<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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株式会社 酒井ステンレス

株式会社 酒井ステンレス ステンレスの研磨専門企業から、ステンレス製品メーカーへと着実に発展<br>食品・飲料、医薬品などを作るステンレス製装置を扱う。製造工程の一貫対応に加えて、装置部品の設計にも挑戦

株式会社 酒井ステンレス

ステンレスの研磨専門企業から、ステンレス製品メーカーへと着実に発展
食品・飲料、医薬品などを作るステンレス製装置を扱う。製造工程の一貫対応に加えて、装置部品の設計にも挑戦

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輝く技術 光る企業

株式会社 酒井ステンレス

ステンレスの研磨専門企業から、ステンレス製品メーカーへと着実に発展 食品・飲料、医薬品などを作るステンレス製装置を扱う。製造工程の一貫対応に加えて、装置部品の設計にも挑戦

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  • 社名:株式会社 酒井ステンレス
  • 設立年月:1948年2月
  • 資本金:1400万円
  • 従業員数:本社、京浜島工場 36名
    白河工場 14名
  • 代表者:代表取締役 酒井寿俊
  • 本社所在地:東京都大田区東糀谷1-1-22
  • 電話番号:03-3742-3838
  • 公式HP:http://www.sakai-st.co.jp/
  • ・歪みやすく加工が難しい素材、ステンレスを使った製品を巧みに製造
  • ・全工程を一貫対応することで、顧客の手間・期間・費用を削減
  • ・業務拡大に必要なのは、何よりも人材育成。資格取得を勧め、成長を促す
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業種

ステンレス製品の製缶 、研磨、電解研磨、超音波精密洗浄、レーザー加工、サニタリー配管の設計、製造、現地工事

事業紹介

酒井ステンレスは創業以来ステンレスの素材を最大限生かすよう、ステンレス加工にて技術を磨き、重量物から小物まで幅広く機械治具等を取りそろえ、お客様のニーズにお応え致しておりましたが、より良い製品を制作するために必要不可欠な設計、製缶、機械加工と分野を広げてまいりました。


おかげさまでこの方面でも多大なる評価を頂き、お打ち合わせより完成品納品まで一貫生産の体制を整える運びとなりました。


また近年よりご要望の多い半導体、バイオ、製薬等、一層のクリーン化に対処するため電解研磨及び超純水清浄装置も導入致しております。

何を作ってる?

食品や飲料、医薬品などを製造する際には、衛生面に気を配る必要がある。人体に入るものである以上、製造過程で使用するさまざまな装置も、クリーンでなくてはならない。従って装置の素材には、腐食に強いステンレスが使われることが多い。酒井ステンレスは、そうしたステンレスの製造装置を中心に製作している。 ステンレスは、鉄にクロムやニッケルを加えた合金だ。鉄やアルミなどは単一の元素でできているが、ステンレスは鉄・クロム・ニッケルが含まれているため、構成する粒子の大きさが違う。溶接などで熱を加えると、鉄・アルミなどと比べて歪みが生じやすく、加工するには高度な技術が必要になる。 酒井ステンレスは社員数50名ほど。小規模ながらステンレス材を仕入れて、切断・溶接をして製品を形作り、研磨、洗浄し、検査するまでを一貫して手掛けている。ステンレスという特殊な材料を、全工程にわたって扱える企業は日本中を見渡してみてもほとんどなく、酒井ステンレスのほかに1~2社あるかどうかだと同社代表取締役の酒井寿俊氏は話している。

03.jpg 出荷前の製造装置

会社の強み

全工程を一貫して対応できることで、依頼主にとっては各工程の手配が不要になり、工程間の運搬に掛かる期間・輸送費も削減できる。 そして何より、前述のとおりステンレスは取り扱いが難しく、衛生面の配慮も必要なため、高い水準で品質を維持・管理していくことが困難。依頼主が工程ごとに仕上がり具合を確認しているとかなりの手間が掛かってしまう。だが酒井ステンレスに任せておけば、手間が掛からず高品質で仕上げてくれるので、依頼主には利点が多いわけだ。 さらに同社は、依頼主から依頼を受けて製品を作るだけでなく、自社で製品を開発するメーカーにもなろうとしている。製造装置の中で課題の残る部品を見つけては、改良を加えた自社製品を開発。例えば自社の技術力を活かし、加工は難しいが液だまりの生じにくい形状のバルブを考え出すなど、メーカーとしての実績を着実に積み上げつつある。

04.jpg ステンレス加工用に独自の装置・工具などを開発
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職場としての魅力

「うちで5~10年働けば、どこの企業でも通用するよう、積極的に資格を取らせています」と酒井氏。切断・溶接、研磨、製造装置の組み立て、工場に持ち込んでの設置・配管といった業務がある中で、それぞれの社員が担当している業務を踏まえ、酒井氏から「この資格の取得を目指してみてはどうか」と勧めるようにしている。 「設立当初の酒井ステンレスは研磨専門。私の代になって溶接、表面処理、設計と業務範囲を広げ、今のような一貫対応が可能になりました。 業務範囲を広げるには設備投資も必要ですが、それ以上に人材育成が不可欠。人を育てるのには時間が掛かりますから、業務範囲を広げたくてもできない企業が多いのです」(酒井氏) 人を育てることでステンレス製の装置・部品を一貫対応できるようにしてきた実績のある酒井氏の下でなら、技術者としての成長を確かに期待できるだろう。

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社長メッセージ
モノづくりは、自分が真っ黒になった分、きれいな製品を生み出せる仕事

代表取締役
酒井 寿俊さん
――ステンレスの加工は、どんなところが難しいのでしょうか。 溶接すると非常に歪みやすいのです。「こんな形状なら、こう溶接すると歪みを抑えられる」「こう溶接すると、1度で内も外も済ませられる」といったノウハウを社内に蓄えています。歪みを抑えるための矯正用治具も作っていますし、若手社員は先輩の仕事を見ながら一つずつノウハウを理解して覚えていきます。 研磨にしても、ステンレスは最初から輝きを帯びているわけではありません。粗い目から始めて、徐々に目を細かくしながら、やすりを掛けていきます。そして最後に、薬品を使って表面を平滑化する電解研磨を行います。そこまでして、ようやくステンレスは輝くようになるのです。 人間の口に入れるものを作る装置で使われるわけですから、わずかなでこぼこも許されません。でこぼこがあればそこに液体が溜まり、細菌が発生してしまいますから。できる限りクリーンになるように、気を使って製造しています。 「メーカーという立場になれる」と自信を持てるようになってきたところですね。 特に医薬品の製造装置は検査が厳しく、安全性を保証するため、製造を担当した製品について膨大な資料を作成する必要があります。そうした検査に対応できる人材がようやく育ってきまして、海外の製薬会社からもお仕事をいただけるようになってきました。日本を代表する製薬会社などからも、当社を指名して発注いただけるようになってきているほどです。 そんな関係が構築できてきたことで、お客様と情報交換できる機会が増えてきました。「こういうものが世の中にはないが、作れないか」と相談いただくことも増えています。そうした要望に一生懸命応えようとしてきたことで、いくつかの自社製品が生まれてきたのです。 仕事をするようになると、学生時代から環境が180度変わります。仕事で8~9時間は拘束されて、やりたくないこともやらないといけません。みんな大変な思い、苦しい思いをします。そんな思いをするからこそ、自分が納得できて、楽しめる瞬間のある仕事を見つけてください。 モノづくりは、自分が真っ黒になった分、きれいな製品を生み出せる仕事です。そんな話をしますと、目をキラキラと輝かせながら聞いてくれる学生さんはまだたくさんいます。そんな学生さんには、ぜひモノづくりの世界に飛び込んできてほしいですね。 私は、若手社員と1対1で会話ができる機会を大切にしています。人の顔を見ると、どんなことを考えているかがだいたい分かります。その社員が日本全国・海外を飛び回って仕事をしたいのか、それとも一つの業務をじっくりと極めることに喜びを感じるのか。それぞれの社員のことを考えながら、適材適所で仕事を任せていくつもりです。

08.jpg 代表取締役 酒井 寿俊さん
自社製品のバルブを手に取って説明

先輩メッセージ
お客様の工場での溶接を経験し、段取りが良くなり、人の役に立っていると実感できた

製缶
昆野さん
――担当している業務内容は? 溶接を担当しています。食品・飲料、医薬品などの工場に設置されるユニットやタンクのような大型のものもあれば、細かな部品を溶接することもあります。 仕事の流れとしては、営業担当者から図面と材料を受け取って、図面の指示どおりに進めていきます。 溶接の仕事をしていて記憶に残っているのは、装置が実際に使われている工場に行って溶接した時のことですね。自社の工場とは全然違う雰囲気・環境の中での仕事になります。必要な工具のある場所も分かりませんし、お客様に見られているという緊張感もあります。失敗が許されない一発勝負でもありました。とにかく難しかったです。 ただ、そうしたお客様の工場での仕事を経験したことで、要領が良くなったと思いますね。無駄な時間を使わず、段取り良く仕事を進めることができるようになったと感じています。 普段の溶接の仕事の中には、どんなところで使うのかが分からない製品もあります。ですがお客様の工場など、実際に使われている場所に行くと、人の役に立っていると実感できます。しかも、飲料や医薬品といった生活と密接にかかわるものに使われているわけですから、なおさらですね。 当社には、さまざまな会社から転職してきた腕の良い職人がたくさん働いています。仕事ぶりをただ見るだけでも、勉強になるところが多いです。 しかも、会社によって溶接のやり方は全然違います。さまざまな溶接のやり方を比較しながら勉強していくことで、「こういうやり方もあるのか」「こちらのやり方に変えれば、もっと早くできるな」と、より自分に合った溶接方法を見つけることができます。 研磨も経験してみたいですね。そして、いずれは現場でリーダーが務まるようになっていきたいです。 どこの会社に入っても、最初は当然できないことばかりのはずです。その中で、どれだけ気を使えるかが大切になってくるのではないでしょうか。例えば先輩に教わりながら仕事をしている時に、「先輩は次にどの工具を必要とするのか」と考えるようにすることです。言われたことだけをするのではなく、先を読みながら動けるようになってほしいですね。

09.jpg 製缶 昆野さん

先輩メッセージ
現場の仕事と設計の仕事、両面の仕事ができるようになっていきたい

プラント
吉川さん
――どんなきっかけがあって、酒井ステンレスで働くようになったのでしょうか。 以前は茨城で働いていましたが、東京の実家に戻ってこなくてはならなくなり、東京で職探しをして出会ったのがこの会社です。 入社したいと思うようになったのは社長との面接です。お話を伺って、活力あふれる社長の姿に良い印象を持ちました。 前職ではプラスチック関連の研究開発職。モノづくりに直接携わっていたわけではありません。自分としては「モノづくり企業で働く以上、製品に直接携われる部門で働きたい」という思いを抱いていましたから、面接でその思いを社長に伝えたことを覚えています。 私が一番多く担当しているのは、パイプの切断作業です。お客様から指定された長さどおりに切らないといけません。非常に高い精度で加工する必要があります。短く切ってしまうと取り返しが付きませんから、長めに切るように心掛けています。長さを測って印を付けるのですが、引いた線の外側で切るようにしています。 最近では、溶接の仕事も任せてもらえるようになってきました。まだ先輩方と比べると明らかに力不足なのですが、少しずつでも新しい仕事を任せていただいています。 そして少しずつでもコツをつかめてくると、やりがいを感じます。これまではできなかった溶接が、できるようになった時には成長したなと手応えを感じられますね。 私は当社に入ってきたころ、完全にモノづくりの素人でした。私の吸収が遅くとも懇切丁寧に教えてくれた先輩方には感謝していますし、そんな先輩方がいるところがこの会社の魅力だと思います。 私が今担当している溶接は、機械を使った溶接です。機械を使わない溶接の方が技術力を要求されます。将来的には機械を使わない溶接を任されるようになっていきたいですね。 現場の仕事以外では、設計に力を入れていきたいです。少しずつ、パソコンを使って図面の作成などを任され始めていますから。 将来的には、切断や溶接といった現場の仕事と設計の仕事、両面の仕事ができるようになっていきたいです。 私にとってモノづくりの仕事は、入社したばかりのころはまったく経験したことのない世界でした。どんなことが求められるのかも分かっていませんでしたし、強く不安を感じながら働いていましたね。 ですがモノづくりの仕事に思い切って飛び込んでみて、先輩方に自分から話し掛けることで、分からないことを少しずつ減らしていきました。そうして教わっていった結果、「上手くなったね」と褒められると、やはりうれしいです。そのように「自分から思い切って飛び込んでみる」という姿勢が成長につながるのではないでしょうか。

10.jpg プラント 吉川さん