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株式会社三星光機製作所

株式会社三星光機製作所 少量多品種のレンズフィルター加工でオンリーワン<br>独自に築き上げた計算式で、依頼された透過率を正確に実現。レンズ1枚からの注文にも応じられる少数精鋭の組織体制が強みに

株式会社三星光機製作所

少量多品種のレンズフィルター加工でオンリーワン
独自に築き上げた計算式で、依頼された透過率を正確に実現。レンズ1枚からの注文にも応じられる少数精鋭の組織体制が強みに

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株式会社三星光機製作所

少量多品種のレンズフィルター加工でオンリーワン 独自に築き上げた計算式で、依頼された透過率を正確に実現。レンズ1枚からの注文にも応じられる少数精鋭の組織体制が強みに

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  • 社名:株式会社三星光機製作所
  • 設立年月:1935年(昭和10年)
  • 資本金:3260万円
  • 従業員数:26名
  • 代表者:代表取締役 大島 隆夫
  • 本社所在地:東京都板橋区板橋1丁目12番4号
  • 電話番号:03-3961-0675
  • 公式HP:http://www.sansei-opt.com/
  • 人間の目は、さまざまな光の波長を色として感じ取っている。その性質を利用してやれば、特定の波長を遮ってそれ以外の色を見分けやすくする、といったことも可能になる。
  • そのように光の波長の透過率を操作することで「特定用途でものを見やすくしたい」というニーズが産業界には存在する。カメラ、測量・測定器、医療機器、分析機器に半導体製造装置など、用途に応じてレンズにフィルター処理を手掛けているのが株式会社三星光機製作所。同社はどのような技術を持った企業なのだろうか。
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業種

各種コート品、ガラス製品一般

事業紹介

・減光フィルター(光学ガラス、蒸着ガラス)、産業用光学フィルター  可視域において1〜80%の透過率を任意に設定出来ます。
  (ECO対策品、各種RoHS対応品も扱っております。)
・各種光学フィルター(HOYA材、SCHOTT材等)、一般ガラス品の研削研磨加工、各種バンドパスフィルター
 精密角出し (主に丸、角ですが異形品御相談ください。)
・蒸着品(単層、多層膜、撥水コート、バンドパス、その他各種)
・金枠付フィルターの組立検査

特定用途で使うレンズを、フィルター加工でより見えやすく

遠く離れたものを見る望遠鏡に使われることもあれば、ミクロの世界を可視化する顕微鏡に用いられることもあるレンズ。遠くのもの、微小なものを見えるようにする、という用途で使われるわけだが、よりはっきりと見えるように、フィルターを使ってレンズに特殊な加工を施すことがある。 株式会社三星光機製作所はそうしたフィルター加工において、日本で最高水準の技術を持つ企業。特に少量多品種のフィルター加工に関しては「三星光機以外に任せられる企業はない。オンリーワンだ」という評価を受けている。 三星光機製作所の加工したレンズを使っているのは、カメラなどの家電、測量・測定の機材、医療機器に分析機器など。さらには半導体製造装置の中でも使われているという。 「光には波長があり、波長によって見える色が変わります。特定の波長をたくさん通したり、遮断したりすることで、見たい対象を見えやすくできるのです。 例えば血液を分析したいのなら、赤・オレンジ・ブルー・緑のフィルターを貼り合わせて、それを磨いてレンズを仕上げます。そのように加工したレンズを機械の中に組み込んでやると、血液の中が見えやすくなるのです」と同社代表取締役の大島隆夫氏は説明している。 同様に、測量・測定用ならイエローの波長の光を多めに拾えるようにすることで焦点を合わせやすくする。半導体製造装置なら、製造過程に含まれる紫外線照射によって接着する過程で同社の技術が必要になる。そのまま光を当ててしまうと紫外線量が多過ぎることもあるので、減光フィルターを加えて紫外線の透過率を調整しているのだ。

shacho1.jpg 代表取締役 大島隆夫さん

他社提供の資料に安易に頼らず、独自のノウハウを蓄積

このようなフィルター加工で技術力の差が現れるのは、依頼された透過率をどれだけ正確に実現できるか、というところ。その透過率を調整することに関しては、三星光機製作所の技術力は群を抜いている。「この波長の光については透過率1%で」といった依頼であれば誤差5%、つまり透過率0.95%〜1.05%の範囲内でものをつくり出すことができるのだ。しかも、同社は1枚からの注文でも快く受けている。少数精鋭で小回りの利く体制。だからこそ、少量多品種で「オンリーワン」と評価されているのだ。 誤差5%というのは、ほかの企業にはマネできない水準だという。それを可能にしたのは、同社が独自にノウハウを蓄えてきたから。通常、フィルター加工を行う際は、フィルターに使う材料のメーカーから渡される参考資料に従って加工を進めていく。ところが、同社は提供された資料からまずは必要な情報だけを抜き出し、自社で構築してきた計算式に当てはめる。その計算結果に従って、どのような加工をしていこうかと判断する。 「計算式を割り出すところまでが大変でした。けれど、材料メーカーの指示のままでは、精度を高めることができなかったのです。 日本でモノづくりをやっている以上、お客様からのリクエストにどれだけ応えられるかが大切だと考えています。海外に発注先を変えられては困りますから、海外ではできない独自の技術力が必要なのです。自分たちでどこまでできるかというのを常に考えながら、日々、地道な努力を積み重ねています」(大島氏) 独自の計算式もさることながら、外形寸法の公差に対して0.01ミリ単位でレンズを磨き上げる職人技も同社の技術力を支えている。従って、同社の求める人材像は「集中力の高い人」。仕事中は集中して作業に取り組んでくれる人材が必要とされているのだ。

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日本を良くできる光学関連の製品を生み出したい

少量多品種の加工について揺るぎない評価を得ている三星光機製作所。同社は今後どのような方向に舵を切ろうとしているのだろうか。 「一つの製品を作り上げて、何らかの産業に貢献できるようになりたいと考えています。壮大な夢物語になりますが、一つの産業を興すところまで目指せたら面白いのではないかなと。 日本という国自体がたくさんの問題を抱えている中で、農業に携わる人があまりに少ない。儲からない、苦しい、といった印象から、農業に背を向けている子たちが多いのではないでしょうか。そんな現状をどうにかしたい。農作物を安定的に生産できるような製品をつくりたいという気持ちがあるのです。 そういった思いから、光学からのつながりでガラスや光を使って何かできないかなと模索しているのが現状です。露地栽培であれば、波長をコントロールした光で成長を促せないかと考えているところです」(大島氏)

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先輩メッセージ
「モノづくりを日本に残す」という意地


執行役員 ゼネラルマネージャー佐藤さん
――現在の業務と、これまでのお仕事で印象に残っている案件について教えてください。
担当業務は製造現場の統括です。常務取締役と2人で工場を監督しております。 今回の東日本大震災の影響を被った企業が、私どものお客様の中にもありました。その企業は、福島県の原発の近くに工場がある会社から部品を調達していたのです。操業停止になってしまい、ほかから部品を仕入れようとしても、請けてくれる会社がなかったという。 その工場はパートだけで回しているようなところでしたので、かなり安い金額で納めていました。当社のように正社員中心でやっていますと、普通に収支を考えると赤字で、割に合わないお話でした。目先のことだけを考えれば請けられない話だったのですが、その依頼に応じることにしたのです。 そのお客様には、ほかの部品を納めていたのですが、売上としては大した金額ではありません。決して当社の長期的な利益を考えたわけではありませんでした。当社がその依頼を断れば、そのお客様は海外から部品を調達することになるか、その部品を使う製品の製造そのものを辞めてしまうだろう。そんな危惧があって判断したのです。
――赤字になる見通しだったようですし、貴社としてかなり厳しい案件になったのではないでしょうか?
これまでのやり方でコストを計算していては、どうにもならないことが目に見えていました。それなら、これまでのやり方を見直そうと。不良品が出てしまう確率をできるだけ下げられるようにして、コストカットのやり方をいろいろと考えました。 今まで使用していなかった機械を使って加工してみればどうなるだろう、といった試行錯誤を重ねた結果、10〜20%の単位でコストカットができました。 メーカーの製造現場が日本国内から海外に出て行くことが増えていますが、私どもとしては、海外に持って行かれるわけにはいかないという意地があります。確かに海外の方が人件費は安いのですが、中国などの人件費も上がってきたので、輸送費や間に入る商社の取り分を考えると、見積金額が10倍違うというようなことにはなりません。何割かの違いですし、国内から調達してもらうことで、安定的に良質な部品をお客様は入手できるようになります。できるだけ日本のモノづくりを国外に出すことがないよう努力していきたいと考えています。
――製造現場を見ていらっしゃるということですが、どんなところに注力していらっしゃるのですか?
従業員の持っている情報を共有化しようと試みています。 昔は職人気質を持つ古風な社員が多く、ほかの誰にも手を出すことができない仕事ばかりでした。職人気質の現場には良い面もありますが、悪い面もあります。当社では次第に悪い面の方が目立つようになってきていました。 そこで「誰かにしかできない」という状況を変えるために、機械を導入し、職人のノウハウをできるだけマニュアルに落とし込みました。徐々にではありますが、古風な現場の良い面を残して、悪い面を排除することに成功してきているという実感があります。 情報の共有化という意味では、今まではそれぞれの持ち場での上司・部下という、縦のつながりしかありませんでしたので、横のつながりを増やせるような仕組みも考えています。勉強会を月に2回開いて、それぞれの持ち場でやっている作業内容とノウハウを発表し合うようにして、「自分もあの仕事をやってみたいな」と思わせる機会を増やしているつもりです。 お互いの仕事内容を知ることで、前後の工程の内容と気を付けている点が分かるようになります。「次の工程のために、こういうことをしてはいけない」というのを注意しながら仕事に取り組んでいれば、製品のできあがりにも影響するはず。そういう意識が大切なことを、従業員に分かってもらうことが当面の目標です。

sato2.jpg 佐藤さん