<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

神奈川大学貸切回 社会と社員に幸せを提供する企業特集

1社目 株式会社吉村/17名参加

 最初に訪問したのは、日本茶・海苔等のパッケージ製造・販売を行う吉村。お茶のある暮らしの豊かさを多角的に提案していこうと、チョコレートや金平糖等のお茶菓子、水出しボトル、ティータオルなどの雑貨も手掛けています。まずは橋本代表から会社の取組をお話いただき、社内見学をした後、若手社員ならびに代表を交えた座談会を行いました。

同社が手掛けた日本茶のパッケージの一例

ツアー内容

20秒スピーチならびに会社説明
 ツアー冒頭、自己紹介もかねて、参加学生全員が「夏休みの思い出」をテーマに20秒間のスピーチをすることになりました。タイマーが鳴ったらみんなで拍手をして終わるというルールです。実はこの形式のスピーチは同社で日頃から行われているといいます。「ポイントは、必ず笑顔で拍手すること。失敗をおそれず、自己表現を楽しんでほしいとの想いから取り入れています」と説明してくださったのは橋本代表。20秒と時間を制限して話すという慣れない経験に、時間を余らせてしまったり、話半ばだったりと様々でしたが、「家族旅行中、猛暑でカーナビが壊れて苦労した」、「初めての一人暮らし。料理しようと思っていたけど、結局外食ばかりだった」などの話に笑いが広がり、効果的なアイスブレイクにもなったようでした。

 自己紹介が一巡すると、橋本代表から会社の発展と取組についてのお話がありました。同社は、紙製のお茶袋を手作りする商店から始まり、アルミ箔を利用したラミネート袋、デジタル印刷による化成品袋へと発展してきたそうです。
 「大手メーカーの大量生産によるコストダウン型のビジネスと競合しないために、デザインから印刷、加工、出荷まで一貫して手掛けて少量多品種生産に力を注ぎ、中小規模を中心とした全国8,000軒のお茶屋さんに3,635種類ものパッケージを提供してきました」
 日本茶の消費量の減少に悩むお茶屋さんのために挑戦を重ねてきた同社。消費者ニーズを把握したいと、20年以上前から取り組んできたのが、消費者座談会。お茶離れが進む若者世代に定期的にヒアリングを実施。「お茶屋さんにお茶は置いてない」という女子学生の声から、若い世代はお茶を茶葉ではなくペットボトルに入った液体状のものと認識していると気付いて開発したのが、茶葉と水をボトルに入れるだけで気軽に日本茶を楽しめる「フィルターインボトル」。大ヒット商品になっています。

 更に、このボトルをお茶の試飲に使うようお茶屋さんにアドバイス。当初は、急須で淹れないと美味しくない、売れないと思い込んでいたお茶屋さんも、客足が増えるにつれて「吉村さんのおかげで生き延びた」と感謝されるようになったといいます。
 「日本茶のような農産物はこだわるほどに小規模にならざるを得ず、味が良くてもパッケージが魅力的でないと売れない。そこで美味しさやこだわり、作り手の想いを伝えるのが私たちの使命だと思っています」と橋本代表。中小規模の企業ならではの戦略やお茶屋さんを応援したいという橋本代表の熱い想いを、学生は真剣なまなざしで聞いていました。

  • 自己紹介を兼ねて20秒スピーチを行う学生
  • 会社の発展や取組を話す橋本代表

社内見学
 続いて、社内見学を行いました。1階のエントランス付近、同社の商品が展示されたコーナーでは、社員の声を吸い上げるために導入した「ノーベル起案」という取組の説明がありました。「新しい製品の提案から雇用環境の改善案まで幅広く募っています。1年で130案が寄せられ、65案が採用されました」との説明に、社員の意見を積極的に会社作りに反映している様子がうかがわれました。
 2階のオフィススペースでは、部署の垣根を超えたコミュニケーションをうながすための「フリーアドレス制」や、業務に集中したい時に利用できる私語厳禁の「サイレントスペース」など、同社ならではの仕組みが見られました。
 更に、会社の経営理念や目標、スケジュール、全社員の目標などを公表する「マル秘ノート」、社員同士が互いの仕事ぶりを褒め合う「イチオシ投票」などの取組が紹介されました。
 社内で情報を共有しながら、意見を吸い上げる様々な工夫を目にして、同社がアイデア力を武器に成長を続ける秘訣を知れたようでした。

  • 社員が自由に意見できる「ノーベル起案」の説明

座談会
 最後に、橋本代表より紹介のあった「フィルターインボトル」での実際のお茶の飲み比べと、茶菓子の試食をしながら座談会が行われました。座談会には橋本代表と若手社員2名が登場。入社理由を問う学生に対して、「お茶という身近な分野で新しい提案ができる」、「デザインや製造、販売まで、ものづくりの全工程に携われる」といった回答がありました。時には苦労もつきもので、「お客様から思っていたデザインが違うと言われることもある」といいますが、再度、デザインイメージを共有して完成にこぎつけ、「お客様の喜ぶ顔をみる」のがなによりのやりがいといったお話がありました。

  • 日本茶と茶菓子を試食しながらの座談会
  • 仕事の苦労ややりがい、プライベートの過ごし方まで盛んに質問があがる

参加者からの声

 ツアー終了後、学生からは、「社長が社員の様子をよく見ていて、社員の個性を生かすために様々な取組をしているのに感激した」、「大手企業に媚びることなく、独自のアイデアでチャレンジする姿勢に感銘を受けた」、「中小企は大企業に劣るという思い込みが180度変わった」といった感想が聞かれました。

2社目 キング通信工業株式会社/17名参加

 続いて訪問したのは、セキュリティ機器の設計、開発、販売を行うキング通信工業。同社の製品はオフィスビルや公共施設、一般住宅などに不審者が侵入したら警備会社に知らせるという社会の安全安心を守るものです。茂木社長の挨拶で始まり、総務担当の河北さんから会社の取組をお話いただいた後、社内見学を実施。最後に若手ならびに中堅社員を交えた座談会を行いました。

若手社員が開発に携わった防犯機器「コントロールコミュニケーター KFC-918/-918m」

ツアー内容

社長メッセージならびに会社説明
 ツアー冒頭、茂木社長から挨拶をかねて、経営方針などのお話がありました。「目指しているのは、社会と社員を幸せにする会社です。社員の幸せとはすなわち、自らの持てる力を発揮することと考えています。そこで勉強会や資格取得を支援するとともに、若いうちから裁量ある仕事を任せ、成長を促しています。」こうした取組の結果、「産前産後休業・育児休業を利用した社員の100%が職場に復帰している」といいます。働く環境の良さを学生たちも感じていました。

 続いて、総務担当の河北さんから会社の取組をご紹介いただきました。創業から50年以上、セキュリティ機器の企画からメンテナンスまでトータルに手掛けてきたという歴史を披露しながら、河北さんが掲げて見せたのが、白い半球状の製品。「これがセキュリティ機器といわれてもピンとこないでしょう。けれども、よくよく思い起こしてみてください。どこかで見かけたことありませんか?実はみなさんが通っている神奈川大学にも設置されていると思います。」と河北さん。続けて、「この製品はセンサの機器です。ビルや店舗が閉まった後に活躍します。無人の建物に侵入者が立ち入ると、その侵入者の熱をセンサが感知して警備会社に信号が送られるというものです」と製品の機能を説明。思い当たるふしがあった様子の学生一同。なるほどと深くうなずいていました。
 同社では、長年培ってきた技術と経験を生かして、介護業界にも進出。センサ技術を介護用機器に応用し、就寝中の高齢者の体勢を感知してベッドからの転落を防止する「シルエット見守りセンサ」を開発。介護施設や病院などで導入され、職員の方々の負担軽減に貢献しているとの説明がありました。
 その後、茂木社長に対する質問時間が設けられました。学生からの「魅力的に見える人材とは?」といった質問に対して、茂木社長は「たとえ的外れであっても、自分の考えや、やりたいことを積極的に発信する人に魅力を感じます」と回答。その理由を聞かれると、「社員に自由に発想できる環境を与えた際に、自ら考え行動し、新製品開発などで活躍してくれた例が多々あるからです」と回答してくださいました。このやりとりで、社員の個性を尊重して会社の成長につなげる同社の姿勢が学生たちに伝わったようでした。

  • 茂木社長が同社の経営方針などを説明
  • 製品を掲げて見せる河北さん

社内見学
 続いて、社内を見学。製品の設計、開発などを行う開発技術部には、真剣なまなざしで製品検査を行う社員の姿がありました。更に、大型装置が並ぶ信頼性試験室を訪問。ここは温度や湿度、雷、振動、静電気などの環境の変化を人工的に作り出せる装置を用いて、製品の品質を確かめる場所です。担当者から「温度であれば-40度から+100度まで、お客様が製品を使うあらゆる環境を想定して試験を行っています」との説明がありました。普段は目にすることができない光景に学生たちは感嘆の声をあげ、徹底して品質を追求する検査姿勢を肌で感じとれたようでした。
 見学を終えて会場に戻ると、防犯機器「コントロールコミュニケーター KFC-918/-918m」の開発を担当した、入社7年目の社員から製品の説明がありました。「留守中の侵入者を発見できるシステムです。スマホに対応してワンタップでオンオフを切り替えられるようにし、高齢者や子供でも使えるよう操作ボタンはイラストでわかりやすく示しました」と説明。やりがいを感じさせる説明者の表情に、同社では若手社員がアイデアを出しながら積極的にものづくりに携われることを学生たちは実感できたようでした。

  • 真剣なまなざしで製品試験を行う技術部の社員
  • 防犯機器について解説する技術部の社員

質問会
 最後に、若手ならびに中堅社員4名を交えて質問会を行いました。社員の方々の穏やかな雰囲気に、学生たちもリラックスして質問できたようでした。入社理由を問いかけると、「大学でITを学んでいて、最先端技術を生かしたものづくりに携わりたかった」、「就活中、当社の面接官が考えや感じ方まで関心を寄せて聞いてくれたのが決め手。実際に入社して、みんな人柄が良く、働きやすいです」などと回答がありました。更に、仕事で得られるやりがいを尋ねられると、「難しいシステムを完成させたときに達成感を感じます」、「自分が関わった製品が世の中の様々な場所で使われているのを見ると気分が良いですね」などとお話いただきました。
 更に今回のツアーは文系学部の学生が多いことから、「文系でも仕事できますか?」「プログラミングって難しそう」といった声が相次ぎました。これに対して社員の方々は、「電気電子系の企業でも営業や事務職は文系が活躍できる分野。更に一から技術や知識を身に付け、技術部で活躍している社員もいますよ」といった回答がありました。

  • 文系出身でも活躍できるとの助言に笑顔を見せる

参加者からの声

 ツアー終了後、学生からは、「あらゆる状況を想定して誤作動が起こらないよう地道に実験を繰りかえす仕事ぶりに感銘をうけた」、「人々に安心を与え、社会に貢献できる仕事だと感じた」「社内交流を積極的に行い、社員が働きやすくなるような雰囲気づくりをしていた」といった感想が聞かれました。

まとめ

 1社目の吉村は、日本茶のパッケージや茶菓子・雑貨を手掛ける会社。2社目のキング通信工業は、防犯装置の開発からメンテナンスまでを行う会社でした。両社とも日々の生活に寄り添い、吉村は彩りを、キング通信工業は安心を与える事業を展開していました。更に、各々の個性を発揮しながら意欲的に働くことができる環境をどちらの企業も整えており、やりがいを持って働く社員の姿を見ることができました。参加者たちは、社会に対しても自社の社員に対しても幸せを提供する中小企業があることを発見できたようでした。