TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート
世界から注目されるグローバルメーカー特集
1社目 FSX株式会社/10名参加
最初に訪問したのは飲食店などでお客様に出されるおしぼりの製造、販売、レンタルなどを手掛けるFSX。藤波社長から会社の歩み、そして同社が提供するユニークなおしぼりについてお話を聞いた後、工場見学、そして若手社員との座談会を行いました。
ツアー内容
会社説明
グローバル化を迎えた今、FSXには新たなチャンスが訪れているという藤波社長の話からツアーはスタートしました。
「オリンピックを目前にしてインバウンドでたくさんの外国人が来日しています。そこで、おしぼりはもはや日本のキャッチフレーズともなった『おもてなし』の一つとして注目され、また高く評価されています。私たちはこれをチャンスとして世界に通用するおしぼりブランドを目指しています」。
創業半世紀を超えてもなお新たな取組に挑戦し続けていると藤波社長。例えば、夏には冷たく冬には温かく、お客様のニーズに合わせて提供できるおしぼり冷温庫といった電化製品を開発。更に、これまでに構築してきた流通ノウハウ、パートナー企業向けの業務アプリケーション開発や情報活用サービスの提供なども進めているというお話をお聞きしました。
また、同社では短時間で多品種・大量生産を可能とする香り付きおしぼり製造機の開発にも成功。アロマオイルと抗ウイルス・抗菌を安全に叶える特許技術を使用したアロマおしぼりの市場拡大につながったそうです。更に、日本国内のみならず香港、ベトナム、そしてアメリカに拠点を設け、グローバルメーカーへと成長しているというお話もしていただきました。「私たちは海外におしぼりをただ提供するのではなく、日本人の優しい心遣いの一つとしてのおしぼり文化を伝えていきたい」と藤波社長はいきごみを力強く語ってくれました。
- 藤波社長の事業紹介に参加者も真剣なまなざしを向ける
- アロマおしぼり「AROMA premium」
工場見学
続いて、工場3階に案内され、布おしぼりを包装する工程を見学。包装機は全部で26台。包装機1台に一人の作業員を配置し、一人につき1時間で約1,500枚のおしぼりを包装しています。衛生管理が徹底され、清潔感いっぱいの様子に参加者たちは興味津々でした。
続いて案内された工場1階には、大きな業務用の連続洗濯機がありました。1日約20万枚のおしぼりを洗浄し、年間12億から13億枚のおしぼりを扱っているそうです。この大きな数字に参加者たちは驚きを隠せない様子。その他、4階では、社長講演の時に話があった使い切りタイプのおしぼり製造機も見ることができました。
次の見学場所は本社1階にある物流現場。ここでは、おしぼりのルート配達やウェブで注文を受けた商品の出荷や発送の管理体制の説明を受けました。より多く注文があるものを倉庫の手前に、注文が少ないものを奥にというシンプルなシステムが、商品仕分けの時間を大きく抑え、効率化が図れているという現場ならではの話が聞けました。
そして、次に訪れたのが事務職部門。ここには、ウェブの注文を受け付けるEC部門、社内のシステム運用を行う情報システム部門、事務処理を行う総務部門といった様々な部門の方がいらっしゃいます。その中で、部門を越えて連携することが顧客満足につながっているという話がありました。例えば、情報システム部門が構築したシステムに、顧客からの問い合わせやクレームに対応した総務部門が内容を登録。その情報は他部署からも見ることができるため、営業部門やEC部門などで、今後の商品説明や販売方法にも生かすことができると言います。1つの部門で完結しないという話に学生たちは真剣な表情で聞き入っていました。
- カラフルなおしぼりなどがラインアップ
- 香り漂うおしぼりの製造ラインを見学
座談会
次に若手社員3名と参加者たちが3グループに分かれて座談会を行いました。「なぜFSXに入社を決めたんですか?」という質問には、「家族と過ごす時間を大切にしたく、ライフ・ワーク・バランスのとれる会社を探しました」と、会社選びの軸を教えてもらいました。更に、「営業のやりがいは何ですか?」という質問に対し社員の方は、「営業は日常業務のほか、お客様へ新商品を説明したり、契約書類を一式作ったりすることもあります。様々な業務がありますが、お客様の声を直接聞けて勉強になる上に、喜びも直接伝わってきます」と回答。参加者は営業の仕事が具体的に分かり、やりがいや楽しさを感じ取ったようでした。また、海外との仕事もあり、中国やシンガポールなどにも出張するなど、世界とつながる仕事は魅力的だという話には参加者たちも目を輝かせていました。
「一日の仕事の流れは?」という質問に事務職の方からは、「午前中は注文書の入力作成、午後はお客様からの電話対応や商品説明などです。最初は電話が鳴っただけでもドキドキしましたが、経験が成長の糧となり、今では新規のお客様に対しても自社の製品の良さを伝えられるようになりました」と力強いお話を頂きました。
- どんな質問にも気さくに応えて頂いた座談会
参加者からの声
「飲食店でおしぼりが出されるのは当たり前と思っていたが、日本独特のおもてなしと聞いて驚いた」、「香水のようにいろいろな匂いがするおしぼりに、手が清潔になるだけでなく、気持ちも癒された」という感想が聞かれました。
2社目 株式会社TOK/10名参加
2社目に訪問したのは、機械部品を製造しているTOKです。まずは吉川社長からお話を聞き、その後、工場や社内を見学し、若手社員との座談会を行いました。
ツアー内容
会社説明
TOKの主な製品はプラスチックベアリングやロータリーダンパー。ベアリングは冷蔵庫や机の引き出し、横開きの扉に使われている部品で、私たちの生活には欠かせないものです。一方のロータリーダンパーは、トイレやピアノのふたが勢い良く閉まらないようにコントロールする部品という紹介がありました。
「私たちは同業他社と差別化していくために強みであるカスタム対応に注力しています」。そうお話をしてくださったのは吉川社長。一般的なカタログ製品は全体の4分の1に留まり、4分の3は顧客専用の製品を生み出していると言います。また、売上比率は国内56%。アジア28%、ヨーロッパ8%、アメリカ8%といった割合も示し、同社のグローバル化についてもお話くださいました。
「グローバルな会社には、世界に目を向けた育成が欠かせません。そこでドイツやカナダへの海外研修や、北米の子会社での語学研修も設けています」と吉川社長。これには学生たちも興味津々でした。
更に吉川社長は参加者の立場になって会社選びのコツもお話しくださいました。
「6つのコツを紹介します。『企業が独自の経営理念を持ち合わせているか』、『社員を大切にしているか』、『独自の技術を持って、ニッチな業界で戦っているか』、『常に新しいことに挑戦しているか』、『働きやすい職場、働き続けたい職場か』、『会社の方向性と自分の夢が一致しているか』を是非見極めてください。」この親身な話に参加者たちはしっかりノートにメモをしていました。
- 吉川社長による会社案内
工場見学
続いて製品試験ルームと社内の見学をしました。窓越しに見る製品試験ルームはお客様の要望に応える製品を開発するための試験場です。ここにある試験装置の多くが自社開発ということでした。参加者たちが驚いたのは試験室の廊下に展示されていた、お客様から提供されたごみ箱です。ここには同社で作られた部品が使用されています。これが実に繊細な動きで、フタが静かに、ゆっくり閉まっていく実演に参加者たちはかたずを飲んで見入っていました。
次に2階の執務室を案内してくださいました。執務室の座席は好きなところに座れるフリーアドレス制で、その日の仕事内容によって都合の良い場所に移動できると言います。帰宅時、机の上にはパソコン以外はものを置かない、荷物は個人のロッカーに入れるという整理整頓のルールにより、働きやすい環境を整えているそうです。更にこのフロアにはバリスタコーナーがあり、仕事の息抜きに飲み物を飲みながら社員同士が会話を楽しめるだけでなく、社長や役員と社員が集まれるスペースでもあるとのことでした。また、TOKでは役職名ではなく、それぞれ名前で呼び合っているそうです。それもごく自然に発生したもので、自由な社風を生み出している基ともいえる習慣です。気軽に話ができる関係から、新しい発想が生まれてくるのだと参加者はお話を伺いました。
- ロータリーダンパーが備わったごみ箱で蓋がゆっくり閉じる様を見学
- 執務フロアは開放的で広々
座談会
次に若手社員6名と参加者が3グループに分かれ座談会を行いました。「どんな仕事をしているのか」といった学生の質問に、社員からは「リサーチと開発を担当する部門では、インターネットなどを使って、世の中の新商品やアイデアなどを探します。しかし、リサーチにはやはりコミュニケーションが欠かせません。多くの人と会話をする中からアイデアが生まれます」など学生に分かりやすく語ってくださいました。
海外のお客様を担当する部門の方には、英語に関しての不安や質問が多く寄せられました。社員の方からは「英語を話せるようになるために、学生時代に留学するに越したことはないが、入社してから現場で語学力を磨く社員も多いので安心してください」という力強い言葉を頂きました。
同社では、自分がやりたい仕事を申請することもでき、挑戦や成長ができる環境があるという話が出てくるなど、参加者にとっては収穫の多い座談会となりました。
- 開放的な執務室で座談会
- 最後に吉川社長が就職活動のポイントをアドバイス
参加者からの声
ツアー終了後、参加者からは「海外に興味があるので、海外研修や語学研修はかなり魅力的な話だった」、「社員同士名前で呼び合うなど、自由な社風がすてき」、「身近にある製品の開発に携わるのは楽しそう」といった感想が聞かれました。
まとめ
1社目のFSXは、おしぼりとおもてなしという日本独自の商品と心で世界市場を開拓する会社、2社目のTOKはベアリングやロータリーダンパーというオリジナリティ豊かな製品で世界市場に乗り出している会社でした。どちらも私たちの身近にある製品で、参加者たちにも親しみがわき、そこで働く社員の活気とエネルギー、そして若手を育てる支援の豊かさに、参加者たちは中小企業の魅力を感じたようでした。