<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

実は中小企業が携わっていた! 皆さんの身近に関わる企業特集

1社目 株式会社ライフ設計事務所/13名参加

 最初に訪問したライフ設計事務所は、大学や商業施設などのランドマークとなるような多くの施設の設計を手掛けています。ここでは、設計事務所ではどんな仕事を行うのかなどの会社説明と、オフィス見学、若手社員を交えての座談会を行いました。

1971年の創業以来、都市の顔となる多くの建築物を手掛けてきたライフ設計事務所

ツアー内容

会社説明
 ライフ設計事務所は、建築物の金属部分の設計を請け負う会社として1971年に創業。現在では施工設計や構造設計も手掛けています。
 「豊洲新市場や新国立競技場など、東京の顔になるような有名施設の施工図も手掛けています。また、都内だけでなく、名古屋と大阪にも支社があり、地方のランドマークにも当社が携わっているものが数多くあります」と自社紹介をしてくださったのは、総合人材サービス部の山本さんです。
 施工図とは、設計者が描いた図面をもとに、現場の職人さんが作業しやすいように窓や電気をつける場所など詳細を書き込んだり、実際に工事を行う時に不具合などが生じないかを検討して描く図面のことです。同社は、この施工図作成業務でゼネコンから絶大な信頼を得ているといいます。

 また、同社には建築学部出身者だけではなく、文系社員も数多く在籍しています。新人研修からOJTまで、しっかりとした人材育成制度が整っていると山本さんは充実した研修内容を話してくださいました。
 「入社後1カ月は、座学で図面の読み方から引き方など、建築の基本を一から学びます。その後もOJTとして、先輩社員に付いて経験を積みます。建築学部で学んでいた人でも、配属される部署によっては初心者になる場合もあるので、ここでは全ての新入社員が同じ研修を受けます」

 また、研修の他にも社外活動やクラブ活動も充実しており、仕事以外の場面でも社員同士のコミュニケーションが活発に行われていると言います。
 「毎年行われる社員旅行や花見、バーベキュー大会では、多くの社員が参加して盛り上がっています。更に、5名以上が参加するクラブ活動には、会社から部費が支給され、バドミントンや釣り、ボウリングなどのクラブが積極的に活動しています」(山本さん)

  • 同社が手掛けた施設などが紹介された

オフィス見学
 次に行われたオフィス見学では、施工設計部、構造設計部、金属工事設計部の様子を見学させていただきました。
 はじめに訪れたのは、施工設計部です。施工設計部の社員は、現場に常駐し、施工図の作成と建設中に修正が必要だと判断された箇所の修正作業などを行います。1つの現場には、短くても3カ月ほど、長くなると3年ほど常駐することになるそうです。この日は、次の現場に向けて内勤作業をしている若手社員に仕事内容を聞きました。
「現在は、ある大学の1階部分の施工図を担当しています。CADソフトを使って設計図には書かれていない細かな部分を作成したり、問題がないかなどをチェックしています。多くの人が利用する公共施設を扱うことも多いので、細心の注意を払っています」

 次に、構造設計部に伺いました。ここでは、ショッピングモールや病院、工場などの建物の強度をつかさどる大切な部分である骨組やフレームの設計をしています。また、最近では「ツーバイフォー」と呼ばれる工法で作られる住宅の施工図も手掛けています。作図は2DのCADソフトを使って描いていますが、今では3Dの CADソフトが主流になりつつあります。使用するソフトによっては材料や形状を指定して完成図を作成できるため、強度計算なども同時に行えます。
 最後に訪問したのは、金属工事設計部です。ここでは、柱や壁、エスカレーターの側面などに使用されている金属部分の設計を行っています。他にも、窓のサッシや建物の外壁に設置されることがある金属パネルなど、金属に関わるものなら何でも設計するといいます。同部署で働く若手社員から「描かれた製作図をもとに、金属加工を行う工場に資材が発注されます。工場の人たちは、建築現場を見ずに資材を作ることになるので、分かりにくいところは拡大した図面を用意したり、パーツごとに図面を作成するなどし、ミスがないように注意しています」というお話を聞かせていただきました。

  • CADソフトに建物の詳細な情報が書き込まれているのを真剣に眺める参加者たち
  • 建物の「構造」についてのレクチャーを受ける参加者たち

座談会
 続いて、若手社員を交えた座談会が行われました。文系学部出身の社員への「未経験でも問題なく働けていますか?」という質問には、「未経験でも給料が変わるということはなく、きちんと評価もされています。まだまだ分からないところもありますが、先輩もしっかりと指導してくれており、仕事をしながら勉強できるという感覚です」と回答。また、「海外の建築物は手掛けていますか?」という質問には、「現在、ミャンマーやアメリカなどの建築を担当している社員もいますので、外国語のスキルを生かして働きたい人も活躍の場があります」と説明していただきました。

  • 座談会では、参加者から様々な質問が投げ掛けられた
  • 未経験で入社した社員には、取得した資格などの質問が寄せられた

参加者からの声

 参加者からは、「有名施設を次々手掛けていて、すごいと思った」、「社内クラブがたくさんあって、楽しく働けそうだと思った」といった声が聞かれました。

2社目 株式会社東邦製作所/12名参加

 次に訪れたのは、自動制御機器の製造、販売を手掛ける東邦製作所。同社で製造された製品は、高速道路のトンネルの空調施設や、火力発電所のバーナーに点火するトーチなど、社会インフラを担う場所で使われています。ここでは、髙山社長による会社説明の後、工場見学、若手社員を交えた座談会を行いました。

エントランスには、同社が製造している製品がずらりと並んでいる

ツアー内容

会社説明
 東邦製作所は1923年創業。関東大震災で東京が被災し、建築需要が増えたことをきっかけに創立されたそうです。築地で事業をスタートさせましたが、1989年に現在工場がある青梅市に移転しました。
 「創業当初は、水位によってオン・オフを行う『フロートスイッチ』と呼ばれる製品や、圧力を検出する『圧力スイッチ』という製品を製造していました。現在では、創業当時の製品に加え火力発電所で使われるメインバーナーに火をつける『ボイラ用トーチ』や、空調設備、生産設備を制御する『コントロールモーター』といった製品を製造しています」と髙山社長から会社の歩みを紹介していただきました。他にも「ビル用制御盤」や鉄道、船舶用の「エンジン制御機器」を製造しており、制御盤はかつて国会議事堂でも使われていたことがあるそうです。

 また、同社では働きやすい環境づくりにも積極的に取り組んでいます。産前産後休業・育児休業をはじめとして、介護休業制度なども利用が推進されています。更に、残業が少なく、有給休暇が取りやすいというのも同社の特徴。2018年度の残業時間は、月平均約4時間、有給休暇取得率も約80%という実績で、社員がプライベートを充実させられる環境が整っています。
 会社説明の最後には、社員の方たちに同社で働く魅力を話していただきました。女性社員からは「社長はワーキングマザーの立場を理解してくれるので、子供が熱を出したときなどの急な休みにも快く対応してくれます。とても働きやすいと感じています」というお話をうかがいました。また、若手社員からは「先輩や上司との距離が近く、分からないことがあればすぐに聞くことができます。また、作業中に疑問に思ったことを聞くことができる先輩社員がすぐ近くにいるというのは、中小企業ならではのメリットだと思っています」と教えていただきました。参加者たちも、働く社員の生の声に真剣に耳を傾けていました。

  • 同社の歴史や社内制度を聞く参加者

工場見学
 次に工場見学が行われました。はじめに訪れたのは、技術部設計課の執務室です。ここでは、3DのCADソフトを使って、製品の設計を行っています。設計後は、完成図を断面にし、重なっている部品がないかの確認や、データ上で製品を動かし、きちんと動作するかを確認しているそうです。
 続いて訪れたのは、トーチ試験室です。ここでは、ボイラ用トーチがきちんと動作するかの試験が行われており、実際の試験風景を見せていただきました。担当の社員がスイッチを押すと、大きな音とともに火花が上がるのをみて、参加者たちも歓声を上げていました。
 その後は、電子ガバナグループの作業室を案内していただきました。ここでは、有害物質の規制に対応した製品を製造しています。工具や机にも規制対象外の物質が含まれている場合があるため、専用のものを使用するように配慮しているそうです。ここで若手社員から「有害物質の混在がないように、決められたルールは必ず守るようにして作業を行っています」と仕事に取り組む上での心構えを教えていただきました。

 続いて、生産課の作業場に伺いました。ここでは人の力では持ち上がらないような大きな製品の組み立てを主に行っています。この日は、海底トンネルで使われているコントロールモーターの点検整備が行われていました。同社は大きな製品であっても、ラインによる流れ作業ではなく、1人で完成までを担当します。全ての工程に一貫して携わることで、製造した製品は自分が作ったのだという誇りが持てるといいます。
 最後に訪れたのは、燃焼試験室。ここでは、ボイラ用トーチなどが火力発電施設の中の高温にも耐えることができるか試験が行われており、その様子を見学させていただきました。試験機の中では、1.5メートルほどの火炎が迫力いっぱいに上がり、参加者たちもその様子を熱心に眺めていました。

  • CADを操作する社員の様子を見つめる参加者たち
  • 燃焼試験室で試験が行われている様子を眺める参加者

座談会
 続いて、若手社員を交えての座談会が行われました。「入社を決めた理由は?」という質問には、「残業が少ないことです。定時で帰れなくなってしまうような案件は皆でカバーし極力残業をしないようにするという当社の方針があり、社員のことを考えてくれているなと感じています」と働きやすさについて話していただきました。「就活をする上で気を付けることはありますか?」という質問には、「自分が仕事に何を求めるのかということを明確にして面接に臨むことをおすすめします」というアドバイスをいただき、参加者たちも熱心にメモを取っていました。

  • 子育て中の社員も多く、両立に関する質問も飛び交った
  • 同社の福利厚生などについて熱心に聞く参加者たち

参加者からの声

 参加者からは、「製造業は残業が多そうなイメージがあったけれど、残業が少なくて有給休暇も取りやすいので、働きやすい会社だと思った」「中小企業に、日本のインフラを支える企業があると知り驚いた」といった声が聞かれました。

まとめ

 1社目のライフ設計事務所は、数々のランドマークの施工図を手掛ける会社。2社目の東邦製作所は高速道路や火力発電所など、社会のインフラを支える施設で使用されている機器を製造する会社でした。社内見学では、図面を描く様子や製品の実験をする場面を見せていただきました。参加者たちは、中小企業も身近に関わるものを作り出しているんだと、驚きの声をあげていました。