<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

淑徳大学連携回

1社目 大東印刷工業株式会社/8名参加

 最初に訪問したのは、カタログやパンフレット、ポスターなどをメインとした印刷を手掛ける大東印刷工業。中島課長より会社概要についてお話を聞き、ワークショップ、そして工場見学を行いました。

墨田区に本社と2つの印刷工場を構える大東印刷工業

ツアー内容

会社説明 効率的に利益を上げる経営戦略
 学生たちが案内された部屋には大きなテーブルが用意されていました。そこには、同社が制作した商品の数々が並べられており、その一つひとつについて営業部の中島課長から説明がありました。お風呂でも使えるメモ用紙、石灰岩が原料というクリアファイル、同社の社員がイラストを手掛けたオリジナルカレンダー等に学生は興味を示し、それぞれ手に取って説明に聞き入っていました。一通り商品の説明が終わると、会社の経営方針などについてのお話がありました。
 中島課長によると、印刷業は東京の地場産業であり、事業所の数も、そこで働く人の数も製造業の中で一番多いのこと。それだけに同業他社にはない特徴的な印刷会社でなくてはならないというのが大きな経営戦略であるとお話をしてくださいました。具体的な戦略の一つが、電話を使っての新規顧客の獲得活動は行わない営業方針。電話営業では、仕事を取るために、価格競争に負けないよう受注金額を下げてしまいがちになり、利益率が下がってしまうからだと説明してくださいました。そこで同社が営業方針として打ち出したのが、多くのお客様が来場する展示会やビジネスマッチング会への出展。これは大きな成果を上げたといいます。
 「展示会場に来られるお客様は、困ったことを抱えているケースが多いです。そうした問題に寄り添い、解決することで新規の仕事へとつながるのです」
 お客様の問題を一緒に解決することで、相互の信頼関係が築き上げられ、お客様から選ばれる会社に生まれ変わったというわけです。更に、展示会などで出会ったお客様の多種多様な問題を解決していくことで、社員のスキルも培われ、企業としての質が向上するということでした。

  • 中島課長の会社説明に真剣なまなざしを向ける学生

ワークショップ アイデアを出し合って的を絞る
 次に学生は2グループに分かれ、ブレインストーミングというアイデアを形にするためのワークショップを行いました。アイデア出しで重要なことは、これは無理だろうといった先入観を持つことなく、思いついたことをどんどん出す、しかも声に出して、文字にするということだとアドバイスしてくださいました。
 更に、グループで意見を出し合うときに4つの注意点があるということも教えていただきました。1点目が「人のアイデアを批判しない」。批判されるのではと思う人は委縮してしまい、自由にアイデアが出せなくなってしまうからです。2点目は「自由奔放」にジョークのような意見でも積極的に発言すること。3点目は「質より量」。見当違いでもとにかく多くのアイデアを出すこと。そして4点目が「連想と結合」で他人の意見から派生した意見を出すというものでした。これらはブレインストーミングを行うときの4原則と言われているそうですが、中島課長は更に5点目として、「真逆なアイデア」を付け加えました。あえて他の人とは真逆のアイデアを出すことで、そこから更に広げることができるということです。
 今回のテーマは、中島課長が実際に手掛けた「町の小さなうどん店を、口コミサイトで区内のランキング1位にする」というものでした。学生たちは臆することなく思いついたアイデアを声に出し、大きめの付せんに書き込み、関連性のあるアイデアをグループ化し、意見をまとめました。
 発表では最初のグループからは「近隣の町工場とのコラボ」、「女性でも入りやすい店構え」「インスタ映えする店内」といったアイデアが上がりました。もう一方のグループからは、「インバウンド向けに日本らしさをアピール」、「ランチは回転率重視のサービス提供」、「大盛メニューで若者を取り込む」、「居酒屋とのコラボ」といったアイデアが上がりました。中島課長からは「発想の自由度が高い」と高い評価をいただきました。

  • 社員を交えてのワークショップでアイデアを出す
  • アイデアをまとめてプレゼンテーションする学生

工場見学 色の三原色を生かした印刷の基本が見えた
 続いて行われた工場見学では、カラー印刷機やカッティングマシン、そして紙を定型のサイズにカットする断裁機などを見学しました。カラー印刷の現場では、マゼンダ(赤)、シアン(青)、イエロー(黄)という光の三原色にブラックのインクをかけ合わせて色彩豊かなポスターなどが刷り上がる様子を見学。学生は肌色も緑の木々や青い色も、シアンやマゼンダ、イエロー、ブラックの4色だけで仕上がるという事実を目の当たりにして驚きを隠せない様子でした。続けて100分の1ミリ単位の精度で厚紙をカットし、折り目も付けられるというカッティングマシンを見学。この機械で色々な形の箱などの立体物を作ることができるそうです。
 最後に断裁機を見学。大きな刃の下にセットされた30センチ以上ある紙の束が瞬時にカットされる見事な切れ味を興味津々に見入っていました。

  • 最新のカッティングマシンに学生も興味津々
  • 中島課長の印刷の工程説明に聞き入る学生

学生の声

 「私たちの身近にたくさんある印刷物の印刷工程を見ることができ、とてもいい体験になった」、「物が売れるためのアイデア、人の役に立つアイデアを考える仕事に興味がわいた」「アイデアを出すという作業がとても楽しかった」という声が寄せられました。

2社目 イワツキ株式会社/8名参加

 次に訪問したのは、総合医療用品メーカーのイワツキです。同社は、病院や介護施設で使われている脱脂綿、ガーゼ、包帯、大人用紙おむつなどを製造・販売しています。管理本部総務課の石井マネージャーより会社概要、事業の特徴やこれからの展望についてお話を聞いた後、営業職の仕事内容、同社の製品紹介、社内見学、そして若手社員たちとの座談会が行われました。

イワツキが取り扱う種類豊富な医療・介護用品

ツアー内容

人々の健やかな生活を支援する総合医療用品メーカー
 1923年に脱脂綿の製造販売からスター卜したイワツキは、歴史を重ねるごとにガーゼ、脱脂綿、包帯といった衛生材料をはじめ医療用消耗品、大人用紙おむつ、介護関連製品と取扱品目を増やし続け、現在は病院医療・ヘルスケア・救急医療・デンタルの4分野で事業を展開しています。
 「イワツキの製品は、医療現場や災害現場で人の命を救う医療行為に欠かせない製品が多いだけに、その社会的使命は高い仕事である」という説明を受けました。そこで不可欠なのが社員同士の連携。「イワツキでは『自律性×協調性』に優れた人材を求めています」と、管理本部総務課の石井マネージャーは同社の求める人材像をお話しくださいました。更に「会社は一人では成り立たない。チーム内での自分の役割を認識し、周りと協調しながらも、自分の考えを発信し、行動し、結果を残すことも大事」と言葉を続けました。

  • 真剣な面持ちで石井マネージャーの会社説明に聞き入る学生

仕事紹介 イワツキの営業職の仕事概要
 次に、同社の原動力となっている営業職の社員がどんな仕事をしているかを、若手社員の方がお話してくださいました。
 「営業で訪問するのは、病院や介護施設などの医療・介護現場がほとんどです。現場の看護師や医療従事者の声を聴き、現場で困っていることを把握して、それを解決する製品を提案することが仕事です」
 つまり、コミュニケーションが大切で、現場のニーズを把握できてこそ、求められる製品が見えてくるのだといいます。医療現場では、日々新しい問題や課題が発生しているといい、お客様に最新の情報を提供するためにもコミュニケーションは欠かせないとのお話でした。

  • 営業という仕事について詳しく説明を受ける学生

製品説明 常に進化する医療・介護用品
 次に学生たちは同社が取り扱う製品の説明を受けました。私たちの身近にある製品から、普段、あまり目にしたり、触れたりしたことのない製品まで、一つひとつ丁寧に説明をしていただきました。学生の目を引いたのは大人用紙おむつ。大量の水をかけても肌触りが変わらない様を実際に手で触ってみて、これなら高齢者も気持ちよく過ごすことができると学生も納得の様子でした。また、同社の手術用ガーゼに黒いX線造影糸が入っているのは、開腹手術で万が一、体内にガーゼを置き忘れたときにレントゲンに映すための工夫との説明には、感嘆の声が上がりました。
 同社の主力製品の一つである使用済み注射針の針捨てボックスは、手早く、そして安全に針を処分できるため、医療現場で欠かせない製品になっているという説明がありました。従来、使用済みの針は、キャップを被せて処分していましたが、キャップを被せるときに誤って自分の指などを刺してしまう医療事故が多くあったそうです。同社の針捨てボックスは、様々な種類の針が捨てられるように廃棄口に工夫が施されている上、今でも改良を重ね続けているそうです。このように同社では製品一つとっても、現状に満足することなく、何らかの付加価値をつけた新しい製品を生み出し、社会に寄与しているということでした。

  • 実際に製品を手に取って説明を受ける学生
  • 見たことのある製品に興味津々

社内見学 それぞれの部署がお互いを支え合う
 次に社内を見学しました。製品の在庫管理からお客様からの問い合わせ対応、製品カタログの作成等を行う営業本部の各部署や、経理に関する業務や通信機器等の管理、その他、会社や社員に関わる業務を行う管理本部を見学し、それぞれの業務内容の理解を深めた様子でした。

座談会 入社を決めたポイントに質問が集中 
 次に社員4名に参加頂き座談会を行いました。医療系の仕事というと理系が有利なのではという学生からの質問に、そこに居合わせた社員は全員が文系ということで学生たちはほっとした様子でした。
 「新人研修もありますし、実際の現場に出ることで製品知識は自然に身に付くものです。その製品に足りないものはないか、こう改良したら便利になるのではないかという発想は、実際にお客様との対話の中で生まれてくるものだから文系、理系というのは全く関係ありません」と回答してくださいました。
 最後に石井マネージャーから就職活動についてのアドバイスがありました。「1社でも多くの企業を訪問して、その業務内容を知ることで、自分には何ができるのか、自分は何をしたいのかを見極められるものです」この言葉に学生たちは大きくうなずいていました。

  • 質疑応答が活発に行われた社員との座談会

学生からの声

 学生からは「社員一人ひとりが仕事に対する意識を高く持っているところが良いなと感じました」、「病気やけが、そして災害現場で役立つ製品を扱う非常に重要な仕事であることが分かった」という感想が聞かれました。

まとめ

 1社目の大東印刷工業は、私たちの身近にある商品の印刷に携わる企業で、2社目のイワツキもやはり私たちが一度は目にしたことがある医療用製品を取り扱う企業でした。どちらも普段、何気なく扱ったり、見たりしているものですが、そこにはたくさんの人々が関わっており、新たなアイデアや製品を生み出す思いが込められていることを知った学生は、中小企業がいかに社会を支えているのかを実感した様子でした。