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株式会社昭和サイエンス

株式会社昭和サイエンス 半導体製造・検査、精密加工の敵となる微振動を取り除く除振台メーカー<br>大型加振実験台で顧客環境での振動を再現。性能だけでなくコスト・デザインにも配慮した全体最適を志向

株式会社昭和サイエンス

半導体製造・検査、精密加工の敵となる微振動を取り除く除振台メーカー
大型加振実験台で顧客環境での振動を再現。性能だけでなくコスト・デザインにも配慮した全体最適を志向

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株式会社昭和サイエンス

半導体製造・検査、精密加工の敵となる微振動を取り除く除振台メーカー 大型加振実験台で顧客環境での振動を再現。性能だけでなくコスト・デザインにも配慮した全体最適を志向

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  • 社名:株式会社昭和サイエンス
  • 設立年月:1974年4月
  • 資本金:4000万円
  • 従業員数:50名
  • 代表者:代表取締役社長 髙山 桂一
  • 社員平均年齢:48歳(役員、顧問、契約社員含む)
  • 初任給:要 問い合わせ
  • 主な勤務地:東京、神奈川(工場)、大阪
  • 休日:土日祝日、有給休暇、夏季休暇、年末年始
  • 本社所在地:東京都品川区東大井5丁目12番10号
    (大井朝陽ビル)
  • 電話番号:03-5781-3300
  • 公式HP:http://www.ssvi.co.jp/
  • 振動制御のルーツは、1839年にゴムの加硫技術が発見されたところから始る。先の大戦中に海外から導入された振動制御技術、防振ゴムの設計法・設計図、戦後10年で鉄道関係者やゴム製造関係者らの研究成果による専門書「防振ゴム」なる書籍が刊行され、日本の産業界における振動制御技術の幕開けが訪れた。防振の技術は現在、私たちの生活環境改善を主にして建築、自動車、鉄道車両、建設機械、航空宇宙産業、電機産業、OA機器などさまざまなところで使われている。そして「防振」から派生した「除震」の技術は、モノづくりの現場で不可欠なものになっている。除振台を開発・製造している株式会社昭和サイエンスの装置は、どんなところで使われているのだろうか。
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製造技術にも革新を。振動によるブレを防ぐ除振台へのニーズが拡大

半導体の製造・検査プロセスは、ナノメートル単位。微細なことに加えて、半導体構造を平面から立体に進化させる技術の開発も進んでいる。ここまで技術が進歩してくると、製品に使われる技術だけではなく「製品を製造するための技術」にも革新が必要。株式会社昭和サイエンスは、そんな「製品を製造するための技術」の担い手となっている企業だ。 半導体のような精緻なモノづくりのためには、振動によるわずかなブレも許されない。自動車が工場の周囲を走行することによって、あるいは製造装置の周辺を人が歩くだけでも振動は発生する。ごく微細な振動であっても、ナノ単位の加工をしていると致命傷になりかねない。昭和サイエンスが手掛けるのは、そうした微振動を取り除く技術。ゴムや空気バネなどを使って振動を取り除く除振台という装置を開発しているのだ。 「胎動している地球上に建物を建てる以上、どうしても建物固有の振動が発生してしまいます。これからますます小型化・複雑化が進む半導体を製造していくには、振動を取り除き、環境因子に影響されない製造空間を作っていく必要があります。それこそ、クリーンルームの換気をするファンの音からも微振動は生まれますから、近いうちに音の対策も必要になるでしょう」と語るのは同社代表取締役社長の髙山桂一氏。同社の除振台は半導体の製造だけではなく、液晶テレビの製造や精密加工の現場など、さまざまな産業で必要不可欠な装置になっていると高山氏は話している。

03.jpg 代表取締役社長 髙山 桂一 さん

性能だけを考えるのではなく、全体最適でコスト・デザインへの配慮も

昭和サイエンスは多数の標準製品を持ちながらも、顧客企業の要望に応じてカスタム設計して提供することが多い。同社の提供する除振台の上に載せる装置の仕様を踏まえ、振動をより取り除けるように除振台をカスタマイズしているのだ。 その上で重要な役割を担うのが、同社の保有する大型加振実験台。国内でも1台しか存在しない微振動を再現できる装置だ。顧客企業の製造環境で発生する振動のデータを取得し、大型加振実験台で再現することで、除振台でどれくらいの振動を取り除くことができるのかを検査する目的で利用されている。 ゴムや空気バネによる従来型の除振台に加えて、同社が最近注力しているのがアクティブ除振台。同社が日本で初めて製品化した装置だ。空気圧によって垂直・水平方向に3軸・6自由度でアクティブに制御することで、従来型と比べて5倍以上の除振性能を発揮。世界的な装置メーカーにも採用されるようになっている。 技術力以上に同社が重視しているのは、全体最適で物事を考えること。性能だけを見て顧客が製品を買ってくれる時代ではない。コストはどうか、デザインはどうかと広い視野で製品を考える能力が同社では必要とされている。 「ある大企業の女性エンジニアが、顕微鏡の購入を検討されていました。顕微鏡の実機を見学された際、顕微鏡が置かれていた当社の除振台のデザインを気に入っていただいたのです。『これは何?』と聞かれて、『高倍率下の顕微鏡でフォーカスを合わせやすくするために、振動を取り除く装置ですよ』と。そのエンジニアには、当社の除振台も一緒にお買い求めいただきました。 製品の価値は、性能だけで表せられないようになっています。お客様の目線で考えて、『どんな製品にすれば売れるのか』と総合的に考えることが大切になってきていると言えるでしょう」(高山氏)

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05.jpg 小林さん

製品を売るのではなく付加価値を売る。昭和サイエンスの求める人物像

昭和サイエンスの求める人材は、「この会社でこの仕事をしてきて良かった」と思える経験を積んできた人物だと高山氏は言う。営業職であれ技術職であれ、そうした経験を積めていれば、ちょっとやそっとの困難に遭遇しても、打ちのめされることはないと考えているからだ。 もう一つ求められる能力は、顧客と対話できること。資料どおりに説明するのではなく、顧客の課題を引き出して課題に対する解決策を提案できること。同社ではそうした人材を育てられるよう、外部の研修サービスなども導入している。 「製品を売るのではなく、付加価値を売るのだと社員には話をしています。 例えばカスタム設計するにしても、以前使った図面を基にして多少の変更を加えれば製品はできてしまいます。けれど、なぜそこを変更したのか、製造や検査の担当者にも思いを込めて説明できなければ、製造・検査での気持ちの入り方が違ってきます。 図面という“平面”で考えるのではなく、最終的にお客様に提供する製品という“立体”で考えること。そういう姿勢で仕事をすることで、お客様に喜んで使ってもらえる製品を作ることが大切なのではないでしょうか」(高山氏)

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先輩メッセージ
約20トンもの除振台を設計。顧客に喜んでもらえたことが何よりの喜び

営業本部 営業第一部 課長
芝崎さん
――技術者として勤務経験を積まれた後、営業に転身されたと伺いました。
現在は営業の仕事に就いております。お客様から問い合わせをいただいたら、望まれる仕様を伺って技術担当者に伝え、図面と仕様書に落とし込みます。当社のカタログには標準品が多数掲載されていますが、お客様から「個別に設計してほしい」と頼まれることが多いのです。除振台が設置される環境や、除振台の上に載せる装置はさまざま。状況に応じて最適な設計をする必要があります。 図面と仕様書ができあがりましたら、お客様にご確認いただいて、最終的には私も作業着にヘルメットを付けて、除振台を現場に設置するところまで立ち会います。中には、除振台を入れる建屋自体を建設するところから携わらせていただくこともあります。そうした案件では「1次工事はいつで、2次工事がいつから」と工程の管理も含めて担当します。総合的にスケジュールを考えながら仕事を進めていく力が求められます。 これまでの仕事の中で、特に記憶に残っているのは、技術者時代に総重量で20トンほどのアクティブ除振台を設計したことです。アクティブ除振台でそこまで大規模なものを開発するのは初めてのことでした。そこまでの規模になりますと建屋との兼ね合いも考えないといけません。不安を感じた時もありました。ですが最終的には、お客様から「優れた性能が出せた」と喜んでいただけまして、とてもうれしかったことを覚えています。
――技術者出身という経歴が営業で活きていると感じる場面は?
当社の場合、お客様と打ち合わせをするにしても技術的な知識がないと話が進みませんし、設置現場の調査をするのも営業の仕事。営業とはいえ、技術者としての背景を持っているのは役立っていると思います。そう考えると当社の営業には、技術的な背景を持っている人の方が向いているのかもしれません。
――若手社員の教育について、貴社での取り組み、芝崎さんが普段から心掛けている点を教えてください。
社員教育のために、外部の社員研修を利用するようになりました。日々の業務の中で研修内容を活用できる場面に出会った時、「研修でこう言われていたな」と思い出して、工夫する人が増えてきているように感じます。 私自身としては、若手に対して仕事へ備えるように訴えています。打ち合わせに臨むにしても事前に「どういう内容が質問されそうか」と考えておいたり、現場で作業する際には「どういうことが起こり得るか」とあらかじめ想定しておいたりすることが大事だということですね。
――貴社に向いているのは、どういう人材だと思われますか?
物事を自分で考えられる人ですね。日常の業務を漫然とこなすのではなく、それぞれの仕事の意味を深く考えて、質を高めようと努力できる人。そういう人材が向いていると思います。

07.jpg 芝崎さん

すぐに実戦を経験できたことが、何よりも自分自身の成長につながった

技術部 係長
葛西さん

――大学を卒業され、新卒として昭和サイエンスに入社されたそうですね。
大学では振動制御を研究しておりまして、昭和サイエンスは所属研究室の先生に紹介いただきました。先生に就職先について相談したら、その日のうちに当時の社長が面接してくださったのです。 私は普通の就職活動もしておりましたが、なかなか「ここで働きたい」と感じる会社に出会えずにいました。当時は昭和サイエンスが昭和電線のグループ会社だということを知らず、「小規模な会社だ」という印象を持っていました。けれど、アットホームな雰囲気だったのが印象深く、好感を抱きました。振動制御の研究も活かせそうでしたから、「この会社で働こう」と決意しました。
――大学での研究を活かせるところもありそうですね。業務には順調に入っていけましたか?
大学での研究は、かなり役に立ちましたね。仕事は実務に携わりながら、上司や先輩から教えていただきました。 研修に長期間参加して技術を覚えていくやり方もあるのでしょうが、私の場合は昭和サイエンスのやり方が合っていました。入社3カ月後には突然「台湾に行って測定してきて」と仕事を任されたりもしましたが、すぐに実戦投入いただいたことで、得られる経験値も上がったと思います。自分自身で経験しないと、分からないことがありますから。上司からマンツーマンで教えてもらっていたとしても、心のどこかに甘えが出てしまいます。自分一人での仕事を経験することが、何よりの成長につながったと感じています。 また、当社の社風も自分に合っていたのだと思います。入社間もないころ、私が仕事上の失敗をしても、「失敗は必ずするもの」という考えから、必ず上司や先輩がフォローしてくれました。若手に厳しくするのではなく、自由にやらせてくれるところが、気に入っています。
――仕事をしていて、どんな時にやりがいを感じますか?
私は除振台の設計をやりながら、営業担当者に同行して客先で技術的な話をすることもあります。地味な業務の多い仕事ではありますが、除振台を導入していただいたお客様から「おかげで上手く装置を使えるようになった」と仰っていただけることが一番うれしいですね。そんな場面にめぐり会えた時、一番やりがいを感じます。
――今後の抱負についてお聞かせください。
新しい装置を生み出したいですね。やはり、技術者ですから。これから入社してきてくれる学生さんや、若手の社員と一緒に自分も成長し、お客様に喜んでいただける装置を開発できるようになりたいです。 私自身、自分で設計した装置ができて、それをお客様に使っていただき、評価されることが本当に楽しいのです。学生さんにもその楽しさを味わってほしいので、就職先を考える時には「自分が楽しく働ける会社か」と、しっかり考えて入社先を選ぶようにしてほしいです。

08.jpg 葛西さん
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