TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート
玉川大学連携回 若手が成長&活躍。新商品開発力の優れたグローバルメーカー特集
1社目 株式会社村井/9名参加
午前中に訪れたのは靴のパーツを製造する村井です。会社説明後、インソール製作を体験。その後、質疑応答を行いました。

ツアー内容
会社説明 仕事内容や特色を知る
1931年の創業以来、シューパーツやフットケア製品を製造してきた同社。東京や埼玉、新潟、台湾に拠点を持ち、企画開発から製造・販売まで手掛けています。まずは社員の方から同社のビジネスについてお話いただきました。
「今日みなさんが履いている靴。どのように作られていると思いますか?男性用のビジネスシューズであれば約20ものパーツを組み合わせて作られています。私たちは、革靴やスポーツシューズなどに用いられるつま先やかかとの芯ならびにインソールなどを製造。なかでも日本製の婦人靴の6割が私たちの製品を採用していますから、みなさんも一度は履かれたことがあるかもしれません」
同社が強みにするのが日本人の足に合ったパーツを作る技術。同業他者に先駆け、1960年頃から先進的な靴づくりのノウハウを欧米諸国から取り入れるとともに、国内の研究機関と連携して開発を進めてきたといいます。
「立つ、歩く、ジャンプするなどの環境の変化を受けても、バランスよく体重を支えられることが大切です。そこで私たちは医療系の大学と連携して、ユーザーの声や実測データなどを解析しながら改良を重ねてきました」
履き心地が良い、疲れづらい、トラブルが少ないなどと、国内外で高い評価を得る同社。欧米諸国の有名ブランド靴にも同社のパーツが採用されているといいます。
シューパーツ事業について説明いただきました
事業概要や足のマメ知識をしっかりとメモする学生
ワークショップ MYインソールを作ってみよう
続いて、同社の業務の一つであるインソール作りを体験することになり、各自に材料と道具が配られました。社員の方にきめ細やかにアドバイスいただきながら、学生たちはそれぞれに自分の足形をとって、材料を切る、貼り付けるなどして自分の足にぴったりフィットするインソールづくりにチャレンジ。
「足の基本骨格であるアーチの崩れは、外反母趾、つま先やかかと、足の裏痛みをはじめ、さまざまなトラブルにつながります。ワークを通してインソールの重要性やものづくりの楽しさを体感してください」
ポイントとなるのが3つのアーチをバランスよく支えること。いかなる状況においても親ゆびの付け根、小ゆびの付け根を結ぶ横アーチ、土踏まずにあたる内側縦アーチ、かかとの外側縦アーチ、3つのバランスを保持できるインソールが理想というお話がありました。
オリジナルインソールは1時間ほどで完成。自作したものだけに感慨深げで、学生たちは満面の笑みを浮かべていました。
実際にインソールを靴に入れてみて、「すごい」「ぜんぜん違う」「土踏まずが支えられている」などとそれぞれの履き心地を声にしました。
社員の方に教わりながら自分の足の骨を確認
インソールの重要性とともに、ものづくりの面白さに気付くことができました
質疑応答 仕事ぶりや社風を知る
最後に、質疑応答が行われました。
「御社で働く一番の魅力は?」との質問には、「仕事をして初めて好き嫌いや、向き不向きがわかることがあります。当社には企画、営業、販売、IT、製造、管理事務など幅広い業務があります。入社時の研修では、ほぼ全ての部署を経験してから配属されるので、得意分野を見つけられるはずです」、「企画から製造・販売まで社内で携われるのが魅力。新製品開発にも携われるチャンスがあります」といった回答がありました。
また、「社風は?」との質問には、「アットホーム。分からないことがあれば部署・世代の垣根を問わず質問し、丁寧に教えてもらえます」と温かい社風を語ってくださいました。
質疑応答を通して理解が深まりました
学生の声
会社訪問後、学生から、「得意分野を見つけられる研修や、やりたいことにチャレンジできる社風が、社員の成長や新製品の開発につながっていると感じた」、「海外にも通用する技術力に職人魂を感じた」、「社員一人ひとりが靴の構造を理解していて、楽しそうに話す様子が印象的だった。私もこんなふうに働きたい」といった感想が聞かれました。
2社目 吉田テクノワークス株式会社/9名参加
午後から訪れたのは、プラスチック成形を行う吉田テクノワークスです。ここでは吉田社長から会社概要をうかがい、その後、社内見学ならびに座談会を行いました。

ツアー内容
会社説明など ユニークなビジネスと強みを知る
墨田区にあるオフィスを訪問し、吉田社長から同社のビジネスについてお話がありました。
「1946年に化粧品を入れるコンパクトケースづくりから始まり、時代の要請に応える形でスマートフォンケースやカーナビの液晶モニターなどを手掛けるようになりました。2004年に電子製品を中心に扱う会社として吉田テクノワークスを設立しました」
そう話す吉田社長が一番大切にしていることが、ものづくりを楽しむこと。多くのメーカーが人件費削減のためにアジア諸国に工場を移すなか、同社は国内での生産を維持し、技術開発に力を入れてきたといいます。
「私たちはものづくりが大好きです。だからこそ自分たちで作りたいのです。例えば、外国に工場を置くとものづくりの現場が遠くなってしまいます。そこで、国内で企画から製造までこだわってきました」
同社の強みは、「インモールド」と呼ばれる成形技術。絵柄の付いたフィルムを金型で挟みこむと同時に熱を加えることで、プラスチックの表面に絵柄を転写するというものです。近年はこの技術を発展させて「ダブルインモールド」技術を確立。フィルムを二枚にすることで二重の絵付けを実現しています。
「この技術を扱える企業は世界的に見ても珍しい存在です。実際、みなさんが名を知るメーカーの化粧品ケースやスマートフォンカバーなどにも当社の技術が採用されています」
続いて、生産技術部の社員の方から、これまでに担当した仕事の紹介がありました。
「農学部出身で専門知識はありませんでした。先輩方に一から教えていただき、入社3年目に携帯電話、6年目にカメラ、9年目にカーナビを担当。製品の色形やロゴデザインなどに携わりました。いずれも大手メーカーの製品で、街中で見かけるととても嬉しくなります」
独自技術を複数持ち、特許も多数
吉田社長による会社説明。ものづくりに対する熱意や実績を知ることができました
オフィス見学 社風や歴史に触れる
会社概要の説明後、社員の方にオフィスを案内していただきました。
執務スペースを訪問すると、若手社員が半数程を占めていました。ベテラン社員と会話をしながら仕事をしている様子に、コミュニケーションが活発な社風がうかがわれました。
続いて、工作スペースを訪問。ここでは大型機械を使ったインモールド成形の様子を見せていただきました。社員の方から、「平面だけでなく、丸みをおびたフォルムにも対応。1つあたり30~40秒程で仕上げています」と解説がありました。
製品を作る様子を間近で見学
フィルム上の色柄を瞬く間にプラスチックに転写。学生から「すごい!」と声があがりました
座談会 社員の人柄や社風を感じる
最後に、社員の方を囲んで座談会を行いました。
「インモールド技術の開発期間は?」との質問には、「着想時から約5年。技術開発においては珍しいことではありません」、「今後、長方形のような多面体にも対応しますか?」との問いには「現状はカーブなどの2.5次元まで。多面体には他の技術のほうが向いていると考えています」という技術に関することも答えてくださいました。
また、「就活に向けて学生時代にやるべきことは?」といった質問に、「採用担当者と話が盛り上がることが意外と大切。そのためには勉強、趣味、遊び、いずれでも構わないので人一倍打ち込んでください。これならずっと話し続けられるというテーマを持っておくのがポイントです」と実践的なアドバイスをいただけました。
技術的な質問も丁寧に解説していただいた
学生の声
会社訪問後、学生から、「上品かつおしゃれなデザインのオリジナル製品の数々に、これまで抱いていたプラスチックのイメージが変わった」、「若いうちから責任のある仕事を任せてもらえたり、専門分野の経験がなくても活躍できる姿を実際に見ることができ良かった」、「プラスチックを現代美術として世界に発信したい、という社長の言葉に熱意と可能性を感じた」などの感想が出ました。
まとめ
1社目の村井では、社内で企画から製造・販売まで手掛け、健康をサポートする靴づくりに取り組む仕事ぶりを体験。
また、2社目の吉田テクノワークスでは、独自技術でデザイン性に富んだプラスチック製品を生み出す現場を見ることができました。いずれもメーカーとして長い歴史を持ちながらも積極的に技術開発を進めており、更に海外にもその技術が認められていました。そうした環境で、ものづくりが好きという若手社員が生き生きと働き、活躍している姿が印象的でした。