
英弘精機株式会社
太陽から地球に注ぐ日射量の計測機器や、素材の研究・開発に欠かせない物性・分析機器のメーカーと説明されて、なるほどと納得できる人はそう多くはないでしょう。事の細はともかく、太陽という単語が出てくる以上、宇宙に関わる事業ですから今どきの事業かと思いきや、渋谷区に本社を置き、メーカー、販売会社として事業を展開する英弘精機株式会社は創業88年という歴史を刻む、いわゆる老舗企業。その技術力の高さは世界トップレベルの研究者に認められ、世界有数のメーカーに数えられています。
さて、機器そのものの説明ではピンとこなくとも、どんなところで利用されているのかを聞くととてもわかりやすい。例えば、日射・日照計は私たちが日々お世話になっている天気予報のベースとなるデータの収集。一口で言うとアメダスに採用され活躍しているといったらすぐにイメージできるでしょう。一方の物性・分析機器は飲料の開発、車の塗料・コーティングを評価するのに欠かせないといいますから、見えないところで私たちの生活に密着している機器といっていいでしょう。
そんな世界屈指の研究開発を支えるテクニカルセンターへ、今回特別に潜入してきました!アテンドしていただいたのは、入社3年目の市毛もこさんです。理工学部で物質化学を専攻されていたこともあって、丁寧にわかりやすく解説していただきました。

東京本社に設けられたテクニカルセンターには、英弘精機が世界各国の先端メーカーから取り寄せている物性・分析機器が並んでいます。英弘精機はISOの試験所規格である「ISO/IEC17025」の試験所・校正機関認定を取得しているため、日射計や回転粘度計の校正、流体の粘性試験の信頼性は国際的な保証と見なされ、日本国内はもちろん、世界各国間の相互認証も得られるのが大きな強みです。

強みにあぐらをかくことなく、クライアントを大事にする姿勢に徹しています。それを物語るのがサポート体制。弊社の機器を導入するにも運用するにもそれ相応の費用が必要。弊社のスタッフは装置の導入支援や分析・試験の結果報告を提出するだけにとどまることなく、「どうすればもっとコストパフォーマンスを向上できるか」といった相談はもとより、導入企業の研究者が抱える問題を解決するサポートまで密接におつき合いしていきます。それが各社研究者の皆様から信頼を勝ち得ている所以だと自負しています。
ユーザーの皆様が弊社製品をより効果的にご利用いただけるように、セミナーやワークショップを随時開催しています。技術セミナーでは講師として大学の先生や企業の研究者をお招きして技術情報を共有していただき、また、弊社技術スタッフによる最新の分析・評価技術に関するセミナーも行っています。

これらの粘度計は世界各国で使用され、顔料やインキ、化粧品、医薬品、塗料、農薬、石油製品、食品・飲料など、さまざまな素材の研究で活躍しています。テクニカルセンターでは、ユーザーのお客様が実際の装置を使って使い勝手を確かめることができ、装置の使用方法や測定上の注意点など、正確な測定に必要なテクニックを身につけられるトレーニングコースも受講できます。もちろん、導入後のお問い合わせや技術的な質問にも対応しています。

レポートを終えて
英弘精機の本社屋上には太陽光パネルが設置されており、日射計・日照計の出荷前テストも行われていました。日射計は地表に入射する太陽放射エネルギーを測定するもので、日照計は太陽の直達光が地表を照射している時間(日照時間)を測定するもの。同社の日射計は、古くは第一次南極観測隊でも活用され、気象庁のアメダスでは全国約800ヶ所の観測地点で同社の日照計が活躍しているそうです。
「気象観測だけではなく、今は再生可能エネルギーとして注目を集めている太陽光発電の安定稼働にも貢献し、日射計は正確に稼働しているのかどうかを見極めるためのデータ収集に活用されているんです。実は私、その推進を担うチームの一人なんですよ」と、市毛さんは素敵な笑顔で教えてくれました。
粘度計や表面張力計、日射計、日照計、さらには実際の太陽光パネルまで、普段目にすることのない機器をつぶさに見ることができて、とても勉強になりました。社員の方々が機器を使って仕事している姿も目の当たりにでき、「私たちの暮らしにどう活かされているのか」という点も丁寧に解説していただいたので、英弘精機さんの技術をぐっと身近に感じることができました。ほんの一部だとは思いますが、世界トップレベルの技術に触れることができた貴重な1日でした!
