<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

普段の生活をより快適に。社会貢献度の高い企業特集

1社目 株式会社ナビット/13名参加

 最初に訪問したのは、地下鉄などの駅のホームに掲示されている「のりかえ便利マップ」を制作したナビットです。到着するとすぐに執務室を見学し、その後、立川課長より同社の歩み、事業の紹介をしていただき、グループワーク、そして若手社員たちとの座談会を行いました。

「のりかえ便利マップ」が大きく展示されているエントランス

ツアー内容

会社説明 あったらいいなを展開する事業
 到着した参加者が最初に案内されたのは同社の執務室。1つのフロアで事業部ごとに業務についており、そこかしこで社員同士がコミュニケーションを取っている様子に、参加者は早くも同社の風通しの良さを感じたようでした。続いて会議室に移動し、そこで立川課長から同社の起源から現在の業務についてお話があった後、ビデオが上映されました。そこには同社の福井代表が25年前、幼い子どもをベビーカーに乗せ、地下鉄のエレベーターがどこにあるのか分からずに右往左往する姿が再現され、その困った体験が乗り換えに便利なマップ制作につながったという同社の誕生物語になっていました。一般の主婦の情熱が、今では駅で当たり前に目にする便利商品を作り上げたというストーリーに涙ぐむ参加者もいたほど感動的なものでした。
 現在、のりかえ便利マップは同社の主軸事業ですが、コンテンツ・データベース事業、在宅ワーカーを活用したSOHO事業、そして助成金サービス事業も積極的に拡大しています。
 「コンテンツ・データベース事業としては、駅構内の案内マップをより立体的で見やすいものにしたり、多言語案内なども付加して提供するとともに、そうしたデータをウェブや手帳、アプリなど様々なメディアで展開し、事業規模を拡大しています」と立川課長は事業内容を紹介。更にSOHO事業については、より詳しく説明してくださいました。この事業は全国の主婦層を中心に6万人近くの会員を地域特派員として、オフィスに出勤することなくパソコンやネットワークを使って仕事を請け負う、在宅ワーク、あるいはテレワークとも呼ばれる働き方を推進しようというもので、子育て中の主婦、地方に住む方、体に障害がある方々を支える事業として発展しています。具体的な事例として上げられたのが、全国の小売店のチラシ情報を掲載する「毎日特売」。これは全国の地域特派員に新聞の折り込みチラシなどお買い得商品の情報を収集してもらい、お得な買い物を支援するというサービス。これにレシピ情報なども連携させるなど、台所を預かる方々にとても喜ばれているといいます。
 続いて同社が展開する助成金サービス事業についても説明していただきました。
 「会社の事業を金銭面で支援する助成金は地方自治体によってすべて異なります。それを地域特派員が地方自治体の助成金を調査し、データベース化して、助成金を必要とする、あるいは検討する企業に提供しています」

  • 執務エリアはワンフロアで社員同士の距離が近い
  • 軽妙な語り口調で会社説明をする立川課長

ワークショップ 地域特派員を活用した新サービスを考案
 続いて参加者は、3つのテーブルに分かれワークショップに臨みました。ここでは、同社の地域特派員から、どんな情報を収集して新たなサービスを提供できるかを考えるというものでした。参加者はテーブルごとについた社員のアドバイスを受けながらアイデアを出し、最後にグループごとに発表を行いました。1グループ目は、20代から30代の女性をターゲットにドラマや映画のロケ地のマップを提供するサービスを考案しました。マップには、その土地の景勝地、グルメ、物産など、その土地に住んでいなければ分からない情報を掲載することで付加価値をつけるというものでした。
 2番目のグループは、全国各地のランニングコースを紹介するというアイデア。コースには、初心者、リハビリ、健康嗜好者、本格的なランナー向けなどがあり、実際に走ることが好きだという地域特派員に情報を収集してもらい、多くの人を取り込もうという狙いのあるアイデアでした。
 最後のグループは、生活雑貨のチェーン店の情報提供というものでした。これは同じチェーンでも地域によって商品がそろっている店、そろっていない店があり、せっかく出掛けたのに目的の商品がなかったといったユーザーの不便を解消という案。各店舗の商品情報を提供するもので、検索機能も設け、顧客が欲しいものを確実に手に入れられるという顧客寄りのアイデアでした。
 「最初のグループは情報量も盛りだくさんで素晴らしく、2番目のグループはランニングという特定のテーマに絞られたところが良かったですし、最後のグループはまさにあったらいいなというアイデアだったと思います」と立川課長より講評をいただきました。

  • 社員を交えてのワークショップは面白アイデアが目白押し
  • それぞれのグループごとに新サービス案を発表

社員との座談会
 次に参加者は、社員を交えた座談会を行いました。入社のきっかけや、やりがいについて参加者から質問が出ました。
 「入社のきっかけは、のりかえ便利マップを一人で調査して事業に結びつけた福井代表に惹かれたから」という社員の声もありました。また、やりがいを感じるときはという質問には「自分が出したアイデアが事業として立ち上がったときの達成感です」との答えがありました。「大変なことは」という質問には、「例えば特売の情報は、少しでも新しい情報への更新が勝負なので緊張を強いられます」と回答。それでも喜んでくれる人がいるのが、やりがいになっているということでした。更に、働きやすさについての質問には、「毎月第二金曜日はノー残業デーで、メリハリをつけて働くことができますし、3カ月に1回は誕生会などのイベントを行っており、部署の垣根を越えて交流しています」と答えていただきました。

  • 社員との座談会では参加者からの質問が飛び交った

参加者の声

 「あったらいいなという一人の女性の思い付きが、多くの人のために役立っているということに感動した」、「在宅でも働けるという情報に出会えただけでも今回のツアーに参加して良かった」、「自分のアイデアがビジネスにつながるというのはとても魅力的」という声が寄せられました。

2社目 ライフ・ワーク・バランスEXPO東京2020/18名参加

 午後は、ライフ・ワーク・バランスの先進企業が取組事例を展示するイベント「ライフ・ワーク・バランスEXPO東京2020」に参加しました。ここでは、参加企業の社員の方をむかえて交流会を実施。その後、企業ブースを自由にまわるフリータイムとなりました。

会場となる国際フォーラムに到着

ツアー内容

交流会とフリータイム 取組と効果を知る
 参加者を4つグループに分け、社長や社員等の1名が加わり、1回15分間、計2回の座談会形式でお話をうかがいました。
 4つのグループの内、初回に密着させていただいたのは189名の社員が働き、ソフトウェアの開発を行うグリフィンでした。まずは社員の方から会社概要やライフ・ワーク・バランスの実践例について紹介がありました。
 同社では2011年から社内に「環境改善委員会」を設置。若手から管理職まで有志が参加して課題や改善策などを協議。残業削減や休暇取得の推進につながっているといいます。
 「社員主体で改善しようとの考えから導入に踏み切りました。会社全体の意識に変化があらわれるとともに、管理職が率先して退社するなどしたことで、他の社員も遠慮せずに退社ならびに休暇取得できるようになりました。2016年から2018年で約55%、残業削減を達成。プライベートを充実させることがパフォーマンス向上にもつながり、売り上げは年々上昇しています」
 その後、質疑応答の時間を設けていただきました。
 「教育環境は?」という質問には、「新人、中途ともに研修制度があります。未経験で入社し、エンジニアとして活躍している社員がたくさんいます」、「社風は?」との問いには「何でも相談できる雰囲気で、仲が良いです」と答えていただきました。

 2回目は、70名の社員が働き、書籍や販促ツールなどの印刷物の制作を行う木元省美堂に密着させていただきました。
 以前は、残業が恒常化し、若手社員や出産をむかえた女性社員などを中心に離職率が高かったといいます。
 「2014年に代表が全社員と個人面談を実施して不満をヒアリング。改善の姿勢を強く伝え、意識を変革することから始めました。2016年にフレックス勤務、2017年にアニバーサリー休暇とテレワーク、2018年にノー残業デーなどを導入。その結果、残業の削減や業務の効率化、離職率の低下が進みました」

 続いて、質疑応用の時間に入りました。
 「現在も面談は行っていますか?どのような内容ですか?」との質問には、「実施しています。どのようなキャリアを描いているかから聞きます。それを踏まえてどんな仕事をするか、子どもができたらどうするかなど、会社としての支援の仕方を考えます」との回答がありました。また、「最近始めた取組は?」との問いには、「サンクスカード。ひとことコメントを書いて渡すもので、社員の交流につながればと思っています」といった事例をお話してくださいました。
 最後に、各々自由にEXPO会場内を見学するフリータイムが設けられました。
 企業のブースには、ライフ・ワーク・バランスの取組を紹介するためのパネルや動画、支援ツールなどが展示されていました。参加者は資料などを受け取りながら、社員の方から会社概要、取組などをうかがっていました。

  • 交流会の様子
  • 取組を紹介する企業の方

参加者の声
 参加者から次のような感想があがりました。
 「大企業と変わらない、あるいはそれを上回るような福利厚生がある中小企業もたくさんあると知れた」、「ネームバリューだけでは働きやすいかどうかはわからない。実際に会社を訪問し、社員の方とふれあうなかで理解を深めることが大切だと感じた」

  • 企業ブースに訪問し、直接お話を伺う
  • フリータイム中の訪問先を考える参加者

まとめ

 日々の生活の中で「あったらいいな」を解消することで会社の事業につなげるナビットでは、小さな不便や不満の中にこそ新しいサービスのヒントが隠されていること実感。また、ライフ・ワーク・バランスEXPOでは、社員の声に耳を傾け、快適に働ける雇用環境を整える中小企業と知り合うきっかけになりました。参加者たちはツアーを通して、社会に影響を与えるアイデアを事業化できる強みや、働き方の改善にも積極的に取り組む様子など、社員の声を形にする中小企業の魅力が伝わりました。