<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

アイデアや夢をカタチに。新商品・新サービス開発が優れた企業特集

1社目 株式会社キャリア・マム/7名参加

 はじめに訪れたのは、25年に渡って多摩地区で結婚・出産後も働く女性を中心に支援してきたキャリア・マムです。同社では働く女性も使いやすいコワーキングスペースや保育室の運営も行っています。会社説明をしていただき、オフィス見学、そして座談会を行いました。

同社が入る商業施設の最上階に保育室併設コワーキングスペースが設置されている

ツアー内容

会社説明 女性が輝ける働き方を追求
 1995年に育児サークルとして始まったキャリア・マムは、「女性のキャリアと社会をつなぐ~自分らしく生きる楽しさを多様な働き方でかなえる~」を経営理念として、復職を希望している主婦を中心に支援を行っています。
 「会員数10万人を誇る主婦ネットワークを生かしたグループインタビューやリサーチなどで、主婦目線の意見を企業に提供すると同時に、働きたいけれど子どもから目を離せないという母親に在宅でできる仕事を提供しています」というのは堤代表。プライベートで様々な事情を抱えている人でも活躍できる仕組みを作りたいという考えから、同社でも社員のほぼ半数がリモートワークで働いているそうです。

 また、会社説明後に行われた質疑応答では、多様な働き方を実現してきた堤代表に多くの質問が投げかけられました。「自分の力で会社をやっていこうと決めたときはいつですか?」という質問には、「キャリア・マムの前身となる有限会社で、売却を考えるほどに落ち込んだ時期があったのですが、当時の社員に給料はいらないから働きたいと後押しされ、経営者として生きていこうと決めました」と答えてもらいました。そして、「子育てと経営を両立する上で難しいと感じるところはどこですか?」という質問には「子どもを見ていなければいけないときに会社で問題が起こったり、会社が忙しいときに子どもが問題を起こしてしまったりということもあり、両立の難しさを感じました」と返答。しかし、どちらも100点を目指すことをやめ、何か問題があってから対処すれば良いと思うようになってから心の余裕ができたそうです。子どもたちも経営者である堤代表をかっこいいと応援しており、堤代表が子どもたちに会社の悩みを相談したこともあるそうです。
 女性の多様な働き方を支える同社の取組や、堤代表の体験に参加者たちも興味津々の表情で話を聞いていました。

  • キャリア・マムの数々の取組について説明する堤代表
  • 参加者たちもメモを取りながら、真剣な表情で説明を聞いていた

オフィス見学 保育室併設のコワーキングスペースを運営
 続いて、オフィス見学を行いました。はじめに案内いただいた執務室では、管理部や営業部などのスタッフが働いていました。参加者が入室すると、スタッフたちが笑顔で出迎えてくれ、和やかな雰囲気で仕事をしていることが伝わってきました。次に「おしごとカフェ」を案内していただきました。ここでは、電源(コンセント)やWi-Fiを誰でも無料で利用できるようになっています。更に、棚のスペースの貸し出しも行っており、ハンドメイド品を売りたい主婦などが商品を展示しています。
 最後に、同社が運営を手掛けるコワーキングスペースを見学しました。ここは、厚生労働省、東京都、多摩市からそれぞれ認定を受けており、保育室が併設されていることが大きなポイントといいます。また、ワークスペースと保育室は防音ガラスで仕切られ、仕事をしながら子どもの様子を見守れるとのことです。

  • おしごとカフェを見学した参加者たち

座談会 一緒に働きたいと思える社員を見つける
 次に、二人の社員を交えて、仕事内容や就活に関する座談会を行いました。「主婦会員にどのようなリサーチを依頼するのですか?」という質問には、「例えば、食品メーカーからの依頼で、クリスマスの日の食卓を写真に撮ってもらうというものがありました。各家庭でチキンやケーキなどのクリスマスらしい食事をしているかどうかの実態を主婦に調査したかったようです」と答えてくださいました。また、「就職する上で気を付けるべきことはありますか?」という質問には、営業職の社員に「何をやりたいかが決まってないという人は、この人と働きたいと思える人を探してみてください。会社には、同じ考えを持った人が集まることが多いので、一緒に働きたいと思えた人がいるところは働きやすいと思います」と具体的なポイントを交えてアドバイスしていただきました。
 社員による丁寧な回答に、参加者たちも大いにうなずいていました。

  • 座談会では就活でのアドバイスなど、幅広い質問が寄せられた
  • 仕事のやりがいを聞き、メモを取る参加者

参加者の声

 参加者からは、「インターネットが普及する前からリモートワークなどを取り入れていて、先進的だと思った」、「主婦を『生活者のプロ』としてとらえ、様々な企業ニーズに応えていることに驚いた」といった声が聞かれました。

2社目 三報社印刷株式会社/7名参加

 続いて訪問したのは、医学書の印刷などを手掛ける三報社印刷です。近年では、印刷に留まらず、電子書籍サービスや動画コンテンツの提供を行っています。ここでは、会社説明、オフィス見学、折り加工体験、質疑応答が行われました。

画像処理の様子を見学する参加者たち

ツアー内容

会社説明 医学書を扱う印刷会社のデジタル技術を紹介
 三報社印刷は1923年創業、医学書の印刷受注が日本一を誇る印刷会社です。他にも、看護関係の参考書や予備校のテキスト、コミック単行本や様々な雑誌を印刷しています。更に、電子書籍の通販サイトなど、「紙に印刷する」ということに留まらない事業内容について、情報処理室の社員の方に説明していただきました。
 「医学書を中心に当社で印刷の発注を受けたものを電子書籍でも販売しています。それだけでなく、紙の書籍にクーポンコードを付けて、購入者は電子版でも見ることができるように提供しているものもあります」とのこと。医学書は非常に分厚いものも多く、医学部生などから荷物が軽くなったと好評だといいます。他にも、電子書籍の中に解説動画を付けたり、問題集と同じ問題を解くことができるウェブサイトを作成するといった取組を行っているそうです。印刷会社と聞いただけでは予想できない事業の数々に参加者たちも驚きと関心の表情で話を聞いていました。

 次に、社員が長く働けるための環境づくりについて紹介していただきました。同社では、3名の社員が育児休業を取得中で、短時間勤務や在宅勤務も可能だそうです。現在も、パートナーの転勤で遠方に住むことになったオペレータが在宅勤務で働いているとのことです。

  • 同社のデジタル事業について説明を聞く参加者

オフィス見学 本ができるまでの様々な工程を見学
 続いて、オフィス見学を行いました。はじめに、出版社などから返ってきた赤字修正を反映する作業を行っているDTP部門を案内していただきました。赤字は、びっしりと書き込まれて返ってくることも多く、効率的に作業を行うために、ここでは画像の修正などは行わず、文字の修正のみを行っているとのことです。
 次に、画像処理などの作業をしている画像部門を見学しました。ここでは、画像処理ソフトを使って写真の明暗や色の調整を行っています。この日は、実際に画像をどのように編集しているのかをサンプル写真を使ってレクチャーしていただきました。スポーツカーの車体の色だけを変えたり、女性のホクロを消したりといった作業に、参加者たちも驚きの声を上げていました。
 2階では、「面付け」という作業と情報処理を行っている様子を見学しました。面付けとは、各ページを正しい順序で配置することをいいます。専用のソフトを使って面付けしたものを出力すると、1枚の大きな紙に16ページ分の誌面が印刷されたものが出てきて、参加者から歓声が上がりました。続いて、情報処理担当の社員の方に案内いただき学術論文をウェブ上でも読めるように処理を行っている様子を見学しました。論文のデータを自動でウェブサイト用に変換できるようにプログラミングをしているとのことでした。

 最後に、編集作業と校正作業を行っている編集室を案内していただきました。同社では、出版社から本を作りたいという依頼があったときに、ワンストップで作業が行えるよう、編集も行っているそうです。また、イラストレーターも在籍しているため、文章の編集だけでなくイラストの挿入なども迅速に対応することができます。続いて、校正担当の社員の方に話を伺いました。「この部署では、本として印刷される前の最終チェックを行います。例えば、赤字修正がきちんと反映されているか、誤字・脱字が無いかなどの確認をしています」。ツアーで訪れたこの日も、数名の社員が黙々と確認作業を行っている様子を見学することができました。

  • 手書きで書かれた赤字をもとに、修正作業は行われる
  • 雑誌や単行本など、同社が編集を行っているものは多岐にわたる

折り加工体験 ばらばらに見えた誌面がページ通りに折られていく様子を体験
 次に、折り加工体験を行いました。面付けされた1枚の大きな紙を4回折ると、16ページの冊子になります。これを2つ重ねると32ページの本が、4つ重ねると64ページと厚い冊子になっていきます。今回は、この16ページの冊子を作る過程を体験しました。それぞれのページが1枚の紙にばらばらに配置されているように見えたものが、正しく順番に折っていくことで、1ページから16ページまで順番に並んだことに参加者も感動している様子でした。

  • 折り加工を体験する参加者
  • 訪問の最後には簡単な質疑応答が行われた

参加者の声

 参加者からは、「電子書籍のクーポンコードや動画コンテンツなど、ITを積極的に導入していて意外だった」、「印刷会社と聞いて印刷だけをしていると思っていたけど、編集などもしていることを知って驚いた」といった声が聞かれました。

まとめ

 1社目に訪問したのは、多様な働き方の実現を支援してきたキャリア・マム。2社目に訪問したのは、医学書トップシェアという伝統を持ちながらも、デジタル技術を積極的に取り入れている三報社印刷でした。どちらも独自のアイデアを商品化、新しいサービスとして世の中に発信している企業でした。参加者も中小企業の創造力の大きさに感心していました。