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株式会社三信精機

株式会社三信精機 バランスの良い年齢構成の社員の力で、有名化粧品メーカーを陰から支える<br>“モノづくり”は“人づくり”と考え、若手・中堅・熟練者の力を結集することで、化粧品製造装置メーカーとして躍進

株式会社三信精機

バランスの良い年齢構成の社員の力で、有名化粧品メーカーを陰から支える
“モノづくり”は“人づくり”と考え、若手・中堅・熟練者の力を結集することで、化粧品製造装置メーカーとして躍進

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輝く技術 光る企業

株式会社三信精機

バランスの良い年齢構成の社員の力で、有名化粧品メーカーを陰から支える “モノづくり”は“人づくり”と考え、若手・中堅・熟練者の力を結集することで、化粧品製造装置メーカーとして躍進

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  • 社名:株式会社三信精機
  • 設立年月:1970年5月
  • 資本金:2000万円
  • 従業員数:34名
  • 代表者:代表取締役 渡辺 慶征
  • 社員平均年齢:45歳
  • 初任給:-
  • 主な勤務地:本社
  • 休日:隔週土曜、日曜・祝祭日、有給休暇。夏期・冬期休暇
  • 本社所在地:東京都大田区矢口3-15-18
  • 電話番号:03-3758-5311
  • 公式HP:http://www.sanshinseiki.co.jp/
  • あなたが見掛ける有名化粧品メーカーの口紅やファンデーションなどは、株式会社三信精機の提供した製造装置によって作られたものかもしれない。メークアップ用化粧品の製造装置で見ると、同社のシェアは約60%。元は機械器具などの製造・販売を行っていた同社が製造装置メーカーとして転身した背景には、どのような事情があったのだろうか。
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オイルショックという逆境をバネに柱となる新事業を立ち上げる

株式会社三信精機はオイルショックを機に、化粧品の生産ラインで使う製造装置の開発・設計・製造という新事業に乗り出した。それまでは自動車やコンピュータ、家電関連のコネクタメーカーの仕事を主としていたが、オイルショックを引き金とする不況により、受注量が激減。「何か別の柱を」と先代が考え、着手したのが化粧品製造装置の分野だった。 きっかけは同社の近くに、大手の化粧品メーカーの拠点があったこと。「業務依頼と言っても、最初はネジ等の小物部品を発注される程度でした。当時、大手化粧品メーカーの生産ラインは、ほとんどがアメリカ製の機械を用いていました。そのメンテナンスのために、当社で製作した部品が必要だったのでしょう」と同社代表取締役の渡辺慶征氏。化粧品メーカーからすれば、ネジ1本をわざわざアメリカから取り寄せるのは効率が悪い。そこで自社の近くに工場があった三信精機に発注するようになったのではないかと渡辺氏は振り返っている。 そんな縁から始まった化粧品メーカーとの取引だったが、オイルショックから40年近く経った今、同社の化粧品関連事業は全社売上の約半分を占めるようになった。中でも、口紅やファンデーションといったメークアップ用化粧品の製造装置分野では、業界で約60%のシェアを握っている。 三信精機がそこまで化粧品業界に深く入り込めた背景には、「技術力もさることながら、提案力があったからです」と渡辺氏は胸を張る。同社では、発注元に指示されたことをただ遂行するのではなく、改善案や向上案など、付加価値を生む提案をするように心掛けてきた。その結果、化粧品メーカーとの信頼関係を構築できたのだと渡辺氏は言う。 新規の取引先に仕事を依頼する際、発注側の企業は「この会社に任せて大丈夫か」という不安をどこかで抱えている。受注した企業はその不安を一つずつ取り除こうとするが、三信精機はさらにその一歩先、発注側の企業に「この会社なら、今までとは異なる発想が生まれるかもしれない」と期待させる関係にまで発展させようと努めているのだ。

03.jpg 代表取締役 渡辺 慶征 さん

20代から70代まで、バランス良く在籍する社員こそが会社の財産

技術力も提案力も、社員が生み出すもの。ということは、人材こそが三信精機の最大の財産であると言い換えても構わないだろう。 人材面での同社の特徴は、20代から70代まで、社員がバランス良く在籍しているところ。職人の高齢化が進むことで悩みを抱える中小企業が増えているが、同社は若手の育成を計画的に進めてきた。だからこそ現在でも、バランスの良い年齢構成を維持できているのだ。 「当社のような技術系企業では、若手の採用は先行投資。でも、若い人を育てなければ技術は廃れ、技術が継承されなければモノづくりの企業に未来はありません。“モノづくり”は“人づくり”なのです」と渡辺氏は熱弁を振るう。 そして渡辺氏によれば、人を育てるのは企業ではなく、あくまで人。同社では熟練の職人が中堅の職人に教え、中堅の職人が若手の職人に教えるという流れが自然にできている。その鍵を握っているのは、渡辺氏を含む中堅の世代だ。 「考え方の違いや技術の開き、それに世代間ギャップもありますから、熟練層が若手に直接指導するのは難しいです。ですが、間に中堅が入って潤滑油的な役割を果たすことで、スムーズに技術の継承ができるよう気を配っています」(渡辺氏)

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職人の仕事はチームワーク。若手の力は不可欠なもの

「先行投資」として若手を採用するとは言ったものの、若手の力は同社にとって不可欠なものだと渡辺氏は語る。職人の仕事は決して1人で完結する仕事ではなくチームワークが必要。「設計、生産管理、加工、組み立てといったさまざまな役割を持つ人がいて、初めて一連の作業が完成します。不要な人などいません」(渡辺氏) 同社では特に、若い世代が持つ力に期待する。企業に根付いてしまった古い体質などを打破する力は、若い世代にしかないという考えだ。 「学校から社会に出れば、当然多くの障害が待ち受けています。でも、決して諦めることなく、物事の本質を見抜いて歩みを進めることのできる人なら、必ず素晴らしいモノづくりができるようになるでしょう」(渡辺氏) そうしてたくさんの人材が集まり、社員全員が力を合わせることで企業価値を高めて行けば、たとえ数十人の企業であっても、何千人もの社員を抱える大企業と対等に渡り合っていける──それが渡辺氏の持論であり、今後の目標でもある。

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先輩メッセージ
化粧品メーカー責任者の「この商品ができたのは、あなたのおかげ」という言葉に感激

営業
瀬川さん

――お仕事の内容について聞かせてください。
私は営業という肩書きではありますが、一方で協力会社への業務手配や加工工程の管理といった生産管理の仕事も兼務しています。 営業で受注してきた製品を形にするところまで一貫して手掛けられるのですが、「自分の受注した案件を優先的に進めたい」という営業の立場と、「すべての案件を公平に進めなければならない」という生産管理としての立場にジレンマを感じることがあり、やりがい以上に気苦労を感じる時もあります(笑)。
――最近携わられた仕事の中で、最も印象に残っているものは?
大手化粧品メーカーから依頼がありまして、製造装置の提案から設計、開発、納品まで一貫して携わりました。特殊な仕事で、化粧品メーカーの研究チームに内容や成分を伺ったり、工場での生産方法やパッケージデザインを打ち合わせたりと、1年越しでさまざまな部署の方と連携しながら開発を進めました。 困難な仕事で体重が7キロも減りましたが、その分、完成した時の達成感はひとしおでした。 その製造装置で作られた商品は、テレビCMでも放映されています。商品が完成した時には、メーカーの責任者や担当者の方々が、完成慰労会を催してくださいました。その席上、「この商品が開発できたのは、あなたのおかげだ」というお言葉を頂くことができ、とても感激したものです。 私たちを単なる下請けではなく、運命共同体のように考えてくださったことが、喜びを一層大きくしてくれましたね。
――これから貴社に入社する若者たちに、何かメッセージをいただけますか。
社会に出てさまざまな壁にぶつかると、つい臆病になってしまいがちですが、若いことはそれだけで大きな武器になります。当社は歴史の長い会社ですので、良くも悪くも古い企業体質がありますが、良いところは吸収し、時代に合わないところは堂々と打破する気構えを持って入ってきてほしいです。 当社には努力が報われる環境があります。年齢を問わず、努力が報われるかどうかでモチベーションは上下するものです。探究心を持って、チャレンジし続けることを忘れないでほしいですね。私自身、そうしてこれまで働いてきましたから。

08.jpg 瀬川さん

何の変哲もない鉄の塊が、加工するうちに形になっていくのが面白い

技術
粟嶋さん

――入社されて何年目になるのですか。
4年目になります。NCフライスから始まって成形研磨、ワイヤー放電加工、マシニングなど、ようやく機械の扱い方を一通り覚えることができました。
――元々、モノづくりに興味を持って入社されたのですか?
実は、高校2年生のころまで、特にモノづくりに興味を持っていたわけではありませんでした。それが就職先を探していて、なぜかこの仕事に興味を持ちました。インターネットで当社のサイトを見ていたら、工場なのに油臭くないような気がしまして。また、高校ではコンピュータを専門に学んでいましたが、ずっと座って仕事をするより、体を動かす方が自分には合っていると感じていました。 仕事を覚えるまでは大変でしたが、それはどんな仕事でも同じでしょう。それに、この会社では先輩たちが丁寧に教えてくれるので、ノートをきちんと取って、分からないところをもう一度確認したり、自分で復習したりすれば、時間は掛かっても必ず仕事を覚えることができました。
――この仕事に携わっていて、難しいと思うこと、楽しいと思うことを教えてください。
何といってもアットホームなところです。分からないことは気兼ねなく先輩や上司に相談できますし、経営陣との距離も近いので、意思の疎通もスムーズです。毎日働く場所ですから、職場の雰囲気は良いに越したことはありません。その点この会社は居心地がいいです。
――ご自身の今後の抱負を聞かせてください。
初めての仕事や難しい図面に挑戦する時は、やはり難しいですし、ドキドキします。図面の描き方も人によってさまざまですから、入社からしばらくは理解するのに苦労しました。 逆に面白いのは、何の変哲もない鉄の塊が図面に従って加工するうちに、形になっていくことです。機械を使えば鉄でも削ることができると知って、驚いたことも記憶に残っています。
――今後の目標を聞かせてください。
材料を機械にセットしてボタンさえ押せば加工は始まります。ですが、材料の加え方や加工の仕方は何通りもありまして、それらの組み合わせによって、加工の仕上がりはまったく別のものになります。 今はまだ最善の方法を見つけ出せるだけのノウハウを持ち合わせてはいませんが、最善の方法を見つけ出せるよう、これから努力していきます。
――最後に、学生さんたちへのメッセージを。
やりたいことをやれれば一番ですが、それができないのが世の中です。でも、妥協をしないでほしいですね。 また、最初は興味のないことでも続けていれば、だんだんと面白くなります。まずはチャレンジすることが大事だと思います。

09.jpg 粟嶋さん