<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

独自視点で、新たな商品・サービスを生み出す企業特集

1社目 株式会社ギークフィード/5名参加

 最初に訪問したのは、自社サービスの開発などを行っているギークフィード。内代表より事業内容や雇用環境への取組などについてお話をいただきました。続いて執務スペースを見学した後、グループワーク、そして座談会を行いました。

参加者に事業説明を行う内代表

ツアー内容

会社説明 オープンな勉強会でスキル向上を目指す
 ツアーは内代表の事業説明から始まりました。
 「最も特徴的な事業は、自社の技術を用いたサービスです。例えば、『YouWire』というサービスは、電話音声や会議音声などを録音し、自動的にテキスト化するというもので、コールセンターを中心に一般企業でも使用されています」
 更に、システムを一から開発することもあれば、海外製品を日本式に変換することもある「システム開発事業」や、クライアント企業の経営課題を解決するシステムの選定や運用支援などを行う「システム導入サポート事業」なども行っています。また、近年新規事業として「AI開発事業」を立ち上げたそうです。
 事業説明に続き、社員の教育についても話してくださいました。
 「常に最先端技術を駆使して事業を展開していますから、ITに関するスキルを社員一人ひとりが身に付けられるように勉強会や講習会を多数そろえています」(内代表)
 同社では隔週土曜日に自社スペースを開放して勉強会を実施。任意で資格の勉強や読書などができるという事で、多くの社員が積極的に活用しているそうです。また、この勉強会は、社外の方も参加ができるもので、学生や同業者の方々も参加しているという事です。休日に勉強を行う、意識の高い方たちとの交流が、社員にとって大きな刺激となり、新たなサービスを生み出す原動力となっていると言います。

  • 自社サービスの話に興味津々の参加者

社内視察 ハンギングチェアーもあるゆったり空間の執務室
 続いて参加者は、執務室を見学しました。入室するとパソコンモニターに向かっていた社員たちが一斉に顔を上げて笑顔で迎えてくれました。フロアーにはハンギングチェアーもあり、そこでアイデアを練る社員もいるとのこと。更に社員の健康促進の一助として、栄養素の高い軽食が補充され、社員は自由に購入ができるそうです。
 また、会議などが行われるテーブルは卓球台を使用。「このサイズのテーブルはなかなかない上に高価。そこで卓球台を会議テーブルにしました。もちろん、リラクゼーションとして卓球をするのにも利用しています」と内代表。
 参加者は、他の執務室では見かけないようなチェアーや卓球台に驚いていました。

  • 執務室はリラックスして働ける場が演出されている

グループワーク スマートスピーカーと会話
 次に社員2名を加えて、「スマートスピーカーに自己紹介をしてもらおう」をテーマに、プログラミングにチャレンジしました。スマートスピーカーとは、話しかけると、事前にプログラムされた内容を応答したり、インターネット検索をしてくれたりする、便利な機械です。参加者全員がプログラミング初体験ということで不安な表情を浮かべましたが、社員の的確なアドバイスもあり、無事、プログラムを作り上げることができました。
 「○○さんの好きな食べ物は何ですか」とスマートスピーカーに話しかけると、「○○さんの好きな食べ物はハンバーグです」とスマートスピーカーが返事。自分の声がスマートスピーカーに認識され、自分で打ち込んだ内容が的確にかえってくることに、参加者は大喜びでした。

  • 自分の好きな食べ物をプログラムに入力する参加者
  • 作業室で、初めてプログラミングに挑戦する参加者

社員との座談会
 次に参加者は内代表、そして社員2名を交えての座談会を行いました。
 「どんなやりがいがありますか」と参加者が質問。社員の方は「以前は大手メーカーで働いていたのですが、そこで携われるのは大きなプロジェクトのごく一部分に過ぎなかったので、仕事の全体像が見えませんでした。その点、当社ではアイデア出しから始まって、お客様に納品するまでを一人でできるところが喜びであり、やりがいともなっています」と回答してくださいました。
 最後に内代表から「自分が好きなことは何かを探し出して、就活に挑んでください。そのためにも、こうしていろいろな会社を訪問することはとても有意義なことです」という言葉が贈られ、今回のツアーは締めくくられました。

  • 笑顔があふれる活発な座談会が行われた

参加者の声

 「自分たちでアイデアを出し、様々な企業の役に立つ独自のサービスを開発しているところがおもしろいと思いました」「新しいサービスを開発していくおもしろさや、やりがいを知ることができました」という声が寄せられました。

2社目 佐藤興業株式会社/5名参加

 次に訪問したのは、大規模な建造物やテーマパークなどの塗装を手掛ける佐藤興業。佐藤専務より会社概要、同社が手掛ける事業の特徴などについてお話を聞いた後、特殊塗装の体験、座談会を行いました。

塗装に欠かせない多種多様の刷毛をそろえる佐藤興業

ツアー内容

コンピュータではできない分野の仕事
 佐藤興業は、神社などの日本古来の宮塗装から事業をはじめ、今年で創業101年目を数えるといいます。現在は、高層住宅やビルの塗装も手掛けるなど、業務の幅を拡げています。創業以来、社是として「人を愛し」、「仕事を愛し」、「国を愛しましょう」を掲げ、周囲への「愛」をキーワードに、お客様に喜んでもらえる仕事に注力していると言います。
 また、様々なもののIT化が進む現在ですが、塗装はまだまだ人の手でなくては成り立たない業界と佐藤専務は話します。
 「それだけに人材育成は企業の命運で、時代のニーズに応える塗装の技術を磨く機会を多数設けています。その一つが新人研修をはじめとした研修制度です。資格取得を支援し、10年を目安にマネージャー、スペシャリスト、あるいは独立の道も選択できるようにするなど、社員が将来を描けるようなシステムを組んでいます。自分の将来が描けることが、日々の仕事のやりがいにつながるので、良いシステムだと自負しています」という佐藤専務の説明に、参加者は興味津々の様子でした。
 また、1991年よりカナダ、アメリカ、スウェーデン、イタリアの企業や学校と提携し、社員を派遣し特殊塗装を学ばせる取組を展開しています。特殊塗装とは、石壁などを大理石調や木目調にペイントで仕上げるヨーロッパの教会などで古くから取り入れられてきた手法で、近年ではハリウッドなどの映画や舞台の背景でこの技術が生かされています。海外に赴き習得したこの技術を、大規模テーマパークや地域の幼稚園の外壁などに施し、高い評価を得ているといいます。
 また、とりわけ参加者が聞き入ったのが、塗装業界への貢献のお話でした。例えば、高校生や専門学校生などをインターンシップとして受け入れ、職人の仕事のイメージを高めてもらったり、ものづくりイベントに出展し、実演を行ったりと、塗装の魅力を伝える活動もしているそうです。
 「多くの人に塗装のおもしろさを伝えられることが、教える側の社員のモチベーション向上にもつながっているようです」と佐藤専務。まさにそれは同社社長が2020年度の方針として掲げた「習って覚えて、教えて身に付ける」に直結しているといえます。

  • 人材育成に力を入れていると語る佐藤専務
  • 厚紙にあたかも木目そのものに塗られたサンプルが並ぶ

ワークショップ 木目調仕上げの特殊塗装に挑む
 次に参加者は、特殊塗装のスペシャリストである神谷シニアディレクターの指導のもと、木目調仕上げ塗装を体験しました。神谷さんのこの技術は、大規模建築物やテーマパークのオブジェ、壁面などに使われているとのことで、参加者はアトリエに並ぶ数々のオブジェの出来栄えに感嘆の声を上げていました。
 体験塗装では、1枚の厚紙に濃淡のある茶色を塗り重ねて木目調に仕上げるという手法に挑戦しました。神谷さんが厚紙に筆をすべらせると、みるみるうちにきれいな木目調ができあがるのですが、参加者はなかなかうまくいきません。「うまく描こうと思わず、思い切って塗ってみてください」と、神谷さんが各参加者に指導をし、何度も塗り重ねていくことで、一人ひとり味のある木目調の厚紙を完成させることができました。出来上がった厚紙を前に、参加者は驚きや喜びの声をあげていました。

  • 神谷シニアディレクターに特殊塗装の指導を受ける参加者
  • 見よう見まねで特殊塗装に挑む

社員交流 将来へのエールをいただく
 最後に佐藤専務と神谷シニアディレクターとざっくばらんにお話をする座談会を行いました。参加者から「職人さんは怖いイメージがあります」という声があがると、神谷シニアディレクターから「昔は、背中を見て覚える、というような風潮があったので、皆さんにもそういったイメージがあるのかもしれません。しかし今は丁寧に教える優しい方が多いです」と答えてくださいました。
 最後に佐藤専務から参加者にエールが送られました。
 「今日の体験同様、これから初めて挑戦することがたくさんあります。失敗を恐れずに果敢に挑戦してください。皆さんもこれからいろいろなことを先輩諸氏に習って覚え、そして後進に教えることで確実に自分の身に付くということを信じて、大きく羽ばたいてください」
 参加者は神妙な面持ちで聞き入っていましたが、それぞれが仕上げた木目調の作品を最後にプレゼントされ、笑顔で今回のツアーを終了しました。

  • 完成した作品を受け取る参加者

参加者の声
 参加者たちからは「テーマパークの特殊塗装など、他の塗装企業があまりおこなっていないサービスを展開していて興味深かった」「様々な塗装方法を習得し、新たなサービスの幅を広げていく素敵な企業だった」という感想が聞かれました。

まとめ

 1社目のギークフィードは、IT業界の中で自社サービスを提供、2社目の佐藤興業は塗装業を追求して一世紀の歴史をもつ企業でした。どちらも、自社の得意分野を極め、独自の視点やアイデアを取り入れた新たな開発や塗装に挑戦している企業でした。今回、社長や役員のお話や体験プログラムを通し、新たな商品やサービスづくりに挑む企業のチャレンジ精神などを感じることが出来ました。