もありますが、どうしても落とし込めないところがノウハウとも言えます。また、ISOなどの規格導入は、かなりの費用が掛かるのも悩みどころ。もちろん、ルーティン品や大手向けはそれなりに規格化(文書化)していますが」と仁木氏。無理をせずに、このままで行こう。そう判断した上で、口伝に近い形でノウハウを伝えているのだ。 そんな方針を選んだ仁木氏が、自社の強みとして挙げているのはアメーバのような社内組織。「職種の区分けがゆるく、誰もが複数の職種をこなせます。自然発生的に、各スタッフが自分に最適な居場所を見つけて働いているのです」(仁木氏)。誰かが抜けた際にシステムで穴を埋めるのではなく、最初から柔軟な組織構成にすることで、自然と有事に備えられるようにしているようだ。
世の中の役に立つこと。人々から必要とされるモノにかかわりたい
国立博物館や、空港の貴賓室、首相官邸や都・県庁舎にも、同社がサンドブラスト加工した金属部材が使われているとのこと。日本のモノづくりを支える1人として、仁木氏は次のように意気込みを話している。 「モノづくりをしていると次第に、『世の中の役に立ちたい』という気持ちが強くなってきます。 ですから依頼を受ける際には、できるだけお客様から『何に使われる品物なのか』を聞くようにしています。そして、その事をスタッフにしっかりと伝えることで、意識を高く持ってもらえるよう心掛けています。モノづくりにかかわる者として、自分がつくっているものがいったい何に使われているのか、興味を持つのは大事なことです。 さらには、多くの人々から必要とされるようなモノにかかわっていきたい。現場のスタッフがやりがいを感じ、思い入れを持って取り組めるような仕事を手掛けていきたいものです。とりわけ、モノづくりに対する明確なポリシーを持ったメーカーさんとのお仕事、お手伝いは、まさに『ごちそう』ですね。そのような形で微力ながらも世の中のお役に立ちたいと考えています」
先輩メッセージ
加工した品物の用途を聞いて「すごい」と感じることも
斎藤さん
――サンドブラストによる加工は、どのような工程で進むのですか?
加工する品物に合った治具を用意して、ブラスト加工をする機械に通します。丸いパイプのような品物なら、棒状の治具を筒の部分に通します。機械で研磨材(「砂」)を打ちつけるので、支えなしで通してしまうと飛んでしまいますから、品物を保持するために治具を使っているのです。
1回の処理は何分も掛かりませんが、それを向きを変えて複数回処理します。仕上がり具合が不十分な場合や品物の形状によっては、さらに追加処理します。ムラが出ずに仕上がるように注意しています。
私はその中で、工程管理を中心に、治具の作成、機械の修理といった周辺業務も担当しています。品物ごとに納期が決められていますから、どのチームにどれを任せるか考えながら、それぞれの納期までに納められるよう心掛けています。
――仕事上、特に気を配っている点はどんなところでしょうか?
1日に処理できる量は決まっているので、お客様の納期を見ながら、急ぎの仕事を割り込ませたりしているところです。作業計画表がありますので、そこに書き込んで調整し、急ぎでやるべき品物を融通しています。
あとは、不良品を出さないように心掛けています。加工の際の注意事項は計画表の備考欄に書いて指示するようにしています。ただ、品物によっては治具を使っても飛びやすいものがありますので、特に危ない品物は自分の目で加工治具をチェックし、大丈夫かどうかを確かめてから加工してもらいます。それでも危ない品物は、手で持って加工する「手打ち」という工法で処理することもあります。
――仕事の魅力について教えてください。
加工している品物が何に使われるのか、ということを知らされて驚くことがよくあります。デジタルカメラの筐体(ケース)ならすぐに分かりますが、医療機器など、普段かかわりのない製品に出会うと、すごいなと思いますね。
――サンドブラストで今後チャレンジしてみたいことは?
これまで業界でもサンドブラストをしたことがないような品物にブラストしてみたいです。爪にタトゥーなど面白いかもしれませんね。