TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート
目白大学貸切回 ヒット商品を生み出す、地域密着型企業特集
1社目 フットマーク株式会社/13名参加
はじめに訪れたのは、水泳や介護用品、健康インナーなどの製造、販売を行うフットマーク。おむつカバーの製造から始まった同社は、多彩なアイデアでヒット商品をいくつも生み出しています。ここでは、オフィス見学、会社説明、グループワークを行いました。
ツアー内容
オフィス見学
ツアーはオフィス見学からスタート。はじめに案内していただいたのはエントランス。ここは会社がある墨田区から「小さな博物館」として認定を受けており、一般の人たちも見学できるようになっています。博物館という名前の通り、同社が創業した1946年から現在に至るまでに製造、販売を手掛けた商品がずらりと並んでいました。
次に向かったのは、開発室。ここでは、デザイナーが作成したデザイン画を基に、パターンと呼ばれる型紙を作成しています。かつてはすべて手作業で行われていた型紙製造は、今ではデジタル化しており、マスターパターンを作れば、その縮尺を変えるだけでS、M、Lのサイズ違いのパターンが作れるようになっているそうです。ここでは、パソコン上で作成されたパターンを実際に出力していただきました。学生たちは、大きなプリンターからパターンがプリントされてくる様子を目を輝かせながら見ていました。
続いて向かったのは、営業部などの社員たちが働く事務所。仕切りのない開放的なオフィスで、階上、階下で働く社員の様子を感じられるように、他のフロアの声も聞こえる設計にしているとのことです。また、事務所の窓際には、ゆったりとしたソファーが並んだミーティングスペースが設けられており、明るい雰囲気でミーティングが行われていました。
最後に伺ったのはオフィスの屋上です。ここにも、まるでカフェのようなソファーやテーブルが置かれており、開放的な空間が広がっていました。同社では、お客様を最初に屋上に案内することも多く、好評を得ているとのことです。
- きれいに整備された屋上で気分をリフレッシュすることができる
- 型紙を作る様子に学生たちも真剣なまなざしを向ける
会社説明
続いて、三瓶社長による会社説明が行われました。
1946年に創業した同社は、現在では「健康」をテーマに幅広い商品を製造しています。現在取り扱っている商品のラインナップはなんと約3,000種類。そのうち、およそ1,000種類の商品が毎年入れ替わっているそうです。
「創業当初に製造していたおむつカバーは、紙おむつに取って代わられて今ではほとんど使われていません。このように、かつてのヒット商品が現在では使われなくなってしまうことは製造の現場ではよくあることです。そのため、常に新しいデザインや技術を導入し、商品の入れ替えを行っています」
次に、同社の経営理念を紹介していただきました。
「当社は『お客様が第一』を理念として掲げ、ものづくりにおいて『1分の1の視点』を大切にしています。目の前の1人のお客様の要望を聞いて商品を作れば、商品はそのお客様に必ず売れます。何千人のデータやリサーチの数字よりもたった1人の言葉を大切に、丁寧に製造しています」
例えば同社では、衣服を汚すことなく食事ができる介護用エプロンの機能を持ったまま、外食中にもおしゃれに使えるものがほしいとの要望を反映させて、ストールのように見える食事用エプロンを開発しました。現在では、着物を着るときの食事用エプロンとしても好評を得ており、着物雑誌でも紹介されました。
同社の、顧客の声を聞き、新しい商品を作り続ける姿勢に学生たちも関心を持って聞いていました。
- 三瓶社長から同社の歩みや理念が説明された
グループワーク
続いて学生たちは、商品企画を体験するグループワークを行いました。グループワークのテーマは「健康づくりに役立つグッズ」。「誰に、どんなニーズがあるのか」、「どんな価値を提供できるのか」、「どうやってお客様に商品を知らせるのか」といったことを考えながら、学生が各自でアイデアを練り、その後グループでブラッシュアップを行いました。グループワーク後の発表では、「中高年をターゲットにした、着ただけで体が柔らかくなるインナーを開発したい。商品を知ってもらうためにSNSで有名人に着てもらって効果を実感できる動画を投稿し、信頼と認知度を高める」といったアイデアや「棚卸などの軽作業中に腕や指先を傷つけないように、肩から指先までをカバーできる軍手を開発し、店舗などに配って性能の良さを体験してもらう」といったアイデアが出ました。
グループワーク後に行われた講評では、三瓶社長からも「面白いアイデアがたくさん出てきましたし、PRの仕方もうまいところをおさえています」と絶賛の声をいただきました。
- 新商品のアイデアについて、学生たちが熱のこもった議論を交わす
- グループワーク後には、出されたアイデアを発表し合った
参加者からの声
学生からは、「毎年1,000種類の新商品を開発していると聞いて、すごいと思った」、「有名ブランドの商品も製造していると聞いて、自分もフットマークで作られた商品を着たことがあるのかなと思った」「実際に地域の方やお客様の意見を聞いて、商品を開発していることが印象的だった」といった感想が聞かれました。
2社目 大東印刷工業株式会社/13名参加
続いて訪問したのは、企業のカタログやパンフレット、ポスターなどの印刷を手掛ける大東印刷工業。ここでは、会社説明、ワークショップ、工場見学を行いました。
ツアー内容
会社説明
学生たちが席に着くとまずは同社のパンフレットが配られました。そして、営業部に所属し、採用も担当している中島課長による会社説明がはじまりました。
「皆さんの手元にあるパンフレットの表紙に描かれているイラストのモデルはすべて当社の社員です。これは、斬新なアイデアは社員が主役となっているからこそ、という思いを表したもの。当社ではそうした、社員主体でいきいきと働ける環境づくりに積極的に取り組んでいます」
また、同社が取り組んだ業務改革についても話してくださいました。
「これまで新規顧客を獲得するには電話をかけるという手段に頼ってきましたが、展示会やビジネスマッチング会でお客様に悩み事を持ち込んでもらうというものに切り替えました。こちらからお願いする営業だと、どうしても価格競争になってしまい、利益率が下がってしまいがちだからです。待ちの営業にスタイルを変更したことで、現在は金銭的な面ではなく、お客様に寄り添う安心感から当社を選んでいただいています」
1回の展示会やビジネスマッチング会で同社が新規案件を獲得する数は、平均3、4件。これまでの営業スタイルでは、この件数を獲得するには一人の営業担当者が3~4カ月掛けて達成していた数字といいます。また、展示会で社員自ら同社の長所をアピールし、顧客の悩み事を解決していくことで、社員のスキルが養われます。現在では印刷に関する相談に限らず、同社が培ってきたノウハウを生かして解決できることならどんな悩み事でも請け負っています。
- 中島課長による会社説明に学生たちも真剣に耳を傾ける
ワークショップ
次に、学生は2グループに分けられ、アイデアを形にするためのワークショップを行いました。中島課長が実際に手掛けた「新規オープンするうどん店を口コミサイトで区内のうどん店ランキング1位にする」というテーマでアイデアを出し合いました。
中島課長によると、グループで意見を出し合うときに気を付けることが4つあると言います。
「一番目は『批判をしない』です。自分が批判をされてなくても、アイデアを口に出す前にこの意見は批判されるかどうかを考えてしまう環境では、議論が委縮してしまうからです。二番目は『自由奔放』です。顧客には言えないようなことやジョークのような意見でも積極的に発言していきましょう」
三番目として、「質より量」でとにかく意見たくさん出す、四番目に「連想と結合」で他人の意見から触発された意見を出す、といったアドバイスもいただきました。
ワークショップが始まると、学生たちは自由な発想で次々と意見を出していました。出された意見は大きめの付せんに書き込んでいき、関連性のあるものをグループ化していき、それをもとに発表を行いました。
発表では「口コミを書いてくれた人を割引する」、「年越しうどんやカルボナーラうどん等の、限定メニューや変わり種メニューを用意する」、「ポイントカードを作ったり、キャッシュレス決済ができるようにする」といった意見が出ました。中島課長からも「年越しうどんやキャッシュレス決済など、実際に実施したことも意見として出ていました。他のアイデアもそれぞれに出来が良く、私自身も勉強になりました」と講評をいただきました。
- ワークショップでは、次々にアイデアが生まれていった
- 出されたアイデアをもとに発表を行う学生
工場見学
続いて行われた工場見学では、カラー印刷機やカッティングマシンなどが実際に動くところを見せていただきました。カラー印刷を手掛ける部門では、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色を掛け合わせることによって様々な色を出しているところを目の当たりにしました。同社が導入している印刷機は、高速で刷り上がる紙をカメラでチェックしているため、わずかな印刷ミスでも検出することができるそうです。また、カッティングマシンは100分の1ミリ単位の精度でカットすることができ、同時に折り目も付けられるそうです。高性能な機器の数々に学生たちも興味津々で見つめていました。
「このカッティングマシンは墨田区で開催している『すみだファクトリーめぐり(スミファ)』というイベント時にも公開しており、普段なかなか印刷工場の機械を見ることがない子どもたちからも好評です。また、ここ数年はスミファの際、ワークショップ等も開催しています」と中島課長に補足していただきました。
- 印刷後、カメラチェックに加え目視による確認も行われる
- カッティングマシンを間近で見学
参加者からの声
学生からは「印刷会社なのに、印刷とは関係のないプロデュースも行っていて意外だった」、「売り上げではなく、利益率を上げれば業績が出せると知って勉強になった」「地元のイベントへの協力等、地域に根差した企業だと思った」といった声が聞かれました。
まとめ
1社目のフットマークは、水泳や介護用品などの分野で多くのヒット商品を作り続ける会社。2社目の大東印刷工業は印刷業という枠に留まらず、様々なアイデアを形にする会社でした。今回は2社とも墨田区のものづくり企業でした。フットマークは誰でも過去の製造物を見られるようにエントランスを一般の方に公開し、墨田区から「小さな博物館」の認定を受けていました。大東印刷工業は墨田区の『スミファ』に協力し、墨田区の町工場の魅力を発信する企業でした。
どちらも地域に根付き、新しい商品やサービスを生み出していく様子に、学生たちも興味津々に見学を行っていました。