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坂田電機 株式会社

坂田電機 株式会社 独自技術で世界をリードする土木計測のエキスパート<br>戦後の復興を地盤から見つめ続けて60年。いま、日本発の技術が世界に羽ばたく。

坂田電機 株式会社

独自技術で世界をリードする土木計測のエキスパート
戦後の復興を地盤から見つめ続けて60年。いま、日本発の技術が世界に羽ばたく。

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輝く技術 光る企業

坂田電機 株式会社

独自技術で世界をリードする土木計測のエキスパート 戦後の復興を地盤から見つめ続けて60年。いま、日本発の技術が世界に羽ばたく。

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  • 社名:坂田電機 株式会社
  • 設立年月:1952年(昭和27年)11月
  • 資本金:90,000,000円
  • 従業員数:120名
  • 代表者:取締役社長 坂田 進
  • 本社所在地:東京都西東京市柳沢二丁目17番20号
  • 公式HP:http://www.sakatadenki.co.jp/
  • 道路や鉄道などの交通網、ビルや橋梁、空港などの巨大建造物、家庭ごみや核廃棄物の処分場…。これらを実現する土木技術は、今日わたしたちの生活基盤を成り立たせている必要不可欠なものだ。その土木の現場で、戦後日本の復興を支え、成長を同じくしてきた企業がある。それが土木計測のエキスパート、坂田電機だ。
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業種

土木計測機器製造業

事業紹介

土木、建築、災害関係の各種計測機器、試験機の開発、試作、
設計、製造および販売、設置工事ならびに計測中心の建設
コンサルタント

日本の土木技術発展と共に歩みはじめた黎明期。

坂田文男さん
坂田電機株式会社
取締役社長(現 取締役会長)
スカイブルーの本社社屋がまぶしい坂田電機。設立は1952年、まもなく設立60周年を迎える歴史のある企業だ。三代目社長である坂田文男さんに、創業の経緯をうかがった。 「創業社長である父は、戦前国鉄の技術研究所に勤めておりました。戦後、技術研究所を退職し、坂田電機を創立しますが、国鉄は日本の各地に線路を延ばすことになります。平地に盛土を作ったり、トンネルを掘ったり橋を造ったりするなど、この事業の中に土木のあらゆる要素が含まれていたんですね。日本の土木技術を語る上で非常に大きな意味を持っていたのが、戦後の国鉄の事業だったんです。これが先端土木の発祥と言っても過言ではありません。」 「父は、技術研究所時代の伝手もあり、国鉄から計測機器の製作を請け負う仕事を行っていました。計測機器に関して、当時は『これを作ればいい』というものはありませんでしたので、技術者と相談をしながら、現場に計測器を設置してデータを取って、うまくいかなければ計測器を手直しし…というようなことを繰り返し、現在に至るような機器を作っておりました。 坂田電機は先端土木技術とともに育ってきたのです。たとえば、地すべり発生時のデータを計測器で収集したのは当社が初めてなんですよ。」 坂田電機のコアとなる部分は、戦後復興の足音と共に産声をあげ、以後、日本の土木技術の発展と歩調を合わせ、坂田電機もまた成長を続けていくことになる。

sakatadenki-021.jpg 取締役社長(現 取締役会長) 坂田文男さん

技術と人を大切にする経営こそが、坂田電機の成長の原動力。

社長のお話は、創業時のエピソードから現在に至る過程へと移っていく。 「町工場から立ち上がり、30年くらい前にはすでに現在の体制が確立していました。当然ながら、業績には山も谷もありました。特にバブル後の後退は厳しかったですが、いかなる時も『人を切る』ようなリストラではなく、事業内容を集約する、といった方策をとり、みんなで少しずつ我慢して会社規模と人数を維持してきたのです。」 どれだけ厳しい状況となっても「社員数」を大事にしてきた理由について、坂田社長はつぎのように語る。 「計測というのはほとんど技術の世界です。計測器を作る技術ももちろんですが、売ればおしまいというわけではなく、これを現場にきちんと設置しないと正しいデータが得られない。そして、出てきたデータが予想と違う場合もたくさんある。日本の地盤は非常に複雑ですから、過去にはこうこうこういったデータがあったんで、計器は現象を捉えていると説明しなければならない。いつしか計測屋さんは技術屋さんの集まりみたいになってくる。ある程度人数がいないと力にならないんです。優秀な人がひとりふたりいればいい、というわけにはいかない。せっかく集まったエネルギーは温存したいという想いがあったものですから、いまでも技術集約的に社員数は多いんじゃないかなと思いますね。」

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世界唯一の技術、地中無線通信。

つぎに、坂田電機の製品についてお話をうかがった。まずは主力製品である地中無線通信システムだ。世界に認められた技術はどのようにして生まれたのだろうか。 「土木計測器というと、ここれまではどうしてもセンサー本体と記録装置をつなぐ電線が必要だったんです。ですが、電線の断線とか、破損の可能性が高い場所がでてきてしまいます。それならば無線を、ということになるんですが、土木計測の場となる海の水や土の中では、普通の電波が届かないんです。」 「そこで、周波数の低い電波を使うことで、無線による通信を実現しました。開発を始めたのは二十年以上前で、そこから実用化するまでに十年くらいかかりましたね。本格的に使われ始めたのは、関西空港の第二期工事で採用されてからです。そのころから、いろいろな場所で使われるようになってきました。中部空港やつい最近開港した羽田空港D滑走路の工事にも使われたんですよ。この技術は非常に難しいため、現在でもなお当社だけが提供することのできるオンリーワン技術です。」 「これから注目いているのは高レベル放射性廃棄物関連の動きですね。原子力発電所などから排出される高レベル放射性廃棄物を処分する方法として、地層処分という方法があります。主にヨーロッパ諸国で実施が計画されているものですが、地中深くに穴を掘って、いくつもの部屋を作り、そこに放射性廃棄物を入れ、土とコンクリートなどでフタをするのです。しかし、中の様子をみるためにセンサーを入れなければならない。けれども電線は止水の観点から使いたくない。そこで無線技術が必要になったのです。世界中を探した結果、当社の地中無線通信技術が唯一の技術ということでした。いまでは、原環センター(原子力環境整備促進・資金管理センター)に日本発の技術として認定していただいております。一番最初はスウェーデンでテストし、最近ではフランスでも実証試験を繰り返しています。」 坂田電機の歴史の結晶とも言える技術が、長い年月を経て今、大きく世界に羽ばたこうとしている。

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日常生活を基礎から支える、坂田電機の土木計測技術。

特長的な地中無線通信システム以外にも、坂田電機のオンリーワン技術は存在している。 「家庭ゴミの廃棄物処理場にも当社の技術が使われています。雑多なごみが廃棄される最終処分場では、環境に影響を与えないよう、遮水シートというものによって、ごみを透過した汚水が地盤へ吸収されるのを防ぐ施工が行われるのですが、そのシートに穴があいてしまっては意味がありません。そこで、シートを常時チェックするのが、当社の『遮水シート安全管理システム』です。穴の有無だけでなく、位置すらも検出できるんですよ。」 「他にも、地下鉄の構造が、ビルの基礎工事や地下工事、地下共同溝の建設工事の影響を受けていないかを検査する装置には当社の製品が使われています。あとはビルですとか、空港ですとか、海中トンネルですとか、そういったものの基礎工事での計測ですね。基礎がしっかりしていないとああいった巨大建造物は実現しませんから。ただ、実際にそれらの建造物完成するころには、当社の計測器は撤去されています。役目を終えた、ということですね。」 まさに縁の下の力持ちといったところだろうか、今日わたしたちの生活は、坂田電機の土木計測技術によって築かれた基礎の上に成り立っているのだ。

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確かな技術力は確かな学力から生み出される。

独自の技術力で土木計測技術のパイオニアであり続ける坂田電機。その舞台裏はどのような雰囲気なのだろう。引き続き社長にお話をうかがった。 「さきほども言いましたとおり、当社の強みは他でもない技術力ですので、正しいと思うことが自由に表現でき、積極的に意見交換のできる雰囲気づくりが大切だと思っております。ですから、社員お互いについても、なるべく肩書きで呼ばずに名前で呼びましょう、などといったことを働きかけたりしていますね。その甲斐もあってか、辞めていく社員は少ないですね。みなさん非常に長く居てくれるんですよ。」 採用についてもお話をうかがった。 「当社は新卒の方から採用を行っています。定期的に採用できているわけではありませんが、採れるときに採用する、といった感じです。そのため年齢分布はあまりきれいではないですね。40歳前後の方と、50才前後の方が多いような形になっています。」 技術力に重きをおく製造業となると、理系が有利にも感じるが、そのあたりはどうなのだろう。 「そもそも、応募してくる方に技術系の方が多い、というのはありますが、文系の方も採用するようにしていますよ。というよりも、こちらから特に指定することはないのです。ただ、技術というのは基礎学力がしっかりしていないと、その後の成長がなかなか難しいのです。その点では、当社は筆記による入社試験を必須としています。そういったものである程度点がとれないと、入社後どうしても伸びないのです。ですので、どんな方が来られても大丈夫、と言ってしまうのはちょっと語弊がありますね。」

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ひとつのことをひたすらに追求する根性を持って欲しい。

最後に、これから就職を志す若者に向けて、社長からのメッセージをお願いした。 「『石の上にも三年』という言葉があるように、ひとつのことを最低でも三年やるだけの根性はもって欲しいと思いますね。そうしてはじめて、その仕事が面白いとか面白くないとか、(自分に)合っているとか合っていないとかが分かるのであって、ちょっとやっただけでは分かりませんよね。厳しい言い方になるかも知れませんが、三年もたないひとは何をやってもダメじゃないかな、と思います。まずはしっかり三年、頑張ってみることが大事じゃないでしょうか。」 「あとはやはり、学生のうちにちゃんと勉強することです。就活よりも勉強です。一年、二年で基礎的なところをやって、三年からが一番勉強の楽しいところ。そのころやっと自分の専門がどんなものか形になってくるわけですから、そこでもうひといき頑張って、そして自分の専門を活かすための就職先を探す。就活ばかりで学生の本分を疎かにしてしまっては、あまりにももったいないと思います。」 最後に鋭いお言葉をいただいたが、それは、社長の若者に対する大きな期待の現れと言ってもいいだろう。取材中、常時穏やかな優しい眼差しでインタビューを受けられていた社長の姿に、「人」と共に技術力を育んできた坂田電機の、力強い企業力を垣間見たように思えた。

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先輩メッセージ
中小企業はしぶとさが魅力。失敗も成功も、チャレンジから始まります。

斉藤 茂さん
技術部 設計課
2008年入社

――入社のきっかけをお聞かせください。
「実家が九州の宮崎県なのですが、はじめは県内でそれまで勉強していた電気回路の設計ですとか、組み込み関係のプログラム開発などの仕事を探していたんです。その中で、当社の研究センターが宮崎にありまして、そこで始めて坂田電機を知りました。調べてみると学校の先輩にも入社されている方がいることが判り、話を聞いたりして、受けることを決めましたね。」
――入社にあたっての不安はありましたか?
「中小企業ということで、社員教育がしっかり受けられるのかな、という不安はありました。生活に関しては、親戚が東京におりましたので、そちらでの不安はあまり大きくなかったです。」
――実際入ってみての印象はどうでした?
「社員の方の年齢幅が広くて、なんというか家族的な感じでした。父親のような人もいれば、おじいちゃんのような年齢の方もおりましたので。入社してやりづらい感じではなかったですね。年配の方含め先輩方はみんな優しくて、こちらから話かければ、丁寧に対応してくれました。」
――いま担当されているお仕事についてお聞かせいただけますか。
「現在は開発をメインでやっています。最近では、GPSを使った地すべりや構造物から地盤への影響を観測するようなシステムの開発を担当しています。開発したものを実際に設置しに行ったりもするんですよ。現場でトラブルが起きないかどうか、ドキドキしますね。去年は自分が手がけた製品をフランスまで設置しにいく機会がありまして、そのときは現地でトラブルが起きて大変でした。その直後は現地のホテルで上司と一緒に必死に対応しましたね。結果として、きちんと成果が出せたので良かったです。一生懸命取り組んで、それがうまく結果に結びついた時は、やはり一番嬉しい瞬間ですし、やりがいを最大に感じる時ですね。」
――お仕事で特に気をつけている点はありますか。
「いろいろな角度から検証することがとても難しいと感じています。『こういうものを作りたい』というのは仕様として決まっていて、その機能を満たすことはある程度できるんですけれど、たとえば『こういう操作された時は』とか『変な振動が来たときは』とか、そういったことを考えたり、製造するときに作りやすいか、設置しやすいか、など、多角的な視点で設計することに日頃から気をつけています。」
――会社の雰囲気についてお聞かせください。
「若い社員に対しては、やる気があればどんなことでも挑戦させてくれるイメージです。会社全体でも常にいろいろなことにチャレンジしてやっている会社ですね。若手でもどんと大きな仕事をまかされたりすることがありますし、それで失敗してもちゃんとフォローしてくれる環境ですよ。」
――これから就職に臨む学生さんに向けて、メッセージをお願いします。
「いま社会情勢的に厳しい状態が続いていて、そういった意味で学生さんが中小企業を受けるには不安が大きいのではないかな、と思います。ただ、みなさんが思っている以上に、中小企業は力強いですよ。当社もいろいろなことにチャレンジしながら、規模が小さいことをメリットにしてみんなで団結して危機感を持ちながらやっているので、しぶといです。勉強になることも、やりがいもとても多いです。」 「当社の場合は失敗をいろいろと経験させてもらえます。大きな仕事をまかされて、失敗することもしょっちゅうなんですけれど、その痛い目をみた経験というのは、必ず自信に繋がります。楽ではないですけれど、そういった苦労をしていくのがまた楽しいし、やりがいなのかな、と自分は思います。みなさんも、これからいろいろなシーンに遭遇すると思いますが、失敗をおそれず、是非チャレンジして欲しいですね。」

sakatadenki-020.jpg 斉藤 茂さん
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たくさんの現場を見て、製品を理解することが第一歩。

神山 翔太さん
計測工事部 計測技術課
2010年入社

――入社のきっかけについてお聞かせください。
「自分の専攻は機械工学でした。大学の就職課に求人が出ておりまして、説明会に行き、ダムや地すべりや処分場など、いろいろな事業に関わる仕事をしているということだったので、それを通して世の中の役に立てればいいなと思ったので候補を決めました。」
――現在担当されているお仕事についてお聞かせください。
「現在は当社の計測機器を現場で実際に取り付けるような仕事をしています。また、取り付けた装置からデータを回収したりする作業も行います。最初は右も左もわからないような状態でしたから、不安はあったのですが、部署の先輩方と一緒に取り付けに行きながら、当社の製品に対する理解を深めているところですね。大きな現場で何十台もの計測器から一日かけてデータ回収をするという作業がありましたが、それは大変でしたね。」
――これからどういったお仕事をされたいですか?
「大学では設計を勉強していましたので、ゆくゆくは当社製品の開発や設計に携わりたいですね。ただ、自分の作るものがどんな場所でどんなふうに使われているのか、そういうことがわからなければ設計に入っても何を作ったらいいのかわからないはずですから、まず、いまはとにかく現場をたくさん見ておきたいですね。」
――神山さんから見た会社の魅力をお聞かせください。
「会社については、とにかく多くの製品を扱っている、という点ですね。既存の製品だけでなく、研究開発で新しい製品を作ったりもしているので、社会で活用されている範囲が広く、その意味でとても魅力的なんです。社内は社員同士の距離が近くて、親しみやすい雰囲気ですよ。まだー年目ですが、先輩方はみんな優しく指導してくれます。」
――これから就職が控えている学生さんに向けて、メッセージをお願いします。
「どこの学部、学科を出ていたとしても、社会に出てしまえばそれほど大きく変わりません。まずはしっかりと勉強をして、あとは例えば製造業の場合、ものづくりに対する強い想いがあれば、しっかりやっていけると思いますよ。頑張ってください!」

sakatadenki-019.jpg 神山 翔太さん
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