<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

文字サイズ

株式会社特殊鍍金化工所

株式会社特殊鍍金化工所  独自技術を過信せず、次代のめっき業を模索する<br>銀やニッケルめっきの代替となるTMX(合金めっき)技術を開発。大企業の夢を実現するめっき会社

株式会社特殊鍍金化工所

独自技術を過信せず、次代のめっき業を模索する
銀やニッケルめっきの代替となるTMX(合金めっき)技術を開発。大企業の夢を実現するめっき会社

main_tokushutokin
輝く技術 光る企業

株式会社特殊鍍金化工所

独自技術を過信せず、次代のめっき業を模索する 銀やニッケルめっきの代替となるTMX(合金めっき)技術を開発。大企業の夢を実現するめっき会社

main_tokushutokin
  • 社名:株式会社特殊鍍金化工所
  • 設立年月:1970年4月
  • 資本金:1000万円
  • 従業員数:23名
  • 代表者:代表取締役 柴 太
  • 社員平均年齢:43.9歳
  • 初任給:200,000円(一部手当含む)
  • 主な勤務地:東京都三鷹市
  • 休日:祭日、土曜日、日曜日
  • 本社所在地:東京都三鷹市井口 3-15-8
  • 電話番号:0422-31-2313
  • 公式HP:http://www.tmk.co.jp/
  • 電子部品・製品の小型化・高性能化が進むことで、導電性などの機能を付加する機能性めっきの技術が評価されるようになってきている。株式会社特殊鍍金化工所は機能性めっきに特化して事業を行ってきた企業。独自のめっき技術であるTMX(合金めっき)を開発するなど、高度な技術を持っている。だが、めっき技術だけでは「10年先まで安泰ではない」と考え、革新的な事業展開を模索しているところだ。
intro_img

事業紹介

ハイテク産業の高度化に対応するために、従来の装飾・防食めっきから各種機能めっきへとシフトし、各ユーザーのニーズに合わせた表面処理を提供します。

独自めっき技術を生み出し、大手企業からも頼られる存在に

素材の表面を金属などで覆うことによって、装飾性や機能性を高めるめっき技術。日本のモノづくりを古くから支えてきた伝統技術だが、そのめっき加工の分野で革新的な取り組みに挑んでいる企業がある。株式会社特殊鍍金化工所だ。 めっき加工をする目的としては、装飾・防錆・機能付加といったものがある。その中でも特殊鍍金化工所が得意としているのは機能付加。めっきで表面処理をすることで、導電性・高周波特性・非磁性・低接触抵抗・高硬度・潤滑性・光反射性・耐候性・はんだ付け性・抗菌性などの特性を元の素材に付加することができるのだ。 機能性めっきの中でも、特殊鍍金化工所にしかできないのがTMX(合金めっき)。TMXとは銅・すず・亜鉛を独自の配合・混ぜ方で合わせた合金によって、めっき処理する技術のことだ。 導電性の向上を目的とするなら銀めっきが効果的。だが、銀自体が高価なため、費用面で難がある。あるいは硬度や摩耗性の向上を期待する場合はニッケルめっきが適している。しかし、ニッケルにはアレルギー反応を示す人も出てきてしまうため、ヨーロッパでは規制対象になるといった問題があった。 TMXは非磁性で、銀に近い水準の導電性がある。そして耐変色性・耐食性については銀以上で、何より費用が安い。ニッケルと比べた場合では、ニッケルめっきの強みである硬度・摩耗性の向上ではニッケルめっきに勝るとも劣らない。さらに金属アレルギーの心配はない。そのような特性を持っているため、TMXは銀やニッケルの代替技術として、注目を集めるようになっているのだ。 特殊鍍金化工所の技術力を聞きつけ、メーカーなどからめっき関連の試作を頼まれることも多い。誰もが名前を知っているような大企業の研究開発部門から、「展示会に出展するため、こういうめっき加工ができないか」と相談を受け、何カ月もの試行錯誤した末、ようやく実現に成功したという実績もある。

03.jpg 代表取締役 柴 太さん

数十年先も通用する新たなめっき業のあり方を模索中

「自動車の部品の中でタイヤは地面に力を伝えるところ。非常に重要な部品ですが、それほど脚光を浴びていません。 めっきもタイヤと同じ。製品の小型化・高性能化が進むことで重要性が増してきています。設計者が理論上は可能だと考えていることでも、めっき技術が欠けていたら実現することが困難になってきています。 その点、当社は機能性めっきに絞って事業を展開してきました。高性能な製品を実現できるめっき技術を持っていると考えています」。 このように語るのは特殊鍍金化工所の柴太代表取締役。「実現することが難しい夢を語るのが大手企業。それを実現させるのが中小企業。大変な仕事が多いのですが、それが面白い」と柴氏は語る。 TMXのような独自技術はあるが、「今後10年を安泰にしてくれる技術ではない」と柴氏は見る。新興国の台頭や円高など、日本のモノづくりに課題は多い。柴氏はめっき業のあり方を根本から見直すことで、数十年先も会社を存続させられるように今後の展望を探っているところだ。 「めっきに関して、みんなはどこで困っているのか。困っているところ調べて、そこを助ければ仕事は来る」(柴氏)と考え、水面下で革新的なプロジェクトを進めている。

04.jpg

次代の製造業を実現するのは「アイデアを出せる人材」

柴氏の思い描く“新たなめっき業”に必要なものは「アイデアを出せる人材」(柴氏)。めっき業の常識にとらわれず、他分野の事例・経験などを持ち込んで、新たなめっき業を生み出していける人材が求められている。 「知識を持っていることは重要ですが、未知の仕事でもアイデアを出していく力がないと、知識を持っているだけで終わってしまいます。これからの人材に求められるのは、知識や経験をアイデアに置き換えられる能力でしょう。 製造業で働く人は、型にはめて考えてしまいがちです。『こうでないといけない』という先入観があり、その範囲内で良いものを作ろうとします。ですが、それでは枠を越えることができません。枠を越えないと次代の製造業は実現できないと考えています。 そのために必要なのは優れた人材とアイデア。技能は入社後に身に付けることができますから、アイデアこそが今後の人材に求められる部分ではないでしょうか」(柴氏)

05.jpg

先輩メッセージ
専門分野以外の仕事であっても積極的に取り組んでほしい

技術部門 統括部長 総務部長(兼任)
露木さん
――技術部門の統括部長として、どのような業務を担っているのですか?
不良品を減らすように対策を練ったり、排水処理などの環境対策ができているかを確認したりしています。専任で担当してくれている社員もいますので、その者を支援する形で携わっています。 人事の役割も担っておりまして、適材適所に社員を配属できるように心掛けています。めっきは基本的に高度な技術は必要ありませんが、その分、高品質に仕上げるには社員の技能を高めることが重要。社内教育や、適性を見ての職務割り当てなどに腐心しています。 さらに、業界動向の情報収集にも努めています。めっきに対して市場からはどのようなことが求められているのか、展示会などに積極的に足を運んで調査しています。
――TMXめっきの開発を担当されたと伺いました。どのような特徴のある技術なのでしょうか。
TMXは私が入社した10年前に、2〜3年掛かりで開発しためっき技術です。ある会社が採用してくれたことで、急激に売上が伸びたのですが、それ以降しばらくは伸び悩んでいました。 それがここに来て、環境対策の観点から問い合わせが増えてきています。特にEUではニッケルに関する規制が厳しく、ニッケルの代替として機能するTMXが注目されるようになっています。私たちが普段から取引している加工業者以外に、メーカーからも直接問い合わせが入るようになっているくらいです。 めっきに使う溶液の薬剤は、メーカーから購入しています。ですが、ただ比率を守って買った溶液を混ぜれば、TMXと同じようにめっき処理ができるかというと、そうではありません。特に日本の企業は機能と外観、その両方にこだわります。単にめっき処理すれば良いのではなく、見た目も美しくないと評価していただけないのです。TMXもなかなか見た目がきれいに仕上がりませんでしたから、別のメーカーの溶液に変えて試してみたり、配合比率を調整したりと何度も試行錯誤しました。苦労の末に、ようやくお客様の望むような仕上がりでめっきできるようになったのです。
――これから就職を迎える学生に向けて、伝えたいメッセージを聞かせてください。
学生さんは学校で理論を学んでから、現場に入ってくることになるでしょう。専門知識を身に付けることは重要ですが、現場では専門知識にとらわれず、頭を柔らかくして取り組むことが大切です。専門外の仕事であっても積極的に挑戦していくべきでしょう。 特に大手企業なら研究開発に没頭できる環境があるかもしれませんが、中小企業では全部の業務をやらないといけません。技術開発だけではなくて、めっきをきれいに付けられる技能なども必要になります。理論よりも実践が求められるのです。 中小企業の面白さは、自分の好きなことができることだと思います。でも、だからといって「自分がやりたい専門分野の仕事だけやる」という姿勢ではだめ。社長や先輩社員から何が求められているのか、相手の気持ちを汲み取って考えなければいけません。相手の気持ちが分かるようになれば、きっと仕事で良い循環が生まれるはずです。

06.jpg 露木さん