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先端フォトニクス 株式会社

先端フォトニクス 株式会社 未来のパソコンに必要な光インターコネクションのトップ企業<br>新技術による新市場の創造を目指して。サーバ類の性能を数十倍、電力消費を5分の1に改善する未来の技術:光インターコネクション

先端フォトニクス 株式会社

未来のパソコンに必要な光インターコネクションのトップ企業
新技術による新市場の創造を目指して。サーバ類の性能を数十倍、電力消費を5分の1に改善する未来の技術:光インターコネクション

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輝く技術 光る企業

先端フォトニクス 株式会社

未来のパソコンに必要な光インターコネクションのトップ企業 新技術による新市場の創造を目指して。サーバ類の性能を数十倍、電力消費を5分の1に改善する未来の技術:光インターコネクション

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  • 社名:先端フォトニクス 株式会社
  • 設立年月:2006年(平成18年)3月
  • 資本金:3000万円
  • 従業員数:非公開
  • 代表者:代表取締役社長 宋 学良
  • 本社所在地:東京都目黒区駒場4-6-1
    東京大学先端科学技術研究センター KOL305
  • 電話番号:03-5452-5748
  • 公式HP:http://www.advancedphotonics.co.jp/
  • 大学発ベンチャー、産学連携、といったキーワードを目にする機会が増えてきたが、その中でもIT業界で注目を集めているのが先端フォトニクス株式会社だ。電子回路に換わる光配線の回路を生み出すことで、パソコンやサーバ、ルータなどの性能を何十倍かに引き上げる技術:光インターコネクションで新たな市場を生み出しているという。同社の強みはどんなところにあるのだろうか。
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業種

高速大容量光配線実装基板の開発・設計・製造・販売

事業紹介

■光電変換モジュールの開発・製造・販売
電気信号と光信号の間の相互変換をつかさどるモジュール
当社では東京大学にて特許出願された、低コスト・高信頼性が担保できる独自の光電変換モジュールの専用実施権を取得済みです。この基本特許権をもとに光電変換モジュールの開発・製造・販売を行います。

■光配線基板の開発・製造・販売
光通信ができる光配線フィルムが埋め込まれたプリント基板
上記開発した光電変換モジュールを実装した、光配線基板の開発・製造・販売を行います。

電子回路の性能限界を光の回路で突破

インターネット接続用の光回線が一般家庭にも広がり、ますます高速にデータが処理されるようになった。しかし、光回線の中では高速なデータも、パソコンなどの機器に入ってしまうと速度ダウン。転送経路が光回線から電子回路へと変わることで、光の速度から電気の速度へと落ち込んでしまう。 そこをどうにかしなくてはパソコンなどの処理速度はこれ以上速くならない。それなら電子回路ではなく光配線の回路でデータ処理したらどうか――。そのために必要な光電変換モジュールと光配線基板の設計・開発を担っているのが先端フォトニクス株式会社だ。 同社は東京大学から生まれた大学発ベンチャー。東京大学先端科学技術研究センター所長を務める中野義昭教授の研究室から誕生した。中野教授は国際的な学会で基調講演を務めるなど、世界的に見てもこの分野の第一人者。その研究室で培ってきた研究実績・ノウハウを、先端フォトニクスは新市場創造のために活かそうとしているのだ。

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速度向上のほか、消費電力を5分の1に減らす効果も

同社取締役のイット・フーチョン氏によると、同社が手掛ける光インターコネクションの分野に注目が集まっている理由は二つある。一つは前述のデータ処理のボトルネックを解消する目的。特に同社の技術が必要とされているのは、大容量のデータを処理するデータセンターだ。スイッチやルータ、サーバなどの回路を光配線に切り換えることで、数十倍から数百倍の機能改善が見込まれるという。 もう一つの目的は省エネの観点。イット氏は次のように説明している。 「電子回路を使った技術では、通信速度が限界に来ています。それでも今以上に速くしようとしたら、非常に高価なチップが必要で、発熱量や消費電気量は急激に増えてしまいます。 データセンターの消費電力は既に膨大な量。最近はIT業界でもエコに注目が集まっています。そこで光インターコネクション技術を使えば消費電力を大幅に削減可能。5分の1程度に抑えられるのです」 こうした導入効果が期待されることから、光インターコネクションの技術には10年以上前から注目が集まっているという。一方で、長年課題になっていたのが、部品点数が多くなることによって高コストになること。そこで、先端フォトニクスでは部品点数を大幅に削減できる設計を考案した。大学発ベンチャーには「論文は上手いがモノづくりはできない」という批判もあるが、同社は設計どおりに製造してみせた。業界トップの技術力を持つ会社という評価を得て、今では大手メーカーなどとの商談も多数進んでいるようだ。

fuchon.jpg 取締役 イット・フーチョンさん
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大手通信機器・総合電機メーカーとの共同研究で急成長

しかし、それだけ注目されている新市場だけに、関連する企業はIBMやNECなど。いずれもIT業界の巨人とも言える企業だ。 そんな大手企業相手にも、先端フォトニクスは計画どおりに事業を成長させてきている。その成長を支えている要因は、中野教授の研究所時代からのノウハウや、部品点数の削減を可能にした画期的な設計(特許出願済み)のほか、さらに2点挙げられる。 まずは設計だけでなく製造まで自社で実現しようと考えているところだ。設計だけではなく、大量製造の一歩手前、量産化の目処をつけるところまで自社で手掛けることで、設計が「絵に描いた餅」ではないことを証明しようとしているのだ。さらに新技術だけに、光インターコネクション関連の製品を量産化する製造技術を持ち合わせている企業もまだない。自社で製造技術まで保持することで差別化を図ろうとしているのだ。 もう1点は、従来の電子回路にこだわっていないところだ。大手の企業はどうしても従来からの経験を活かそうと、電子回路ありきで考えてしまう。電子回路のパフォーマンスが最大化する設計に光回路をプラスしようとしがちなのだ。 しかし、革新的な性能を実現しようと思ったら、回路全体のパフォーマンスを最大化するという思考の下、光回路と電子回路を対等に扱い、最適な組み合わせをしなくてはいけない。そのノウハウを持っている人材は大手企業といえどもほとんどいない。専門家が集まる先端フォトニクスなら、相手が大手でも十分に渡り合えるのだ。 「ベンチャーは常に新しいことにチャレンジすることに価値がある。現在はチップ間の通信を光にする仕事ですが、将来はチップ内でも光通信が必要とされるはず。マイクロレベルの光通信までできれば、さらに面白いのではないかと思っています」とイット氏。ノートパソコンに光伝送技術を採用するというニュースも飛び込んできた。この領域で先頭集団を走る先端フォトニクスの動向から、今後ますます目が離せなくなりそうだ。

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先輩メッセージ
重要な仕事を任されて感じる充実感


開発グループ管野さん
――現在の仕事内容について教えてください。
開発された光電変換モジュールについて、量産できる目処を立てることが現在の仕事です。開発時に意図された性能を引き出しつつも、なおかつ簡単に製造できるやり方を探しています。 製造のことを考える場合、人の手作業と、装置を使った製造と、それぞれ利点があります。手作業はちょっとした手加減で調整しながらできる、という良さがあります。装置を使った製造では、手作業で許されていた加減が許されません。その分、手作業よりも精度が高く作れるのですが。そういった手作業と装置の違いを見据えながら、製造方法を考えています。
――印象に残っているお仕事は?
大手メーカーと共同開発をやっていまして、実際に製品を作って納品した仕事が思い出深いです。 数百マイクロという単位のすごく小さな部品を扱っていました。顕微鏡を見ながらの作業で、慎重に作業を進めていました。何度も繰り返し作り直して、ようやく完成した製品が、実際に動作させてみると動かなかったのです。 納期が迫る中で不安だったのですが、宋CTOの手助けがあって、何とか解決できました。そういう専門知識がある上司が居ることの心強さを感じましたね。
――先端フォトニクスで働いていて、働きがいを感じるのはどんなときですか?
製造用装置の購入検討から立ち上げまで携わることができたときですかね。 以前に勤めていた会社では、同じように光関係の研究をしていたのですが、開発の途中で担当から外れる事になってしまい、悔しい思いをしました。装置を扱うことが好きなので、先端フォトニクスに移ってきて、購入検討から立ち上げにまで携わることができて幸せでした。 装置導入の話もそうなのですが、先端フォトニクスでは、いろいろな仕事を任せてもらえます。重要な仕事を任されることもありますので、そういうところで特に充実感がありますね。 前の会社では上司を納得させられないとダメでしたが、今の環境は自分が考えたように、とても自由に働けるようになっています。そんなところも先端フォトニクスで働く魅力だと思います。

kanno.jpg 管野さん

技術的な新しいテーマを自分で見つけて提案できるようになりたい


開発グループ佐藤さん
――入社までの経緯を教えてください。
私は北海道の千歳科学技術大学で、光を専門に学んでいました。先端フォトニクスのことは大学内での会社説明会で知りました。大学で学んできた光技術がまさに活かせる企業でしたし、ベンチャー企業がどういうところなのかと興味もあったので、説明会に参加しました。 就職活動をする中でほかの企業も検討したのですが、会社の規模はあまり気にせず、研究・開発の職種に就けるところ、そして光関係の技術を持っている企業が良いなと思っていました。その二つの条件を優先して考えていましたね。先端フォトニクスに入社したのは、その条件を二つとも満たしていたから、というのが一番大きな理由です。 他の理由として、この会社が新技術を用いて新市場を開拓していることも魅力でした。企業の成長期と自身の成長期(社会人としての)が重なる、その相乗効果による、自身のより大きな成長を期待したのです。また、新しい事への挑戦という建設的な環境では、自ずとポジティブな気持ちで仕事が出来るだろうという予感もありました。現在、その予感は正しかったと言えます。 そしてもう一つはこの会社が小さい規模だということ。自分にもいろいろな仕事を任せてもらえて楽しそうだなと思えたのが入社を決めた理由です。
――今はどんなお仕事を任されているんですか?
モジュールの試作評価や作製工程の検討、材料の比較検討など、実証実験・評価実験が多いです。得られた結果・改善点などを設計担当の方にフィードバックしています。 現在は、新構造のモジュールを作製するための装置を新規購入することを検討しており、その装置選定を任されています。装置の仕様等を決める為の評価実験を、装置メーカーの方に協力してもらいながら進めています。
――今後、どんな仕事をやっていきたいと考えていますか?
現在、モジュール構造と実装技術が会社のコア技術であり、それらは今後も追求していくでしょう。将来はそれらに加えて、新たなコア技術や技術の応用範囲拡大も必要となると思います。「こういう製品で新たに導入するべきではないか」といった新しいテーマや技術を自分で見つけて提案できるようになっていきたいですね。 また、設計や営業もまだ経験したことがないので出来るようになりたいです。 何より、素晴らしい先輩達が良い目標ですよ。

satou.jpg 佐藤さん