<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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株式会社 田野井製作所

株式会社 田野井製作所 次代へ向かうタップ・ダイスメーカー<br>技術的な部分と組織的な部分の両面から改革を行ない、これからの時代に対応する

株式会社 田野井製作所

次代へ向かうタップ・ダイスメーカー
技術的な部分と組織的な部分の両面から改革を行ない、これからの時代に対応する

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輝く技術 光る企業

株式会社 田野井製作所

次代へ向かうタップ・ダイスメーカー 技術的な部分と組織的な部分の両面から改革を行ない、これからの時代に対応する

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  • 社名:株式会社 田野井製作所
  • 設立年月:1923年(大正12年)11月
  • 資本金:5000万円
  • 従業員数:169人
  • 代表者:代表取締役社長 田野井 優美
  • 本社所在地:〒349-0226 埼玉県白岡市岡泉953
  • その他所在地:埼玉工場
    〒349-0226 埼玉県南埼玉郡白岡市岡泉953
    (株)ミヤギタノイ
    〒989-0537 宮城県刈田郡七ヶ宿町字萩崎15-1
  • 公式HP:http://www.tanoi-mfg.co.jp/
  • ネジやボルトは産業の現場になくてはならない部品だが、当然ながらこれらの部品もまた産業の現場で製造されている。田野井製作所は、ネジを製造するための工具であるタップとダイスを専門に製造している。歴史ある企業だけあり、経済情勢や技術の急激な移り変わりをチャンスととらえ、これからの世代に向けて積極的な改革を行っている。
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事業紹介

タップ及びダイスの設計・開発、製造及び付帯サービス

困難な状況を乗り越え、たどり着いた『オンリーワン製品』と『ドクターセールス』

田野井 義政さん
株式会社 田野井製作所
代表取締役 社長(取材当時)
田野井製作所は1923年創業の歴史あるタップ・ダイス(ネジ加工工具)メーカー。ネジにはオネジ、メネジがあるが、その両方を作る工具、つまり製造業を支える製品をつくっている。四代目経営者である田野井 義政さんに創業から現在までの軌跡をお話いただいた。 「大正12年に創業し、昭和の初めの大恐慌の時代に、大手の顧客や商社の間で製品の品質が良いと評判になり、急成長したそうです。昭和30年代までは物凄い勢いで、業界トップでした。しかし、昭和40年の不況以降は売上を落としてしまいました。当時の不況や代替わりの引継ぎが上手くいかなかったことが原因でした。ちょうど高度成長期でしたが、業界トップからも陥落してしまいました。それ以降も、内的にも外的にも危機的な状況は度々ありました。昭和60年の円高、バブル崩壊、リーマンショックなどですね。私が社長に就任したのは昭和62年、急激な円高による厳しい時代でした。従来と同じこと、他社と同じことをやっていては生き残れないと感じました。そして、なんとかして会社をV字復活したいと強く思ったのです。設備投資、開発に注力し、昭和の終わりに、世界初のCNCネジ研削盤を自社開発し、導入したのです。それにより標準品以外にもいろいろな発想を製品化し、問題解決が可能になりました。またネジ山を盛り上げて加工する転造タップは当社が日本で最初に商品化致しました。国内外の特許を多数取得するなど、独自技術を駆使した製品を多数扱っています。従来、タップは下穴にタップを回転させて切りこんでいくため、見えない部分で問題が起こり、トラブルの原因がわからない事が多かった。そのため製品が安定した品質にならないことが多く、難しいものだったのですが、サイドスルー方式のクーラント方法により、整数倍のタップ耐久力を得られ、切屑トラブルを解決できる商品を開発するなど、他にはない高品質で付加価値の高い、『オンリーワン製品』の製造に取り組み続けています。」 田野井製作所の顧客となる製造加工業者であっても、複雑な仕組みを持つタップについてはなかなか理解してもらえることが多くなく、それによるトラブルもあるという。そこで田野井製作所では「ドクターセールス」という独自の営業スタイルを展開しているという。 「製品は自動車や半導体など様々な分野で使用され、産業の基盤として活用されています。さまざまなお客様のニーズに応えるために当社では『ドクターセールス』という『営業マンの医者化』を進めています。医者が親身になって患者に接するように、ネジのトラブルに対して営業担当者がお客様の主治医となって対応し、現場の要求や問題に応え、アフターサービスを怠ることなく、いつも安心をお届け出来るようにしていきたいと思っています。」

tanoi-27.jpg 代表取締役 社長 田野井 義政さん(取材当時のもの)
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次代の経営体制に向けた組織改革を

平成21年、父である田野井社長の後継者として田野井優美さんが副社長に就任。若い世代の代表として、次代の経営体制に向けて新たな取り組みを開始したという。より良い組織にしていきたいというバイタリティ溢れる田野井副社長から社内改革についての熱い思いを伺った。 「今後の展望として、当社が今まで培ってきた技術やノウハウに加え、知財を中心とした『オンリーワン製品』と『ドクターセールス』を実践していくためには、社員ひとりひとりの意識が変わらなくてはいけない、組織の生まれ変わりを行わなければならないと強く思いました。そこで2010年3月、外部講習の内容を参考にして、全社一斉に社内改善の研修を受けました。宮城工場の従業員も一堂に会するのは実に22年ぶりのことだったので、組織として一体感が生まれ、素晴らしい経験となりました。その後、社内で『環境整備』と『サンクスカード』という施策を導入しました。『環境整備』とは毎朝20分の清掃を中心に仕事がしやすい環境作りを行うというものです。製造業にありがちな3Kのイメージを無くし、お客様が工場に入っただけで注文したいと思っていただける様なきれいな工場にしていきたいと思っています。『サンクスカード』は小さな事柄でもいいので感謝の気持ちを手書きの文字にして社員に贈るというものです。円滑なコミュニケーションにつながります。また、幹部や、事務、営業などが現場とは別の場所にいて現場を把握できていないのはおかしいと思い、2010年3月に事務所を工場の敷地内に引っ越しました。これらの施策によって、少しづつ社内が変わってきているのを実感しています。一歩一歩進んで、みんなで変わっていけたらいいなと思っています。全社員が『この会社に入って良かった!』と言える会社にしたいですね。」

tanoi-34.jpg 田野井 優美 副社長
tanoi-30.jpg サンクスカード

組織に必要なのは若い感性。次代を担う若者をどんどん取り入れていきたい

田野井製作所の大きな特徴の一つは若い社員が多いということ。会社の将来を考え、積極的に若い人材を採用し後継者として育成しているという。採用について田野井社長の考えている事を伺った 「不況続きのこういう時代なので、日本の中小企業はクレバーになったと思いますね。企業が次代に対応していくためには、新しいことをやっていく若い感性が必要と考えています。ですから当社はここ20年くらいは新卒採用を続けており、最近は毎年10名程度採用しています。動機が多いほうが新人のモチベーションも高まりますしね。基本的には不況で苦しい状況であっても一人でも二人でも多く採用したいと思っています。」 最後に田野井社長から若者に向けてメッセージをいただいた。 「HV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)などを見るとよくわかりますが、これからの10年間、電子部品関連業界はまさに産業革命の時代なのではないでしょうか。そういった意味では、若者が夢を実現化するのに非常にいいチャンスだと思うのです。勉強していないから出来ませんというのではなくて、好きなこと、興味のある事に対して徹底的に興味を持ってやってみるということが大事。やる前から否定せずに、若いうちは何でも挑戦してみて欲しいと思います。」

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先輩メッセージ
営業は人対人。お客様に喜んでもらえる事が一番のやりがいです

藤村 和輝さん
営業部 東部グループ関東エリア
入社8年目
藤村さんは宮城出身。ものづくりの仕事がしたくて田野井製作所に就職し、宮城工場で製造を行うつもりだったところ、急遽東京で営業担当をすることになり、以来営業ひとすじ。最初こそとまどいはあったが、今では営業の仕事にも楽しさを見出し、やりがいを感じていると語る。 --今の仕事内容について教えてください。 「普段は当社の製品を使用しているお客様の所をまわっています。お客様は自動車や建機の会社が多いですね。お客様のお話を伺って、いかにニーズに応えるかという事が仕事の内容です。スピードも重要ですから、製造のスケジュール感を把握して納期を即答できるように気をつけています。他にはない特許製品を持っていることと、お客様の要望に柔軟に応えられる対応力は当社の強みだと思います。まだまだ勉強することは多いのですが、当社の方針である『ドクターセールス』を実践していきたいと思っています。」 --営業の視点から見て、田野井製作所の強みはどこですか? 「他にはない特許製品を持っていることと、お客様の要望に柔軟に応えられる対応力が当社の強みだと思います。」 --会社の特徴を教えてください。 「不思議と先輩も後輩も、変な人や嫌いな人は一人もいないんですよ。人がいい人ばかり集まっている会社だな、と思います。みんな仲が良くて、、今は社員でフットサルをやっています。20代から60代まで集まって、仕事終りに練習して、休みの日には大会に出場することもありますよ。コミュニケーションの場になってとても楽しいですね。」 --ありがとうございました。最後に、ものづくりを志す後輩へメッセージをお願いします。 「営業はやはり人対人ですから、お客様に喜んでもらえるというのが一番のやりがいですね。次もまたやってやろうっていう気持ちになります。いろいろなところに行けるということも楽しいことです。技術者でも営業でも、ものづくりの仕事は楽しいことだと思いますので、自分なりの楽しみを見つけて欲しいと思います。不安がらずにどんどん挑戦してください。」

tanoi-33.jpg 藤村 和輝さん
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先輩メッセージ
あらゆるものづくりの原点のようなネジに魅力を感じます

水津 蔵人さん 入社 5年目 水津さんは地元の就職フェアで田野井製作所と出会い、ものづくりの仕事に興味を持って入社を決意。入社当初は仕事も人間関係も不安だったが、親しみやすく気さくな先輩たちに支えられ不安はすぐに解消されたという。 --担当されている仕事について教えていただけますか? 「入社してからずっと『山丸め』という作業を担当しています。ネジの端の断面の部分の角を削る作業です。欠けの防止と、ネジの締まりを良くするために行ないます。最終工程なので失敗できないところが大変でも楽しくもあります。作業は先輩に教えてもらいながら実践で覚えていきました。機械加工はプログラムで入力して行うので、間違えないように注意しています。自分ひとりで出来るようになったと思えたのはつい最近のことです。思っているかたちに削れた時や、お客様から『良かったよ』という声を聞いた時はやりがいを感じますね。」 --会社の特徴を教えてください。 「気楽に話せる人が多くて良いですよ。特に最近、副社長が推進して工場内をきれいにするように心がけてきてから社内がすごく明るくなりました。先輩も皆さん優しくて、分からないことがあるとすぐに助けてくれます。」 --ありがとうございました。最後にものづくりを志す後輩へのメッセージをお願いします。 「ネジはあらゆるものの材料として使われているので、ものづくりの原点のような気がして魅力を感じます。それを共感したい人とは是非一緒に働きたいと思います!」

tanoi-29.jpg 水津 蔵人さん
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