<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

ヒット商品は、こうして生まれた。身近な商品・サービスに関わる企業特集

1社目 オークスハート株式会社/11名参加

 最初に訪問したのは、お酢の製造・販売を行うオークスハート。果実とお酢を組み合わせた「デザートビネガー」をはじめとした製品を製造・販売しています。代表から会社の歩みを聞いた後、同社が提案するお酢の楽しみ方を体験。更に若手社員との座談会を行いました。

オフィス入り口。ワインボトル風の容器に入れられたおしゃれなお酢が並ぶ

ツアー内容

会社説明
 ツアー冒頭、内堀代表は「お酢は美味しいと思いますか?」という質問を参加者に投げかけました。これに対して約半数ほどの手が挙がり、「母が健康のために飲んでいるのをまねしたら意外と美味しかった」「黒酢に豆乳を合わせて飲むのが好きでよくやります」といった声が聞かれました。そうした意見一つひとつに耳をかたむけた内堀代表は、お酢を飲むという行為が一般的になったのはごく最近のことと話し始めました。
 「私がお酢と関わり始めた15年ほど前は、お酢は料理に使うものという考え方が一般的で、お酢を飲みたいと思う人はごく少数でした。お酢の試飲を勧めると『お酢なんか飲めません!』と嫌な顔をされることもしばしばで、一向に売り上げは上がりませんでした。試行錯誤を繰り返し、たどり着いたのがアイスクリームにお酢をかけるというアイデア。試食に出したところ、多くの人が足をとめ、美味しい!と顔を輝かせて買ってくれたのです」

 この経験がお酢をデザート感覚で楽しむデザートビネガー誕生につながったといいます。研究を重ねた結果、果物を発酵させて作ったお酢に果汁を加えて酸味をやわらげる手法を開発。フルーツジュース感覚で味わえるお酢の目新しさと飲みやすさが評判を呼んで、現在、年間120万本を売り上げるまでになりました。
 最後はヒット商品を生み出すコツを話していただきました。「お客様を楽しませる方法を考える」、「小さな市場でこれまでにない新しい価値を生み出し、その分野の第一人者になる」と実体験にもとづいた言葉は説得力があり、参加者は大きくうなずいていました

 続いて、広報担当の梅木さんより、酢づくりや社員の想いについて説明がありました。
「醸造所には100以上の酢の貯蔵タンクがあり、ここで扱う酢の種類の多さは日本一を誇ります。料理酢をはじめ、果汁を発酵させてデザートビネガーの原料となるお酢などを作っています。様々な果物や野菜を使って酢の試作を重ね、本当に美味しいと感じたものをお客様にもおすそ分けしたいという想いで、製造、企画、販売などを行っています」

  • 会社発展の歩みを話す内堀代表
  • 梅木さん(写真左)から酢づくりの工程などのレクチャー

お酢の試飲
 その後、梅木さんからお酢の味わい方を教わり、米、りんご、穀物など原料の異なるお酢を試飲しました。酸味や甘さ、香りの違いを体験。更に同社が提案する、夏におすすめという飲むシークヮーサー&八朔のお酢を炭酸ソーダで割ったジュースを試飲しました。続いて、参加者は2人1組になって酢を使ったバターづくりに挑戦。はちみつのお酢とバターを容器に加えて1分ほど振ると、お酢に含まれる酢酸と生クリームのタンパク質が反応して固まり、バターができあがりました。参加者からは「すごい!」、さらにバターを口にして「おいしい!」と歓声が上がりました。お酢の奥深さ、楽しさを実感できたようでした。

  • 数種類のお酢を試飲。原料による味の違いを体験
  • 2人一組で酢バターづくりに挑戦

座談会
 若手社員2名を加えて座談会を行いました。「これまで試して美味しかったお酢は?」といった質問に商品開発を担当する社員の方は、「グアバピューレを使ったお酢です。これは若い世代に受けが良かったですね」。また、「産地に行くことはありますか?」といった質問には、「南高梅を見たく和歌山県に行きました。気になる原料があるときは手を挙げれば行かせてもらえますよ」と丁寧に答えてくださいました。また、仕入れや販売を担当する社員の方には、「売り上げを上げるポイントは?」といった質問が投げかけられ、「まずは試飲してもらうことです。そのために新商品や期間限定品など、お客様に紹介できる商品を絶やさないようにしています」と回答して頂きました。和気あいあいとした雰囲気の中で若手社員の仕事についてお話を聞くことは、参加者にとって仕事に向き合う姿勢を知る良い機会になったようでした。

  • 若手社員を前に次々と質問が挙がった座談会

参加者の声

 参加者からは、「お酢づくりの奥深さ、楽しみ方を知り、お酢の見方が変わった」、「少人数の会社だからこその和気あいあいとした雰囲気が伝わってきた」「パイオニア精神を持って働ける会社だと思った」といった感想が聞かれました。

2社目 株式会社CSS技術開発/10名参加

 続いて訪問したのは、工事現場などで測量を手掛けるCSS技術開発です。最新の測量機器を取り入れながら土地の面積や起伏といったデータを計測。それに基づいて作成した設計図が道路や建物の建設に役立っているそうです。ここでは会社説明、測量体験、若手社員を交えての座談会を行いました。

ゲーム形式で楽しく測量機器の使い方を学習

ツアー内容

会社説明
 CSS技術開発は、創業以来33年に渡って測量を専門としてきた会社です。測量といわれてもピンとこない様子の参加者に対して大山社長は、測量の基本から話してくださいました。
「皆さんは道路の脇で三脚に機械を乗せてなにかを撮影している人々を見かけたことがありませんか?あれは測量といって、道路や建物を作るために土地の広さやでこぼこなどを測っており、この測量をもとに道路や建物が作られています」

 従来の測量ではGPS機器などを使って凹凸を1点1点測っていましたが、同社では3Dレーザーという機器を導入し、広範囲を一度で計測できるようにしました。更に近年は、ドローンを利用した上空からの測量、3Dカメラ搭載車による測量など、最先端技術を取り入れて測量作業の効率化を進めた結果、道路や河川の堤防、港の護岸、公園など、大規模な測量を数多く手掛けられるようになりました。皇居外苑や圏央道の高尾山ICなども同社が手掛けた現場の一例。売り上げは年々伸びているといいます。

 更に、同社は独自の製品開発にも取り組んできました。従来2人で行ってきた測量が1人で可能となる「おまかせ君ワンマン」、地面を転がすだけで地形の起伏を測れる「コロコロ測量」などが挙げられます。大山社長は今後も新技術の導入を進めていきたいと話してくださいました。
 「工事現場の仕事でもドローンや3Dカメラなど最新技術の導入が進み、作業の効率化がものすごい勢いで進められています。僕の話を聞いて、測量って意外と先を行く仕事だと感じてもらえたら嬉しいです」
 最後はヒット商品を生み出すコツを話していただきました。「隠れた分野でトップランナーになる」、「時代の半歩先を行く製品を出し続ける」など同社の取組に重なる言葉をいただき、参加者は大きくうなずいていました。

  • 大山社長が測量や同社の取組について紹介
  • 「測量って知っている?」など質問を交え、和気あいあいとした雰囲気

測量体験
 その後、参加者は3つのグループに分かれて、若手社員も加わり、同社が独自に開発した測量機器、「おまかせ君ワンマン」を使って床に貼られた30個の印の中から目的の印を探すというゲームを行いました。それぞれの印には国名が割り当てられ、時間内に見付けた国の合計面積が広いチームが勝ちというルールです。若手社員から機器の使い方を教わった参加者は、開始の合図とともに「右に30cm」などと声をかけあいながら機器を体験。「ブラジル!やった!大きい!」などと楽しげな雰囲気で測量機器の使い方を学べたようでした。

  • 若手社員の方に教わり測量を体験
  • 参加者同士も打ち解けた様子

座談会
 続いて、若手社員との座談会を行いました。「どうして測量を仕事にしようと思ったのか?」という質問に、「デスクワークが嫌で、外で体を動かして働きたいと思ったから」などと答えていただきました。また「入社して苦労したことは?」という質問に対し、「夏場の暑さと日焼けです。背中に扇風機がついた服を着て作業しています」、更に「図面作成で難しいところは?」といった質問も飛び出し、「設計図が正しいかどうかをシミュレートしながら、ズレや問題点などを修正することは知識や経験が必要になります。今でも分からないことがあれば、先輩に聞いています」と丁寧に答えてくださいました。参加者たちは、今まであまり知らなかった測量という仕事について理解を深めたようでした。

  • 測量と作図を担当する若手社員との座談会

参加者の声

 参加者からは、「ドローンや3Dレーザーなど最新技術を積極的に取り入れていることに魅力を感じた」、「建設業界の現状が知れて良かった」「社員の方々がやさしく丁寧に接してくださったおかげで、リラックスして質問できました」といった感想が聞かれました。

まとめ

 1社目のオークスハートは、お酢をデザート感覚で楽しめるデザートビネガーを生み出した会社。2社目のCSS技術開発は、ドローンや3Dカメラ搭載車などを取り入れ、測量作業の効率化を進めてきた会社でした。どちらの会社でも、若手社員が和気あいあいとした雰囲気の中で意欲的に働く姿や、その分野のパイオニアとして新商品・技術の開発に果敢に挑戦する姿が見られ、参加者たちは中小企業で働く醍醐味を感じることができたようでした。